紅に吠える傭兵   作:青野

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銀の福音

 

 

 今現在篠ノ之束が妹の篠ノ之箒に紅椿の説明やらなんやらやっている。それを俺は遠目で見ていた。

 今回のことについては篠ノ之束の護衛も兼ねている。彼女自身かなり強いが、周りに戦力を置いて置く事については問題はないらしい。

 

「それにしても・・・・」

 

 他の生徒はあまりいい気分ではないだろう。篠ノ之束は贔屓して妹に専用機を与えるのだ。それも高スペックのISをだ。

 今まで窮屈な訓練機だったのが、大きな力を手に入れて浮かれるのは見えているのに。

 

「ん?」

 

 急に向こうの方が慌ただしくなってきた。

 

「さっ、リオ君出番だよ?」

「で、出番?」

「うん、アメリカの『銀の福音』を暴走させたんだ。それに、箒ちゃんといっくんを向かわせるの」

「!?あんた本気なのかよ!」

 

 動揺した。

 

「うん、本気だよ?だって、箒ちゃんを表舞台に出す、デビュー戦を用意しないといけないもの」

「・・・・篠ノ之束、あんたが妹を溺愛するのは分かるが、少しばかり気にかけすぎじゃないのか?それに、見た感じだとかなり浮かれてるぞ、あの女」

「でもねぇ、それを乗り越えてくれないと強くなってくれないから・・・」

「危ないぞ?」

「そんな時の君なんだよ!」

 

 と、俺の肩に手を置いた。

 彼女のウサ耳がピコピコ動く。

 

「銀の福音は二人で倒せるようにしたけど、どうにも周りをウロチョロしている輩がいるんだよね」

「ウロチョロ?」

「うん、こっちから色々やっても何もしてこないんだよねーー。だから、リオ君にはレーダーに映らないギリギリで待機してもらって、もし怪しいのがいたらやっつけて欲しいんだよね」

「なるほど、分かった。だが、紅椿のスピードには追いつけないぞ」

 

 既存のISのスペックを上回る紅椿に追いつくことは出来ない。

 

「大丈夫!ここは天才束さんにまっかせなさーーい!じゃん!!!VOB!」

 

 五基のジェットエンジンがそこにあった。

 

「束さんが作った、超遠距離飛行に使用するように作ったジェットパック!これで、紅椿と同じスピードが維持できるよ!」

「あんたは・・・」

「さぁ、紅蓮に装備しよう!」

 

 俺はISを展開して、背中のブースト部分にVOBを装備した。

 

「エネルギーは距離の分しかないけど、別に戦闘に入った瞬間パージしても問題ないから。それと、もしいっくん達が危ない時は、構わず助けてあげて」

「分かった。そうさせてもらう。これも依頼だからな」

「うんうん、素直でよろしい!」

 

 見れば、紅椿と白式が飛び立とうとしていた。

 

「それじゃぁ、行ってきます」

「うん!頑張ってね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅椿の斜め後ろを飛びながら周辺を警戒する。すると、レーダーにISの反応があった。一機、高速で移動している。ハイパーセンサーで確認した。

 黒いISだ。フルアーマーで全身を覆っていて、顔は見ることが出来ないが、倒して剥ぎ取れば問題ないだろう。

 武装は・・・。

 VOBに備え付けられているガトリング砲が二門とミサイルがある。

 スピードに機動力を割っている分、小回りが効かない。

 取り合えず大回りして、奴の後ろについた。

 

「正体不明のISに告ぐ。この領域は・・・・」

『ロックされています』

「っ!」

 

 次の瞬間こちらに向かって七発のミサイルが飛んで来た。

 

「ちっ!回避はムリだ!」

 

 俺は軌道修正してミサイルの前になるよう移動した。そのままガトリング砲を撃ち鳴らす。

 ミサイルはあっという間に撃墜され、黒煙になった。

 

「やってくれるじゃねぇか・・・・」

 

 俺に先制攻撃したこと後悔させてやる。

 と、オープンチャンネルで通信が来た。

 

『邪魔をするな』

「悪いな。これも依頼なんだ」

『・・・傭兵か?』

「そうだ。フリーの傭兵だ」

 

 次はこちらから搭載されている全三十発のミサイルを全て発射した。ミサイルは扇を描きながら黒いISに向かって飛んで行ったが、奴は持っていたマシンガンで次々と撃墜した。

 二発着弾したが、大したダメージが与えられていないようだ。

 

『・・・貴様・・・邪魔をするというのなら相手になろう。俺は手段は選ばん、これが使命だからな』

 

 すると、後ろから二機のIS反応があった。

 

