タッグマッチまで残り数日。もうそろそろ俺もパートナーを選択しなければ、ランダムで決めさせられるらしい。
どうしようかと思ったが俺を組んでくれる奴なんてそういないだろう。
そう思って俺が廊下を歩いていると箒が少し沈んだ表情で向かい側歩いて来た。
「ん?どうしたんだ、箒?」
「あ、ああ。里穂か。実はな・・・」
「あー、なるほどな。一夏は組みたい奴がいるって言ってたけど、それは自分じゃなかったと」
「ああ、そうなんだ。なんでも、四組の更識簪という者と組むらしい」
「更識・・・」
なるほど、こうなることはあんたの想定通りだということか。生徒会長。
「それで、お前はどうするんだ?」
「それが、今現在パートーナーを探している途中な訳なんだ」
「そうか・・・なら、俺と組まないか?実は俺もいなくてな」
「い、いいのか?」
箒が顔を起こしてそう言う。
「俺が誘ってんだ。それに、俺が使い物にならなくても一人で無双してくれる人が必要だろ?」
「おい、何を言う。私のパートナーになった以上は使い物になんかさせないからな。今日から放課後は特訓だ!」
「お、おお・・気合十分だな」
「当たり前だ。ふふ、一夏め。私を選ばなかったことを後悔させてやる」
と、箒は不敵に笑った。
そういうことで俺と箒は放課後を利用して特訓をしていた。そう言っても連携などではなく、ただただ箒と戦うだけのもとである。
「はぁっ!」
ガキンッ!
初撃を回避し、箒をロックしながら右旋回する。そのまま左手に持ったマシンガンを撃つ。
「ぐぅ!・・・はぁ!」
箒は一旦上空に飛ぶと両手に持った刀を振る。赤い刃が飛んできた。一撃目を避けてみせるが、二激目を肩に受けてエネルギーがゴソッと消費する。
「このぉ!」
箒をロックオンすると肩のミサイルを一斉に放つが、箒はそのスピードを活かして全て避けきってみせた。
「おおおおっ!」
箒はそのスピードに任せてそのままこっちに突撃して来た。
俺は迎えるように両手にマシンガンを持って構えた。射程に入った瞬間その引き金を引く。
ガガガガガガッ!
「ふんっ!」
箒は刀で向かってくる銃弾を弾きながらやってくる。
「くっ!」
このままでは距離を詰められる。
そう思って後退しようと思ったのだが箒がいきなり赤い刃を放って来た。思わずマシンガンを盾にして防ぐが、刀でそれを弾き飛ばされてしまう。
「おおっ!」
クイックブースト、瞬間的にブースターを最大まで上げて二撃目の攻撃を後ろに後退して避けるがこの至近距離から箒は赤い刃を放って来た。避けることも出来ず、一撃、二撃と両方の攻撃を受けてしまう。
「がぁぁっ!」
更に追い討ちをかけるように斬撃の嵐を受けてシールドエネルギーがなくなってしまった。
「はぁ・・・はぁ・・・あー、やられた」
「いや、今日の里穂はこの前よりかは動きがよくなっていたぞ。だが、まだまだ本気を出してないように見える。なんというか、必死さが見られない」
「と、言われてもな・・・」
何故なのかと問われても答えは出ない。
「よし、そろそろ戻るか。日も暮れて来た」
「あ、ああ・・・そうだな」
食事を終えて俺はベランダに出ていた。十月に入り少し風が寒いと思ったが、案外そうでもなく丁度良い心地よい風だった。
すると、携帯が鳴る。
「はい」
『やっほーーー!里穂君!束さんだよ!青春してるかな!?』
「ちょっ、声がデカイ!」
『うう、ごめんね。束さん里穂君と久しぶりに話せて興奮してるのかも。性的に』
「おい、サラッと変なことを言うな。それで、どうしたんだ?死神部隊のことでも分かったのか?」
『もうっ!折角電話してるのに仕事の話はなしっ!』
「・・・じゃぁ、なんで電話して来たんだよ」
『そ・れ・は・最近里穂君が元気がないという情報が入ったから、この束さんが癒しボイスを届けようと思って電話したんだよ』
「・・・・・はぁ」
『え!?なんで、なんでそこでため息出るの!?そんなことするなら今からマッハで飛んでそっちに行っちゃうよ!』
「やめろやめろ・・まっ、気づかってくれたなら感謝はする」
『ほほう、デレ期ですな。これは所謂デレ期ということですな!』
「デレてない!」
思わず叫んでしまった。
全く、この人もいい年なんだから。
『まっ、遊びはこの辺で。それで、何を悩んでいるの?人生の先輩としてよりよいアドバイスをあげようじゃないか』
「・・・まぁ、大したことじゃないと思うんだ。戦場を離れてから平和ボケしてたっていうか、死にたくないって思うようになったんだ」
『ふぅん・・・』
「ほら、俺は前いた世界じゃ傭兵だった。あの時は毎日必死でさ。いつ死ぬか分からなかった。けど、こっちに来て・・・」
『命が惜しくなった?』
「ああ・・」
『ふぅん・・・そっか』
「何も言わないんだな」
『別に私が里穂君に何か言えることはないけどね。けどまぁ・・・先輩としちゃぁ元気のない後輩に何も言わないのもちょっとあれだよね』
数秒してから篠ノ之束が言った。
『命が惜しい・・それは誰でも思うことだよ。私が言えたことじゃないけど、誰だってそうなんじゃないか?』
「そうだろうか・・・」
『死ぬことを覚悟して突っ込むのはそれは勇気がいることだと思うし、凄いことだと思う。けど、それよりも死なずにことを成し得た方がかっこいいでしょ?』
「それもそうだな」
死なずにことを成し得るか。
彼女は一旦間を置いて再び言った。
『もう直ぐタッグマッチだっけ?楽しみにしてるよ!』
そう言って彼女からの電話は切れた。
彼女が何を思っているのかは俺には分からない。あれが励ましの言葉だというのなら、俺も随分と弱くなったものだ。
励ます奴が励まされる日がくるとは。
「ふぅ・・・」
小さく息を吐いて部屋の中に戻った。
タッグマッチトーナメントまであともう少しか。俺は・・・。
「そっかぁ・・・里穂君はそんなことで悩んでいるのか・・・」
束は里穂との通話が終わると暗闇の中、そう呟いた。
「けどね、里穂君。ISは里穂君が言っているACってのとは違うんだよ?君のその態度が吉と出るか、凶と出るか・・・ふふ」
彼女は不敵に笑い、観戦する為の準備を開始した。
次はいよいよタッグマッチになります。
次回もよろしくお願いします。