ソードアート・オンライン CHOSE the start Over 作:鉄血
どうしてこんなことになったんだろう。
「イオリ!早く立て!アイツが稼いだ時間なんだ!早く逃げるぞ!」
ザッシュが私を呼んでいる。
「嬢ちゃん!悲しむのは後だ!お前さんが生き残らないと死んだ■■■が浮かばれねえ!」
ムソウさんが私を呼んでいる。
「イオリさん!■■■さんが死んでしまったのは私も悲しいです!ですが今は早く逃げましょう!」
スティーナが私を呼んでいる。
そして最後にいつも私の隣に居てくれたあの人の───私の名前を呼ぶ声が───聞こえない。
───■■■の声が。
ねえ、■■■。私、もう現実から逃げないって決めたのに。貴方からその勇気を貰ったのに───
なんでかな。私、貴方が隣に居てくれないと立てないや。
「───ぁ」
■■■の命を奪った剣が私の目の前に振り上げられる。
このSAOで死ねばリアルでも脳をナーヴギアに焼かれて死ぬ。
歌姫と呼ばれた実績も。積み上げてきた経験も。そしてカルにサーユさん、ワイズマンさん、キリトにアスナ、アルゴや【桜花騎士団】の皆。そして■■■と出会った思い出も。
───全部消えてなくなる。
私は目を閉じた。閉じた目の裏に■■■の背中が見える。
ねえ、■■■。今、そっちに行くね。
もし、次があったら・・・今度こそ貴方を絶対に守るから。
そして私の仮想体に刃が振り下ろされた。
◇◇◇◇◇
目が覚める。
「ここは───」
遺跡だった。ハイエルフの壁画が描かれたソレに私は見覚えがある。それに加えてこの姿───
「ベータテスターの時の・・・」
厳つい男性のアバター。それはベータテスター時代に使っていたものだ。メニューウィンドウを開いて見ると、今日の日付は2022年11月6日。つまりこのアインクラッドがデスゲームへと変わる日。
と、遠くで剣撃の音が聞こえる。もしかしてと思い、フレンド登録を開くと、近くで■■■がいる事が分かった。
・・・ああ、つまりもう一度やり直せる。もう一度、彼の声が聞ける。そしてカルやサーユさん達を死なせずに済むかもしれない。そして■■■も。
だから私はもう一度歩き出す。私が辿ってきた未来を変える為に。待っててね。今度は──もう絶対に死なせないから。
◇◇◇◇◇
「おっとと・・・こりゃあ少し不味いか」
片手剣を構えながら一人の青年がそうぼやく。
周りには虫、虫、虫・・・はじまりの街に転移するかと思いきや、ベータテスター時代の装備を引き継いだまま、理由のわからない遺跡へと飛ばされたときた。
「とはいえ、ベータ時代はあんまり遊んでねえからこっちの感覚を取り戻すのにも時間がな・・・」
こんなことならもっと遊んでおけば良かったと思いつつ、彼は剣の切っ先を虫たちへ向ける。
「来いよ虫共!俺の感覚慣らしに付き合ってもらうぜ!」
そう格好つけた瞬間、部屋の入口から誰かが入ってきた。
「おっといたいた!」
「・・・ん?他に誰かいたのか?」
彼は声が聞こえた方へ視線を向けると、そこには見覚えのある男がいた。
「・・・イオリ!」
ベータ時代、最後の最後で一緒に遊び、フレンド登録をしたプレイヤー。
「とりあえず、さっさと片付けよう!
「背中は任せたぜ、イオリ!」
私はやり直すんだ。彼と皆とこのデスゲームをクリアする為に