紅に吠える傭兵   作:青野

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タッグマッチ

 

 

 ここ数日のことを思い出せば箒とは毎日毎日模擬戦しかした覚えがない。

 

「なぁ、箒」

「なんだ?」

「俺の間違いじゃなければいいのだが、作戦とか大丈夫なのか?正直、今になって気づいてしまったことなのだが」

「ふっ、なんだそんなことか。安心しろ。この篠ノ之箒。なんの問題もない。素晴らしい作戦を考えてきた」

 

 ピットで最終調整をしている途中、不意に脳裏に過ぎった疑問を聞いてみると箒は自信満々にそう言った。

 

「ほう、なら聞かせてもらっていいか?」

「ああ、いいぞ。私の考えた作戦はまず相手を確認すると全力で攻撃する。そうすれば勝てるだろう」

「あーなるほど・・・っておい!全然作戦じゃないいんだけど!いっつもどおりじゃねーか!流石にこんなので一夏らに勝てる訳ないだろう!」

「と言われてもな・・・私にはこれが得策だと思うんだが」

「・・・・・・」

「だって、ここ数日ずっと特訓しかしていないし、それに相手の機体情報だってあんまり分かっていないのだぞ?だったら、変に考えて身構えるよりかは一夏がミラクルを起こす前に叩き潰した方がいいだろ?」

「ぐぬぬ・・・確かにその通りだ」

 

 変に構えるよりか・・なるほど。

 確かに、一夏の相方のISはまだ完全体とは言えないと聞いている。戦えない訳ではないが、機体性能だけで言えば出遅れることはないだろう。

 一夏の零落白夜は厄介だ。

 一夏の奴があれを出すタイミングを合わせてくると面倒だが、ここは一対一に持ち込んで箒を一夏に。俺が更識妹をやれば問題なかろう。どうやら相手は相手で熟練者ではない。

 

「なぁ、箒。ここは一夏を任せてもらっていいか?」

「ああ・・なるほど。IS操縦になれていない四組の代表なら里穂なら倒せるということだな?」

「確信はないが、一夏と相対するよりかはマシだ」

「・・・・ふむ。いいだろう。四組の代表に私の邪魔をさせるなよ?」

「そっちこそ」

 

 箒は俺の提案に不敵に笑いながらも頷いた。

 

 まず一回戦目はあの生徒会長の思惑通り、一夏&更識簪。これに勝つことが出来れば二回戦目であの生徒会長と当たることになるだろう。ちなみに生徒会長はセシリアと組んでいるらしい。

 

「ふむ・・・いや、まずは最初の戦いだ」

 

 一瞬、生徒会長との戦いを考えたが、直ぐにその考えを拭い去って初戦だけに集中する。

 

「そういえば、紅蓮の調子はどうなんだ?」

「あ、ああ・・・そうだな。至って普通だ。何も変わりはない」

「そうか・・・」

 

 箒は作り笑いをする。

 彼女も俺のことが不安なのだろうか。

 安心しろ。俺が倒れても最低限相手の三分の二ぐらいまでは削ってやるさ。

 

「篠ノ之さん、日下部君、そろそろスタンバイしてもらっていいですか?」

 

 こちらに向かって山田先生が走ってきた。

 

「分かりました。よし、里穂。いこう」

「ああ・・・分かったよ」

 

 二人でピットへ向かう。それぞれISを展開して最終チェックに入る。

 うん、どこも異常はない。

 

「箒、俺は問題ない」

「ああ、私もだ」

 

 問題ない。だけど、今日の紅蓮は少しばかり何か違和感を感じていた。

 

「大丈夫・・・・いけるはず」

 

 山田先生のGOサインと同時に俺と箒はピットからアリーナに飛び出した。向かい側のBピットからも一夏と更識のISが見える。お互い百メートルぐらい距離を取って待機する。

 

「一夏、私たちは負けはしない」

『おっ、威勢のいいこと言うじゃねぇか箒。だが、俺たちだって負ける為にここに来た訳じゃない。そうだろ、簪?』

『うん・・・例え誰が相手でも私たちは勝つ』

 

 ほほう、随分と親しげではないか一夏。

 

『それに、あなたの相棒は私でも倒せる』

「・・・・・・」

 

 俺のことを知っているのかそんなことを言った。

 姉妹揃って見下してくれてるじゃん。

 けど、実際そうなのかもしれない。俺は一夏みたいには出来ない。才能がある訳でもないし、向上心があって練習したことなんて分からない。

 負けれない・・俺だって・・・。

 

 言い返そうとした時だった。

 

「更識簪・・・と、言ったな?悪いが、里穂はお前やお前の姉が思っている以上にやる男だぞ?」

『・・・・根拠がない。私は限られた時間を使ってあなたたちを数度偵察したけど、その男からはやる気を感じない。もっと、強くなろうとか、必死さが感じないの』

「・・・必死か」

 

 箒はそう呟く。

 

「昔、姉さんが言っていた。必死に物事をやるってことは死を覚悟した者がやること。生憎、里穂は死なんて怖いと思っているし、恐れを抱いている。無論、私たち専用機持ちはそれから目を逸らしてはいけないと思う」

 

 箒は更に続けて言った。

 

「私にだってそんな覚悟はない。けど、死なずにことを成し得るのはどんなことよりも素晴らしい・・って。里穂はそれが出来る」

「!」

 

 その言葉は篠ノ之束が俺に言った言葉と同じだった。死なずにことを成し得る方がもっとカッコイイか・・・。

 

「さっ、時間だ。そろそろ第一回戦といこう」

『ああ!手加減はしないぞ!』

『倒す』

「当たり前だっ!」

 

