紅に吠える傭兵   作:青野

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学園祭

 

 

 

 

「「「おお~~」」」

 

 そう声に出すのはクラスメイトたち。俺たちの目の前には一夏が執事服で軽く礼をした。その仕草はそのまんま執事と言っても過言ではなかった。

 

「一夏さん!素敵です。是非ともわたくしの専属執事になりませんか!」

「ちょっ、セシリア」

 

 一夏に詰め寄るセシリアをクラスメイトはズルズルと引きずっていく。

 

「けど、一夏はなんでも似合うね?」

 

 そんな風にデュノアが言った。彼女もまたメイド服を着ており本物のメイドのようにも見えるのだが、本物のメイドはもっと冷静新着なのであろう。

 

「いやいや、俺なんか偶々だよ。シャルこそ、すげー似合ってるぞ」

「えっ、ホント!?ホントにホント!?」

「あ、ああ、ホントホント」

「似合ってるのか・・・そうかぁ・・・・えへへ」

 

 と、デュノアはニヤニヤしながら頬を染める。

 

「おい、里穂。シャルのやつ、頭でも打ったのか?」

「一夏、流石にその態度はデュノアに対して失礼だと思うぞ」

「え?」

 

 何を言っているのか分からん。という一夏をほっておいて開店の準備をする為に教室の一部を改造した裏へと行く。カーテンのしきりが出来ているので外から見えないようにしてあり、こちらで皿だったり調理器具を準備する。

 

今日はIS学園の学園祭。

 基本的にはIS関係者以外は殆どこの学園に入ることは禁じられているが、生徒たちは誰か一人配れたチケットで任意の人間をこの学園祭に招待出来ることになっている。

 他にも企業関係者たちが媚を売りに来たり、自分たちの開発した装備を売りつける為に多く来ているも、純粋に楽しんでいる奴らも少なくない。

 今は午前八時半。

 九時開始なのであと三十分もすればドッと人が流れ込んでくるだろう。俺と一夏は数少ない男要員としてこうして執事服を着せれている訳である。

 相変わらず一夏は執事服着てもイケメンなのでああやってモテている。

 

「ん?箒か。なんだ、そんなところで?」

 

 メイド喫茶店というこもあったので、俺はダンボール箱の中から色々出して準備にとりかかっていると、調理場に一人いる箒が目に入った。

 箒もメイド服を着ており可愛らしいその姿が目に入る。

 

「ああ、里穂か。いや、なぁに大した問題ではない。相変わらず一夏の鈍感に呆れただけだ。こっちがこんなにもアピールしているのに」

「はは・・・そりゃ残念だ」

 

 何があったが知らんが俺は準備を続けながら箒と会話をする。

 

「わ、私は魅力がないのだろうか」

「はぁ・・箒。人によって魅力の感じ方は違うだろ?」

「・・・そうだな」

 

 あっ、いけね。凹ませたか?

 

「ま、まぁ・・箒は一般的に見ても十分魅力があると思うぞ」

「なっ・・そ、そうか?」

「あ、ああ・・・」

 

 少しだけ箒の表情が和らいだ。

 

「そうだ、お前は今みたいに可愛らしくしろ。メイドの表情が暗くて食うもん食えねーよ」

「っ!そ、それもそうだな。ありがとう、里穂」

 

 箒は俺のニコリと笑ってお礼を言った。そんな笑顔に俺は不覚にもドキっとした。

 

「ほ、ほら・・箒も行って来い。こっちは俺がやっておくから」

「あ、ああ・・・一人で大丈夫か?」

「そう言っている」

「そうか。分かった。なら、余計なことはせずにこの場は里穂に任せるとしよう。うん。また後でな」

 

 そう言って箒は軽くステップしながら表に出て行った。

 そんな姿を俺は微笑ましく思った。

 

 

 

 九時になりIS学園の学園祭が始まった。この一年一組の教室の前には数多くの客がおり、俺たちは忙しく働いていた。

 ワイワイガヤガヤとカーテンの向こうは楽しそうな話し声が聞こえてくる。

 先ほどまで俺も接客をしていたが、流石に疲れたので裏に隠れて裏方に徹しているという訳だ。

 

「悪いな、裏に戻してもらって。午後からはフルでいくし」

「いいよいいよ、十分売り上げに貢献してもらったし」

 

 少し休憩に入った時、クラスメイトの鷹月静寐と話していた。

 

「それは一夏のおかげだろ?」

 

 すると、鷹月はうーんと唸ってからニコニコしながら言った。

 

