「ねぇ・・・ホントに行くの?」
紅蓮に乗ろうとした時、束が俺の目の前にやって来てそう言った。そこにいつもの余裕の表情はない。
「ああ・・・そうだ」
「・・・・今度の相手はヤバそうだよ?それに、連戦でかなり消耗していると思うんだけど」
「・・・・・・・」
「次は・・・死ぬかもしれないんだよ?」
今回の束がいつもと違って強情だ。
「束・・・一体・・・」
俺は束の後ろにある紅蓮を見た。至るところにヒビがあり、傷も沢山ある。この連戦で紅蓮にかなりのガタがきているらしく、束も修復に時間を有すると言いたいのだろう。
こんな中破した機体で戦うことは出来ない。
ただ・・・死ぬだけだと。
「それじゃぁ、死神は財団はどうするんだよ?」
「そんなの、私が行けば」
「お前にもしものことがあったらどうするって言うんだよ・・・」
仮にもISを生み出したISの母だ。そんな篠ノ之束に万が一何かあれば、俺は全ての人に顔向け出来ない。
それだけじゃなく、IS社会へ対する多大な影響を与えてしまうだろう。
「何言ってるの!そんなの里穂君だって一緒じゃん!あんな機体で出撃しても、ただやられてお終いじゃん!」
束は涙目になりながらも両手を広げる。
「・・・俺はこんなところで今更引く訳にはいかないんだ」
「だけど!」
「束!・・お前は俺にこう依頼した。自分の妹と織斑一夏を守ってくれと・・・俺はそれを承諾した!」
「そんなの学園にいる間の話でしょ!こんなの、一人の人間が出来る訳がないじゃない!」
「違う・・違う!今奴らを叩かないともっと被害が広がってしまう・・・それに俺は一人なんかじゃない。束や、箒。皆が俺を信じて学園にいるんだ。決して、一人で俺は戦っていない」
そうだ・・・俺は一人で戦ってるんじゃない。
「あの蒼いISと戦った時、俺は感じたんだ。俺はフラフラと亡霊ようの戦場を彷徨っているんじゃない。戦場が俺を・・・俺を呼んでいるんだ」
俺は束を避けて紅蓮へと歩き出す。
「そこが・・・俺の居場所だ」
と、束が後ろから抱き着いて来る。
「た、束・・・」
「バカ・・・戦場だけが里穂君の居場所じゃないでしょ?里穂君の気持ちは分かってるから・・・絶対に戻って来て」
俺は束の頭を撫でて言った。
「ああ!」
砂漠。というには少し違う。砂漠の中には多くの建物が埋まっており、かつての賑わいはそこにはなく、硝煙の匂いが何処となく鼻をくすぐる。
最後の死神を倒す為に俺はそこにいた。
紅蓮には近接格闘を最大限まで発揮させる為に最初から射撃武器は搭載されていない。あるのはこの両手に握られている月光だけである。
『J、調子はどうかな?』
財団からオープンで通信チャンネル開く。
『良好だ』
違う声。恐らく、把握している死神部隊の中でも最後の人物なのだろう。財団の戦力はもう殆どいない。
たった一人の死神を除いて。
『UNACの戦闘経験を統合し、作り上げたオペレーション。無数の戦場を渡り歩いた君の頭脳』
次の瞬間、空から一機の戦闘機が高速で近づいて来る。
『そして、この機体。これが負けるとは思わないね』
『貴様が欲するのは果てなき戦いの世界。そして破滅』
ハイパーセンサーで捉えた。黒い機体である。
『その意味では、我々の思惑は一致している』
戦いの世界・・・。
『篠ノ之束、そしてISによって作られる秩序など、私の生きる世界ではない』
すると、戦闘機が次々とバラバラになっていき、中から一機のISが出現した。が、俺より三回り程度大きな全身装甲の黒いISである。
黒いISはそのまま一キロ先の場所へ着地する。同時に大量の土煙が起こる。
『それを破壊する為に人間をやめたと?』
今度は財団が死神に聞いた。
『戦いの中にしか、私の存在する場はない。好きに生き、理不尽に死ぬ』
青い光が土煙が払い退ける。
『それが私だ。肉体の有無ではない』
敵が見えた。
敵はライフルとハンドガンを装備しており、ちょこまかとブーストを使って接近してくる。
『戦いはいい、私にはそれが必要なんだ』
真っ直ぐ俺に向かって突撃してくる。
『来たね・・・イカれやろう。里穂君!迎撃して!』
「ああ!」
放たれた大量のミサイルを横に旋回しながら避ける。
『まぁ、何と呼んでも構わないけど、僕からすればイカれてるのは全部だ。人間の』
月光の一撃はエネルギーをかなり消耗する。それが二本となればかなりだ。それにあいつの周りに展開しているあの蒼い粒子。
あいつはある以上は。
『例外なんて、存在しないんだよ』
更にライフルとハンドガンの弾丸を飛んでくる。ブースターの出力を最大まで上げてそれを回避していく。
明らかに奴の方が攻撃力、防御力ともに上回っている。それにエネルギーだけでも俺より高い。
消耗戦になればこちらが圧倒的に不利である。
ここは一気に決着をつける!
