紅に吠える傭兵   作:青野

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里穂の理由

 

 

 

「なっ、どうして動けるの!」

「どうしてと言われてもな・・・まだ、シールドエネルギーは残ってる。そんなこと当たり前のことだろ?」

 

 俺はそう簪に言った。

 すると、一夏は俺を警戒しながら雪片を構える。

 

「里穂、今度は倒すぞ」

「俺もやっと決まったよ。何の為に戦うのか・・・まだはっきりとした明確なところまではわからないけど、取り敢えず今は俺の為に戦ってくれた女の子の為に戦うことにしたよ」

 

 俺はムラクモを構える。

 相手が疲弊しているとは二対一。更にこちらは一撃も受けてはならないハンデつき。この鬼畜っぷりには感服するぜ。

 

「そうか・・・俺も全力で行くぞ!」

 

 そう言って一夏は俺に斬りかかってきた。俺の今のシールドエネルギーだと一撃でも受けてしまえば一瞬でやられてしまう。

 

「はぁっ!」

 

 雪片の一撃を右のムラクモで軽く受け流し、左のムラクモを一夏の土手っ腹に突き出す。

 

「がァっ!」

「一夏、生徒会長との訓練で射撃の間合いは取れたとか言っていたが、近接格闘はまだまだな。箒や凰の戦いで多少なりとは強くなったが、俺の方が一枚上手だな」

 

 一夏の動きが止まった瞬間、ジャンプ蹴りを一夏に食らわす。

 

『織斑君っ!』

 

 そう言って今度は更識が上空から再びあのミサイルを放ってきた。だが、あんなミサイル程度、あの主任が用意したミサイルと比べれば大したことではない。

 ブースターを最大出力のまま上下左右に機体を動かしてミサイルを避ける。

 

「ぐっ!」

 

 最後三発。

 一発目のミサイルを踏み台にしてジャンプし、二発目を体を捻って回避する。ラスト三発目を右手のムラクモを使って撃墜した。多少ダメージがあったが、気にする程でもない。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 体を回転させて左のムラクモで打鉄弐式がはなとうとした荷電粒子砲を叩き斬る。その反動でグラついた打鉄弐式が下へと少し下がり、俺は追撃とばかりにムラクモを腹に切り込んだ。

 

『キャァァァァッ!』

 

 ガァァァァンッ!

 かなりの威力で地面と衝突した為、軽いクレーターが出来ていた。

 

『ぐっ・・まだ!!』

 

 更識はまだ戦意を失っていないのか、立ち上がりミサイルポッドを展開する。恐らくこれが打鉄弐式に残された最後のミサイルだと思われる。

 そのまま打鉄弐式からミサイルがドッと飛んでくるが先ほどのミサイルよりかは回避がしやすい。

 俺はそのまま落ちるように降下していき接近してくるミサイルを全て回避する。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 ガキンッ!

 ムラクモはスピードが上がれば上がるほど威力を増す。落下速度+ブースターの出力ならば残りのシールドエネルギーを削るには十分だった。

 

「なっ・・・なんで・・・・」

「無駄だ。逆転して冷静さを失ったお前に俺を捉えることは出来ない」

「っ・・・・・・」

 

 打鉄弐式のシールドエネルギー残力が無くなり、その機能を停止する。

 俺はそれを確認すると、今更立ち上がっている一夏の方を向いた。一夏は諦める様子はなく、俺を睨みながら雪片を構えていた。

 

『強いな・・・』

 

 一夏は百メートルほど先にいる。

 

「ああ・・・おかげで迷いはもうないさ」

 

 一夏は一度俺の動きを見たせいか、バカみたいに突っ込む真似はしないだろう。様子を伺って何度かの斬り合いの後、隙を突いて攻撃して来る。

 

 シュゥゥゥ・・・

 

 見れば右手のムラクモが少しばかり形状が変化している。やはり初めて使ったせいなのか上手く扱えていない。一撃で一夏を落とせる自信はないな・・・なら。

 俺はムラクモを解除する。

 

『どういうことだ?』

「待てよ・・とっておきの武器が残っているんだ」

『とっておき?』

 

 右手にACを速攻で撃破させてみせたパイルバンカーを展開した。

 最大四発装填してあるパイルバンカーである。

 本来なら装備している筈がない。が、生徒会長との会話の後、逆曲刀剣を量子化しようとしても紅蓮の内容量ではどうにも逆曲刀剣が量子化出来なかったので、代わりにこいつを量子化させた訳である。

 

『パイルバンカー・・・・』

「ああ・・・いかせてもらうぞ」

 

