目が覚めたのは、日本にある俺の実家沢田家の俺の部屋だった。俺の部屋といっても、高校に入った以降の部屋ではなく中学一年生のときの部屋とそっくりだった。
俺は、窓を見た。外は綺麗な青空で、ふわふわした雲がゆったりと流れているだけだった。そんな時、窓ガラスに映った俺の容姿がたまたま目に入る。
――その姿は、十五年前の中学生時と同じものだった。
「……!」
言葉が出なかった。驚きで声すらも出なかった。
俺は、慌てて一回へと駆け下りる。ドタドタとまだまだ綺麗な階段を下りた先のキッチンには、母さんがチラシを皆がら座っていた。
「あらツッくん、そんなに慌ててどうしたの?」
やはりそこには、十五年前と同じ若い母さんがいた。
きっとここは十五年前の世界なのだろう。超直感に頼らなくても、その考えにたどり着いていた。十年バズーカや人の身体を分解して保存する機械、平行世界を移動できた人間もいたほどだから、驚くのは今更であろう。
「えっと、母さん。今って何月何日だっけ?」
怪しまれないように、まだ幼い自分を思い出した。あの頃は母さんに迷惑ばかりかけていた時だったはず。リボーンがいないから、きっとリボーンが来る前なのだろう。
「急にどうしたの? 今日は六月十七日でしょ」
ビンゴ、どうやら今日はリボーンが来る前の日らしい。リボーンの書類、自分で整理しておいて正解だった。
「ご、ごめん。部屋のカレンダーの日付見てたら急にこんがらがっちゃって」
とりあえず、十五年前の並盛町を確認しておいた方がいいだろう。後々役に立つかもしれない。それに、現地民が町をまったく覚えてないなんて可笑しいだろうから。
「母さん、ちょっと出かけてくるね」
「暗くなる前には戻ってくるのよ~。行ってらっしゃい」
「行ってきまーす」
キッチンを早足で出て行き、俺は外に出た。六月に入っているからか、外は思っていたよりも暑かった。
初めに、並盛中学校へ向かう。ここ十年ほど行っていないから、記憶を頼りに歩いていく。
俺がこの時代にすべきことは何か。俺は考えてみた。時おり電柱に頭をぶつけそうになりながら、俺は道路を歩いていった。
一度頭をぶつけて、やっと着いた並中のある部屋には電気がついていた。職員室でもなく、校長室でも職員玄関でもない一部屋。きっと、雲雀さんが率いる風紀委員会だろう。
俺は自分の記憶を掘り出し、下駄箱から上履きを取り出した。久しぶりに履く上履きに懐かしさを感じた。おじさん臭いとか誰も言わないよな、これでもまだ二十九なんだから。心の中で呟いた。
学校内を歩いていると、学ランを着た学生に声をかけられた。たぶん、いや絶対に風紀委員だろうと思い振り返る。声をかけてきた生徒は草壁さんだった。
「その部屋は風紀委員室だ、風紀委員長に何のようだ?」
「えっ!? ここ、風紀委員室だったんですか!? 知らなかった……」
違和感は無いだろうか。少しばかり不安がよぎる。
「……そうか、次から気をつけろ」
草壁さんが一瞬驚いたように見えた。そんな時――
「君たち、僕の部屋の前で何してるの……群れてるようなら」
扉を開けて出てきたのは雲雀さんだった。雲雀さんを見るなり草壁さんは顔を青くし、一歩下がる。
「咬み殺すよ」
雲雀さんは隠してあったトンファーを取り出し、俺たちの目の前で構えた。まだまだ隙だらけの構えだった。懐かしい。
「おい、何をボーッとしているんだ!」
懐かしい。懐かしい。そうだ、俺は。ボクは。
――彼らを裏社会に巻き込まないために、時間を戻ったんだ。
ボクがそう考えていると、上から雲雀さんのトンファーが降ってくる。ボクは無意識に近い意識でトンファーを避ける。身体が若干動かしにくいのはこれからのトレーニングで何とかなるだろう。
「へぇ、ぼーっとしてる癖によく避けられたね。でも、これなら?」
先ほどよりも少し早い速度で雲雀さんはトンファーを振り回す。それでも、やっぱり一般人というべきか隙が結構あった。ボクが意識して避ければ簡単に避けられるだろう。
「すみません、ボクこれから用事があるので次時間があるときにまた」
ボクはその場から駆け足で逃げた。ボクは、流石に校内で喧嘩する気にはなれないから。
雲雀さんが追いかけてきていたけど、それでもボクは逃げ続けた。
またって言ってしまったけど、やはりもう関わらない方が良いのかもしれない。ボクと一緒にいると、マフィアになってしまう道は避けられないものになってしまうと思うから。