「ふんっ!」
「おおっ!」
ボーデヴィッヒが突き出したナイフを横に避け、腕を掴む。しかし、即座に左足で蹴りを入れてきて、次に左パンチが俺の腹を襲った。
思わず腕を放してしまうが、それを好機と見たボーデヴィッヒがトドメを刺すべく飛びかかった。
後ろに倒れてしまうが、背中を地面につけた瞬間そのままボーデヴィッヒを蹴り上げて反対側へ飛ばす。
流石は軍人なのか、空中で上手く態勢を整えてキレイに地面に着地した。
「うむ、中々だな」
「うい」
差し出された手を掴んで俺は立ち上がる。時間は午後七時を過ぎていたが、それでも夕日が見えなくなるところで、まだ空はオレンジだった。
あの後、丁度出くわしたボーデヴィッヒとナイフを持った組手をしていた。
「うっし、そろそろ帰るか。悪いな、こんな時間まで付き合わせてしまって」
「いや、私も色々と勉強になった。男だと思っていたら中々やるではないか。誰か、師でもいたのか?」
「師か・・・うむ、それはよく分からん。何せ、施設でそういうのは習ったからな」
「だが、里穂は一夏と同じでISに触って半年も経っていないのだろう?それ以外はなんら変わらない一般男性だと私が得た情報には記されているのだが」
「・・・・まぁ、なんつーの。そこは内緒で頼むぜ」
「・・・そうだな。すまないな、変なことを聞いて」
「いや、いいさ。それじゃぁな。ボーデヴィッヒ」
と、俺は彼女に手を振って帰ろうとした時だった。
「待て」
「ん?」
「里穂、私のことは気軽にラウラと呼んでくれ。私たちは戦友なんだ」
「・・・それもそうだな。またな、ラウラ」
最後にそう言い、俺は先にアリーナをあとにした。
一人残ったラウラはこう呟いた。
「日下部里穂か・・・ふっ、中々面白い男だな」
「里穂、明日の昼って空いてるか?」
夕食中、一夏がそんなことを聞いてきた。無論、何か特別な予定が俺にある訳がない。
「んなものは野良犬に食わせてしまった」
「そ、そうなのか。だったら、明日は屋上で飯食わないか?」
「おいおい、わざわざ食堂から昼食持って行くのか?面倒だろ」
すると、一夏は笑って言った。
「大丈夫、そこは俺に任せとけ。四限目が終わったら屋上に集合ということで」
「まぁ、お前がそう言うのなら任せるよ」
「おお、任しとけ」
そう言って一夏は自分の胸を拳で叩く。
何を考えているのかサッパリ分からんが、兎に角今はこの唐揚げが熱いうちに食べてしまおう。
「もぐもぐ・・・」
「ジー・・・」
「なんだ?食事をしているところってのは、あんまりジロジロ見ても面白いことはないぞ?」
「いや、ホントに里穂って唐揚げ好きなんだなと思って」
「意外か?」
「むぅ、まぁ・・・意外と言えば意外だな」
ていうか、なんでそのことをお前が知っているんだよ。別に誰かに言った覚えは・・・ああ、箒か・・・・。
「ん?どうかしたのか?」
俺が急に立ち上がったことに一夏は疑問を持ったようだ。
「いや、先行くぞ」
「お、おい!」
一夏を待ってやるところだったが、俺は一足先に片付けて部屋に戻った。途中、箒とであったが何だか話す気にはなれなかった。
『もしもーーーし!束さんだよ!』
「はい、こちら里穂です。なんかあったんすか?」
部屋に戻るなりいきなり篠ノ之束から電話が来た。
『うん!うん!大発見だよ!』
あいつらのことで進展があったのか。
俺は彼女が放つ一言一句を注意して聞いた。
『早速だけど、あいつらの名前は財団っていうの』
「財団?」
『うん。そんで、あの黒いISの集団は世界各地で腕利きのISを襲撃しているんだって。もう、束さんビックリ仰天だよ!』
・・・・。
『それで、ついた名前が死神部隊って名前らしいよ』
「なるほど、ピッタリの名前だな」
『けど、問題なのは里穂君たちなんだよねぇ』
「俺たち?」
『うん、色々と分析したんだけど、どうやら里穂君たちはあいつらにロックオンされているっぽ』
「あー・・・それはなんとなく分かる気がする」
実際、あの五機のISと俺は戦ってきた。
『分かっている情報じゃぁ、死神部隊は三機。それで、その中の一人が無人機を二機持っているの。そして、もう一人。死神部隊のリーダーがいるんだけど、そいつはどの戦場にもいないんだって』
「分かった。ありがとう・・・俺も、いつ来ても対処出来るようもう一度ISを調整しておく」
『うんうん、準備は大切だよねぇ!けど、もう直ぐしたら学園祭だから、遊んで楽しまないと!』
「そういや、クラスでそんなことがあったな」
『あー!ダメだよ!ちゃんと話し合いには参加しないと!』
「・・・・・」
返す言葉もありません。
『まっ、兎に角頑張ってね!里穂君!』
「ああ・・・」
