紅に吠える傭兵   作:青野

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そして君へ

 

 暗

 

 

 暗い世界。

 ここは何処だろうか。

 ああ、そう言えば海に落ちたんだ。それで、俺は今現在沈んでいるということなのだろうか。

 それが確認出来ながらも俺は海上へと出ることはなく、沈んでいく。それがどうしてなのかは分からない。もしかすれば俺がそう望んでいるのかもしれない。それともそうじゃないかもしれない。

 

 だが、そんな暗い世界にも太陽の光が届いてきた。暗い暗い闇の中にでも光が届いてきた。

 

 あ・・・・綺麗だ。

 

 今は分からくてもいい。

 だから、少しずつでいいんだ。

 この世界で、俺は・・・・。

 

 生きる意味を見つけたい。

 

 同時に、俺の名を呼ぶ声がこの透き通った世界に響いた。

 

「リオっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日下部里穂か。へぇ、それは自分で考えたの?」

「あ、ああ・・・そうだな。色々を調べたんだ。パソコンやら、人に聞いたりしてな」

 

 今現在、俺は篠ノ之束と別れの挨拶を交わしていた。彼女は少しテロリストどもの動きが活発化してきたので、暫く身を潜めるらしい。

 俺も行くように行ったのだが、どうやら夏休みとやらが終わり俺がIS学園へ転校する日が来た為、断られた。

 

 そして、この日下部里穂という名前は自分でつけてしまった。俺はこの世界の人間ではないので、無論戸籍も何もない。

 なので、篠ノ之束が各部でハッキングして俺の足跡をこの世界に作った。その時にフルネームを言うように迫ってきたのだが、生憎俺にはリオという名前以外なかったのでこの新しいスタートとして新しい名前をつけるように言われた。

 名前はそのまんまにして、日下部里穂。

 俺の新しい名だ。

 これからリオではなく、日下部里穂として生きていくつもりだ。ただ、名前を変えただけなので何か変わるかというわけではないのだが、やっと俺はここで生きる決意が出来たということだ。

 

「まぁ、里穂君は確かに東洋人っぽい顔だからね。問題ないさぁ!!」

 

 輸送ヘリの中、相変わらずの彼女のテンションに俺は苦笑しながら頷いた。

 

 さて、別れの時が近づいた。

 

 ウサ耳変人女、篠ノ之束がどこまでいこうと彼女は彼女だ。掴みどころがなく、興味のあるものにしか興味を示さない。

 その笑顔はどこまでいっても無邪気な子供のように感じた。たった三年と少しという短い月日であったが、彼女の教えてくれたことは俺がこの世界で生きていけるだけの豊富な経験値として血となり肉となる。

 俺はきっと彼女のことが好きだったのだろう。

 だが、愛というよりかは憧れに近い。

 

 だからこそ、篠ノ之束は俺を慈しみ、愛した。まるで、赤ん坊を寝付けさせる母のようだった。

 

「ん?どうしたの?私の顔ばかり見て?あっ、はっはーーーん!お姉さんに惚れちゃったんだな!」

「違うよ・・・まぁ、そうだな。敢えていうのなら、篠ノ之束のことは俺は好きだ」

 

 そんな突拍子のない言葉に彼女は少しだけ俯いた。

 

「ふ、ふん、そんなこと言ってもお姉さんは落ちませんっ!」

「べ、別にそんなつもりじゃないんだがな」

「ふぅ・・・まっ、この束さんにそんなことをいう根性を持ち合わせている里穂君には、特別に箒ちゃんに手を出していいのを許しちゃいます!」

「・・・は、はぁ!?箒って・・・妹の?」

「うんっ!」

「いや、うんじゃないだろ・・・・はぁ」

 

 これも彼女なりの挨拶なのだろうか。

 俺は軽く頷いた。

 

「けど、私は里穂君の前から当分いなくなるの。だから、里穂君が辛い時とか苦しい時は

遠慮なく箒ちゃんを頼ってね。それに、箒ちゃん自身も強がってるけど傷つきやすいの。だから、これは依頼じゃなくてお願い」

 

 輸送ヘリがIS学園に着陸した。後方のハッチが開いた。俺と彼女は立ち上がる。

 篠ノ之束は最後の別れの言葉を言った。

 

「箒ちゃんを支えてあげて」

 

 耳元に微かにそう彼女は言った。

 それが何を意味しているのか分からない。けど、それでも彼女なりの優しさというものは十分に感じた。

 

「分かった・・・それじゃぁな。元気で」

「うん!!じゃぁね!里穂君!」

 

 そう言うと輸送ヘリのハッチが閉じる。ヘリはそのまま上空へと舞い上がり何処かに飛んで行ってしまった。

 これで篠ノ之束に甘えることは俺には出来なくなった。

 寂しくはない。

 俺は前を向くことを決意したから。

 

 先ほどまでの微かな彼女の甘い匂いが消え去ると、俺は飛び去るヘリに向かって独り言を口に出した。

 

