ピットから出た俺と箒は指定されたポジションまでゆっくり飛行しながら行く。
「なぁ、里穂」
「ん?」
「・・・・勝つぞ」
「愚問だ。そんなこと、当たり前だ」
『まさか、あなたが簪ちゃんと私が鍛えた一夏君を押し退けて来るなんて』
「悪いな・・事情が変わったんだ」
俺と箒から百メートル先に水色と青色の機体が待機している。ブルー・ティアーズとミステリアス・レイディはどちらも同じような蒼色の機体。こちらはどちらも紅い機体。なんというか、因縁のバトルみたいな雰囲気がアリーナを包んでいた。
「悪いが、勝たせてもらいます。生徒会長」
『あらあら、怖い怖い。まっ、精々楽しませてもらうとしましょうか』
会長のISはミステリアス・レイディ。装甲が少ないが、その分をカバーする何かを彼女は隠して持っているのだろう。話を聞く限りじゃ、ナノマシンを使って水を自由に操る能力を持っているだとか。
詳細まではよく知らないが、まぁ・・・なんとかなるだろう。
『里穂さん、この間の続きをさせてもらいます』
今度はオルコットがそう言った。
「ああ、この前はとんだ乱入者が入ってきたからな。俺も・・・全力でいかせてもらう」
『あら、あなたにこの学園最強の私が倒せるかしら?』
と、俺とオルコットの会話を遮ってまで俺にそんなことを言った。
生徒会長=学園最強。ということになっているらしい。なるほど、確かに俺に向けている殺気はオルコットと比べると大したものだ。力強さを感じる。
「なんだ?挑発でもしてるのか?」
『まぁ、確かにそう捉えられても構わないわ』
「そうか・・・あの時の答え。見せてやるよ」
俺はそう言いながらマシンガンとライフルを展開する。
『そう?なら、私も久々に本気でいこうかしら?』
そして、彼女もランスを構えた。
人間は戦う。例えそれが自らを滅ぼすことになったとしても。その先の結果が分かっていながらも戦い続ける、愚かで滑稽な生き物だ。
そして、俺もまたその愚かな生き物に過ぎない。
「会長・・・一つだけいいか」
『何?』
「あんたは、どうして戦う?」
『・・・難しい質問ね』
「・・・・・・・」
『私にはとある事情があってね。家の為、妹の為、皆の為・・・なんて、色々あるけど。私はきっと私自身の為に戦う』
「そうか・・・」
『今度は私の質問。あなたは何故ここに来たの?前にも言ったように、戦いたくないなら逃げればいい。勿論、自分の命が尊く思うなら。時には逃げたって・・』
「それもそうだな。逃げるってのは、決して間違っちゃいない。だけど・・・俺はもう決めたんだ。金よりも・・・プライドよりも・・・大切なものを」
『大切なもの・・・』
「あんたもそうだろ?口では自分の為とか言ってるけど、あんたも・・・大切なものの為に戦ってるんじゃないのかよ?」
『・・・そっ、何となく分かったかも』
「?」
『あの時のあなたの気持ち。私も・・・ちょっと言い過ぎたかも。あなたにはあなたの事情があるのね』
「なんか、そう言われる釈然としないな。まぁ、いっか」
『理解した。なんて、バカにでも言えるセリフで誤魔化すつもりはないわ』
「人はそう簡単には理解し合えない。どうやらあんたの質問に答えるには・・やっぱり、こいつでないと無理そうだ」
『ふふ、それには同感するわ。さっ、始めましょう。私たちの戦いを』
そして、試合開始のブザーが鳴った。
先に箒が突撃する。前回と同様、一対一作戦でいくのだがあの会長のことだ。乗ってくれるとは限らない。
と、思った案外会長は俺の誘いに乗って上空に飛び立ったオルコットと追う箒を見逃した。
「こっちも行くぞ!」
俺はライフルとマシンガンを撃ちながら接近する。しかし、彼女は目の前に水で出来た盾によって弾丸が止められる。
「なるほど、それが自慢のナノマシンって奴か」
厄介だな。水を自由自在に操るってことは、それを使って攻撃も防御も出来る。
どうにかして打開策を考えるもゴリ押しでなんとかしようという結論に至った。
「はぁぁっ!」
肩に装備してある十二発のミサイルを放つ。爆発が彼女を襲う。だが、煙が晴れても彼女は健在でケロッとした顔でその場に立っていた。
なるほど、俺が思っている以上にあの水は厄介だな。だが、今のミサイルで少しは削れたか?
