「お、お前は・・・」
「え・・・」
楯無とオータムの間に銃弾が飛び一夏の胸に張り付いている奇妙な機械を壊した。
「あの時の!」
オータムがそう叫んだ時にはマギーは肩に装備してあるミサイルを放った。
「ぐっ!」
あまりにも躊躇がなく、いきなりの攻撃にオータムは腕を何本か犠牲にして吹き飛ばされる。
「あ、あなたは・・・」
楯無がマギーに聞いた。
「名乗る程の者ではないわ」
「信じて、いいの?」
「・・・・・・この戦いは敵ではないわ」
マギーはチャージしていたレーザーライフルをオータムに向けて放つも、オータムはギリギリ回避する。
「織斑一夏は任せた」
そう言ってマギーはオータムに向かって突撃する。チャージしながらマシンガンで攻撃し、ミサイルとレーザーライフルでオータムを襲う。
「がぁぁっ!くそっ、お前はいつも俺達の邪魔をしやがって!」
「私達には目的がある。それを邪魔するものは誰であろうと排除する。それが財団が下した決断よ?」
「何が目的だ!てめぇらがやってることは俺たちとなんら変わりねぇ!」
オータムがマシンガンで攻撃してくる。マギーはそれを左右に避けて狙いすましたかのようにオータムのマシンガンをレーザーライフルで破壊した。
「くっ・・・くそがっ!なんて威力のライフルだ。お前どうかしてるぜ!」
「あんたなんかに言われたくはない」
マギーはオータムをキックでブッ殺し、崩されたところにミサイルとマシンガン、レーザーライフルを一斉照射した。
凄まじい爆風と破壊音が起こる。
マギーはもはやオータムの敵ではなかった。
「はぁ・・はぁ・・・・くそったれが!」
すると、オータムは更衣室の天井部分を破壊して上に上がる。
「くっ!」
マギーは急いで外に出るが上空には待機しているサイレント・ゼフィルスがこちらに対して射撃して来た。
当然、それを阻むようにヒロインズたちが攻撃するが、とても彼女らだけではエムには勝てなかった。
そうこうしているうちにオータムは自らのISのコアだけを取って脱出してエムと一緒に逃げる。
「逃げられてしまった」
マギーは一人呟いた。
レーザーライフルを下ろして空を見上げる。
『あー、聞こえていますか?』
「聞こえてるわ。ミッションは達成、何も問題ないわ」
『そのようですね。ですが、あのどちらか一機程度は落としてほしかったですね』
「確かに・・それは難しい話だったけど」
と、二人の会話を遮断するようにマギーの目の前に一夏が現れた。
「あ、あの・・・ありがとうございます」
「・・・・・」
「俺だけじゃ勝てませんでした」
そう言って他の者たちも頭を下げてきた。
一夏はマギーのことを完全に味方だと思い込んでいるようであった。
「ふぅん・・・なるほど。候補者の一人か・・・」
マギーは心の中で今なら殺れるんじゃないかんと思ったが、財団からはそんな指示はきてないことを改めて思うと何も言わず背中を向けて空に飛び立った。
一人残った一夏は彼女が飛んでいった空を見上げて、
「なんだったんだ・・・」
そんなことを呟いた。
「一夏!」
「里穂か。悪い、取り逃した」
「いや、誰も怪我していならいい」
俺と箒がISを展開してやって来たが、敵は丁度飛び去ったところだった。
「なぁ、あいつらは一体・・・・」
「さぁな、それは分からん。だけど、ファントムタスクに注意しろってことだろ?今日は偶々助けたが、次はないっていう」
一夏は一度考えた後、そうだな。と言って納得した。
「おーい、里穂。いるかぁ?」
「・・・なんだ?」
学園祭の次の日は流石に休日に設定されており、生徒たちは各々でここ数日分の疲れを癒していた。
そんな俺も例外ではなく、その一日は寝て過ごしてやろうと思って昼過ぎまで寝て、その後は死神部隊や紅蓮のこと、ファントムタスクのことについてなどデータをまとめていた。
気づけば夕方になっており、そろそろ飯でも食いに行こうかと思った時、いきなり一夏がドアを叩いて俺の所在を聞いてきた。
「お、おお。今から皆で食堂の一部を借りて慰労会やろうかと思うんだが」
「そうか。楽しめ」
バタンッ!
