紅に吠える傭兵   作:青野

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朝餉にて

 

 

 

「すまなかった!」

 

 そう深々と頭を下げる黒髪ポニーテール。まぁ、つまり箒なんだが、彼女は俺が今朝寮の部屋から出ると箒が待機しており、深く頭を下げたのだ。

 十中八九昨日のことなのだろう。そのことを謝りに箒はわざわざ朝から俺の部屋の前まで待機していたのか。

 律儀というか、なんというか。

 

「昨日のこと、あの後聞いてな。セシリアと・・・決闘することになったんだって?」

「ああ、そうだ。まぁ、別にいいよ。過ぎたことだ」

「だが、私も何らかの責任を負わなければ、心がモヤモヤしてだな」

 

 何を言うかと思ったら。

 

「いいよ、別に。俺がセシリアに勝てばいい話だ」

 

 長話になりそうだったので、俺は箒と一緒に食堂へ向かって歩き出す。

 そんなことを言うと箒は少し悩んでから言った。

 

「だが、セシリアは狙撃手だ。福音での戦いで里穂の戦いを見ていてかなり強いかと思ったが「俺はそこまで強くないと?」っ・・・・・」

 

 まぁ、無理もない。

 福音戦では特に俺は並外れた動きはしていないし、最初はずっと援護ぐらいしかしていなかったからな。

 まぁ、そう思えば俺は別に大して強くはない。最後の最後も一夏に手柄を取られてしまったからな。

 

「はぁ・・・まぁ、そりゃそうか」

 

 俺の戦闘はいつも銃撃戦ばかりでいつも決定力に欠ける。正直のところ、やはり生身で戦うのが慣れていないというのがあったからだ。

 確かに俺は三年間篠ノ之束の下で訓練を積んできたが、それ以上に俺は多くの戦場でACに乗って戦ってきたのだ。

 武器を持つのではなく、操縦桿を握っていた。

 やはりあの頃の感覚が手から離れてはくれない。

 

 まだ、俺は囚われているということなのか?

 

「あ・・・・」

「む?どうしたのだ?」

「あ、ああ・・・少し思い出したことがあってな」

「?」

 

 そう言えば篠ノ之束が昔俺の記憶を辿ってAC時代の武器を作ってもらんだ。福音戦じゃ、そのことをすっかり忘れて使わなかったけど、丁度いい。

 IS相手にどれだけ通用するか。

 

「篠ノ之束に頼んで作ってもらった武器があったんだよ。その存在が忘れるなんてな」

「なんだ、そんな物があったのか。姉さんが作ったのなら期待しても大丈夫だな」

 

 朝から武器のことで楽しいだなんて決して女の子がいうには物騒な話だ。

 そうこうしているうちに食堂に着いてしまった。

 

「それで、どうしてお前は俺と一緒に食べているんだ?」

 

 見ればあたかも当然のように箒はカウンター席の隣に座る。そう言うと彼女は頭の上に?マークを出してキョトンとしていた。

 

「ダメなのか?」

「・・・いや、別にいいけど」

 

 俺は朝から唐揚げ定食と脂っこいものを頼んでいた。

 流石に最近は体のこととか大丈夫かなと思ったが、その分動けば問題ないという結論に至り、三食のうち絶対一食はこの唐揚げ定食を頼んでいる。

 実際自分でも色々と試してみたのだが、唐揚げは俺に心を開いてくれていないのか、中々難しい。

 

「そうだ、前にも聞いたんだが、唐揚げが好きなのか?」

「あ、ああ・・・そうだな。好きだぞ、唐揚げは。何故かと問われれれば、ただ美味しい。それだけだな」

「ふむ・・・なら、これでチャラという訳にはいかないが、私が唐揚げを作ってこようではないか」

 

 と、彼女は自身満々に言った。

 

「ほう、なら遠慮なくもらおう」

「うむ、楽しみに待っていろ」

 

 そう彼女は少し微笑んだ。

 やはり姉妹なのか、その笑はなんとなくだが篠ノ之束に似ていた。

 そこは変わらないんだな・・・。

 

「それよりも、セシリア相手にどう戦うのだ?」

「どうって言われてもな。作ってもらった武器があるって言ったろ?」

「そう言われてもな」

 

 箒は何故か納得のいかない様子で口にご飯を運ぶ。

 まぁ、確かに箒の言いたいことは分かるが、俺もどう説明したらいいのか分からない。一応あれは隠し球として伏せておくつもりだが、普通に勝てるならそれに越したことはない。

 

「スナイパーか・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

『最初から勝つとは思っていなかったが・・・腕一本でも道連れにすればいいものを!役立たずどもが!!貴様も!企業の連中も!私の邪魔をするものは皆死ねばいい!』

 

 傭兵時代、敵のシティ警備部隊隊長だったあの男。かなりの狙撃手だった。あんな遠距離から確実に俺の機体を撃ってくる。

 それに比べれば・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、セオリー通りになら奴の不得意とする接近戦に持ち込むしかないだろう」

「だが、セシリアのことだ。そう簡単には近づけさせてくれないんじゃないのか?」

 

 箒の言うことは確かだ。

 奴が遠距離武器を使う以上はそう簡単には近づけさせてはくれないだろう。

 

「そうだな。前に一度一夏が初めてISに乗って戦った時の戦闘データを見たが・・・随分と接近を許しているように見えたが、単にオルコットが油断しただけか」

「確かに。あれは、セシリアが一夏に対して油断していただけと言えるな」

「なら、俺の時は確実に俺を倒しに来るのか・・・」

 

 数パターンオルコットとの戦闘を再現してみたが、奴が確実に俺を倒しにかかってくるのなら・・・めんどくせぇ。

 相手が確実に自分のことを敵と認識した時、奴らは想像以上の力で潰しにかかる。それは何処の世も変わらないんだな。

 

「まぁ、箒。見ておけ。スナイパーに対して近距離格闘型が優位とも限らないことを」

「?」

 

 唐揚げ定食を食べ終えると、俺と箒は教室に行く。

 まだ、二日目だと言うのに俺の噂は学園中に広がっており、生徒が俺を見る目は好意的な視線ではなく、むしろ敵対的な視線であった。

 

「ねぇ、どうして篠ノ之さんと一緒なの?」

「どうせ、弱みでも握られているんじゃないの?」

「それってヤバくない?あり得るの?」

「だって、昨日あの男が篠ノ之さん泣かせているのを見たっていう人たくさんいたし」

「うっそ、マジで!?」

「ていうか、ホント織斑君とは大違いよね」

「男ってホントに無礼者」

 

 などという陰口がさっきから俺の耳に入ってくる。どうやら箒には聞こえていないようなのだが、俺は常人とは違って少しだけ聴力はいい。

 戦場に長らくいたせいか、どんな小言とも聞き逃さないようにしていたが、その癖が今でも治らないとなると、なんだか気が重たくなってきた。

 

 正直に言ってしまえばこういったものの言い方に俺は疎いわけではないのだが、やはり俺はここの住人じゃないせいか、彼女らが何を言おうがあまり心に刺さったりはしなかった。

 むしろ惨めだと思う。

 だが、それと俺がイライラするのは話が別だ。内容はともかく、俺へ対する侮辱と偏見は傷つくことはなくてもイライラしたりはする。

 だって、人間だもの。

 




いやぁ、なんやかんやで警備隊長のセリフはかっこいいですね。
次回はセシリア戦ですが、なんか怪しげな雰囲気ですね。次回もよろしくお願いします。
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