 試合開始の合図が鳴った。

 

 

 

 予想通りに一夏は開幕突撃を瞬時加速(イグニッションブースト)で接近して斬りかかってくる。

 箒に一夏を任せて後ろから狙い撃ちにしようとしていた更識に向かって牽制射撃を行う。こちらも武装が整うと銃を構えて突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ・・まぁ、予想通りと言えば予想通りのパターンですね」

 

 モニターを見ながら真耶がそう言った。

 その隣で千冬も頷く。

 

「確かにな。一夏はこの数ヶ月でゴーレム、福音、生徒会長の訓練という多くの経験をして来た。あいつでも分かっていないうちに、かなり強いと言える」

「では、日下部君はどうですか?」

「里穂か・・・正直、不確定要素が多すぎてよく分からないというのが本音だ。だが、束が送り込んできた男だというのなら・・・おもしろくない訳ないだろ?」

「は、はぁ・・・そうですか」

 

 真耶は苦笑いしながら千冬の話を聞く。

 

「里穂はIS技術だけで言えば文句はない。私も油断すればやられるかもしれん。だが、今の里穂は技術面ということではなく、精神的に何か抱えている。それが里穂の戦闘力を低下させている・・・・杞憂だといいんだがな」

 

 千冬のその目は一夏とは違う、少し出来の悪い弟を見るような。そんな目だった。

 

「だが、里穂の機体・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更識の乗っているIS、打鉄弐式はどうやらマルチオンロックミサイルと荷電粒子砲、それと薙刀を装備しているようで、荷電粒子砲で中距離から撃ち接近すると薙刀で攻撃をして来た。

 ミサイルはタイミングを待っているようにも見え、未だ使われていない。

 

「やぁっ!」

 

 ガキンッ!

 接近を許してしまい、盾にした右手のマシンガンが使い物にならなく。

 

「ちっ!」

 

 マシンガンを捨ててライフルを展開する。続けて攻撃してきた荷電粒子砲を避ける。そのまま地表を移動しながら肩にあるミサイルを放つ。

 

『っ!』

 

 更識は放たれた十二発のミサイルを大きく旋回しながら全て避ける。今回のミサイルは火力を重視したので誘導性能は低下している。それが裏目に出たか。

 

「ちっ!」

 

 俺はかなり焦ってミサイルの出しどころを間違えていた。普通は大きな隙を作ってそこに叩きつけるのだが、どうにも焦りを感じたのか俺は撃ちどころを間違えてしまった。

 こうなったら残りの武装で対抗するしかないか。

 

『はぁぁっ!』

 

 更に更識が薙刀を正面から振り下ろしてきた。俺は直ぐにライフルとマシンガンをクロスしてその刃を受け止めるが、こんなことを繰り返していては使い物にならなくなる。

 クソッ!

 そのまま薙刀を弾き返したが、その瞬間打鉄弐式の側面にある荷電粒子砲が放たれる。腹部に直撃した。

 

「がっ・・あ!」

『逃さないっ!』

 

 その隙を狙って打鉄弐式のマルチオンロックミサイルが放たれた。四十八発の誘導型ミサイルが俺を襲う。

 ドカドカドカドカドカドカドカッ!ガァァァァンッ!

 立て直しながらもマシンガンとライフルでミサイルを撃ち落とすが到底相殺出来るものではなく、半分以上のミサイルを受けてしまう。

 シールドエネルギーは目に見えて低下し始め、三分の一を切る。

 

 やばい・・・このままだと。

 

「あああああああああっ!」

 

 なんとかミサイルの雨を抜けて残りを撃墜する。

 俺はそのまま地面に着地して更識を睨む。

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 マジでなんなんだよ。全然、勝てない・・・どうなるって言うんだよ。負けるのか?俺は・・死ぬのか。

 っ・・嫌だ・・・負けるのは・・死ぬのは嫌だ。

 急にそんな負の感情が俺の全身を駆け回る。そんなことを思ってはいけない、そんな奴ではなかった。

 俺は傭兵だ・・・こんな死ぬなんてこと・・承知の上じゃねーのかよ・・。

 

「俺は・・・」

 

 徐々に紅蓮の動きが悪くなってきた。機体のダメージということもあるのだが、ダメージとは関係なしに動か無くなってくる。

 

「っ!」

 

 そして、完全に紅蓮はその動きを止めた。俺が幾ら動こうとも何をしようともビクともしない。

 だが、シールドエネルギーやその他システムに異常を知らせる警告がならない。

 

「な、なんだ!紅蓮・・おい、どうしたって言うんだよ!」

『・・・・・・』

 

 こちらの様子を伺っていた更識は俺をロックする。ロックオンの警戒音は鳴るが、紅蓮はこれ以上動こうとしなかった。

 

「ふざけんな!なんだよ!紅蓮!」

 

 前を向いた時には多数のミサイルが俺に向かって放たれた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・やはりか」

 

 それを見た千冬は予想していたように呟いた。

 

「い、一体何が起こったんですか!?」

 

 紅蓮が動かないことに真耶は疑問に思った。先ほどの戦闘での機体損傷情報を見ても動かなくなるほどのダメージではないし、そのような相手の動きを封じる攻撃方法も更識簪が持っている訳でもない。

 更に紅蓮の最終調整のデータを見てもそのようなバグを混入させられた形跡も見られない。

 

「織斑先生!どうして日下部君のISは動かなくなったんでしょうか」

「そうだな・・まぁ、ISはただの道具ではない。簡単に説明するなら、紅蓮が・・・里穂を拒んだんだ」

 

 

 

 




とうとう止まってしまいましたが・・・
次回もお願いします。
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