「えっ、おい!」
「んだよ、うるせぇな」
「いいじゃん、行こうぜ」
「一人でいけよ」
「いやいや、今度は二組も来るみたいで俺なんかが一人でいると色々気まずいんだって」
どの口でそれを言いやがる。今までだってそうだっただろうが。
「はぁ、わかったよ。今から着替えるから先に行っててくれ」
「分かった、必ずだからな!」
そう言って一夏は元気よく廊下を走り出した。
「・・・このまま寝ようかな」
名案だ。
「いや、行くか」
名案だと思ったが、折角の誘いを断ることも出来ず、俺は私服に着替えると一人食堂へ向かう廊下を歩いた。
その慰労会という奴はもう始まっているらしく、皆食事をしながらワイワイと各々で楽しんでいた。
中でも一夏は大変な状況で、数十人の女の子に囲まれてこの前のことを根掘り葉掘り聞かれていたらしい。
すると、その中の一人が俺の存在に気がついたのか、ボソッと小声で言った。
「専用機持ちのくせに、なんであの時いなかったのよ」
「他の人たちはちゃんとしてたっていうのに」
はいはい、悪う御座いました。
本人たちは俺まで届いていないように話しているかもしれないが、訓練されている俺にとってはバッチリ聞こえている。
「はぁ、ホントここに来る意味ないっていうか」
いや、そこまで言われると俺は泣きたくなるぞ。
「言いたい奴には言わせておけばいいさ」
そう言ってジュースが入ったコップを俺に持ってきたのはラウラだった。先ほどまで一夏のところにいたのだが、俺を見つけてやって来たということだった。
俺とラウラは近くにあったテーブルに座る。
「お前、最近じゃあまり評判が悪いらしいな」
「うう、そんなこと言うなよ。俺が普通なんだ。一夏が異常なだけだ」
「ふっ、まぁ一夏が特殊だということは認める」
すると、ラウラは正面からを俺を見て言った。
「実は、ここから本題なのだが」
「おう」
「昨日の敵、どう思う?」
「・・・・・・」
つまりファントムタスクのことを言っているのだろう。正直、俺はそいつらについはどうでもいい。俺が知りたいのは死神部隊のことについてだ。
「私は正直恐ろしいと思った。仮にもISはある意味最強の兵器だ。それを二機も持っているテロリストがいるとは・・・」
「なんだ?軍人がテロリスト如きに怯えているのか?」
「ち、違う!そうではないなんだ」
「まっ、俺から見れば死神部隊の方が正体不明でもっと怪しい。ある情報によれば、あいつらは各地の腕利きのIS乗りを殺して回っているらしい」
「何!?」
篠ノ之束から聞いた情報だ。
「ラウラ、これからは用心することだ。奴らは不意打ちなんて汚い真似はしてこない。だが、いつ襲ってくるとも限らない」
「お前は、奴らのことをどこまで知っている?」
「・・・知らない。ただ、少なくとも俺は奴らのことをぶっ飛ばしたとは思っている」
「・・・・・ふっ、流石は私が見込んだ男だな」
そう言ってラウラは席を立ち上がり、スタスタと一夏の方に戻っていった。
ラウラが俺の前から消えたことにより俺の周りの空気は更に気まずいものへとなってきた。
「テラスにでも出るか・・・」
寂しくそう呟くと俺は食堂から外に出ていた。テラスから見える水平線の向こうにオレンジ色の綺麗な太陽が沈もうとしていた。
まだ、九月の終わりなのでそれほど海風は強くはなく、むしろこの気温とならいい感じに気持ち良いぐらいだ。
すると、中から誰かが来て俺の隣に立つ。
「ん・・・箒か」
「ああ、そうだ。私だ」
今の彼女は制服ではなく、ただの私服だった。というのも着物を着ていた。何故着物なのかとてもとても疑問なのだが、箒だと思えば何となくだが納得出来てしまう。
