ようこそCODEエージェントが住まう実力主義の学校へ   作:不知火新夜

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20話

こうしてスポット占有を担うリーダー役も、1週間生活する拠点も決まった1年Cクラスの特別試験は始動、他のスポット確保と島の探索に出向いた六助以外の39人がまずやるべきは清隆達火の番以外の32人が寝泊まりするテントの設営だが、此処で力を発揮したのが意外にも寛治だった。

Cクラスの中で唯一キャンプを経験していた寛治、テントの張り方もその際にしっかり叩き込まれていた為、知識でしか知らなかった清隆達にやり方を伝授、4つのテントを手早く設営する事が出来たのだ。

流石に入学したばかりの頃のやらかしがデカすぎる事、中間テストに向けての勉強会に参加しないどころかフォローも突っぱねた為に学力面でクラス全体の足を引っ張りまくっている事からヘイトを一掃するまでは行かなかったものの、見直すクラスメートは少なくなかったとか。

とはいえ雨風や直射日光を避けられたりプライバシーを確保できたりする住居が完成した後もやるべき事は多くある、食糧の確保に、焚火を維持する為の枝の補充、飲み水の補給等だ。

其処で清隆ら火の番等の理由で夜中も起きていなければならない7人は拠点に残っての周囲散策に留め、他の32人で4人1組単位の8グループを形成、リーダー役としてスポット占有に出向いている六助がサボっていないかの確認を取りながら、島の探索へと向かっていった。

正に順調過ぎる位の順調振り、その中で清隆は拠点近くで枝を集めつつ、そう思える最大の要因と言って良い六助の翻意、その決め手と言える夏休み前のやり取りを思い出していた。

 

――――――――――――

 

それは期末テストも赤点無しという及第点と言って良い結果に終わり、1年生の大半がこれから訪れるであろう夏休み、及びその間に行われる無人島や豪華客船でのバカンスに心を躍らせている中で起こった出来事。

その日清隆は、昼休み中に見覚えのないアドレスから「ケヤキモールのカフェにて待つ。放課後此処へ来い」というメールを受信し、その指示通りケヤキモールにある指定のカフェへとやって来たのだ。

 

「高円寺か。まさかお前がオレを呼び出したのか?」

「ああ。来てくれて光栄だよ、ラットボーイ。とりあえず座り給え」

 

自分を呼び出したのが誰か探そうとしたが、その必要は無いと言わんばかりに、明らかに待ち合わせ中だと言わんばかりに、店の手前の席に腕を組んで座る六助の姿と、それを遠巻きに見る他の客達の姿があった。

…既にこの頃には男子生徒を呼ぶ際に共通して用いる「〇〇ボーイ」にドブネズミを意味するラットを付けて清隆を呼んでいたのを聞くに敵意を隠そうともしていなかったのだろう、表向きの表情はにこやかだったものの、その如何にも「私は怒っているぞ」と言わんばかりのオーラに当てられてか、或いは別の理由か、その近くの席に座る客は誰もいなかった。

 

「まあ、オレのメールアドレスを知っている件については敢えて聞かない事にする。どうせpptを使って開示要求したか、人づてに聞いたかしたんだろう。で、なんでまた急に、そうまでしてオレを呼び出したんだ?オレとお前は、同じクラスに属している以外の関係は無いと思っていたんだが…」

「思い当たる節など無いとは言わせないよ。

 

 

 

最近ニュースになっている高円寺コンツェルンの関連企業で起こっている不祥事。あれは君の差し金だろう」

 

そんな怒り全開なオーラを吹き出している事など全く分かりませんな顔して勧められるまま六助の前の席に座る清隆に、六助は前置きも無しに本題を切り出した。

ここ最近新聞やテレビのニュースにおいて見聞きしない日は無いと言って良い高円寺コンツェルンの不祥事、それは清隆によって引き起こされた物だと唐突に問い詰めて来たのだ。

いや清隆もまたこの学校の在校生で外部へ出入りする事はおろか連絡を取る事も出来ないんだけどとか、一介の高校生である清隆にそんな不祥事を暴く権力とか無いんだけどとか、ツッコミ所の多すぎる指摘ではあるが、先程のドブネズミ呼ばわりも踏まえると六助は既に清隆が一連の黒幕であると確信している様だった。

 

「なんだ藪から棒に。単にお前の所の会社がやらかした、それが明るみに出たというだけの話だろ?」

「とぼけるのも大概に」

「おいおい、そうやって確たる証拠も無いのに、オレを犯人だと決めつける物じゃあ無いぞ、何処にお前の醜聞を集めようと嗅ぎまわっている輩がいるか分からないんだ。お前が、今現在やらかしまくった事でニュース番組を賑わせている高円寺コンツェルンの跡取りなのは周知なのだからな。今も遠巻きに、お前のやらかしを集めようと周りに張っているかも知れんぞ」

 

当然ではあるが、自分が関わった事が確定的明らかな証拠が出ていないのもあり清隆はそんな指摘を全否定しつつ、素知らぬ顔で六助を窘めた。

そんな平然とした様子の清隆に、どの口が言うんだと六助は激高しそうになるが、確かに自分の指摘は第三者から見れば言い掛かりにも等しく、此処で怒りを露にすれば状況が悪くなるのは明白なので、握りしめた拳を振るわせつつ、口から出そうになる罵倒の言葉を飲み込むしかなかった。

