紅に吠える傭兵   作:青野

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弱くなった俺

 

 

 

 あれから一週間、女子が俺を見る目が少しだけ柔らかくなって来た。それでも半分程度の女子は俺のことをあまりよく思っていないらしい。

 というのも自分がそう思っているだけなのだが、態度や視線だけではそう感じてしまう。

 

「おお、おはよう里穂」

「おう」

 

 一組の教室に入ると一夏が朝の挨拶をしてきたので、俺は軽く返して自分の席がある後ろへと歩いていく。

 ふと紅蓮の待機状態の首輪に触った。

 正直、前回の敗北は俺にとって大きな衝撃を与えている。今まで負けを知らなかったこともあったのだが、これでは俺は篠ノ之束の依頼を遂行することは出来ない。

 どうしたら・・強くなれるんだ?

 

 俺はこの平和な世界に来て挫折を感じ始めた。

 

 

 

 

 

「軽くな、軽く。まだ、本調子じゃないんだから」

『分かっている。それではいかせてもらう!』

 

 二百メートル先には紅椿を身にまとった箒がいた。放課後、俺は箒と軽い手合わせということで、近接戦をしていた。

 紅蓮の近接武器は一七式長刀『五月雨』。のみである。今のところは。もう一つ、篠ノ之束に作ったもらった近接武器があるのだが、まだ慣れていないのでこういう実戦形式の時は使わないでいる。

 ガンッ!

 

「おおっ!」

「はぁっ!」

 

 対する箒はどうやら二刀流のようで、連続攻撃が凄まじく、攻めるに攻められない状況が続いた。

 仕方なく、俺は箒の右手の刀を止めるとともに小さくジャンプして右蹴りを食らわすが、刀でガードされてしまう。それでも衝撃全てを流せる訳ではなかったようで、箒は少しだけ後ろに後退してしまった。

 

「ふぅ・・・やはりその蹴りは凄いな」

「まぁ、得意分野だからな」

 

 ACの場合はブレード持って蹴りをいれる。そして、斬る。これが一番敵を倒すのに効率的な方法だと俺は思っている。それはISでも代わりはなく、射撃武器より近接武器の方が攻撃力は高いが、その分リスクがある。

 人間相手になら銃一つで十分なんだがな・・・・。

 

『お、おわぁぁぁぁぁぁっ!』

『一夏君!もっと態勢を維持して!そして、そこから・・・』

 

 アリーナの中心では一夏は生徒会長の更識楯無が一夏に色々とレクチャーしている。その為、俺たちはアリーナの端の方でこうして斬り合いをしているのだ。

 

「それにしても、里穂は姉さんのところで何か特別の訓練をしたのか?」

「うむ・・・別段これといって特殊なことはしていない。まぁ、かなり過酷だったがな」

 

 ニュースでは俺は発見されたが裏にバックがいないので取り敢えず企業側に匿ってもらい、一人目の一夏のことが落ち着いてきたのでやっと発表してIS学園に入学しましたよということになっている。それが、一夏や他の生徒たちの知り得る情報。

 織斑千冬、篠ノ之箒のこの二人には俺は篠ノ之束が送って来た護衛ということになっている。

 だから、箒が俺と篠ノ之束の関係を知っていてもなんらおかしくはない。

 

「里穂は私と一夏の護衛に来たのだろう?」

「ああ・・そうだが?」

「・・・そのだな。正直・・・あまり・・」

 

 ああ、なんとなくだが箒の言いたいことは分かった。俺は弱いのだ。あの乱入してきたISと戦って以降、どうにも俺は本調子が出せないでいた。

 負けたことがまだ足を引っ張っているのか分からない。

 

 福音の時は篠ノ之束の用意した戦場だと思い、このまま海に落ちても半分ぐらい大丈夫なんじゃないかと思っていた。

 

 だからこそ、なんの保証もない。三年ぶりの戦場で俺は負けてしまった。死んでいたかもしれない。

 

「言うなよ、箒。惨めになっちゃうだろ?」

「里穂・・・」

「ほら、一夏の野郎がヘトヘトだ。迎えに行って来い。俺はもうあがるから」

「・・・・・・」

 

 箒は何も言わずヘトヘトになりながら倒れている一夏の方へ向かっていった。

 

 傭兵の頃は何度も死にかけた。それこそ数えられないくらい。だが、それは最初から死を覚悟してのことだったので、どんな死地へももう一歩踏み出すことが出来た。

 

 ・・・・。

 

「はぁ・・・・」

 

 考えても答えが出ないことに俺はため息を吐くと、大人しくピットに戻ろうとした。

 

『証明してみせろよ』

 

 そんな懐かしい声が俺に耳に響いた。

 振り返っても奴はいない。当然だ、俺がこの手で殺したんだから・・・そうだ、俺は違うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くぅぅ・・・いてて。きつかったぁぁ・・・」

「ふん、鼻の下伸ばしてやっているからだ」

 

 箒は一夏と一緒にアリーナから寮へと歩いていた。二人を後ろからオレンジの夕日が照らしている。

 

「まぁ、そう言うなよ。それよりも、里穂の奴は大丈夫なのか?」

 

 一夏は不意にそんなことを箒に聞いた。

 

「あ、ああ・・・そうだな。やはり、何か思いつめたような表情だった」

「だよな。最初に会った時よりも、何だか違う空気を感じるんだよな。同じ男としては仲良くしたいんだが・・・」

「まぁ、里穂には里穂の事情があるんだ」

「ん、そうだな」

 

 一夏はそう納得する。

 

「一夏!」

「は、はいっ!・・・って、いきなり大声で呼ぶなよ」

「す、すまない・・・そのだな。明日の昼は空いているだろうか?」

「明日?まぁ、予定はないけど」

「そ、そうか!」

 

 一夏のその言葉に箒は笑顔になった。

 

「なら、明日は里穂も誘って屋上で昼にしないか?お、お弁当を作ってくるのだが」

「お!いいな、それ。里穂からは俺が言っておくよ。いやぁ、箒の唐揚げは旨いからなぁ」

 

 一夏と箒はそう約束した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱ、箒が一夏に惚れているからヒロインっぽくねぇ・・・
けど、頑張ります。必ず惚れさせてやります。一夏から奪います。
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