「お前は着物が良く似合うな」
「え・・そ、そうか?」
着物自体がそれほど派手なものではなく、赤紫を几帳面とした色なのだが箒には良く似合っていた。それに付け加えて彼女のポニーテールという髪型もより一層女性というか、箒の魅力を生み出していた。
「そんなことを言ってくれるのは里穂だけだ。一夏は何も言ってくれないのだぞ?」
「はは、一夏の鈍感には俺は呆れたよ・・はぁ・・・」
沈みゆく夕日を見ながらそう呟く。
「なぁ、箒」
「なんだ?」
「俺はさ、もう無理かもしれん」
「・・・・いきなり何を言うんだ。それに、一体何が無理なんだ?」
「色々と・・・具体的にはISに乗るのが」
「・・・・・・」
いつか俺の手は震えていた。
正直に言えばここ最近恐怖など感じたこともなかった。それなのに俺の体はいつの間にか戦うことを恐れていうことを聞いてくれない。
いつかの仲間だった。あの男、RDのように。
彼はロザリィという運び屋の女の子分のような男だった。トレーラーで俺の機体を運んでいた。性格は臆病だったが、危機感知能力は誰よりも優れてこれから起こる危険なことを誰よりも予測していた。
そんな一番危機感知能力が高かった彼が死んだ。それだけが取り柄のようだった者が。
『あんたはどうなんすか?この戦い。本気で勝てると思ってるんすか?』
あいつは俺にそう言った。
『俺は嫌っす。死ぬのだけは死んでもゴメンっす』
そして、この言葉のあと。彼は死んだ。トレーラーの運転席を狙撃されて。だが、彼は再び俺たちの目の前に現れた。
敵として。
『姐さん、気づいたんすよ俺。ゲームに勝つ方法って奴が』
裏切られた。だがそれは彼の心の弱さが生み出したものかもしれない。精神的に俺たちが追い詰めていたのかもしれない。
『ゲームに勝つには誰かが負ければいい』
『俺以外の誰かがっ!』
「なぁ、里穂。ここからの景色は私は個人的には好きなんだ」
「・・・・・・」
「人間は何かを守ろうとする強い意志があれば、例えどんな状況でも必ず戦えると思うんだ」
「それは、自分がそうだからか?」
「そうだな。私は一夏の背中を守りたいんだ・・」
「そうか・・・・」
それに自分の全てを賭けて戦えるだけの理由が箒にはあった。
「俺は・・・死ぬのが怖いんだ。一度は捨てた命だと思っていた。だけど、今こうして救われたとなると・・・あの時、あのISと戦った時、少なからず俺は死の恐怖と対面した。怖いんだ・・・」
これじゃぁ、俺もRDと一緒だな。
なら、どうして俺はACなんかに乗っていたのだろうか。何故、傭兵なんかなっていたのだろうか。
「なら・・・・」
すると、箒が俺の手を両手で包んだ。
「私と一緒だな」
「・・・・・・」
「私も一夏をあんな目に合わせてしまった時、ISは使わないと誓った。だけど、鈴が言ってくれたんだ。『あんたは戦うべき時に戦わない臆病者なのか?』と。臆病なのは認める。だが、私は戦うべき時に戦わない者じゃない。私が信じたものはそう簡単に壊れはしない。そう思ったんだ」
「強いんだな」
三年もここにいればすっかり馴染んでしまったのか、それともあの日の俺の覚悟が消えてしまったのか。
「バカを言うな。私も里穂と一緒で弱いんだ。だから、その気持ちはよく分かる」
微笑みながら彼女は言う。
「・・・そうか、ありがとう。箒」
「いやいや、これくらい大したことではない。何かあればまた相談に来てくれ。里穂」
弱い・・か。
体ではなく心が。
箒が中に戻る。俺はその日が沈むまでテラスで黄昏ていた。
あー、すっかり主人公がヘタレになってしまいましたね。
けど、頑張ります。
復活します。