竜牧場へようこそ!   作:かりん2022

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竜牧場へようこそ!

 俺には、恐れ多くも騎士団団長の友達、ランドルフがいる。

 森の中で友人と遊んでいて魔物に襲われた時に、助けてくれたのだ。

 ランドルフは、俺なんかに呼び捨てを許し、話すのが楽しいと、整理整頓が苦手だからいてくれて助かると言ってくれる。

 ランドルフは幼い頃の病気が原因で、子種がないのだという。

 ランドルフは強くて、格好良くて、俺のヒーローで、子供好きだ。

 話もあって、竜の牧場とかレースの話で盛り上がった。

 ランドルフは、本当にいい人。

 報いてあげたいと思っていた。

 

「ランドルフ! 今日は内緒のお話があるんだ。いい?」

「おお、ルイ。何かな?」

 

 部屋に呼ばれた俺は、ぐっと出されたジュースを飲み干し、言った。

 

「ランドルフ。実は俺は魔女なんだ。魔女として、助けられたお礼はしないといけない。ランドルフは、子を授かるに相応しい人物だ。だから、ランドルフの願いを叶えよう。ただし、俺の事は誰にも言ってはいけない」

「なるほど。わかった、誰にも言わないことにしよう」

 

 真面目な顔で頷くランドルフ。俺は、小さな小袋を渡した。

 

「その中に入っている飴を一粒食べて一ヶ月したら、男の精を受け入れろ。更に一ヶ月後、腹痛と排泄感がしたら、トイレでしてはいけない。卵が生まれるから。卵は両親の魔石を側に置き、一日一回向きを変えて大切に育てるがいい。半年で孵るだろう。生まれは人と違えど、間違いなくランドルフの子が孵る。魔女の得意とする大魔法だ」

「それは凄いな」

「デタラメだったら殺していい。お前の渡した毒を飲むと約束する。ランドルフにもリスクが有るからな」

「……ふむ」

 

 小袋に入った飴を一粒噛み砕く。まさか、得体のしれない薬をその場で食べるなんて!

 

「美味しいな。ありがとう」

「ランドルフ……君の信頼に応えたいと思う。君の初子には魔女の祝福を与えよう。この石を卵が生まれたら握ると良い」

「それはありがたい」

 

 そのあと、騎士団のお片付けを頑張って帰った。

 一週間後、ランドルフ率いる騎士団は仕事を終えて帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王都に帰った私は、仕事に忙殺されながらも子供の戯言を思い出していた。

 大人ぶった可愛い子供だった。

 

 ランドルフにはセフレがいる。

 同じく騎士団の隊長ミレアスで、大貴族の三男で小生意気で才能あふれる活発な青年だ。

 ランドルフは子供にはとても弱いのだ。若いを通り越して子供っぽい言動と世間知らずっぷりに、ついつい世話を焼いていたら、下の世話までさせられていたのだが、なんだかんだで自分でもどうかと思うくらいメロついていた。

 

 久しぶりに時間が出来て、子供の戯言を信じたわけではないが、なんとなくセフレのミレアスと交わった。

 

「できちゃう」なんて言って、爆笑されてしまったのは黒歴史だ。

 溢れるほどにされてしまった。

 

 まあ、本当にできちゃったのだが。

 なるほど。入っちゃいけない所に入った感触は、あの飴の効果か。

 

 一月後の朝、腹痛と共にトイレに行くまもなく寝室で生んでしまった、カラフルな卵三つに、ランドルフは絶句していた。

 あの子供はなんと言っていたか。

 一日一回、卵の向きを変えて。両親の魔石。ああ、ミレアスの魔石なら手に入れるのは容易だ。良かった。違うそうじゃない。

 

 鎮座した卵に、恐れおののく。

 そうだ、石!