「・・・・・」

『『敵IS確認。中量二脚。殲滅を開始』』

 

 来た。

 後ろからバトルライフルとマシンガンを装備したISが来た。射程に入り次第早速撃って来たが、スピードはこちらの方が上。距離を空けようとするが、前からあいつが接近して来た。

 

『死ね』

 

 放たれたキャノンがジェットパックに被弾した。

 

「ちっ!」

 

 直ぐにパージしてメインブースターに切り替えた。そのまま前に突き出していたマシンガンとライフルを構えるが、圧倒的に弾数は奴らの方が多く被弾する。

 

「くそっ、地味にエネルギーを持っていかれるな・・・」

 

 数十分したところで、あのISが反転した。

 

『ふん、イレギェラーめ。いいだろ、この場は見逃してやってもいい。だが、俺達をあまり甘く見るな』

 

 そう言って残りの二機と一緒に来た道を戻り出した。

 

「・・・・何だったんだ、奴ら?」

 

 あの謎のISに俺は頭を捻らせたが、あまりこちらの詳しい知識がない分、相手が何なのか、俺は到底無理な話だった。

 

『はーい!こちら束さんだよー!!大丈夫?生きてるー?』

「あ、ああ。問題ない。戦域に侵入して来た不届き者はおっぱらったよ。撃墜まではいかなかったが」

『全然問題なっしんぐ!!けど、ちょぉぉぉぉといっくんと箒ちゃんがピンチなんだよね。撤退の援護してくれないかな?』

「分かった」

 

 俺は急いで紅椿と白式の方へ飛ぶ。

 撤退ということは、見事に作戦は失敗したということであろう。まぁ、別にそこはどうでもいいんだが。

 見れば、ライフルが破損で仕えなくなったので捨てた。次の任務は撤退の援護なので、両手にマシンガン。

 弾幕を張って邪魔をすれば問題なかろう。

 

「あれが・・・・銀の福音」

 

 見れば白いISが二機のISを追撃している。紅椿の背中には白式が乗っており、ピクリとも動かない。

 

「・・・織斑の方がやられたか」

 

 俺は速度を上げて紅椿に掴みかかろうとした銀の福音を思いっきり蹴っ飛ばした。銀の福音は突然のことで動揺したのか機体を回転させながら海に落ちていく。

 

「篠ノ之箒だな?」

「だ、誰だ貴様!?お、男!」

 

 凛とした美人が慌てふためていた。だが、今俺がISを使えることなどどうでもいい。敵は態勢を立て直したこちら向かって来る。

 

「安心しろ、俺は仲間だ。そよりも、その少年を先に拠点まで連れて行った方がいいだろう。俺があいつを引きつける」

「だ、だが!」

「足手纏いだ」

 

 それだけ言って、俺は銀の福音に突っ込んだ。福音はその両翼からエネルギー弾を複数放って来たが、両手に持っていたマシンガンで自分に命中して来そうなものを全て相殺していく。

 接近を許すこともなく、マシンガンで牽制しながら俺も徐々に後退し始める。

 紅椿が超高速に入り、俺も撤退しようと思った瞬間、脚部と肩に被弾した。

 

「っ!」

 

 一瞬減速した次の瞬間、福音が俺の目の前に移動して強烈な蹴りを一撃腹で受けた。海へと落ちていくが何とか体制を立て直して、福音を無視して海の上を高速で飛ぶ。

 福音は更に追撃を開始して来た。

 出撃前に福音のスペックを確認したが、データではこちらの方が上だ。だが、俺はISを使い始めて一年も経っていない。

 福音のパイロットの腕がどんなものかは知らないが、今の俺には勝機が見つけられなかった。

 

「クソッ!」

 

 更に腕と腰に追加攻撃を食らう。 

 俺のISのブースターは脹脛の後ろと背中についている。ここに大きなダメージでも受けてしまったら高速移動なんて出来ない。

 俺は海に背を向け、マシンガンで奴を牽制した。おかげか、俺は何とかIS学園の拠点まで戻ることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、危なかったねぇ?」

「って、まぁまぁ強いんですけど?あれ、束さんのせいですよね?」

 

 砂浜に俺は着陸しながら迎えてくれた篠ノ之束にそう言った。彼女は二ヒヒと笑う。

 

「まぁ、織斑一夏の戦闘データを一度見ましたが、確かに福音を白式だけで倒すのはムリがありそうですけど?それに、篠ノ之箒もまだ扱いきれてないんじゃないですか?」

「確かにそうだけど、これからだし?若いし?」

 

 篠ノ之束は笑いながらそう言った。

 

