紅に吠える傭兵   作:青野

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傭兵と死神

 

 

 

 

 

 

結果から言えばスピリット・オブ・マザーウィルの残骸からは財団と思われる人物は出てこなかった。

 搭乗員名簿から名前がない為、最初からいなかったのではないかと言われている。

 そして、その直前に財団の所在が明らかになったという情報があり、俺と束は最終決戦へ赴くべく大型ヘリに乗り込んだ。

 

『全く、死神も財団と組んで変なことするよね』

「変なこと?」

『ISパイロットを狙い撃ちで殺しているんだって。それも君みたいな腕利きばかり。まぁ、確かに今は戦争中だからそういうのは分からなくないんだけど、参加してない企業や国のISを潰して何がしたいのかな?』

 

 確かにそうだ。

 敵戦力を削りたいなら別に無関係なところまで攻撃せずとも、前線でバリバリ戦えばいい。

 なのにどうしてわざわざ無関係な者まで巻き込むんだ?

 

『まっ、それでも自体は収束に向かっているよ。UNACの暴走の原因の分かっちゃったし。財団の最後のAFも倒しちゃったしなぁ・・・残りは死神の連中と、持ち出した例の兵器かな』

 

 スピリット・オブ・マザーウィルの撃破後、連合軍はただちに解体され、元の情勢へと戻っていった。

 が、それでも財団は生存している。死神はまだ生きているのだ。

 

『まぁ、私たちが片付けるしかないらしいけどねっ』

 

 今現在飛んでいるのは財団の兵器が通過されると言われている工場地帯の溝部分である。

 ここではかつて、労働者たちが身を寄せ合って作られた家があるが、今となってはただの邪魔ものだ。

 

『予定の場所だよ。投下するね』

 

 大型ヘリのハッチが開き、俺は紅蓮とともに落下していく。

 

「ふむ・・反応はないな」

 

 センサーにはこれといって反応はなく、俺はそのまま溝に沿って歩く。両側を挟むように鋼鉄の壁が俺に逃げ場などないぞと語りかけてきた。

 

『静かだね・・』

 

 確かに、何も動く気配がない。それすら俺は不気味で異様な空気を感じてしまう。

 

『情報じゃぁまもなく財団の兵器が現るはずなんだけど・・・』

 

 と、こちらに何者からか通信が入ってきた。

 

『その予定はキャンセルだ。傭兵』

 

 見れば前方の溝を塞ぐようにある場所から大型ヘリが飛んでいるのが分かる。すると、大型ヘリから一機のISが飛び降り、壁に着地する。

 同時に右手に持っている大型ライフルを展開した。

 

『見せてもらおう、貴様の持つ力』

 

 次の瞬間、三連装大型ライフルから弾丸が飛んで来る。岩を壁にして弾丸を避けるが、一瞬にして砕け散る。

 

 くそっ、とんでもない威力だ。だが、構えて撃っている以上は下手に機動しながら撃てない!

 高い射撃能力だが、あいつ(警備隊長)ほどではない!

 

 瞬時加速を使って一気に敵の近くまで近づく。この距離では当たらないと思ったのか、やつは大型ライフルをパージでただのライフルに持ちかえてこちらに向かってきた。

 

 俺はお得意の機動力を活かして常に相手の死角に入るよう動く。

 やはり相手はスナイパーだけにあって機動戦には疎いのか、上手く立ち回れてはいないようだ。

 

「はぁっ!」

 

 ミサイルを全て発射する。奴の前に次々とミサイルは撃墜されていくが、それでいい。撃墜されたミサイルを煙幕として使って俺は爆煙の中から前に飛び出した。

 

『っ!』

 

 突き出したライフルが相手の肩にきまり、弾を撃ち込む。その攻撃によって相手は腕部を被弾し、左手の攻撃が鈍くなる。

 

『狂犬がっ!』

 

 俺はライフルをしまって、ムラクモを展開する。俺たちはお互い右旋回しながら銃を撃ちまくる。

 このまま・・・このまま・・・今だっ!