『今度はこっちから行くよ!』
そう言ってランスを構えて突撃してくる。
対する俺は軽くジャンプして正面から突いてきたランスを横から蹴ってその軌道をずらす。そのまま上手く上空に飛んで彼女の真上から弾丸の雨を降らせた。
『っ!やるわね!』
今のは多少なからずダメージはあったが、あまり期待はしない方がいい。俺のライフルもマシンガンも大した威力ではない。
もっと当てていかねばならんのだが、あの水はダメージを軽減するのではなく完全に弾丸を止めている。
少しでもダメージがあるならまだしも・・・。
『喰らいなさい!』
そう言って水で出来たウィップを横に薙ぎ払ってきた。思わずジャンプして避けるがそれを待っていたとばかりにウィップが脚に絡まった。
「っ!」
『はぁぁぁぁぁっ!』
そのまま彼女は反対側に向かって俺を思いっきり地面に叩きつけた。
「がぁぁぁぁぁぁっ!」
衝撃でウィップは外れたが上空からランスを下に向けて落ちてくる。直ぐにその場から一旦離脱して距離をとったが追撃するようにランスに装備してあるガトリングガンが火を噴く。
『私が逃すとでも?』
「はっ、やな女だぜ」
お互い銃弾を浴びながらもそのトリガーを引くのを止めない。
ちっ、このままだとジリ貧だ。どうにかして奴の懐に入って一撃叩き込まないと。だが、あの水を操る能力が面倒なのは本当だ。どうにかしてあれを突破出来る武器がないと・・パイル・・はダメだ。
あの女だ。あんな大振りの武器じゃかすりともしない。
一夏とは違って余裕を見せながらも油断はしない。計算高い女だ。
「こうなれば・・・・」
ムラクモは完全修復は出来なかったが、俺はムラクモを外して代わりにあの逆曲刀剣を入れている。
あいつならあるいは・・・・。
俺は再び距離を取って着地した。
「本気でいかせてもらうぞ」
『へぇ・・・いいわ。来なさい。私はその力よりも上へいく力であなたを倒すから』
なるほど、お互いまだ出していない攻撃あるって訳か。
チラリと箒の状況を確認する。お互い割とシールドエネルギーを減らしているが、若干箒のほうが優勢である。勝敗がつくのも時間の問題だな。
「さて・・・いこうか」
俺は右手のライフルをしまい、代わりにあの逆曲刀剣を展開しようとした。その瞬間だった。
『警告!上空に高熱源体!』
警告が表示された時には既にそれはアリーナの天井を突き破って地面に落ちた。同時に観客席のシャッターが閉じるがその出入り口にはロックがかかって出るに出られない状況になってしまった。
「敵か・・・」
俺は会長との戦いを一旦中止して上から落ちてきた物体を見た。箒やオルコット、会長も流石にこの緊急事態にまで戦うほどバカではなく、全員でそちらを見た。
『皆、気をつけて・・・』
徐々に煙が晴れていく。と、そこにはあの時の黒いISが立っていた。
『久しぶりだな・・・今度こそ死んでもらう』
右手にパルスマシンガン、左手にショットガン、あの時の・・・あのISだ。
そう言って黒のISは射撃しながら接近して来た。
「あいつ、正気か・・仮にもこっちは四機いるんだぞ」
「だが、私たちが消耗しているのは事実だ。油断するな、行くぞ!」
そう言って箒が先頭切って黒のISに向かって突撃した。
「分かった。オルコット!会長!援護頼むぜ!」
『分かってるわよ』
『任せてください!』
レーザーとガトリングの雨の中を俺と箒が飛ぶ。俺はライフルとマシンガンを撃ち、箒は二本の刀で向かってくる攻撃を全て弾く。
『っ!なるほど・・・』
迫ってくる俺たちに黒のISはまだ余裕の笑みで攻撃してくる。
『援護射撃は厄介だな。候補者ではないが・・』
正面からの箒の一撃を避けて箒を踏み台に後方へと飛ぶ。会長が飛んできたところを迎撃に移るのだが牽制ショットガンに思わず後退する。それを好機に黒のISはオルコットに向かって飛んだ。
『なっ・・食らいなさい!』
ブルー・ティアーズから離れたピットが射撃するが黒のISはそんなもの関係なしにオルコット向かって飛んでいった。
無論、ピットを操作している以上は反応が遅れて回避行動など間に合わない。
『っ!?』
『落ちろっ!』
そう言ってパルスマシンガンを捨てて右腕に展開したレーザーブレードでオルコットを叩き斬った。
『キャァァァァァァァァァァッ!』
ブルー・ティアーズはそのまま地面に叩きつけられる。
「っ!」
残り少ないエネルギーは切れており、オルコット自身もあまりの衝撃に意識を失った。
『セシリアちゃんっ!』
今度は会長が黒のISに向かって突撃する。俺と箒も会長の後を追うように黒のISに向かって飛ぶのだが、オルコットを落としたあのISは調子がいいのかショットガンを器用に使って接近し、チャンスがあればレザブレを振ってくる。
「っ!?」
「地味に強いな・・・」
隣で箒がぼやく。箒はオルコットとの戦闘で消耗しているので迂闊に飛び込むことは出来ない。
やはり俺が前に出るしか・・・。
『二人とも退いて!これで一気に決める!』
見れば会長のランスに防御装甲とし使用されていた水が集中し始める。
「箒!」
「ああっ!」
会長の声に俺と箒は素直に従って後方へと一旦下がる。その瞬間、会長の水色の機体が加速しながら黒のISに向かって突撃していく。
蛟の如くその凄まじい勢いに相手も動くことが出来ず正面からその一撃を受けた。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
『うぉぉぉぉぉぉぉ!』
黒のISはそのランスを両手で受け止める。すると、少しずつだが会長のスピードが減速していく。
あの野郎、なんて力なんだよ。だが・・これ以上は・・。
「箒!お前のスピードで会長を後ろから押せ!」
「わ、分かった!」
不意に脳裏に過ぎったアイデアを箒に言うと箒はすぐ会長の背中を勢いよく押す。一対二だ。流石のあのISもそのパワーに勝ることは出来ず徐々に押され始める。
『ぐっ・・がぁぁぁっ!』
『『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』』
二人の声が重なり、ランスが奴に突き刺さった。大きな衝撃が二人と黒のISを襲ってお互い後方へと一旦下がる。
「箒、どうだ?」
『ああ・・・手応えはあった』
箒は確実に仕留めたと。少し前にいる会長も笑いながら言った。
『大丈夫。私も手応えは感じたから』
キィンッ!キィン!
と、敵がまだいるという警告が鳴った。が、その時には既に遅く黒のISが会長の無防備な背中に向かって飛だと時だった。
「逃げろ!」
彼女が振り返った瞬間、黒のISは持っているレーザーブレードを大きく振りかぶった。
『え・・・なんで・・・がっ!・・う・・そ・・・・』
次回でタッグマッチは終了して原作とは違う感じの話になってきます。
ご了承ください。