「・・・・それで、これからどうするんですか?」

「うーんっとね、多分箒ちゃんたちがいっくんの仇討しに行くと思うから、一緒についてってくれないかな?他の奴はどうでもいいから、一応ね?」

「・・・分かった。ただ・・・ちょっと、紅蓮を無理に動かし過ぎたかも・・・」

「それでも、初の殺し合いにしてはいい方じゃないのか?」

「別にこれが初って訳じゃないさ。ただ、戦場が違うだけさ・・・」

 

 俺はISを解除した。

 篠ノ之束の話では、旅館の一番奥に俺の部屋があるらしい。

 

「それじゃっ、ちょっと休ませてくれ。紅蓮のエネルギーも回復させないと」

「んー、分かった。しっかり休んでねー」

 

 手を振る篠ノ之束を背に俺は旅館に歩き出した。偶然にも旅館内では誰とも会わなかったが、各自の部屋が色々とうるさい。

 話題は福音と紅椿、織斑一夏の話である。

 撃墜、危ない、まだ生きてるなどなど色々耳に入って来る。

 

「ここか・・・」

 

 俺は旅館の端の一番後ろに行く。

 篠ノ之束曰く、俺のことは既に大体は話してあるらしく、物事はスムーズにいくと話していた。

 織斑一夏の状態だが、かなり危険ということぐらいしか俺には分からない。まぁ、死んでいないのなら問題ないか。

 暗い部屋で俺は一人、先の戦闘データを見ていた。紅蓮は篠ノ之束が見ているらしく、もう少しすればエネルギーと破損部分を全て回復してくれるらしい。

 流石は天才。

 

「あの・・・・」

 

 暗い部屋にそんな声が響いた。

 黒髪ストレートの少女が俺の部屋に入り口に立っていた。その顔は酷くやつれていて、疲れているようにも見えた。表情も暗く、下を向いている。

 

「何か?」

「あなたが、私と一夏を助けてくれたんですね。お礼を言いに・・・」

「そうか。用が済んだら、さっさと織斑のところに行け」

「っ!・・・すまない」

 

 そう言って、少女は暗闇の中に消えていった。

 正直に言えば、俺から特に言うことはない。彼女らの知り合いでもなければ顔見知りでも友人でもない。

 敢えていうのなら、護衛、任務。そんなところだろう。

 しかし、それは学園から。つまり、二学期からという約束であった。今回の臨海学校については例外に過ぎない。

 だからといって彼女たちをないがしろにしている訳ではないが、出会って数秒の彼女にただ単に何を声かけたらいいのかは分からない。

 篠ノ之箒と織斑一夏の関係は俺に分からない。少なくとも、友人関係だというのは分かるが、俺は彼女らを知らないのだ。

 別に夏から彼女らの事情に関わって来る俺にとっては、別に今知っておいても損はないが、知らなくても別にいいのだ。

 そこまで求める必要はない。

 俺がそう判断しただけだ。

 

「やっほー!紅蓮直したよー!」

 

 と、篠ノ之束が部屋に入って来た。右手には赤い首輪がある。紅蓮の待機状態だ。

 

「悪いな」

「ぜーんぜん!問題ないよー!」

 

 俺は紅蓮の機体データをもう一度チェックする。うん、問題ない。

 

「そう言えば、箒ちゃんたちが何やら福音ちゃん落としにいくとかなんとか、話してたような気が・・・」

「えっ!?割と重要な話じゃない?俺のこと話したんだよね?」

「・・・あ」

 

 ・・・・。

 

「まぁ、その場で自己紹介して俺も参加すれば問題ない」

 

 俺は紅蓮を首に装備し、部屋から出て行く。

 彼女は少しだけしゅんとしていた。自分のせいで織斑が怪我を負い、妹については心に傷を負ってしまったのだ。

 少しは彼女なりに反省しているのかもしれない。

 俺はポンと彼女の頭に手を置いた。

 

「俺は傭兵だ。依頼は必ず成功させる。だから、もう悔やむな・・・」

 

 そう言って篠ノ之束の頭の上に手を置いた。

 

「・・・・・ふ、ふんっ!リオ君のバカっ!」

「なっ、何で!」

「まっ・・・・ありがと」

「・・・・・・」

 

 空を見上げた。

 彼女は腕を組んでそっぽを向く。そんな動作でさえ、少し可愛らしく見えたのは俺のだけの秘密だ。

 

「それじゃ、行って来る」

 

 今はただ、依頼をこなそう。

 

 




連続です。
箒ヒロインのはずが、若干束とイチャイチャしすぎましたねww
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