「知ってる?割と日下部君も人気あるんだよ?」

「は?」

「まぁ、初日に篠ノ之さん泣かしちゃったのが結構きてるみたいだけど、そんなに外見

悪くないし普通に喋ってくれるし。意外と優しいし」

「・・・・・・・」

「だから、織斑君がいるからってあんまり劣等感を抱かなくていいんだよ?」

「・・・と、言われてもな。この前だって一夏に負けたし、なんかなぁ・・はぁ」

 

 ああ、鬱だ。

 

「それでも見てくれる人はいるんだから、それを忘れないで」

 

 そう言って鷹月は表へ出て行った。

 あれも彼女なりの励ましなのだろう。ここ最近、俺も何だか調子が変だ。思った以上にISだって満足に動かせていない。

 

「はぁ・・・」

 

 また俺はため息を吐いた。

 数分すれば一夏を連れた鷹月が戻ってきており、一夏はどうやら外に休憩に行くようだ。すると、四人の乙女が立ち上がって何やら話し合いを始める。

 誰が一夏と休憩するか協議中のようだ。すると、オルコットがニヤニヤと笑い始め、他の三人がどよーんと肩を落とす。

 一夏とオルコットはそのまま消えてしまった。

 

「ほらほら、今度は日下部君が一夏君の代わりに表に出てね」

「うい、分かった」

 

 鷹月に言われて俺は空いた穴を埋めるように立ち上がるのであった。

 

 それから一時間はすると少しずつ客の出入りゆっくりになって来た。俺はそれに少し安堵する。

 すると、やっと一夏が帰って来た。これで少し楽出来るかと思ったその矢先、突如現れた生徒会長によって一夏は連れ攫われ、見れば女四人の姿は見えない。

 鷹月に話を聞くとこれから一夏と相部屋になれる権利争奪戦が行われるということらしく、女性客も多くそれを見にこのクラスから立ち退いた。

 

「それじゃぁ、私も行くね」

「ああ、俺もある程度したら見に行くよ」

 

 争奪戦はこの学園祭のフィナーレのようなもので生徒会長自らが立案したそうで、殆どのクラスが自分のところでやっているものを置いて見に行っている。

 俺は客がいなくなったことを確認するとドアを閉じて俺も一夏の勇姿を見るべく歩き始めた。

 

 と、そこで一人の女が走っているのに気がついた。

 

「ん?・・・あれは・・・」

「り、里穂!」

 

 正体は箒だった。何故かシンデレラ、つまりウエディングドレスを着ていることに疑問を持ってしまうが、今頃争奪戦が始まっているのに気づくとその服装にも納得がついた。

 

「ほ、箒どうしたんだ?」

「あっ・・・そのだな・・あのだな・・・あ・・・・う・・・」

 

 すると、箒はいきなり泣きそうにウルウルとする。

 

「えっ!ちょっ、どうしたんだよ」

「・・・・ぐ・・・うぐ、私としたこと・が・・・靴を・・靴を・・・」

 

 項垂れながら箒は靴という単語を吐いた。

 靴・・・靴・・・そんなのが一体どうしたって言うんだよ?

 

「靴がどうしたんだ?

「・・・里穂、シンデレラはガラスの靴を履くのを知っているか?」

「・・・ああ」

 

 ん?

 シンデレラ?

 

「そのだな・・・事前に用意されていたガラスの靴をなくしてしまったんだ!」

「・・・はぁ?え、もしかして靴を見つける為に校内走り回っているのか?」

「あ、当たり前だ!あれがなければ・・・私はあの舞台に立つ資格はないんだ」

「・・・・」

 

 箒は本気で落ち込んでいた。しかも今の彼女は裸足でかなり走ったであろう、足の裏から少し血が滲んでいた。

 

「・・・はぁ、分かった。箒、俺も探してやるから立ち上がれ」

「ほ、本当か!?」

「ああ、目の前で泣かれている女をほおっておくほど、俺は腐っちゃいないぜ?っと、その前に俺の靴を履け」

 

 俺は靴を脱いで箒を渡した。

 

「い、いいのか?」

「裸足よりましだろ?」

「いや、私のことではなく里穂がだ」

「・・・・はぁ、いいから履け」

 

 べシっと箒の頭のチョップを食らわす。箒はうぅ・・と声を漏らしながら俺の靴を履く。それを確認した俺は箒が行ったであろう場所や箒の住んでいる部屋に勝手邪魔したりして、ガラスの靴を探しにまわった。

 

「なぁ、里穂はどうしてここまで協力してくれるんだ?」

 

 次の場所へ移ろうとしていると不意に箒がそんなことを聞いてきた。

 

