「それで、そこのまな板ツインテールが凰鈴音、金髪高飛車女がセシリア・オルコット、銀髪眼帯軍人がラウラ・ボーデヴィッヒ、金髪ねーちゃんがシャルロット・デュノアだな。これでいいんだな?篠ノ之箒?」
各自IS展開して砂浜で待機している一同を見た。先ほど、篠ノ之箒から聞いた各自のプロフィールを簡潔にまとめて口に出した。
すると、一番につっかかってきたのは凰だった。
「あ、あんたねぇ!二人目だからって!言っていいことと悪いことがあるのよ!」
それに続いてオルコットも何か言って来た。
「わたくしを愚弄する男とは組みたくもありません!」
と、二人はそう言ってプイッと顔を背ける。
「すまない、二人は一夏が怪我を負っているから気が立っているんだ」
そう言って二人のフォローをするのはボーデヴィッヒであった、流石は軍人と言ったところだろう。こんな状況でも冷静に物事を考えれているが、少しばかり焦りが表情に出ている。
「そうだよ、えっと・・リオ君だっけ?女の子にも言っていいことと悪いことがあるんだよ?」
このまとめをしたのはデュノアだった。彼女はそんなことを言って二人を宥めに入る。
篠ノ之箒には先ほど軽い彼女らの紹介を受けたが、彼女らも一人ひとり背負っているものや隠したい過去があるのだろう。
そう思うと自分となんら変わらないと思ってしまうが、以前俺が背負っていたものと比べると彼女らの背負っているものは前の俺が思えばほんの些細なことだと思うのだろう。
だが、それは同時にこの世界がある程度平和だということだ。
七歳、八歳で戦うことを教育されることもなく、単騎で敵の中枢に送られることもないのだ。
いや、この話は散々篠ノ之束としてきた。彼女らを見て思い出すということは、まだまだ俺もこちらの世界に馴染めてないんだな。
「だ、大丈夫なのか?」
不安そうに後ろにいた篠ノ之箒が俺に問いかけた。
その問いがこれからの戦いのことを指すのか、それとも俺と彼女らの関係のこと指しているのかは分からない。
そんな彼女はやはり妹なのか、少しだけあのしゅんとしたウサ耳に似ていた。
篠ノ之束と会話しているうちにコミュニケーション能力は割と培ったはずなのだが、やはりこういう不安そうにしている者を励ます言葉を俺はあまり多く持ち合わせていない。
「一撃必殺の織斑がいないからな・・・それに俺はお前らと組むのが初めてだ。厳しい戦いになるだろう」
「・・・・・・・」
「なんだ?俺が『大丈夫だ』なんて言葉を言うと思ったか?だが、現実を素直に受け入れられない以上はどんな戦いにも勝てない」
「実際に戦ってきた者の言葉みたいだな」
「・・・・まぁ、ボロボロになってでも勝つ。必ずな・・・」
今の俺に言えることはそれぐらいだった。
それ以上言ったとしても彼女の心に届くことはないだろう。彼女の心に届かせるなら・・・・織斑。彼しかないだろう。
「さっ、行きましょう。この無礼な殿方のこととは置いて、今は福音のことだけを」
「そうだね、行こうか」
「ふん、足でまといにならなきゃいいけど」
「軍人の私が言う、大丈夫だ」
「姉さんのお墨付きだからな」
などと言いながら五人の専用機持ちたちは上空へと上がっていく。
俺もそれに習って空へと上がる。
あの頃とは違う、仮にISをACだと考えるなら、これほど頼もしい仲間はいないだろう。だが、専用機六機で袋叩きにするなんて、やることがセコイな。
そう苦笑いすると、俺たちは高速移動に入った。
戦闘開始から十三分経過。
彼女らは五人でかなりの連携を取りながら福音を徐々に追い詰めていた。紅椿と甲龍が近接格闘でラファールが中距離から援護。更に後ろにシュヴァルツェア・レーゲンとブルーティアーズが支援攻撃をしている。
互いにフォローし合って上手く福音を追い詰めている。
それを見ながら俺はライフルで可能な範囲での援護にまわっていたが、決して彼女らの動きを封じるような行動はしなかった。
傍から見れば無能に見えてしまうが、俺が入ることによって彼女らの連携精度は落ちて戦闘も優位に運べなくなる。
今は見守るのが優先だと思った。
「それにしても・・・流石は専用機持ちだな。動きにキレがあって力強いが」
篠ノ之の動きにはやはり焦りを感じた。一夏に怪我をさせてしまったことへの責任の現れだと思う。
彼女自身そんな意識はないとは言い切れないが、無意識のうちでは織斑へ対する謝罪の言葉が溜まりに溜まっているだろう。
それでも、彼女は強かった。
ギンッ!
福音の一枚の羽が折れ、海に落ちていった。
「やったか!?」
「分からない・・・」
いや、まだだ。エネルギーはまだ消失していない。多分・・・。
次の瞬間、海に落ちた福音の辺りが青く光りだした。その光から青く輝く光の羽を生やした福音が出現する。
「っ!?」
「あれは・・・」
「セカンドシフト・・・」
なるほど、第二形態って訳だな。
それにしても篠ノ之束・・こんなことになるなんて一言も言ってなかったぞ。敢えて言わなかった?