 

 石を握りつぶさんばかりに握ると、子供が現れた。

 

「ルイ!」

「おお、ランドルフ! 出産おめでとう。って三つ!? 二つならまだわかるが、三つ!? どんだけエッチしたの!?」

「すまん、魔女殿。子供が出来ると信じてなくて、軽率な真似をした。子供達の育て方を詳しく教えて欲しい」

 

 私は深く頭を下げた。

 

「うむ! 当人が魔力を与えるのもいいが、暇がないだろ? 卵にはひたすら魔力か魔石を与え、たまに卵の向きをそっと変えてやる。暑すぎす、寒すぎないようにする。半年後から半年間、乳が出るようになるから、サラシをすること。授乳は一回はしておくこと。こんなものか。山羊の乳や牛の乳でもいいけど、乳母は用意したほうがいいかもね」

「わかった」

 

 乳が。乳が出るのか。半ば絶望しながらも頷く。

 

「それと、祝福についてだけど」

「ああ」

「祝福の儀式は、三つまでしか受けられない。それに、どうしたって初めの祝福が最も加護を得やすくなる。俺の祝福を本当に受けても良いのか?」

「三人共、魔女の祝福が一番がいい。祝福のおすすめはあるだろうか」

「わかった。他の祝福も一週間の内にしてしまった方が良いよ。祝福の効果リストはこれ」

 

 そして、ルイは分厚い本を横に置き、卵にキスをする。

 卵に紋様が鮮やかな黒で現れる。その文様は、道化神様とも邪神とも呼ばれるものの紋様だった。邪神云々よりも、まず、神様が目の前にいて、魔物に襲われて泣いていたことに衝撃を受ける。

 

「これはお祝い……なのだが」

 

 ルイはなんとも言えない顔をして、更に鞄を渡してきた。卵が沢山入った籠も二つ寄越された。そのうちの二つずつは魔女の祝福付きだ。鶉と鶏の卵だろうか?

 

「ほ、ほら。竜の牧場を作りたいと願っていただろう? レースをするのだと盛り上がっていたではないか。だから、その為の竜の卵だ。子供が産まれて二月後に孵るようにしてある。全ての神殿で卵を二つずつ祝福させよ。二つは何の祝福も与えないこと。後は出来るだけいろんな属性を混ぜた屑魔石で包め。子供と竜の物は鞄の中に揃えてある。作り方も育て方も鞄に入ってる。だから、その、その……牧場作るよね? レースするよね? じ、自慢しちゃって……後戻りできなくて……」

 

 消え入りそうな声。スケールはデカイが、子供なのだと感じた。邪悪さなど欠片もない。

 

「ありがとう。こんなに良くしてもらって……。とても私の気がすまない。返礼品を贈らせてもらいたい。レースと牧場、是非させて欲しい。それと、とても全て内密にするのは無理かと思うが……」

「そうか! してくれるか! いや、無理なら無理でいい。どうせ表に出ることになろうしな。それで、返礼品だが、図々しいがこちらから指定させてもらいたい。指示もある。助けてもらった上にこんなに我儘を言ってしまって、却ってすまなく思っているぐらいだから、本当に気にしないでくれ。それと、こちらも準備があるゆえ、時が来るまで出来るだけ、神や魔女の関与を伏せて欲しい。良いだろうか」

「わかった。必ず用意しよう。ところで、神と魔女の違いはなんなのだろうか?」

「比べるのもおこがましい、俺はただの転生者に過ぎない。ただ、それ故人間に干渉できるし、神とも仲良くしていただいている。そうだな、神を楽しませる道化、といった所か。竜は元々、俺が提案して、皆で作ったんだ。……ちょ、頭を上げてくれ!! 竜をここまで育てたのはこの国の功績だ。ただ……そう、ただちょっとこの国には申し訳ないことになるのだが……」

「申し訳ないこと、とは」

「帝国は前回の竜レースでぶっちぎりでトップだ。しかし、此度の竜レースでも、名乗りを上げた全ての国に竜の育成をさせる。場合によってはトップも突き崩されるだろう。その代わり、開催地は帝国だったり、色々有利になるように差配しておいたが」

「格別の配慮を賜り、ありがとうございます。しかし、そうなるとかなり大規模なイベントになるのでは」

「そうなんだよ、皆、久しぶりのイベントだ、聖戦だって大喜びで」

「聖戦」

 

 大変なことになった。神話の領域ではないか。

 

