紅に吠える傭兵   作:青野

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最後かもしれない

 

 

 作戦開始が明後日となった今、俺は明日にはここを離れなくてはならないことになっていた。

 

「今日で寮で飯食うのも最後か」

 

 そう思って俺は寮へと足を運ぶ。

 

「おお!里穂、一緒に飯食おうぜ」

「ああ」

 

 いつものように唐揚げ定食を選んで俺は和風定食を食べている一夏の横に座った。

 

「あ、そういえばお前生徒会に入ったんだって?」

「あ・・・うん、半場強制的になんだけどな。まぁ、生徒会活動自体あんまり厳しくないから別にいいんだけど」

「まぁ、部活に入ってないんだったらいいんじゃねーの?そういうのも。学生のうちにだけ体験出来るもんなんだし」

「分かってるよ。なぁ、明日の放課後って空いてるか?ちょっとISの手ほどきをだな」

「あー、折角のお誘いなんだが、どうやら明日は予定があってな。なら、箒に言ったらどうだ?」

 

 そう言うと一夏は少しだけ考え込むように腕を組んだ。

 

「あいつなぁ・・・」

「ん?」

「箒の奴、最近なんだ変なんだよ」

「変?」

「ああ・・・俺たちとIS訓練している途中もどっか上の空でさ。何かブツブツと言っているし・・うーむ」

 

 箒が・・・いや、知らねーな。最近ということは昨日今日の話ではない。ここ数日間のことだが、俺の前じゃ全くそんな仕草は見せないんだがな。

 まぁ、女の子にも色々とあるんだろう。そこは俺や一夏が口を出すところではないだろう。

 

「なんつーの、女にも色々あるんじゃないのか?」

「ふむ、そういう問題か」

「ああ、特別俺たちが何か言うほどのことでもねーよ。俺たちが思っている以上に女って生き物は強いんだよ」

「それは体験談か?」

 

 そう聞かれて俺は一瞬、あの運び屋。ロザリィのことを思い出せるが、全く持ってその通りだ。

 金、金と言っていた女は最後には自分の居場所を見つけた。それは誇ってもいいところであり、意地っ張りな男よりも素晴らしい点だと言えよう。

 

「そうだな。俺の友人も強かったさ」

 

 ここでの夕食を終えて俺は部屋に戻っていく。すると、向かい側からラウラがやって来た。

 

「やぁ、里穂。なんだか久しぶりだな」

「ああ、ラウラ。久し「ねぇ!今日は織斑君の部屋でトランプしようよ!」・・・」

 

 と、俺の声を遮って複数の女子が走りながら一夏の部屋へと目指していく。

 

「全く、今は戦時中だというのに能天気なものだ」

「まぁ、あれだけはしゃげるなら俺の役割は十分果たせている証拠だ」

 

 ラウラも箒と同じく俺が束の依頼で色々と出撃をしているのを知っている軍事関係者だ。本当ならばラウラも戦線に赴く必要があったのだが、IS学園の都合上はここに危機がない限りは戦うことは出来ない。

 俺の場合は俺自体が生徒という前に束のものという認識がある為、別に変に言われることはないが、そろそろ風邪というのも無理がある気がする。

 まぁ、その変は織斑先生が上手い感じに調整してくれているのだろう。

 

「明後日ということは、明日には発つんだな」

「まぁな。明日の朝には行かせてもらう」

 

 そう言うとラウラは微笑む。

 

「なんだか、お前と私は少し同じ空気を感じていたんだが、やはり違ったな」

「何も違わないさ。俺もお前も立場が違えど、同じ人間さ。愚かで、臆病で、弱いな・・まっ、やれることはやるさ」

 

 俺は一歩前に出てラウラの隣に立つ。

 彼女とは向いている向きが違えば、生き方も、価値観も違う。戦うという点においては同じかもしれないが、それでも俺たちは同じ人間なのだ。

 

「なぁ、里穂」

「なんだ?」

「箒のこと、泣かせるなよ」

「・・・・・」

「お前も、気づいているんじゃないのか?」

「・・・何に?」

「本当は、箒のことを・・・愛しているんじゃないかと」

 

 分からない。それがこの前の俺の答えだ。

 

「わから「逃げるな」・・・それは強い者の言い方だ。俺は一夏じゃない」

「・・なら、これだけは約束してくれ」

「なんだ?出来るものなら約束しよう」

 

 数秒してラウラは俺に言った。

 

「死ぬな・・・それだけだ」

 

 それだけ言うとラウラは一度も振り返ることもなく歩いて行った。

 

 死ぬな・・・か。きっと、俺じゃなくても皆、こういうんだろう。

 

「難しいことを言ってくれる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、自室に戻って俺は天井を眺めていた。少し前にあったタッグマッチトーナメントが懐かしく思えるのは俺だけだろうか。

 ここ数日は随分と多忙だったからな。

 

 明日は作戦の為、他のISパイロットと意見を交わし、明後日には出撃。もしかしたら、ここで寝れるのも最後かな・・・。

 

 そう思うと少しだけ涙腺が緩むのが分かるが、急いで溢れてきた涙を拭い去る。

 

 コンコン

 

 と、誰かが訪問して来た。

 

「どうぞ」

「邪魔するぞ」

 

 すると、中に入ってきたのは寝巻きの箒だった。いつもの凛とした表情は何処となく消え失せ、少ししおらしい彼女がそこにいた。

 

「どうしたんだ?」

「あ、ああ・・・挨拶をだな・・・」

「・・・ああ、それもそうだな。もしかしたら、これが最後になるのかもしれないからな・・・」

 

 その言葉に箒は少しだけ俯く。

 俺は彼女の前に出る。その表情は見えないが、兎に角俺は言葉を言った。

 

「明日の朝にここを発つ。これが最後の戦いになると思う・・・財団も、死神部隊も。全部終わらせて来る。だからさ、待っていてくれないか?」

「・・え・・?」

「俺が戻ってくるこの居場所で待っていてくれ、箒」

「・・・うん・・うん、分かった・・分かったから・・・死なないでくれ」

 

 箒は泣いていた。顔こそ見せてくれないが、床には涙が落ちた跡がある。声からしても彼女が泣いているのは分かった。

 バカだな・・俺も。女を泣かすなんて・・・。

 

 悔やむばかりだ。つくづくこんな時にいい言葉を言えない。

 所詮は俺は俺であり、それ以外の何者でもない。足掻くことしか出来ない、一人の滑稽な人間だ。

 

「じゃぁな・・・里穂」

 

 そう言って箒は外に出た。今の俺にその背中を追うことは出来なかった。その後、生徒会長と更識簪が俺の部屋にやって来てタッグマッチのことを謝りに来た。

 少し馬鹿にしすぎだと。

 俺自身、もう過去のことなのでこれといって何も言うことはなかったが、二人はそれでもちゃんと謝罪をしてきた。

 

 そんな感じに俺の最後かもしれないIS学園での一日が終了した。

 

 

 

 

 




次は戦闘?になりますかな。

それと
このホワイト・グリントは財団がアスピナの傭兵と言っているので
オペレーターもフィオナではなく別人です。
つまり
パイロットはあの人ですね

ISの設定上、男パイロットも一応女性ということになりますが、口調は変わらないようにします
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