ようこそCODEエージェントが住まう実力主義の学校へ   作:不知火新夜

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5話

そんな他の学校と大きく変わらない日常を過ごす中で時は経ち、日付は5月1日、入学式に10万ポイントが振り込まれてから初めてのポイント支給日となった。

朝、自室で目覚めた清隆は、果たして入学式の支給額からどれ程増減があったのかを確認すべく端末を操作すると、支給額を示すポイント表記が『7万5千ポイント』となっていた。

つまり今月の支給は7万5千ポイント、入学式の時点から2万5千ポイント分、評価的にはマイナスになったという事である、その結果を受けて心当たりのある事を思い出しながら教室へ向かうと、クラスメート達も同じ様な考えだったのか、特に思い当たる事例の当事者達を睨みつける者が多く、睨まれた者達は居心地の悪そうな様子で己の席に座っていた。

とはいえ7万5千という評価額が良かったのか悪かったのかは、学校側が何も話していない以上は分かり様が無い、清隆が入学早々に指摘した事もあくまで『実力によって評価が、ポイント支給額が上下する』という事だけであって具体的に何をすれば幾ら上下するかまでは指摘していない、彼も詳細が分かりかねる以上はピリピリした雰囲気のクラスメート達にどう声を掛けたら良いか分からず着席した。

 

「これより朝のホームルームを…摂津が入学の日に指摘した事の答え合わせを行うとしよう」

 

やがてポスターを入れる筒と思しき物を抱えて入室してきた茶柱が発した言葉で、その詳細が語られる、そう思った生徒達は背筋を正して聞き入る態勢に入った。

 

「摂津が指摘した通り、この学校は生徒を実力で測り、それを合算したクラスの成績がポイントに反映される。出欠、授業やそれ以外の学園生活での態度等も評価対象だ。この結果、今朝支給されたお前達のポイントは入学式時点での10万から4分の1カットされた、という訳だ」

 

それを聞いて、プールでの授業の日にセクハラ何て知った事かと言わんばかりに猥談を行った挙句、女子達の胸の大きさを図ってランキング付けしようとした一部男子、殊にその中心である春樹と寛治への敵意は増大し、その敵意を一身に浴びる事となった2人は顔を青ざめさせていた。

 

「このクラスは相当な幸運だったが、その運を真っ当に活かす程度の実力も兼ねていたと言うべきだろう。摂津の指摘を証拠の無い戯言だと、飛躍した空論だと流す事なく、遅刻や無断欠席、授業中の私語や居眠りといった素行不良を行う事無く過ごした。中にはそれを信じようとしない輩によるやらかしもあったが…

7万5千というのは歴代Dクラスの中でも飛び抜けて高い額だ、其処は誇りに思って良いぞ」

 

だが7万5千という評価額はバグレベルで高かった様だ、それを聞いて一部の生徒が安堵の息を漏らす一方で「あんなふざけた真似をしなければもっと支給額は高かった筈なのに」とプール授業での一件に対する敵意が薄まる事は無い、そんな中で清隆は歴代「Dクラス」と茶柱がクラス名を限定して称賛した事に引っ掛かりを覚えた。

が、それは今から説明すると言わんばかりに茶柱は筒から紙を取り出し、広げながら黒板に付けた、其処にはこう表記されていた。

 

Aクラス         940cpt

Bクラス(5/1よりCクラス) 650cpt

Cクラス(5/1よりDクラス) 490cpt

Dクラス(5/1よりBクラス) 750cpt

 

「昇格おめでとう、お前達は今日からBクラスだ」

 

その表記と、茶柱のクラス名が変更された事を告げる言葉によって、清隆達一部生徒はDクラスの意味を理解した。

 

「今の言葉で理解した者もいるだろうが、クラスに付けられた名前の意味について説明するぞ。この学校では優秀な、実力の高い生徒順にクラスが分けられている。最も優秀な生徒はAクラスへ。その次はB、またその次はC、そして最も駄目な生徒はDクラスへ。大手進学塾でも良くある制度だ。此処Dクラスは入学時点で『落ちこぼれの不良品』が集まる最後の砦、という位置づけだった。だがお前達はこの一か月で、入学時点では上のランクだった2クラスをポイントで、評価で追い越し、Bクラスへの2ランクアップを果たした。念の為に言って置くが、全てのクラスが同じルールで評価されている。贔屓も忖度も悪意も一切無しだ。何度も言うが、この時期のBクラスへの昇格は、歴代Dクラスの中でも飛び抜けて凄い事なんだぞ」

