どうやら僕は、将来婚約者に殺されるようです   作:匿名

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第一話 はじめまして

 

 

 

 

 

 突然だが、僕は生まれつき未来を見ることができる。

 

 例えば明日の天気、このあと出会う人、アイスの当たり棒、危ない道、躓いて転ぶ場所etc……

 こんな感じで良いことは見た通りに、悪いことは見たものとは違う行動を取れば、全て自分の都合の良い未来になる。

 ちなみに、この能力を駆使して何度か国難を回避し続けた過去がある。おかげで国民から『神童』だなんて言われているが、未来視がすごいだけなのであんまり嬉しくない。

 

 このように未来視はすごく便利な能力のように思えるかもしれないが、必ずしもそうとは限らない。

 

 というのも、この未来視は突発的に起こる。つまり、いつ、どのタイミングで、どんな未来を視るのかは、全く分からないのだ。

 タイミングが悪いと見たくもない未来を見てしまうことがある。その度に思わず大袈裟な反応をしてしまい、周囲から「なんだコイツ?」と言いたげな目を頂戴することになる。

 それに、前に読みたかった絵本のネタバレをくらったときもあったし。

 

 つまり、強すぎる力にはそれ相応の代償を伴うっていうこと。どんなご都合的なパワーを持っていても、全てが良いことだらけとは限らないってわけ。

 

 ん?どうして今更こんなこと語っているのかだって?

 それはね─────

 

 

 

 【血染めのエルサに馬乗りされて首を絞められる光景】

 

 

 

 たった今まさに、将来、目の前にいる婚約者に殺されかけてる未来が見えてしまったからだッ!!

 誰か助けて。

 

 

 

 

 

❄︎ ❄︎

 

 

 

 

 

 ふーっ、ふーっ、まずは落ち着こう。

 

 今日はどんな日だ?───今日はアレンデール王国で婚約者に会いに行く日だ。

 

 今、何をしている?───今は謁見の間で、初めてエルサ王女とご対面したばかりだ。

 

 では、次に何をすべきか分かるか?───挨拶!!

 

 「お初にお目にかかります、エルサ王女。僕はトロムセ王国第四王子、フレムティードと申します。どうかフレムとお呼び下さい」

 「は、初めまして……エルサ、です……」

 

 ……何故か怖がられているが、不審がられてはいない。なんとか乗り切ったようだ。

 

 「遠路遥々よく来てくれた。ようこそアレンデール王国へ!これから君と家族になれることを嬉しく思う」

 「歓迎するわ、フレム」

 「ありがとうございます」

 

 追撃を喰らわすかの如く、対面にいる二人の男女── おそらくアグナル国王とイドゥーナ妃──から棘も含みもない挨拶を繰り出されるも、難なく捌く。

 

 「オホンッ、どうやらアレンデール王国のご陛下はこれからの義息子に夢中で友の姿を認識できていないらしい。こうして挨拶もないとは」

 「あぁ、そんなことないさエルモンド。本当に久しぶりだ。顔を合わせるのは何年振りか」

 「私の記憶が正しければお前の結婚式以来だ。仲睦まじそうで安心したよ」

 「そりゃあもちろん」

 

 男同士の熱いハグをかわす片割れが僕の父親であるトロムセ王、またの名をエルモンド。

 なんでもアレンデール国王とは旧知の仲らい。おそらく、今回の縁談もその関係性が非常に強く働いたに違いない。

 賢王と名高いあのアグナル国王とうちの父上が仲良しだなんて意外にも意外だが、この際もはやどうでもいいことだ。

 

 「あとはお若いので〜」といったノリで急遽二人だけにさせられ──多分、再会とこれからのことを話し合うのだろう──エルサ王女とあてもなく城の廊下を歩いて回る。

 ……エルサ王女はスッゴイ困った顔しているけど、今の僕にはすごく都合が良い。改めて未来視の内容を精査しよう。

 

 僕が見た未来は……彼女に殺される未来だった。

 ただ、少し気になったのは、未来視で見えた彼女の容姿。背丈、容貌共に今とはかけ離れた姿だった。あれは確実に成人以降の姿だ。

 今の彼女は僕と同じ四歳。つまり少なくとも十七年後に、彼女に殺される未来が起こるということだ。

 ……まさかだろう。予想だにしていなかった。これまで小さな悪いことは何度も見てきたが、ここまで前代未聞で遠い未来は初めて見た。

 原因はなんだ?……ダメだ、あまりに遠い未来すぎて、とてもではないが断定できない。

 

 しかし、悲観するにはまだ早い。僕がこれまで成し遂げてきたように、未来は変えられる。

 今は……少しでも彼女を知ることだ。

 

 「エルサ王女、今日は───あれ?」

 

 考えが纏まったので、改めて隣で一緒に歩いているはずのエルサ王女に挨拶をしようとするも、その姿はどこにもなく、赤い絨毯だけが視界をめいいっぱい埋め尽くした。どこ行った?

 

 

 

 

 

 城中を駆け回っても見つからず、アレンデール国王に報せるべく謁見の間に飛び込んだものの、両陛下を盾にするように彼らの背後へ隠れていたエルサ王女の姿を見た途端、大きくため息を吐いた。

 これはまた……前途多難だなぁ。

 

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