『くそっくそっ!どうなってやがる!』
蜘蛛のように複数の脚を持つISを操作しているオータムは毒づきながら山中を逃げていた。
その後ろから追いかけて来るのは青と黒色をしたISである。フルアーマーではなく、そのISに乗っている女はオータムを逃がさず、右手に持っているレーザーライフルと左手にあるマシンガンで追い詰めていく。
『あ〜―もう!しつけぇんだよ!』
オータムは振り向いてマシンガンで応戦するがISは左右に回避して接近して来る。
『ぐぅっ!』
攻撃を受けながらもオータムはその場から退避する。
『落ちろ!』
そのISのレーザーライフルはチャージ式だったので、最大までチャージして飛んでいるオータムに向かって放つ。
オータムは咄嗟に回避するがそれでも微妙に態勢を崩す。それを見てマシンガンと肩に装備してあるロケットがオータムを襲った。
『がぁぁぁっっ!』
その攻撃を受けて地面に落ちていく。
ISはトドメをしようとレーザーライフルを構えるが、遠くから複数のレーザーが飛んできたのでそちらに向けて射撃をした。
『・・・・・』
『オータム、引き上げるぞ』
そこに飛んできたのはエム、サイレントゼフィロスだった。
『来るのがおせぇんだよ!』
『うるさい』
エムの援護もあり、オータムはともにそのISから逃げおおせた。
そのISに乗っている女は二機のISを追撃しようとはせず、逃げていくその二人を遠くから見ていた。
『どうです?調子の方は?』
「もうちょっと燃費よくしてくれた方がいいんだけど」
『無茶言わないでくださいよ。頼みの篠ノ之束が協力を拒んだんですから』
「なら仕方ない。あれが噂のファントムタスクか・・大したことないな?」
『いえいえ、彼女らを侮ってはいけません』
「ふぅん・・・まっ、いいけど。それで、次の私の任務は?だいぶ、いい感じに慣れてきたから」
『話が早いですよ』
「私はね、もう負けたくないだけ」
『そんなに焦る必要はないかと。まぁ、次回はあなたの出番ですから』
「ホントに?」
『ええ、実はあのファントムタスクが学園祭を利用して襲撃する話がありましてね』
「なるほど。つまり、私がそれに潜入すればいいのね」
『そうなります。黒い鳥に挨拶するのもいいですが、ファントムタスク程度にみすみす白式を渡す訳にはいきませんからね。詳細は帰ってから話しましょう。帰投してください・・・・ブルー・マグノリア』
「はぁ・・・分かったわ。帰投する」
学園祭。という言葉をご存知だろうか?俺は知らなかったのだが、篠ノ之束曰く男女がチュッチュッする日。などという訳の分からない説明受けたので、一夏に聞けば祭りだと言われた。
「祭りか・・・と、言われてもな。そういえば、結局どうなったんだ?」
「おいおい、里穂もちゃんといただろ?もしかして、聞いてなかったのか?」
「はっはー」
「里穂、そこは笑うとこじゃないよ」
ちゃんと最後にはデュノアがツッコンでくれた。
「さっ、飯にしよーぜ。流石に腹減ったよ」
一夏はそう言いながら自分の腹部を摩る。
俺は一夏に言われた通り昼休み、屋上に来ていた。
女子は皆、一夏にどうぞどうぞと自らが作ってきたお弁当の具材を口に押し込んでいるのを見て、相変わらず一夏も大変だなと思う。
すると、箒は一夏にお弁当箱だけ渡すと、俺の隣に来てもう一つあるお弁当箱を開いた。
「ほら、里穂。お前が好きな唐揚げだ」
見れば美味しそうな唐揚げがお弁当箱の中に詰まっていた。
「お、おお・・・」
その唐揚げは俺が見てきた中で一番旨そうだった。俺は箒に許可取ることもなく、ひょいパクと早速食べた。
「もぐもぐ・・・・うまっ!」
普通に美味しい。箒のことだから、少しばかりこういうのは疎いと思っていたのだが、案外そうでもなく唐揚げは絶品だった。
「そうか、そう言ってくれるなら助かる。本当は出来立て熱々が一番美味しいのだがな。また、今度振舞おう」
「マジか!」
「ああ、そんなに美味しそうなに食べられるとこちらとしても作りがいがあるというものうだ。時間があればまた作ろう」
「うぉぉ!ありがとう!」
あまりの嬉しさに俺は箒に頭を下げる。
「何だか一夏が羨ましいな」
「ん?どうしてそう思う?」
「そりゃ、箒は美人で料理も上手ければ言うことなしじゃねーの?」
「!?な、何をいきなり突然!」
箒はいきなり褒められたのか、それとも男性からそういうのを言われる機会が少ないのか顔を真っ赤にして驚いた。
「ほら、俺なんかに構っていないで、一夏のところ行ってこいよ」
俺がそう言うと箒は「気を使ってすまないな。だが、一夏争奪戦は少々私には荷が重そうだ」そう言って一夏の方に向かって行った。
その背中を見ながら俺は唐揚げを口に投げる。
「うん・・・・旨いな」
箒は一夏のことが好きだ。それは六年の歳月を得てさらに深くなった。今までその気持ちに偽りはないだろう。
だがあの鈍感野郎。一夏、お前がそれを意図してやっているのか素なのかは分からないが、鈍感は時として人を傷つけるんだぜ?