「とにかく、こうなれば絶対に成功させたい。といってもやると決まったばかりだし、竜の育成は交配だったり餌だったり祝福だったり時間がかかる。1000年は先になると思うから、そのつもりで一族で準備してくれればいい」

「1000年」

「そういう事で、よろしく頼む」

 

 そして、ルイは消えていった。

 そうか、魔女か。道化神様か。本物か。

 

 鞄の中を確認すると、金属やら布やらが続々と出てきた。神々の道具らしく、小さな鞄に沢山の物が入っている。

 これは大変な贈り物とお役目をもらってしまった。お返しが大変だ。リスト+αでお返ししたほうが良いだろう。いや、急務は祝福だ。なにせ時間制限がある。

 

「神々の祝福の手引」という貰った本を開く。

 基本は、自分の信じる神様の祝福をお願いするのがベストらしい。

 別枠で魔女とあったが、やはり道化神様ではないか。そうか。神からの信託か。

 

 本には、祝福の効果と祝福の儀式について載っていた。

 一般信徒と神父の祝福の内容の差など、色々書かれている。

 ……あの技は私の鍛錬の成果の技ではなく、戦神様の加護だったのか。今度しっかり祈りを捧げておこう。

 あれ、我が国が信仰する竜神様がないが……。それもそうか。道化神様が用意したと言っていたものな。うむ、私は何も見ていない。

 ドアがノックされる。

 

「ランドルフ様。朝食のお時間でございます」

「今行こう」

 

 朝食を終えて、本を持って王宮に出仕する。

 ミレアスと会ったので、神は何を信じるか聞いてみた。

 

「はあ? 何、信仰に目覚めたの」

「ああ、中々面白いぞ。ミレアスは、自分の子供が出来たとして、神々に一つだけ祝福を願うとしたらどれが良い? ただし、竜神様は除く。やはり戦神様か魔神様か」

 

 パラリ、と捲ってページを見せる。

 ミレアスは祝福一覧を見て、答える。

 

「なんか、変わった本だね。後で貸してよ」

「それは良いが、何が良い?」

「この一覧表から見るなら、芸術の神か運命の神かな。センスや運は鍛えてもどうにもならないからね。商人の加護の好かれるってのも面白いけど。また遠征に行かないといけなくてね。道中読みたいから、早めに貸してよ」

 

 なるほど。ちょうど三柱だ。それぞれにつけよう。戦神様の加護も外せないな。

 各神殿にアポを取り、寄付をして本を見せてその通りに祝福の儀式をしてもらった。

 卵に紋章が出たらどの神官も驚き、卵をもらえないかお願いされたが謹んで辞退する。どの神殿にも改めて祈りを捧げ、卵達に持たせる聖印を買った。

 今まで、祈りはしつつも、本当に神様がいてあからさまな加護をくれるなど思ってもいなかった。これからはきちんと神様を大事にしよう。

 各神殿で本について強い興味を持たれ、写本を送ると約束したので写本師を雇った。

 祝福をしてしまえば、しばし祝福の本に要はない。存分に書き写してくれ。

 

 後は、魔女への貢物と乳母を雇うのと、山羊の乳を手配か。魔石も用意しないと。

 おっと、子供が三人なのだから、誰が家長とするかも考えたほうが良いのか? 血みどろの闘いになったら嫌だな。牧場には経営が必要。商人の加護を得た子を家長とするか。

 

 メイド達には卵の管理と本の読み聞かせをさせよう。胎教? 卵教は早いに越したことはあるまい。竜騎士の大冒険などどうだろう。育児休暇も取らねばな。

 

 殿下に牧場を作りたいので休暇がほしいと手紙を書いた。

 

 子供用品も買わねばな。乳母とヤギはまだもう少し後で構わぬだろう。鍛冶師と仕立て屋を雇わねばならぬのか……。

 欲しい物リストに領地が入っているのが正直参ったが、神の望みだ、仕方あるまい。

 いくつか候補地があるが、その中には何もない辺境もある。辺境ならば、今までの功績を盾に望めばなんとかなりそうだった。

 三ヶ月ほど忙しさの合間を縫ってやるべきことを進めていると、殿下に呼び出しを受けた。

 