 

 次の瞬間、瞬時加速を使って一気に敵の懐に入り込む。

 やつはこちらにライフルを一瞬遅れて向けるが、無理に体を捻ってライフルの射線から避け、そのままムラクモを相手の腹に叩き込んだ。

 ムラクモはISの腹部にめり込み、相手に大ダメージを与える。

 

「・・・・・・」

 

 敵ISはその動かないまま、地面に倒れた。

 

『バカな・・・この、私が・・・・』

「・・・最後ぐらい見ておいてやる」

『・・ふっ、痴れ者が。まぁ、見させてもらっさ、貴様の力を・・・・』

 

 ISの頭部にある光が少しずつ消えていく。

 

 そして、ISの全機能が停止した。

 

「か、勝った・・・・・」

 

 と、勝利を確信した時だった。

 

『Kまでもか、流石は素養の持ち主だ』

 

 上空に三機の大型ヘリを確認した。

 

『里穂君!次がくるよ!』

 

 まだまだ来るってのかよ!

 

『俺は手段を選ぶ気はない。これが使命だからな』

 

 すると、大型ヘリから三機のISが降り立つ。

 

『データ照合。前回福音戦で邪魔をしてきたISと同じシグナルを感知しました』

 

 なるほど、このシグナルにあのセリフ。あの時のやつでいいっていうことか。隣には改造されたUNACもいるし。

 だが、前回は二脚のISだったが、今回は重武装のタンクになっている。

 相手も本気ってことか。

 

『お人形さんもいるのか。全く、なんでも君たちはここまでするのかなぁ?』

 

 言ってる場合か!

 

 俺は上空に一旦逃げ、再度両手に突撃銃、アサルトライフルを展開する。

 

「ファイヤァァァッ!」

 

 ブースターの出力を最大まで上げて接近してくるUNAC二機を引き撃ちで当てていく。が、流石はカスタマイズされたUNACだ。

 その装甲は分厚いが決してその攻撃スピードは衰えさせない。

 

「ちっ、やっぱり豆鉄砲は俺の趣味じゃねーや」

 

 アサルトライフルをしまい、両手にムラクモを展開する。その瞬間、ブースターを一度切って岩に着地する。同時に敵前方に向かって思いっきりジャンプした。

 再度、ブースターの出力を最大まで上げて敵のカウンターを狙ってムラクモをUNACの脇腹を直撃させる。

 

「次っ!」

 

 直ぐに地面を蹴って反転してきたUNACの頭部を地面蹴り、フラついたところを思いっきり腹部に突き出す。

 

「所詮は人形か・・・」

『俺を忘れてもらっては困る!』

 

 次の瞬間、俺の岩を破壊しながらタンクのISが出現する。肩に装備していたキャノンがこっちらに向かって放たれた。

 くっ、防御が間に合わ――――――

 

「が、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 キャノンが左腕に直撃した。凄まじいその破壊力に義手は耐えられることはなく、義手は破壊された。

 

「っ・・が・・ああ・・・くそがっ!」

 

 接合部分の損傷は大したことはないが、左腕は全く使えない。

 クソッたれが!

 

「舐めるなよ・・・・」

 

 ブースターを起動させてタンクに向かって突撃する。

 敵ISはこちらに向かってオートキャノンを放ってくるが俺は左腕を失っても冷静にそれを避けて残った最後のミサイルポッドを呼び出した。

 

「食らえッ!」

 

 ミサイルポッドは最大で二つある。うち、二つともを使ったのでこれ以上ミサイルを撃つことは出来ないがそれで十分だ。

 

 放たれたミサイルが敵の胸部と肩に着弾する。敵は爆発から逃れようと一旦後方に下がるが、俺の追撃によってキャノンを破壊されてしまう。

 