「くっ!」
次の瞬間、奴の羽から強力なエネルギーレーザーが放たれた。その攻撃に甲龍が落ちた。次いでシュヴァルツェア、ブルーティアーズ、ラーファールも次々と落とされていった。
瞬く間に撃墜された四人を見て直ぐに回避行動に移るのだが、どうやら福音は紅椿に狙いを定めたようでエネルギー弾を受けている。
「ちっ!下がれ!」
そう言いながら両手にマシンガンを展開し、高機動砲撃戦に入った。流石に紅椿の起動に追いついていないらしく、エネルギー弾は直撃していないのだが、福音は紅椿の戦闘データを得て成長しているのか段々と紅椿の動きに慣れてきていた。
このままでは撃墜されてしまう。
そう思い、思い切って紅椿と福音の間に飛び込んだ。
「うぉぉぉ!」
近距離でマシンガンを撃つ。ある程度直撃したが、直ぐに回避行動を取って距離をあけてからエネルギー弾を撃ってきた。
「篠ノ之・・・俺が突っ込むからお前は援護にまわってくれ」
「わ、分かった」
そう指示すると近接武器である刀を展開させて正面から突っ込んだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
思いっ切り横に薙ぎ払う。
が、福音は簡単に俺の刀を弾き返してしまう。
くそっ!なんだこいつ、全身が武器のようなものか。
「がぁっ!」
その瞬間、福音の蹴りと拳を受けて思わず後退してしまう。その隙を福音が見逃す訳がなく、福音の両羽から生み出された無数のエネルギー弾が俺を襲った。
ドドドドドドドドッ!
視界の端にあるゲージが見る見る減少していく。
「あ・・・ああああっ!」
なんとかその攻撃から逃れると、海上スレスレを飛行移動する。
「はぁ・・・はぁ・・・・がっ・くそ」
ダメージを受け過ぎた。
見ればシールドエネルギーは四分の一にまで減っている。これ以上の戦闘は厳しいか・・・だけど、ダメだ。
俺の中に撤退することは許されない。
篠ノ之束の依頼を最後まで果たす。最悪、紅椿だけでも帰さないと。もう少しすれば他の専用機たちも体勢を立て直すだろう。
それまでの時間稼ぎを・・・。
福音が紅椿に向かって攻撃を再開した為、俺は肩にミサイルポッドを展開する。
「お前の相手はこっちだぁぁ!」
全十二発のミサイルを全て放つ。一斉に放たれたミサイルを福音は体勢を崩しながらも迎撃したが、内二発が直撃した。それにタイミングを合わせて反転した紅椿が福音に真紅の斬撃を浴びせた。
「よしっ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
紅椿が追撃に入ろうとした瞬間、福音の目が光る。
「っ!」
何か嫌な予感がしたその時には既に遅かった。向かってくる紅椿をカウンターで福音は青い羽を大きく展開して紅椿をそのまま包み込んだ。
『ああああああああああああああああああっ!』
通信に彼女の悲痛な叫び声が響いた。
数秒して解放されると、紅椿は煙を上げなら落下し始めた。
「くそったれが!」
福音の攻撃を受けながらも紅椿を回収して逃げ続ける。
ドンドンッ!
「ぐぅ!」
エネルギーも機体もかなりボロボロだ。飛んでいられるのがやっとのようで、武装が展開されない。
くそ、ここまで酷いってのか。
目の前に被害情報が映しだされたが、機体の殆どがダメージ甚大であった。装甲も剥がれ、機体から煙が出る。
篠ノ之箒は気絶しているのか、先ほどから何も喋らない。バイタルを見ると意識不明と表示されていた。
すると、レーダーに一つの反応があった。
ハイパーセンサーで確認すると、まだ遠いのか白いなにかにしか見えない。しかし、それでもそれは高速でこちらに接近して来た。
徐々にそれは見えてくる。
「あれは・・・織斑」
織斑の顔がはっきり見えた。織斑のIS白式は何やら形態が変わっており更なる進化を遂げていた。
「こうなったら・・・」
俺は紅椿を近くの小島に下ろして福音に向かう。
少しの間だけでいい。織斑が篠ノ之箒を助ける時間を稼ぐっ!
「こんなところで、落とされるかぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は福音にしがみついた。それに福音は抵抗をするが、そんな動きでさえも俺は力強く押さえ込める。
アームに亀裂が入る。
「まだ・・・まだっ!」
しかし、俺がどんな状況でさえも福音が攻撃の手段を止めることはなく拳や蹴りを次々と入れ込んできた。
だが、俺は福音を押さえつけながらその場から出来るだけ遠くへと押した。
負けられない。
どうしてか分からない。さっさと逃げればいい。こんな状況に勝ち目などありはしない。しかし、それでも俺はそこから動くことは出来なかった。
きっと、これ以上誰も死んでほしくなかったから。
ただ、それだけだったのかもしれない。
「っ!?」
と、メインブースターの出力が急速に減少し始める。
ここまでボロボロなのだ。逆にここまでブースターがもったのが奇跡と言えるだろう。最後に無数のエネルギー弾を受け、俺は落下した。
左目は血で濁ってよく見えないが、右目で最後に見た光景は朝日とともに福音向かっていく六機のISだった。
俺はこの銀の福音に向かって負け犬のように小さくこの紅い機体とともに吠えるのであった。
「な・・・なにが福音なんだよ・・・」
次回もよろしくお願いします。