『ふぅ!』
次の瞬間、奴はタックルするのと同時に周囲に蒼い粒子を放つ。
今だ!
恐らくあの粒子は結界のような、バリア的なものであろう。今、あの粒子がなくなった今を狙って!
瞬時加速を使って接近し、両手にある月光でクロス斬りを食らわす。
更に追加攻撃として蹴りを入れる。
一旦攻撃を中止して後ろに下がった。
死神は今のがかなりダメージを負ったのか、各部から爆発を起こし始め、そのまま膝を着いた。
『馬鹿な・・・こんなことが・・・』
「残念だったな。俺の勝ちだ」
俺はトドメを刺すべき今一度月光を構える。が、
『・・・とでも、言うと思ったかい?この程度、想定の範囲内だよ』
財団は笑いながらそう言う。
すると、死神の各部がオレンジに輝き、機体も安定している。しかも先程よりも強い力を感じる。
『ジェネレータ出力再上昇。オペレーション、パターン2』
再び立ち上がり、銃を構える。
『かつて、世界を破滅させた力。そのひとつが、この機体』
・・・・・・。
『黒い鳥、人の中の可能性。そんなものはただの妄言に過ぎない』
死神は機体を浮かせてこちらを見る。
『人は人によって滅びる。それが必然だ!』
周辺に蒼い粒子が展開する。
そして、死神は言った。
『もういい、言葉など既に意味をなさない』
奴は出力最大でこちらに突撃してきて、言った。
『見せてみろ、貴様の力』
なるほど、ここから先が本番ってわけね。っ、さっきほどよりもかなり動きが速くなっている。
『里穂君・・・』
「分かっている・・・束」
あともう少しだ。もうちょっとで・・・・。
「負けねっ!」
放たれた大量のミサイルがこちらに向かって一斉に向かって来る。いつか戦った打鉄弐式なんてめじゃないぐらい、半端じゃないミサイルが俺を襲って来た。
「おおぉぉ!」
俺は真っ直ぐミサイルの群れに逆に突っ込んだ。ミサイルは斜め上からこちらに向かって飛んでくるので、ミサイルを上回るスピードで俺はミサイルの中を駆け抜けていく。
直ぐ横でミサイルが爆発しても、尚俺はそのスピードを落とさずに死神に向かって飛び続けた。
ミサイルを抜けて俺は片手の月光で死神を斬る。が、同時にこちらの機体がダメージを負い続ける。
「がっ!」
んだ、これは・・・。
俺は機体を反転させて一旦距離を取る。
「なるほど・・・」
奴の周りに展開しているあの蒼い粒子。地味だが近付いて来た機体にダメージを与える。
やられる前にやれってことね。おもしれぇ・・どっちが先に果てるか勝負だ!
奴の射撃を回避しながら攻撃に様子を伺うが、ミサイルに射撃攻撃、おまけに近づけばあの蒼い粒子に攻撃される。
ついでに言うと俺が攻撃しにくい絶妙な距離を取っている。
「クソッたれ!」
ミサイル攻撃を回避して、俺は奴に向かって飛ぶ。月光を一撃、奴の腹を斬るがもう二撃ぐらいあてなければこいつは倒れそうにない。
ならば、もう一度。
そう思って月光をクロスに構えてクロス斬りをお見舞いさせようと思ったのだが、死神はこちらにミサイルを放って来る。
正直に言えばあいつの何処にあんなミサイルを貯蔵出来ているのかサッパリ理解出来なかった。
俺は右旋回しながらそのミサイルを避けていくのだが、その先に死神部隊が待ち構えていた。
ミサイルを使って俺を誘導していたっていうのか!?