『ぐっ・・この、俺が・・・負ける?』

 

 俺は最後に残った右手に月光呼び出した。

 

 敵ISは後退するが、壁に背中をブツける。これ以上の撤退は無理のようだ。

 

「恨めよ・・・」

 

 真っ直ぐ奴に向かって突撃する。タンクはこちらに向かってマシンガンを撃ち続けるが、そのもの関係なしに俺はタンクの胴体を月光で斬り裂いた。

 青色の光がタンクを包み、炎の中にタンクに沈んだ。

 

「ぐっ・・・はぁ・・はぁ・・・くそ、また束に頼まねぇと」

 

 俺は帰還する為にその場から移動しようとすると、

 

『あっ、まだ来るよ。敵のISがこちらに向かって高速で接近中』

 

 っ、まだくるっていうのか。

 

『どうにも逃がしてくれないみたいだね』

『そうよ、篠ノ之束。もう少し付き合ってもらうわ』

 

 すると、奥から来た大型ヘリから一機のISが飛び出してきた。

 

 青と黒のカラーリングで、いつか学園祭の時にファントムタスクから一夏たちを助けてくれたISであった。

 

『始めましょうか。私は戻ってきたの』

 

 あの時よりも動きがよく、手馴れた雰囲気を感じる。

 

「はぁっ!」

 

 放たれたショートレンジミサイルを月光で撃墜し、更にもう一歩前へと出る。こちらにヒートマシンガンとレーザーライフルを向けてくる。

 今あの攻撃を受ければ左腕がない以上はこちらに勝目はない。

 俺は一旦急ブレーキをかけてサイドターンをして体を回転させて敵ISの側面へと出る。奴はヒートマシンガンだけでもこちらに向けてくるが、身をかがめてそれを回避する。

 

『っ!』

「食らえっ!」

 

 その瞬間、下から月光の光が敵のISを襲う。

 

 同時に敵のISは一旦後方へと下がった。

 

『少しは勘が取り戻せたか、マグノリア』

『ファントムタスクのオータムと二度戦ったが、やはりまだ私もベストではない。この場は後退する』

「ちょっと待って・・・えっと、誰か知らないけど、あんたは何故こんなことをする?それほどの腕、財団なんかにくれやるには勿体ない」

 

 俺が理由を聞いた。

 

『そういう風にしか私は生きられないから。私が敗れたあの日から、それは決まっていた』

 

 彼女は続けて言う。

 

『財団が仕掛けたこの戦い、死神部隊、全部ひとつのための仕掛け』

 

 仕掛け?この戦いが?

 

『傭兵、あなたのような力の持ち主を見つけ出すため、そして殺すため』

 

 すると、いつの間にか大型ヘリが近づいてきた。そこから誰かの声がする。

 

『彼女も、その可能性を持つ一人だった。秩序を破壊する力、異分子』

 

 敵のISが大型ヘリの中に戻っていく。

 

『彼女は敗北したが、生き延びた』

 

『何もかも焼き尽くす定め、そして、全てを捨ててなお、戦いを止めぬ執念』

 

 

『そのどちらかが本物なのか私は知りたい』

 

『そしてその本物を私が殺す。私は死神だから』

 

 それだけ言うと大型ヘリは俺の前から飛び去っていった。こちらとしても余力がないので、追撃はしない。

 

『イカれてるよ、お前』

 

 いや、お前も言えないけどな。

 と、俺心の中でツッコんだ。

 敵は束の通信をキャッチしていたのか、最後にこれだけ言った。

 

 

 

 

『それの何が悪い?』

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで、
残る死神部隊はJとMになりました

マギーについては死神部隊にはいったところからスタートしているので
若干今までのマギー見てセリフに違和感を感じてしまうところがあるかもしれません
マギーは個人的には好きですが、この作品ではあまり重要視ではありませんが
あの名言はちゃんと出てきます

次回もよろしくお願いします!!
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