全ては「ボク」の仲間の為に   作:Colore

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厄介な悪魔

 僕は急いで並盛を周った。公園の時計では、もうとっくに六時を回り辺りは薄暗くなっていた。

 慣れない身体はなかなか動かし辛い物で、家に着く頃は息が荒くなっていた。疲れた身体でドアを開ける。今日はもう、晩御飯は要らない。疲れすぎて、食べる気が起きない。

「お帰りなさい。遅かったじゃないの! 今日は私特製のカレーライスなんだから、冷めない内にさっさと食べちゃいなさい」

 前言撤回。僕は急いで顔と手を洗って嗽をした。母さんのカレー。久しぶりの母さんのご飯。楽しみで、身体の疲れなんかすっかり忘れていた。さっきまでの睡魔も、今はもう襲ってきていなかった。

「遅くなってゴメン。それじゃ、頂きます!」

「あら、ツナ君頭でも打ったの?」

 一口目を飲み込んだ時、母さんが心配そうに僕に言った。飲み込んだ後でよかった。飲み込んでしまう前だったら、カレーを噴出してしまっていたに違いない。

「そんなこと無いよ! 何言ってるんだよ母さん」

 母さんは心配そうに、ずっと僕を見て食べていた。この頃の僕、一体どんな接し方していたんだろうか。

 久しぶりの母さんのカレーライスは中辛で、お肉が柔らかくて野菜がたっぷりで、じゃが芋は崩れ過ぎず硬すぎず、人参は柔らかく桜形、アスパラガスのほのかな苦味の中の甘さ、盛り付けのブロッコリーのさっぱりとした味、ご飯にピッタリな優しい味のルーにふっくらしっとりとした柔らかい炊き立てご飯。

「ご馳走様でした」

 今日はぐっすり寝られる気がした。

 

 ***

 

――ピピピピ、ピピピピ。

 目覚ましの音で、僕は目を覚ます。

 窓から見える電線には雀が止まっていて、可愛らしい鳴き声を爽やかな朝に響かせた。

 現在の時刻は六時。並中の登校時間は八時十分だから、二時間前後くらいの時間はあった。今日から少しでも体力をつけなければいけないと、僕はジャージに身を包んだ。

 一階へ下りてみると、キッチンから良い匂いが流れてくる。母さんはこんな時間から僕のお弁当を作ってくれていたんだっけな。感謝感謝。

「ツッ君、おはよう。今日は早いわね!」

 驚きながらも母さんは笑顔で挨拶をしてくれる。笑顔が明るくて、ボスになって合う機会が減っていた僕には眩しい笑顔だった。

「そうかな。今から、ちょっとその辺走って来るから」

「あら、本当に珍しいわね。何かあったの?」

「何にも無いよ」

 そう告げて、僕は靴を履いた。登下校用の靴ではなく、体育用のスポーツスニーカー。

 キッチンに聞こえるように、少し大きめの声で言った。母さんも気分よさげな声で返事をくれた。

 家の周りをビルドアップで十五周。今はこれが丁度良い。

 汗を垂らして家に帰ったのは、七時ぴったりの時だった。母さんが作ってくれた朝食を食べて、仕度を始める。今日の朝ごはんは昨夜のカレーの残りとヨーグルトだった。一晩置いたらまた美味しい。

 六時から作ってくれた弁当を持って、僕は元気に家を出た。張り切って家を出たはいいけど、学校には行かないけれど。

 今日はリボーンが来る日だから。僕は気配を限りなくゼロに近くして息を潜めていた。

 大体一時を回った時、ゆっくりと歩くスーツの赤ん坊の姿があった。リボーンである。レオンを帽子に乗せて歩くリボーンは、やはり十五年前の姿だった。赤ん坊姿で歩くリボーンはとても懐かしい。

 僕がボスになって五年経ったくらいに、リボーンはヴェルデの開発した薬によって、また大人の姿を取り戻したのである。子供のリボーンはもう見れなかったのだから。

 リボーンは僕の家の前に来ると、鞄の中から一枚のチラシを取り出した。母さんがあの時持っていた家庭教師のチラシである。

 僕は気配を戻し、家庭教師のチラシをポストから取り出した。そして、引き裂いた。

「てめえ、俺のチラシに何すんだ」

 リボーンはコンクリートの塀の上に立つと、僕の頭に銃を向けた。リボーン愛用のレオンの銃で。

「こんな物は要らないからね。僕に家庭教師なんて必要ない。リボーンなんて必要ない。僕は一般平均近くの成績を取る一般の生徒になるんだから」

 銃で怯まない僕を見て、リボーンは一度考える。それはそうだ。かするかも知れないが、本気を出していないリボーンの弾なら僕は避けられる。もっとも、かするのは身体が付いて行かない所為だからであって、ボスであった頃の僕なら本気を出さないリボーンは余裕である。

「てめえからは殺気を感じる。何がそんなに嫌なんだ?」

「あなたが僕に近寄ることが嫌。早くお国に帰って欲しいね」

 相変わらず銃を下ろさないリボーンに、どうやら殺気を放っていたらしい。無闇に殺気を放つのは僕のやることじゃない。気をつけないと。

「何を知ってるかわからねぇが、どうやらてめえはツナってヤツらしいな。情報とは結構ちげぇが……これから俺が立派なボスにしてやるぞ」

「結構。あなたが僕に教える事なんて、もう一切無い。帰ってよ」

 結局リボーンはチラシを入れた後、僕に向かってニィと笑った後消えてしまった。読心術なんて心得ていないから、僕はリボーンが何を企んでいるかはわからない。

 世界最強のヒットマンの肩書きを持つアイツは、本当に何を考えているかわからない。だから、厄介なんだ。

 母さんが玄関から出てこようとしていたから、僕はその場から立ち去った。二時を過ぎるまで、僕は公園で時間を潰そうと思う。

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