「そりゃ、困っている人がいれば助ける。何か問題でもあるのか?」

「そ、それはそうだがな。ほら・・なんというか、他にないのか?」

「他にって言われてもなぁ。なんだ?俺が箒を好きだから。なんて言えばいいのか?」

「なっなっなっ、何を言うんだ!」

 

 隣で箒が顔を真っ赤にしながら慌てふためく。

 

「ちょっ、うるさい。それに冗談に決まってるだろ?」

「そ、そうだな。うむ、その通りだ」

 

 箒はその言葉に落ち着きを取り戻し、俺に歩調を合わせて歩く。

 

「里穂・・・」

「ん?」

「お前、最近何か変じゃないか?」

「っていうと?」

「何かに怯えているように見える」

 

 箒は立ち止まり、俺の方を向いてそんなことを言った。

 

「そんな風に見えていたのか」

「ああ・・・・・・一夏と戦っていた時に思った。何か思うことがあるのだろうって・・」

「そう・・かもな」

 

 怯える。

 その表現はきっと間違っていないだろう。今でも自分の中でどう表現すればいいのか分からないが、箒がそういうのであれば俺は怯えているのだろう。

 

「なぁ・・もし、何かあるなら言ってくれ」

「・・・・・・・」

 

 答えることは出来なかった。なんと言えばいいのか分からなかったからだ。

 けど、それでも篠ノ之箒という女は俺の事情が、素性がどうであれ俺の力になってくれると言ったのだ。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 

「姉さんのとこから来たということは、里穂も何か背負っているのだろ?もし、それが背負えきれなくなった遠慮なく言ってくれないか?」

「・・・・そう・・・か」

 

 篠ノ之束が俺を受け入れたように篠ノ之箒も俺を受けれてくれようとしているのだ。そこに同情という気持ちは一切なく、純粋に俺の力になりたいという気持ちだけを感じた。

 

「私はお前に世話になったからな。これも何かの縁だと思って・・・」

 

 窓から風が吹いて綺麗に整えられた彼女の髪を揺らす。

 その姿はまさに姫だった。

 

「そうだろ?里穂」

 

 そう箒が微笑んだその瞬間、少し校舎が震えた。一瞬地震かと思ったが、どうにも戦闘音らしき音も聞こえてきた。

 

「この音・・・まさか」

「お、おい!里穂どこに行く!?」

「付いてこい!何か嫌な予感がする!」

 

 そう言って俺は走り出した。

 外部のゲストを呼んで盛大に祭りを行う。そんなチャンスに奴らがこない理由がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、更衣室では一夏とオータムが戦っていた。

 

「はぁ、やっぱガキだなぁ。真正面から突っ込んできてよ。バレバレだっつーの」

「くっ、くそっ!」

 

 オータムは一夏を拘束した。一夏は成す術もなくオータムが放った蜘蛛の糸に絡められて身動きが出来ず悶えるも、そう簡単に離してはくれなかった。

 

「それじゃっ、お楽しみタイムといきますか」

 

 そう言ってオータムは何やら変な機械を取り出し一夏の胸部に取り付けた。

 

「白式、いただきますか」

 

 ポチ

 

「な、何が・・ああ・・・がぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 白式を奪おうと機械が作動し、その反動に一夏が悲鳴を上げる。

 

「はっはっはっ!そうそう、ついでに教えてやろう。第二回モンドグロッソでてめぇを拉致したのは俺だよ。感動のご対面だ!」

「て、てめぇ・・・がか・・がぁぁぁぁぁ!」

 

 そのセリフに一夏は怒りを見出すが、オータムはそれを無視して笑い続ける。

 

「はっはっはっ!白式が手に入ればお前に用はねぇ!」

 

 だがオータムは知らない。楯無がISを展開して自分の分身を作り出していることに。だが楯無もまた知らない。更衣室の廊下にもう一人、ISを展開してスタンバイしている人物がいることに。

 

「殺してやるよ」

「あら、それは困るな。一夏君は――――」

 

 だが、その言葉は最後まで紡がれることはなく、レーザーが更衣室のドアを破壊して穴を空けた。

 

「あーあー、亡国企業が勝手なことするから・・・こうなってしまった。私は悪くない」

「て、てめぇは!」

 

 そこに現れたのはオータムを追い詰めた、蒼と黒のISだった。

 

「候補者は私達が自ら倒す。だから、今織斑一夏に死なれると困るのよ。色々と。まぁ、私としては別にそんなことどうでもいいんだけど、財団がうるさいから」

 

 搭乗者、ブルー・マグノリア。通称M。

 

 

 

 




次回もよろしくお願いします。
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