ソードアート・オンライン CHOSE the start Over 作:鉄血
「クソッ!大分時間食っちまった!」
迷宮区上層。私達は駆け足気味に迷宮の中を走る。
(・・・どうして!?なんで!?)
私の内心はぐちゃぐちゃだった。
私の記憶にあるここの攻略はもっと早かった筈だ。
だが、今の私達の状況は違う。
進行速度が明らかに遅い。
私は何故こうも遅れているのか、思い出す。
前回のとき、迷宮区に入るに入る前、私達はサーユに呼ばれて一度街に戻った。
その時にした事と言えば───
(ザッシュの武器の強化とアイテムの補充!)
そう。それがあったからこそ、私達は攻略を早く勧める事が出来たのだと改めて理解した。
でも、だからと言ってそれを言い訳にしたくない。
「急ごう!二人とも!」
「ああ!」
「おう!」
ディアベルさん。どうか無事でいて────
◇◇◇◇◇
迷宮区ボス部屋────
「ワイズマン!悪い!待たせた!」
「皆さん!!もうボス攻略、始まってますよ!」
ボス部屋の前で一人、私達を待ってくれたワイズマンが安堵と焦りが混じった声でそう叫ぶ。
「思ったより時間を食っちまった!中はどうなってる?」
「攻略隊は十五分前に中に入っていきました!順調に進んでいるならもうそろそろ終わっている筈です!」
「・・・急ごう!」
私達はボス部屋の扉を開ける。
そこで私達が目にした光景は悲惨なものだった。
うわああああッ!というような叫び声───あるいは悲鳴が私達が入った瞬間、ボス部屋に満たした。
レイドメンバーのほぼ全員が、己が武器に縋るように握りしめ、両眼を見開いている。
恐怖。絶望。狂乱───。
様々な不の感情がボス部屋に広がり、伝播していく。
「おいおい・・・何が起こってる!?」
部屋の状況に戸惑うユーリに対し、私は近くにいたキバオウさんの口から漏れ出る言葉を聞いて状況を理解する。
「・・・何で・・・何でや・・・。ディアベルはん、リーダーのあんたが、何で最初に・・・」
ああ。ディアベルさんは死んだのだ。あの時と同じように。
「うわああああッ!?」
そんなの彼等の心情をまるで嘲笑うように更に悲鳴が部屋にこだまする。周囲を見渡すと、《ルインコボルド・センチネル》が再びポップしていた。
「ま、まま、また出た!もうポップしない筈だろ!?」
「く、来るなっ!!」
このままだと被害がもっと大きくなる!撤退する為に道を作らないと!
「・・・ユーリ!ザッシュ!周りの《センチネル》を倒して!このままじゃ被害が大きくなっちゃう!」
「分かった!」
二人は頷いて今まさに倒れているプレイヤーに襲いかからんとしている《センチネル》達の前に立ち、道中で培ってきた連携であっという間に一体を倒した。
「ワイズマンさんは動けないプレイヤーを後方へ退避させてください!私は近付いてくる敵を倒します!」
「わ、わかりました!」
もうなりふりなどしていられない。
私達は必死になって彼等を守った。
そしてキリトがボスの《イルファング・ザ・コボルドロード》を倒すまで私達は後方でセンチネルを倒し続けた。
そんな私と違ってユーリは一番の最前線に立ち、エギルさんやキリトと一緒に前線を支え続けた。
私は結局、ユーリを守ると言いながらまた彼に守られてしまった。
その事実が私の胸をかき乱す。
私ももっと強くなりたい。
そう思いながら、私は唇を強く噛むのだった。