そこで彼女との通話を終了した。俺はベットに倒れると仰向けで天井をボーと眺めていた。
自分が想像していた以上に、俺は過去に囚われているのがよく分かった。
次の日、午前五時に目が覚めた俺は一人整備室まで来ていた。流石に早朝ということもあり、誰もいない。
紅蓮を展開して台座に置いてから俺は紅蓮のプログラムをもう一度洗い直してみた。
ISの知識なんぞ本物の整備士と比べれば疎いものだが、それでも三年間は篠ノ之束に教え込まれたので、ある程度の知識は持ち合わせている。
「はぁ・・・こいつを上手く扱えるのかな」
両腕に備え付けられている近接ブレード。昔愛用していた近接武器であり、篠ノ之束に再現してもらった武器だ。
今の俺に上手く使いこなせる自信があまりない。
しかし、死神部隊がいつ襲って来るのか分からない以上は俺も油断は出来ないし、いつまでもちんたらやっている場合ではない。
「っと、そろそろ時間か」
色々とチェックしているといつの間にか時は経っており、時間が来てしまった。俺は紅蓮を戻して教室に向かうべく整備室を後にした。
「あっ」
「ん?里穂か。朝早くにこんな所でどうしたのだ?」
すると、廊下に出た直ぐに箒がいた。
「ああ、ちょっと紅蓮の調整をな。お前こそどうしたんだよ?」
「あ・・いや、朝いなかったものだから一夏と一緒に少しだけ探していたところだ」
「・・・・・」
「ん?どうした?」
「なんでもない」
なんか、ちょっぴり感動した。まさか、朝いないだけでこんなにも心配されるとは思ってもみなかった。
「まっ、兎に角行こう。織斑先生に怒られてしまう」
「それもそうだな。あの先生、遅刻にうるさいからな」
雑談は歩きながらするとして、俺たちは教室へ向かうべく足を動かす。
「なー、箒」
「なんだ?」
「一夏のどこが好きなんだ?」
「ぶっ!」
え?そんなに反応することか?
「い、いきなり何を言う!」
「別にいいだろ。俺だってそういう歳だぞ?誰かの恋愛事情にちょっとは興味を持っておかしくはないと思うんだが?」
「そ、そうだな。ていうか、何故分かるんだ?」
「お前はオルコットやデュノアたちを見てなんとも思わないのか?」
「確かに、彼女らが一夏が好きなのは見ていて直ぐに分かるな・・つまり、私も彼女らと同じように見えると?」
「そりゃな」
「そ、そうだったのか・・・まぁ、一夏とは幼少期に出会ってな。所謂、幼馴染という奴でな。当時の私は他に友達呼べる存在がいなくて・・・」
「それで、ついつい一夏の優しさに惚れちゃったということか」
「想像通りだ」
「・・・・・・・・」
なるほどな、そりゃ惚れるだろう。一人で孤独な時に優しく声かけられちゃ。
「そじゃぁ、里穂は好いている人はい、いるのだろうか?」
「俺?俺はいないさ。いたとしても、報われないのは分かる」
「・・・?どういうことだ?何故分かるんだ?」
「あー・・・なんつーかな。前にいたんだよ、好きな人が。そりゃぁ彼女や、皆の為に頑張ったんだ。けど、頑張っているうちに皆は消えてて、その人にまで恐れられたんだ。拒絶ではないけど・・・あの言葉は効いたなぁ」
「あの言葉?」
黒い鳥。何もかも焼き尽くす死を告げる鳥。
フランは俺にそう言った。そして俺を雇い続けると。
こんな俺を他に渡らせたくないのか、それとも俺を使って何かやろうとしているのか。そんなことは今の俺に分かる訳がない。
「まぁ、頑張れよ。俺の中じゃ、五人の中で一番美人なのは箒だしな」
俺は茶を濁すように箒にそう言った。
篠ノ之束以外は俺が異世界人だということは知らない。
「な、何をいうか!セシリアだって・・・他にもシャルロットや・・・」
「別にお前が相手の方が美人だって思ってても知らねーけど、俺が素直にそう思っただけだ」
「・・・・・なんか、照れるな」
箒は頬を染めながらポニーテールを前に持ってきて撫でる。
「・・・・・・」
な、何か可愛いなおい。いつもは凛としているイメージあるから、こういうのをギャップ萌えというのだろうか。
いやいや、いかんいかん。箒は一夏のことが好きなんだ。俺なんかが介入する場所なんてないんだ。
「どうしたのだ?里穂?」
「あ、ああ・・・さっ、行こうぜ。このままのペースだと遅れちまう」
「分かった」
俺は自分の表情を意図的に崩しながら走り出した。箒にさっきまでの照れる様子はなく、元気一杯だった。
少しばかり残念な気持ちを持ちながらも俺は足を前へと動かした。
はい、全然サブタイトルっぽくない話でしたね。ごめんなさい。
少しばかり箒との絡みもいれてみたいんですが、箒は一夏が好きです。
主人公もちょっと箒が気になり始めましたね。
そこらへんの絡みを入れていけたらいいなと思います。