そんな彼らのやりとりを眺めながら俺は唐揚げを口に運んだ。
そんな昼休みも過ぎ、午後からの授業はIS実習。皆、ISには少し慣れはじめてそれなりにISの動きが素人臭くなくなってきていた。
「おーい、里穂。模擬戦しよーぜ」
「ん、いいぞ」
そんな中、一夏が俺に模擬戦を申し込んできた。織斑先生もいいぞと承諾してもらったので、俺と一夏はアリーナの中央部分で対峙する。
他の生徒たちは一次観客席やピットに戻ってその模擬戦を見学する。先生曰く、専用機同士の模擬戦を見るのも勉強だそうだ。
俺たちが少しの間だがこのアリーナを独占するのを俺は少し快く思えなかったが、そういうのなら特別何か思うことでもない。
それに何やら初の男同士の戦いということもあってクラスの連中は少しばかり盛り上がっていた。
「織斑君と日下部君の試合だって。一体どっちが勝つんだろう」
「けど、日下部君って教室じゃ何もなさそうに見えるけど、IS大丈夫なのかな?」
「この前はセシリアと一緒に変なのとを食い止めてくれたんでしょ?」
「そ、それでも私は織斑君の方がっ!」
「織斑君やっちゃってーーー!」
ある意味、里穂の歓声はごく少数だった。
専用機持ちたちは、
「なぁ、シャルロット。どっちが勝つと思う?」
箒がそんなことを聞いた。シャルロットは一旦考えてから言った。
「う~ん、里穂の戦闘データは少ないけど、前の戦闘を見る限りじゃ一夏が勝ちそうだね」
それを聞いた鈴音が賛同する。
「そうね、心の強さ的にも一夏は向上してるし、絶対に勝つっていう志を持っているのだもの」
ラウラは、
「そうだな。嫁のISも第二形態になって多彩な攻撃ができるようになった。最近じゃ、あの生徒会長に教え込まれているからな」
続いてセシリアも頷く。
「そうですわ、一夏さんが負けるはずありません」
四人は頷いて一夏の勝利を揺るぎないものにしていた。実際、彼女らはここ数ヶ月の間で一夏の成長面を大きく見てきたのだ。
対して里穂は転校してまだ一ヶ月も経っていないので計りのしようがなかったといえようが、心の底では一夏ほどではないと感じ取っていたのだ。
それはここ数日の里穂のモチベーションと仮の境遇を知っているからである。
それは箒も同じ思いだった。
「そうだな・・・」
他の者たちは一夏を信じている。それは一夏がイケメンで、やる時にはやる男で、好きだから。という大きな要因があるからだろう。
だが、箒は知っている。
里穂は優しくて何かに怯えているのだと。前に里穂にあった時、箒は一瞬だがそれを感じ取った。
はぐらかすように一夏の話題に変えられて反応してしまったのは不覚であっただろう。
それでも、こうして自分を女として、普通に話しかけられてくれる里穂に自分でも分からない小さな何かを箒は感じた。
「なんか、一夏とこうしてちゃんと戦うのは初めてだな」
二百メートル先の一夏が言う。
『ああ、俺は同じ男と戦えて嬉しいんだ』
「そ、そうか・・・まぁ、一夏が本気で来るっていうのなら、俺も出来ることはするよ」
『・・・・ああ・・・行くぞっ!』
GOサインが出るの同時に一夏は真正面から瞬時加速(イグニッションブースト)で距離を詰めて両手に持った雪片弐型を振りかぶって斬りかかってきた。
一瞬ブースターを最大まで上げて後方へと下がる。
あそこまで速くなれるのか。
『甘いぞ!』
そう言って一夏はそのまま荷電粒子砲を撃ってきた。
「っ!」
二発直撃し、ゴソッとシールドエネルギーが削られる。
「おお!」
両手に持ったマシンガンを構えて引き撃ちしながら一夏の攻撃から逃れるが、射撃へ対しての間合いが上手く取れているのか中々蜂の巣にはなってくれない。
なるほど、前よりかは格段に能力が向上している。教われば教わるほど上手くなる。一夏の才能は本物だな。
だが!
「はぁっ!」
俺は一夏の上に出ると空中から全十二発同時ミサイルを放つ。
一夏は上から飛んでくるミサイルを器用に回避したり撃墜をすてミサイルの雨から逃れた。
くっ、あいつめ。まだ避けるのか。
一夏は射撃武器に対する耐性を身につけており、俺が攻撃をするたびにしっかりとした対処をとって確実に攻撃を当ててきた。
戦闘開始から三十四分
『勝者!織斑一夏!』
粘ったが、最後に零落白夜の攻撃を受けてしまって負けた。
周囲からは歓声がわぁぁぁと起こっている。初の男同士の戦いで一夏の方が気に入られている今、一夏が勝てば当たり前の反応が起こっていた。
「はぁ・・・負けたか」
俺は一人ピットへと戻っていく。反対側の一夏の方は何かワイワイとうるさい。
へっ、いいもんっ、一人であとはやるもんっ。
「惜しかったな」
紅蓮を待機状態に戻して一息をつくと、織斑先生がそんな風に声をかけてきた。彼女らしくもなく、同情か。
「同情はいいですよ」
「同情ではない。私がそう思っただけだ。だが、本当ならもっと強いんじゃないのか?束が寄越した男がこんなものではないだろ?」
「それこそ買い被りですよ。俺は強くない・・・」
「・・・・何を焦っている?」
「焦る?俺が?」
織斑先生は俺に背を向けて言った。
「今のお前は何か怯えている。そんな風に感じるぞ」
「・・・・・」
怯えているか。
一体何に・・・。
『分かっているんじゃないのか?』
そんな言葉が耳にそう響いた。
次回は学園祭になりますっ
よろしくお願いします