「くっ!」
『せいっ!』
死神は銃で俺を殴る。
後方に一旦押し退けられるのと同時にこちらに向かってミサイルを放って来た。
「しまった!」
月光で三発同時に斬り捨てるのだが、その他のミサイルが次々と俺に直撃していった。容赦なく降り注いでくるミサイルの雨に俺は抗う術を失い、なすがままになるのであった。
空を手に伸ばすのだが、そこに光りはなく果てしなく続く爆炎が俺を包む。
『消えろ』
容赦なく死神は俺にそう言い放った。
過去の為に戦い、過去の為に生きよう。この世界に来た時俺はそう自分自身の為に戦うことを望んだ。
それは俺が傭兵であるということが前提にあった。
例え元の世界に戻れなくとしても、ただ戦うことこそがフランや、レオン。ロザリィやRDへ対する贖罪であると信じて。
だけど、そんなものが。過去の皆のことが見えなくなってしまうかのように・・・俺には多くの大切なものが出来た。
『バカを言うな。私も里穂と一緒で弱いんだ。だから、その気持ちはよく分かる』
『臆病で怖がりなお前の為にな』
『い、命だと!?わ、私に里穂がそこまでする必要はあるというのか!?』
『・・・うん・・うん、分かった・・分かったから・・・死なないでくれ』
そうだ。
俺には帰る場所があるんだ。
こんな所で・・・死んでたまるか!
『絶対防御、及びシールドエネルギー共にミニマム。リミッター解除。各部、出力最大』
再び俺は立ち上がる。
何度地を見ようと、何度這いずり回ろうと。
「これが・・・俺の、傭兵の責任だ」
『まだ立ち上がるというのかね・・・』
『おもしろい・・・来い!』
俺は月光をクロスに構えて敵に向かって瞬時加速を使って死神に向かって飛んだ。
対する死神はミサイルをこちらに向かって放って来る。更に両手に持ったライフルとハンドガンで正面から射撃をして来る。
紅蓮は既にボロボロになっており、もうこの攻撃が恐らく最後であろう。俺自身も体力的にも厳しい。
あともう少し・・・あともうちょっとで。
「お・・おおお!」
が、次の瞬間ブースターが爆発した。同時に瞬時加速が止まり、機体は減速した。
しまっ・・・ダメなのか。もう一歩、あともうちょっとなのに・・・動け、紅蓮。お前が俺を信じているっていうのならもう一度だけ俺に力をくれないか!
『まったくあなたと言う人は。私をボロボロになるまで使い切って・・・まぁ、いいでしょう。あなたがしたことが何を生むのか。何を選択して、何を得たのか』
一度だけ、ブースターが起動した。
『殉ずるがいい、己の答えに』
最後のその言葉を最後に世界が戻る。
戦い、生き続ける俺の答えを!
月光のクロス斬り。蒼い光が死神を包み込み、機体を破壊する。同時に俺の機体も至るところが爆発していき、膝をついた。
相手は以上に酷く、左腕は無残に爆発し、各部から炎を出す。
「はぁ・・・はぁ・・・・これで、これで満足か?ぶっ壊れてるのはてめぇらだ」
『認めない、人の可能性など僕は認めない。僕の人生を、全てを破壊した。あの汚れた世界、忘れることなどない』
はっ、お前が認めなくても俺たちは前に進むんだ。
『既にいくつもの兵器が動き出している。その全てはISだ。ISをめぐる戦いはもう始まった。それは全ての破滅まで続く』
束が俺を大型ヘリに回収してくれる。
『だがもし、君が例外だと言うのなら。ならば生き残るがいい。君にはその権利と義務がある』
死神にあの蒼い粒子が集まり始める。
そして、盛大に爆発した。
「ああ・・・生き続けてやるさ。俺が、戦い続ける限り」
と、いうことで死神部隊リーダーとの戦いは終わりました。
個人的にはアサルトアーマーとか出してもいいのではないかと思っていましたが、
コジマを使っちゃえば色々と滅茶苦茶になりそうだったので、ヤッパリやめました。