 本当ならこんな決闘じみたことなどアホみたいなのでやらないが、一夏は俺のパイルバンカーを見て少し笑った。

 パイルバンカーは大振りの武器であり、更にその後の硬直してしまう為に随分と隙が大きな武器になる。

 恐らく一夏はデュノアのシールドピアスというパイルバンカーを何度か見ているはずだ。だから、一撃目のパイルバンカーを避けてその隙を狙って攻撃して来る。

 

「一夏・・・悪いが俺はそう簡単に倒せるほど、甘くはないぞ」

 

 一応、そんな策は無駄だと遠まわしに言ってみたが、一夏の笑みは絶えない。

 

『・・・里穂、俺はお前に一度勝っている』

「そうだな。だが、今の俺がこの前の俺だと思うなよ?」

『進化したと言っているのか?』

「いいや、初心に戻ったというべきだな。雇われであろうとなかろうと、そいつを支えてやろうという気持ちが俺が強くする。俺は今は箒の為に・・・・」

『なるほど。それがお前なりの理由って訳か。なら、俺だって負けられないな』

 

 俺はブースターを最大出力まで上げて一夏に向かって飛ぶ。

 一夏のその瞳には力強い意志を感じる。

 

 ハーレム野郎、鈍感、天才、イケメン、そんな感じの奴だと俺は思っている。その考えが変わることはなく、今後も俺は一夏をそういう目で見るだろう。

 だが、俺がどう思おうと一夏には一夏の事情があり決意もあるのだ。

 そして、俺にも俺なりの決意があり、ここにいるのだ。

 

「悪いが・・今は何でも出来そうな気がするんだ」

 

 残り三十メートルになった瞬間、一夏は構えを軽く解いて俺に分からないように回避行動を取る準備をした。が、甘い。

 

「あああああああああああっ!」

 

 突如、俺の機体が加速する。その瞬間的な加速に一夏は反応出来ず、気づいた時には俺が目の前まで来ていた。

 

「なっ!」

「おらぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 右手に装備したパイルバンカーを思いっきり一夏の土手っ腹に叩き込んだ。

 瞬時加速(イグニッションブースト)とパイルバンカーの組み合わせだ。そんじょそこらの甘っちょろいものはとは威力が違いすぎる。

大きな衝撃を受けて一夏は何十メートルも後方に数度地面をバウンドして止まった。倒れている一夏のシールドエネルギーは確認するまでもない。

 

「はぁ・・・はぁ・・」

 

 会場が静まり返る。

 

 沈黙の後、

 

「「「「「ワァァァァァァァァ!!!」」」」」

 

 大歓声がアリーナに響く。

 まさかの大逆転劇が今その場で行われたのだ。誰も声を出さずにはいられないだろう。勿論、一夏派の女子たちは俺を蔑んだり、嫉妬の声を出しているだろう。 

 所詮、その声もただの負け犬の遠吠えにしか聞こえない。

 

「あああああああああああああああっ!」

 

 パルバンカーを片手に天を仰ぐ。

 

紅の傭兵は大きく、高らかに吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、やってくれるな。里穂」

 

 ピットに戻ると織斑先生がやって来た。その声は少し嬉しそうだ。

 

「やっと、決まったか」

 

 紅蓮を解除して彼女の前に出る。

 

「まだ明確なことまで決まってはいない。過去とも上手く決別は出来ていない・・・・だけど、今日の戦い・・・ここ、数日を俺を支えてくれた女の子の為に戦うことにしましたよ」

「・・・箒のことか。なるほど、おもしろいことになりそうだ。ならば、お前らの出番は最後にしないとな。次の生徒会長との戦いは三時間後だ。十分、休んでおけ」

「分かりました」

 

 それだけ言って織斑先生は戻っていく。

 

「っ・・・」

 

 思わず膝をつく。流石に久々に本気で動いた気がしたので、体が悲鳴をあげているのだろう。

 

「はぁ・・・また鍛え直しだな」

 

 俺は紅蓮を再度展開して目の前におく。シールドエネルギーを回復させて武装の弾薬も補充する。だが、三時間ではムラクモを完全な状態に修理することは難しいだろう。それに、先ほどの戦いでマシンガンを一丁駄目にしてしまった。

 となると、残る武装はライフルとマシンガンが一丁ずつ、ミサイルとパイルバンカーが一つか。

 

「うむ・・・どうしたものか」

 

 流石に生徒会長と主面からやり合うには少々火力不足だ。それを補う代わりの武器が今すぐ必要になる。

 

「そうだな・・・ムラクモが使えないんじゃ、いっそのこと外して代わりにこいつを使おう」

 

 俺は整備室から量子化出来なかった逆曲刀剣を持ってきた。すると、ピットにはベットで寝ているはずの箒が少し目元を赤くしながらそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

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