「り、里穂は!?里穂は・・無事なんですか?」
箒は千冬に迫る。千冬は箒の頭を撫でながら、
「大丈夫だ。あいつは無事だ・・だが、ちょっとあってな。今は面会はできん。だが、もう少しすれば大丈夫だろう」
「そ、そうですか・・・良かった・・良かった・・・・あ・・・あ・あ・・・・」
その千冬の報告を聞いて箒は少しずつ涙を漏らした。ただえさえ極限状態で戦っていて、しかも自分を庇って里穂が何らかのダメージを負傷して倒れた。
見事敵を倒すことが出来たがそれ以上に倒れていった者が大きすぎた。
そして、千冬の報告を受けて箒はその場にへたれ込むのと同時に涙が出た。
「・・・はぁ、里穂の奴め。女を泣かせるなど・・・ほら、箒。そんなに泣いていたら里穂に会える顔がないだろ?」
「う・・・あ・・・は・・はい、すみません」
箒は目をこすりながら千冬の手を借りて立ち上がる。
「あっ、箒ちゃん?」
ベットでは楯無が寝ていた。意識はあるようで傷自体そんなに大きなものではなかった。
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。傷は浅かったから。それよりも・・えっと、日下部君だっけ?あの子は?」
「ええ・・ちょっと、今は無理らしいですけど・・・もう直ぐしたら面会出来ると」
「そっか・・・良かった」
楯無は箒のその言葉に少しだけ安堵する。
「私ね・・・丁度、家とか妹のことで色々とイライラしてたんだ。それで、つい彼に八つ当たりしちゃって・・・」
「・・・・・・」
「ホント・・バカよね。結局その子に助けられちゃって・・・私の方が何も・責任も義務も果たせてなかった」
楯無はそう言った。
「里穂は・・器用に見えて不器用で、作り笑顔が下手で、唐揚げが大好きで・・それで・・それで、死ぬことを恐れていた。けど、最後は私と一緒に戦ってくれることを選んでくれました」
箒はそうここ数日間のことをしみじみと言った。
「だから・・里穂が例え何者であろうとも、私は里穂を信じることにしたんです」
実際に彼女が里穂と直接出会って、会話をして、頭ではなく肌で感じたことなのだ。それを誰にも否定することは出来なかった。
楯無はそれを箒のその言葉、そして戦いに出向いたあの背中を見て頭ではなく心で感じた。
「そっか・・・じゃぁ、大事にしないとダメだね」
「はい・・・里穂は、私の大切な人ですから」
「・・・?箒ちゃんって、里穂君のこと好きなの?」
と、不意の楯無の言葉に箒は真っ赤になる。
「なっ、何をいきなり言うんですか!?わ、私は別に・・・里穂のことなんて・」
「ふぅん、私はてっきりそうなんじゃないかなって思ったんだけど・・」
(そうだ、別に里穂のことは大切だと思っているし、好きだ。だけど、あ、愛しているという意味ではなくてでな・・・けど、一夏以上に・・・・・あんなに自然と話せたのは久しぶりだな・・ふふ、今にして思えば里穂との生活は苦難の日々だったな。あいつはいつも私のことばかり庇ったり、助けてくれたり・・・里穂・・・)
「けど、彼だってここまでするかしら?」
「?」
「体を張ってでも守りたい人なんて・・・彼は箒ちゃんのことがよっぽど好きなのね」
「やっほーーー!!じゃっじゃーーん!束さん参上!!」
三時間後、医務室のドアを突き破っていきなり篠ノ之束が登場した。その勢いは相変わらずなものだった。
「久しぶり」
「うんっ!里穂君!久しぶりっ!ああ・・派手にやったねぇ」
彼女は俺の左腕が欠損しているのを見て言った。
「流石にあれだけの強敵を無傷で倒せるなんて思っちゃいないさ」
「へぇ・・・」
「ん?」
「なんか、大人になったね?」
感心するように篠ノ之束が言う。
「うるさいよ・・ただな」
「ただ?」
「昔のことを思い出しんだよ」
「へぇ、昔のことね。それって、この世界に来る前が傭兵だった頃の話?」