「ランドルフ。最近、信仰に目覚めたようだな」

「はっ ようやく見守ってくださる神様のありがたさに気づいた次第です」

「活発に動いているようだが、何を考えている?」

「最近、魔物から助けたお礼に卵をもらいまして、手紙にも書きましたが、ダチョウや鶏や鶉の牧場を作ってみようかと思っております」

「……本気か?」

「ええ、まあ。陛下にも三代目辺りの良い子を献上いたします」

「そうか……。本当に良いのか?」

「我儘をお認めいただければと思います」

 

 深々と頭を下げる。

 

 陛下はお許しくださった。

 ヤギの夫婦を二組、後は道中の食料を積み、持っていた財産は殆ど牧場の準備と神々への献上品に注ぎ込んだ。もしもの時の為、少しは残したが。

 着いてくる者は、厳選した。

 運良く、赤子を正妻に奪われたというメイドのマリアを雇うことが出来た。

 それと、陛下の紹介で昔から仕えてくれているリリア、忠誠心の高いティアナの三人のメイドを連れ、どうしても着いてくると言った元部下のテリー、ミレアスの実家に仕えていて調教師の家系だが(ミレアスの実家は竜の牧場を営んでいる)ミレアスにくっついて出てきたライアンを連れて、六人で出た。

 

「友人と牧場を作る約束をしたとのことですが、建物などは……」

「なんとかなる」

「この辺りは魔物が強いですが……」

「友人が候補地に出した以上、なんとかなるのだと思う」

 

 心配そうな一行を宥めつつ、目的地につく。

 そして、一ヶ月して、目的地についた。

 立派な牧場がそこに建っていて、子供が手を振っていた。

 

「ルイ!」

「ランドルフ! 頑張って建てたぞ!」

「ルイが建てたのか? 凄いな!」

「まあね、久々に本気出した」

 

 トロールが木材を持って歩いてきたので、テリーとライアンが緊張する。

 

「ああ、余った木材は適当な所に置け。それと、ここに不審者を近づけるなよ」

 

 ルイが命じると、トロールはコクコクと頷いた。

 さすがだな。あの時は何故襲われていたのだろう?

 

「ま、魔物を操るのですか……? その子供は一体」

「ああ、この方の詮索はしないように。では、荷物を配置しようか」

「手伝う!」

「ありがとう、ルイ。これがルイへの贈り物の入った鞄だ」

「ああ。ありがとう」

 

 ヤギを牧場に入れ、鞄から次々と荷物を取り出す。

 

「その鞄、もしやと思いましたがマジックアイテムでしたか」

 

 ライアンが感心した声を上げる。

 養鶏場の設備もちゃんとあり、買っておいた鶏の卵をそこにセットする。

 

 家の中には、しっかりと我が子と竜の卵を安置した。

 

「では、また様子を見に来る。頑張れよ」

「心得た」

 

 ルイを見送り、二週間ほどはのんびり畑を作る穏やかな日々が続いた。

 といっても、候補地は既に耕されていたので、種を植えて水をやるだけである。

 その後、続々と鶉の卵から孵り始め、更に一週間して鶏の卵が孵りだすと、俄に雛たちの世話で忙しくなった。

 一ヶ月もあっという間に過ぎて、大きな卵にヒビが入っているとマリアに聞いてようやく時が経ったのに気づくほどだった。奇しくも、それはダチョウの卵の孵化と同時だった。

 

「ダチョウの卵が孵り始めましたよ。でも、隊長が別で育てている鶏と鶉は全然孵りませんね」

「おお! あ、あれはまた別なんだ。後二ヶ月は孵化に掛かる」

「そうなのですか」

「この卵は特別だから私が見る。他の卵を頼む。マリアだけ残ってくれ」

「その卵、最初は鶏くらいだったのに大きくなったんですよね。ついに孵るんですか」

 

ティアナは興味深そうにしていたが、ダチョウの卵の世話に行った。

 

ピシッピシッとヒビが入り、中から赤ん坊の声が聞こえる。

 

「赤ちゃん!」

 

 マリアが飛びかかって卵をバリバリ割っていく。

 

「あっちょっ」

「私の赤ちゃん!」

 