 

尤も大多数はその意味が理解できていないと踏んで説明する茶柱、それに対する反応は様々だ、入学前に落ちこぼれの烙印を押されていた事に対する不満、盛大にやらかしている側の春樹や寛治と同じ扱いにされた憤怒、落ちこぼれからいきなり上位に成りあがった安堵、そして極一部、清隆と六助は特に変わった反応を見せず泰然としていた。

 

「尤も、喜んでばかりはいられないぞ。これは、先日やった小テストの結果だ」

 

そんな彼らの反応を他所に、今まで褒め称えていた茶柱が急に表情を引き締め、別の紙を取り出した。

実を言うと数日前、抜き打ちで小テストが行われていたのだ。

その内容が「成績表」、個人の評価には影響しない物であると伝えられて行われた小テストは全20問、うち17問は中学校レベルの簡単な問題だったのだが、後の3問は今の授業範囲では困難、最後の1問に至ってはキラー問題か!とツッコみたくなる難易度であった。

そのテストの結果が張り出されたのだが、上から点数の悪い順に並べる方式なのか一番上の『須藤健 14点』から下に点数で上回った者達の名前が表示され、一番下、最も点数の高かった項目に『摂津清隆 100点』との記載があった、が、大多数の生徒達が注目したのは其処ではない、上から7番目のマスの下辺を貫通する様に赤線が引かれていたのだ。

 

「ここら辺は流石に入学時Dクラスの評価を受けた者達と言うべきか。中学で一体何を学んできたんだ、お前達は?これが本番のテストじゃなくて良かったな、本番だったら7人は入学早々に退学となっていた所だ」

 

そんな彼らに、茶柱は強烈な爆弾を投げ込んで来た。

 

「た、退学!?どういう事ですか!?」

「この学校では中間テストと期末テストで、一教科でも赤点を取ったら退学になる事が決まっている。赤点は平均点の半分以下、今回のテストでの平均点は65.6点だったから32点以下の生徒は全員対象という事になる」

「は、はぁぁぁぁ!?」

「ふざけんなよ佐枝ちゃん先生!退学とか冗談じゃねぇ!」

「私に言われても困る。学校のルールだ、腹を括れ」

 

定期的なテストで赤点となったら即退学、という衝撃的な発表に抗議の声が上がるが茶柱はルールだからと取り合うことは無く、とても本文内で書ける様な物じゃない見苦しい騒ぎになるのだが、爆弾はこれだけじゃなかった。

 

「それからもう1つ付け加えておこう。国の管理下にあるこの学校はほぼ100%という高い進学率と就職率を誇るが、卒業後の進路について望みを叶えて貰いたければAクラスに上がるしかない。それ以外の生徒の望みを学校は、国は何一つ保証しない」

「そ、そんな!聞いていないですよそんな話!無茶苦茶だ!」

 

卒業後の進路にほぼ100%応える、という入学前に聞いていた触れ込みが適用されるのはAクラス所属で卒業した者のみ、というまたしても衝撃的な発表に再度抗議の声が上がるも、これもルールだからと取り合わず、やっぱりとても本文内で書ける様な物じゃない見苦しい騒ぎになるが、チャイムと共に「中間テストまで後三週間だが、赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している」という何か含みを持たせた発言を残して去って行った。

 

「皆。色々思う所はあるとは思うがまずは礼を言わせて欲しい」

 

残された生徒達は、茶柱から投げ込まれた爆弾による強大な爆破を立て続けに食らったせいか意気消沈していたが、いつの間にか教壇へ移動していた清隆が呼びかけた事で一斉に顔を向けた。

 