「ああ・・俺には親がいないんだ。物心ついた時から戦場で俺はバカスコ銃を撃った。AC適正があると言われた時は俺はACに乗った。それから傭兵としてひたすら戦った。そして、代表って奴に雇われたことがあったんだ。企業の連中と一緒に反抗するレジスタンスをぶっ殺した。俺は一切の感情を押し殺すことで、完璧な戦士へとなった。だけど・・その戦いで思ったんだ。何か違うって・・結局、俺は代表や企業を裏切ってレジスタンスの方についた」
一年間、色々な経緯の果てに俺はレジスタンス組織に加わった。
「その戦いで俺はレジスタンスのリーダーと直接相対したんだ。後で知ったんだが、俺がレジスタンスに雇われた時にはそのリーダーの娘が今度はリーダーやっててよ。あいつら、何も言わず俺に全てを任せるんだ・・笑える話だろ?一年前までは自分たちのリーダー追い詰めたくせに、何食わぬ顔で俺を迎えるんだ・・・それでも、あいつらとの時間はなんだか心地よかった」
あれが俺には耐えられなかった。
だから、全てが終わった時、俺は少しだけ嬉しかった。もう何も縛るものはないって・・けど、それでも過去からは逃げられない。世界が、時代が、人が変わろうともそいつは呪いのように俺の後ろからついてくるのだ。
「俺はさ・・怖かったんだ」
「怖い?」
「ああ・・死ぬことが。戦って自分の命を失うことが」
「どうして今になって?前の・・傭兵だった頃の里穂君はそんなこと思わないでしょ?」
「ああ・・恐怖っていう感情も押し殺したから・・・けど、お前と会ってこの世界に来て・本当に楽しかった。心から良いって思えるようになったんだ。こんなに心が躍ることはないと」
だから・・・だからこそ俺は恐れた。
「だけど、それ以上にそんなお前たちを守りたいと思ったんだ。この命を使ってでも」
俺は体を起こして彼女の頭を撫でる。
「だからさ、束。お前の大切なもの・・守るよ」
軽口ではないことを証明する。あの紅蓮と出会った時にみんなが、あいつらが俺に言った言葉を思い出した。過去が俺の力になってくれる。それを糧に俺は束や箒たちを必ず、必ず守ってみせる。
と、彼女はいきなり俺に抱きついてきた。
「やっと・・呼んでくれた」
「・・・え?」
「やっと・・・下の名前で呼んでくれた」
見ればウルウルとした目で俺を見ている束がいた。
ああ・・・そういうことか。
「まぁ、いつまでも名字付きなんて言いにくいと思ってたしな・・・」
「・・・・そっか・・・うん、ありがとう。里穂君・・・さぁっ!じゃぁ、はじめよっか!」
「始める?一体何を?」
キランッ!と束の目が光る。
「ふっふっふっ・・そりゃ、欠損した腕を元通りに戻すのだよ!」
「戻せるのか!?」
「この私を一体誰だと思っているの!?人間の腕の一本や二本問題ナッシングだよっ!」
「・お・・おお。凄いな」
「うん・・・だから、ちょーと痛いけど我慢してね?」
束はウインクしながら少しだけ怖いことを言った。彼女がちょーとや、少しという単語を幾ら加えようと痛いものは痛いのだ。
まぁ、それだけの痛みを伴う価値があると俺は思う。
俺は覚悟して目を瞑った。
「私の為に・・・」
私、篠ノ之箒は頭を悩ませながら寮への道を歩いていた。それは先ほど、更識会長が私に言った言葉が原因だった。
『体を張ってでも守りたい人なんて・・・彼は箒ちゃんのことがよっぽど好きなのね』
どうして、里穂は私の為にあそこまで戦うんだ。普通はあそこまではしない。けど、里穂の言葉をつなぎ合わせると私に自分の命を賭けるほどの価値があると。
そういうことになる。
「私に里穂が命を張るほど・・何かある訳じゃないのにな」
例え依頼であってもあんな風に助けたりしない。自分の命と天平したら分かるはずだ。死んでしまったら意味ないから・・・。
私は里穂に死んでほしくない。彼といて楽しかったから、失いたくないと思ったから。
「里穂にとって私は大切なのか・・・私は里穂を」
どう思っているんだろうか?
友達だと思っているのは確かだ。だけど、そう認めているのに・・何か胸に引っかかるのは何故だろうか・・・。
私的には第一章完って感じです。
次回から色々とオリ展開になります。
次回もよろしくお願いします!