 

「ところで、高円寺コンツェルンが今こうして大変な状況になっている以上、お前の実家の力を使ってAクラスに移籍して卒業、なんて手はもう無くなってしまったと言って良いだろう。必然的に、今のクラスをAに上げる事でしか卒業後の進路保証は得られまい。まあお前の最終的な進路は高円寺コンツェルンで確定してはいるだろうし、此処で進路保証が得られなくても家の力で多少の融通は効くだろう、お前の実家はこれ位で潰れる程軟じゃあ無いからな。だが高円寺コンツェルンでの、お前の家での、関係各所での覚えは悪くなるだろう、高円寺の跡取りはトップになれないままおめおめと帰って来た、等と陰口を叩かれるのは必定だな。

 

 

 

どうだ高円寺、今後実施される定期試験や体育祭は勿論、バカンスと偽って実施すると予想している特殊な試験等で、クラスの為にその力を振るう気は無いか?お前がその気なら、クラスメート達を取り成そう」

 

そんな六助の憤怒など全く気付いていないといった様子で、清隆はクラスへの貢献を提案する。

今しがた清隆が言った通り、度重なる不祥事が災いして高円寺コンツェルンの跡取りであるが故の信用はがた落ちとなり、リアルマネートレードの契約をしてくれる生徒は激減、2000万pptを支払っての移籍という手段は潰されたと言って良い、必然的に今所属しているクラスのcptを増やす為に貢献するしか無い。

清隆と六助が所属しているクラスはC、トップであるAクラスとの差は160cpt近く、背中が見えない程では無いがそう簡単に逆転出来る程接近している訳でも無い、それに一時Aクラスに昇格出来ても卒業時にAクラスで無ければ卒業後の進路保証は得られず、昇格後もcptで逆転されない様に戦い続けなければならない。

そして入学時はDクラス、入学した中では最底辺とされた生徒達の集まりである、清隆や六助ら個々で強大な実力を有した生徒こそいるものの全体的な戦力は貧弱、Aクラスへ昇格してその座を維持し続けるのは困難を極める。

その為にも自分に匹敵するどころか上回る実力を有した六助がクラスに貢献してくれるのであれば心強い、卒業後の進路保証は勿論、高円寺コンツェルンの後継者として社会に出た時に見下されない為にも力を貸してくれないかと提案する清隆だったが、

 

「それは、私がNoと言ったら更なる不祥事を起こすという脅しかね?」

「脅しとは人聞きの悪い、そもそも不祥事を引き起こしたのはオレじゃないと言っているだろう。お前がクラス間競争の為に力を振るってくれると言うのなら、クラスメート達を説得すると提案しているだけだ。クラスを纏める立場たるオレから言わせて貰うが、お前のクラス内での評判は決して良いとは言えんぞ。学力も運動能力も相当な物を有していながらそれをクラスの為に使おうとしない、普段の態度も自分が中心だと見下していて腹が立つ、とさ。そんなお前が一転してクラスの為に働くと言っても信用する奴はいないだろう。それを俺が説得して受け入れさせると言っているんだ。それでお前が結果を出せばクラスの皆も見直してくれるだろうし、何かしら、退学者を1人出せとか、誰か1人を他クラスに放出しろとか、そういうイベントでお前が狙われる可能性も減るだろう」

 

それは言外に「協力しないとより追い詰めるぞ」と脅していると言って良い内容だった。

六助が言った件に関しては改めて否認したものの、クラス内で春樹や寛治程では無いにしてもその性格故にヘイトを向けられる六助を退学なり強制移籍なりで追い出す事だって出来るんだぞと滲ませて協力を強いた。

 

「…良いとも、君が口添えをしてくれると言うのなら、存分に力を振るうとしよう。

 

 

 

だが覚えていたまえ、私を縛り上げて、思いの通りに動かさんとする事が、どれだけ罪深い行いかを」

「お前こそ覚えて置け、今お前がこうして高い実力を身に着け、ふんぞり返っていられたのは先人達の、それこそお前が入学の日に席を譲ろうとしなかったあのお婆さんみたいな先人達の文字通り身を粉にして働いた苦労の上に成り立っていると言う事を」

 

そう言われてしまっては流石の六助も協力を受け入れるしかないと、清隆に受諾の意を伝えつつも、えげつないやり方で自分を縛ろうとする彼に警告を発し、それに対するカウンターで放った清隆の忠告を聞く事無く去って行った。

 

――――――――――――

 

こうしてクラス間競争に貢献する事を約束させた清隆は早速、この無人島試験でのリーダー役に任命、島の探索を兼ねてクラスメート達を監視に出向かせる形ではあるもののそれを受け入れさせる事が出来てご機嫌な様子だったが、ふと何かに気付いたのか下船の際に持ち出したバッグから何かを取り出した。

それは回収された物とは別物のスマートフォン、着信を伝えるかの様に振動しているスマートフォンだった。

 

「ゼロ、奴らがこの島に到着する予想日時は?」

『2日後の深夜1時だ』

「了解、引き続き監視と予測に当たれ」

 

電話をかけて来た相手から用件を聞きつつそう伝えて通話を切った清隆、その目は島の遥か向こう、他の島があるとされる方向へと向けられていた。

 

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