「オレの、状況証拠の積み重ねに過ぎなかった推論を信じ、ポイントを減らさない様皆が努力してくれたからこうして4分の1マイナスに留める事が出来た。3分の1余り減らした元Bクラス、半分以上も削れた元Cクラスを追い越してBクラスに昇格出来た。Aクラスとも差は190ポイントと背中は見えていると言える状況だ。これも全て、入学初日のオレの話を聞いてくれた皆のお陰だ、ありがとう」

「礼を言うのはこっちの方だぜ、清隆。お前が入学初日に注意してくれなかったら俺は居眠りや遅刻でポイントを減らしていたに違いねぇし、他の奴らもそうだったと思うぜ…実際、一部のクソガキがやらかした訳だし」

 

明らかにそうだと知らしめる物証が無い中での清隆の推論、だがクラスメートの半数以上はそれを信じてルールやマナーをしっかりと守り、乱そうとする者に対してしっかり注意してくれたからこの高評価を得られたんだと感謝の意を述べて頭を下げる清隆に対し、抑止力という意味で最も尽力した健が、やらかしの中心である『クソガキ』こと春樹と寛治をひと睨みしながら応じた。

それに対して「いや小テストでぶっちぎり最下位だった奴が何を偉そうに言ってんだ」と内心ツッコむ者も少なくなかったが、空気を読んだか、或いはその威圧感にあてられたか口にする者はいなかった。

 

「だがそれでも、入学前に受けた最低評価は、貼られた落ちこぼれのレッテルが消える訳じゃない。それこそオレ達がして来た「やって当然の事」をせずポイントを下げた元Bクラスや元Cクラスよりも下扱いされたという事だ」

 

だが本題は此処から、茶柱が言っていたDクラスの意味、最低評価を受けた『落ちこぼれの不良品』が集まる最後の砦扱いされた事に話は移った。

 

「聞く所によると入学時点でオレ達より1つ上の評価を受けていた元Cクラスは遅刻や無断欠席、授業中の居眠り、挙句喧嘩といった素行不良が度々起こってポイント半減という今回の評価に繋がったらしいんだが…

 

 

 

不満は、無いか?」

 

定期テストでの赤点1回で即退学という常に崖っぷちに立たされる恐怖、卒業後の進路保証という恩恵がAクラスのみと『騙された』怒り、それによって渦巻くクラスメート達の激情を清隆は『学校の、試験官の不当評価への不満』に『誘導し』、

 

「大有りじゃぁぁぁぁ!」

『そうだそうだ!』

 

爆発させた。

 

「そうだろう。オレも学校の、入学前のクラスの割り振りには違和感を持っている」

「全くだ!やって当然の事も碌に出来ねぇ元Cクラスの連中よりも下とかふざけんじゃねぇ!」

「この学校に入る前からやっちゃいけませんってしつこく言われて来た事も出来ないのより低評価だったとか納得行かないわ!」

 

一度爆発した怒りは留まる事を知らない、何処のヤンキー校だよと言わんばかりの惨状な元Cクラスの話を聞いて、それよりも下扱いされた事への不満の叫びが次々と響き渡った。

 

「皆の怒りは尤もだ。ならばこの学校の、目玉が節穴な試験官達に見せつけてやろうじゃないか、オレ達は最下層の落ちこぼれなんかじゃないと、この学校の『卒業後の進路にほぼ100%応える』という触れ込みに相応しいエリートだと!その恩恵を受けられるAクラスも決して手が届かない差じゃないんだ、皆で掴み取るぞ、トップの座を、Aクラスという最高評価を!」

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『清隆!清隆!清隆!清隆!』

 

その怒りをバネにトップへと成り上がり、評価は的外れだったと認めさせよう、そんな清隆の呼びかけに応じ、その旗振り役である清隆の名の大合唱が始まった。

尤もそんな清隆コールを行っているのは半分を超える程度、様々な理由でやらない者も少なくない。

単純に清隆が嫌いでリーダー面しているのが気に食わない者、その体育会系のノリが好きじゃないのか流されない者等々。

…そして清隆の席の隣に座る1人の少女は、何か決然とした表情で教壇に立つ清隆、というよりはその向こうを見つめていた。

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