「ああ・・・またな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、そろそろHR始めるぞ。さっさと座れ」

 

 教室の中からそんな言葉が聞こえてきた。このセリフを吐いているのは今日から転校することになった一年一組の担任である織斑千冬という人物だ。

 なんでも織斑一夏の姉らしく、そのISの腕は軍人レベルを超えているらしいが、ISの教師なっているので、少しは腕は落ちていると予想した方がいいだろう。

 

「喜べ、転校生は男だ」

「「「「「キャァァァァ!!」」」」」

 

 何故教室から悲鳴が聞こえてくるのか理解出来なかったが、IS学園のこれまでの経緯を学べば自ずと理解は出来た。

 ISは女性のみしか反応しない、つまり男子は貴重。織斑一夏に次いで俺。貴重だから、稀という理由なのだ。

 

「ど、どうでもいいが・・・」

 

 織斑先生に呼ばれて俺は教室の中に入った。自然とその騒ぎ声は無くなる。俺は織斑先生の隣に立って言った。

 

「日下部里穂です。自分は二人目の操縦者だったのだが、バックに誰もいなかったので今まで姿を消していました。周辺整理や色々と問題が片付いたので転校という形でこちらのIS学園に来ました。よろしくお願いします」

 

 ペコリと俺が頭を下げると教室中が一斉にヒソヒソと話し声が聞こえてきた。

 

「ねぇ、顔は悪くはないわ」

「ええ、話し方も紳士っぽいけど、何か感じる」

「けど、それもいいわ」

「織斑君までには程遠いけど、中々」

「やった・・・ついに私の方へ」

 

 などという意味不明な言葉が飛び交うが俺は無視して織斑先生に指示された一番後ろの席へと向かう。

 途中、ボーデヴィッヒやデュノア、オルコット、篠ノ之の視線に気付いたが敢えて無視するが、どうしても無視出来ない視線があった。

 それが織斑だった。

 しかし、この時初めて織村の顔をしっかりと見たかもしれない。

 整えられた顔に伸びすぎでも短すぎでもない髪の毛。そして、男性的の標準より少しだけ高い身長。俗にいうイケメンという奴なのだろう。

 なるほど。

 俺は織斑を見て一度苦笑すると、自分の席に座った。

 

「それでは、二学期というのは・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、俺のこと覚えているか?」

 

 休み時間、いきなり織斑が話しかけてきた。

 

「あ、ん?まぁ・・・な。合宿以来になるのか」

「ああ、あの時はお礼も言えずにすまなかった。俺に力が無かったから・・・まぁ、それよりも心配してたのは箒なんだけどな」

 

 織斑がそう言うとこちらに近づいてきた篠ノ之と目が合った。

 

「ま、まぁ・・・そのだな。感謝しているが・・・他にもっとやりようがあったのではないのか?」

 

 篠ノ之がそう言った。

 

「他にか・・・・まぁ、今思えば注意を引いいて水面ギリギリを逃げ続けるとか、色々あったんだろう」

「な、それなら・・・どうして」

 

 彼女が不安げに言う。

 

「さぁな・・俺にも分からんさ。どうしてだろうな・・・だが、俺は決心したんだよ。この世界で生きるって」

 

 どうしてか分からない。だけど、だからと言って百パーセント福音の注意をこちらに傾ける方法はあれぐらいしかなかった。

 

「その覚悟があの戦いで出来た。ある意味俺も感謝している。だからさ、もうあの時のことで何も言うんじゃねーぞ?篠ノ之」

 

 姉、ウサ耳によれば妹は相当打たれ弱い。というよりかは、自分のせいで他人が傷つくことに恐れを抱いているらしい。

 それが、福音戦で幼馴染を大怪我させてしまった時は相当堪えたらしい。

 それに+して見ず知らずの俺まで危険晒してしまったことに罪悪感を感じているらしいが、それは誤解だ。

 全て俺が弱かったからだ。

 それを篠ノ之やディノアたちに負けた、死にそうになった理由を求めるのは筋違いという奴だろう。

 

 だからこそ、今ここで彼女が抱いた小さな闇でさえ払拭する必要があった。それが、ウサ耳が俺に頼んだお願いの一つでもある。

 

「そ、そうなのか・・・すまん。私が一方的に取り乱してしまって」

「ああ、いいってことよ」

「おいおい、二人共。俺を忘れてないか?まぁ、兎に角俺のことは一夏って気軽に呼んでくれ」

「あ、ああ・・・俺も里穂でいいよ」

 

 と、不意に俺と篠ノ之の間に一夏が入って笑顔でそう言って握手を求めてくる。別にこういう奴は嫌いじゃないか、好きでもない。

 せめて、一夏という男が俺の予想通りの男でないことを願うばかりだ。

 

 

 

 

 




ありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。

一夏とはあまり対立させるつもりはないですが
箒略奪するには、対立するのもありなんじゃないかなとも思います。
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