 マリアがしっかりと赤子を抱きしめる。

 

「ええ!? まあいいか。マリア。乳母をお願い事していいか」

「はい!」

 

 マリアが泣きながら何度も頷き、私は泣く子に服を着せて柔らかな布を敷いた籠に入れて行った。

 

「ふええ」

「あうー」

「だあ!」

 

「名前は、ラック、ソル、アートだ!」

 

 用意しておいた名前カードを籠にいれる。

 そうだろうなと思ったが、全員男か。

 ラックとアートをマリアに任せ、ソルを抱き上げる。

 

 念入りに胸を洗って、恐る恐る乳首を近付けた。うむ、吸ってる吸ってる。な、なんか変な感じだな……。

 

「隊長! マリアが卵から子供が産まれたってうわあ!?」

「うひゃあっ!」

「すっすみません! た、隊長は女だった……!?」

「そんなわけあるか。男でも子を産める飴を頂いただけだ。ただし卵で産まれるが」

「そんな飴あるんですか。というか父親誰っすか。その子が隊長そっくりで向こうの子供らの顔が隊長と似てないってことはそういうことっすよね?」

「この子達の親は私で、マリアは乳母だ。それでいい」

「いいんすかね」

「良くないですよ! ミレアス様に報告しないと!」

「えっ父親ミレアス様ですか?!」

 

 ライアンが割って入り、テリーが驚愕する。

 

「好きにしろ。絶対信じられないだろうからな」

 

 悪い顔をして言ってみれば、ライアンはぐっと黙った。

 

 私は子供達を見る。ソルは私に似ている。アートとラックはミレアスそっくりだ。

 ラックは運命神、ソルは商売神、アートは芸術神の加護を得た子だ。きっとよいこに育つ。

 

「あの卵も特別なんですか? まさか子供が産まれるなんて言いませんよね?」

「ルイから任された特別な雛が産まれる」

 

 重々しく頷けば、メイドと騎士は戸惑った。

 しかし私の余裕は三時間も持たなかった。

 

 ウズラにニワトリにダチョウにヤギに畑の世話と併用して三人の赤ちゃんの子育てである。大変なんて物ではなかった。

 

 

 それから、ラック、ソル、アートの三人の子供に私とメイドと乳母と騎士はてんてこ舞いである。

 あっという間に二ヶ月立って、私達はテレパシーに叩き起こされた。

 

「なんだなんだ!」

「テレパシー!?」

「お腹が空いて死にそうですぅぅ!」

 

 飯が欲しいという強烈なテレパシーだ。

 しかも、小竜と騎竜両方だ。卵いくつあったっけ……。

 

 私は鞄に用意していた食料をたっぷり与えた。

 ようやく眠ってくれた三人の赤子が、またわぁわぁと泣き出す。ああ……。

 

「竜!? 新種の竜!?」

「調教期待してるからな」

 

 ライアンが半狂乱になっているのに追い討ちを掛ける。

 それから5日。

 竜の赤ちゃんたちの追加は、恐るべき負担を掛けてきた。

 だってテレパシーで1匹の不満が全体に普及する。

 私は泣き出した。メイドも泣き出した。テリーは早々に鳥の世話に逃げている。いや、それだって大変なのだが。

 

「何、ドルフ泣いてんの? ウケる」

「ミレアス!! 何故ここに。鍵は!?」

 

 背後に壊れたドアがあって、私は驚いた。

 小竜が開いたドアに向かって自由への大脱走をする。

 

「うおっ 本当に竜だ! 小さいけど!」

 

 そう言いながら、見知った騎士がひょいとつまみ上げる。

 

「ドルフ黒狼騎士団隊長、とと、元隊長、や、ドルフ様? よければ手伝いましょうか?」

「助かる……洗濯も掃除も食事の支度もいつまでも終わらないんだ……」

 

 まさしく地獄に仏である。私は正直子育てを舐めていた。

 

「これが竜育ての本で、これが食料品の入った鞄だ。私は寝る……」

 

 私とメイドと乳母とテリーとライアン、爆睡である。

 終わらない育児は、ある意味戦場かと思うほどきつかった。

 

 

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