ソードアート・オンライン CHOSE the start Over 作:鉄血
はじまりの街の宿屋に戻った私達は一つのテーブルを三人で囲いながら無言の時間を過ごす。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
結局、あの結末を変える事が出来なかった。私が最初から言い出すことを恐れずにいれば二人を助けられたのかもしれないという後悔だけが胸の中に渦巻いていく。
そんな私達の空気に耐え切れなかったのだろう。ザッシュは気まずそうな声で私達にフォローの言葉を入れる。
「・・・ほら、確かに三人が言ってたサーユって子はいなかったけど・・・まだわかんないっしょ?」
「・・・どういう意味だ?」
ユーリはザッシュにそう問いかけると、ザッシュは言った。
「いや、実は死んでない可能性もあるかなって・・・だから一度、《黒鉄宮》の《生命の碑》で確認してみるとか・・・」
自信なさそうに提案するザッシュにユーリは立ち上がった。
「なら、今から確認しにいくか?サーユとクラークの奴が死んでいるか」
「・・・うん。そう、だね」
「じつは俺も前の仲間が気になってて・・・攻略戦には参加しないって別れてそのまま連絡取ってなくてさ・・・」
正直な話、私はもう二度目は見たくなかった。
何故なら二度目のチャンスを逃して今、私はここにいる。どうして自分がここにいるのか分からなくなってくるのだ。
この先、何が起こるのか。全部分かっているのに、言い出してしまえば皆が私から離れていってしまうかもしれない。
皆と会えなくなってしまうかもしれない。
それがどうしようもなく、怖かった。
それ以上、何も言い出せない私にユーリは言った。
「イオリ。今から俺はザッシュと《黒鉄宮》に行くが・・・お前はどうする?」
そう聞いてくる彼に私は言った。
「・・・行く。この目で確かめたいから」
「分かった」
そう言って私達は黒鉄宮へと向かった。
◇◇◇◇◇
黒鉄宮の中は静まりかえっていた。
巨大な石墓に沢山のプレイヤーの名が刻まれており、沢山の線が引かれている。
「もう、結構線が引かれてる・・・」
「一ヶ月で二千人以上死んだって話だからな・・・」
名簿を見ていると、その中にディアベルの名があった。
───死因は胸部外傷。
私はすぐに目をそらす。
私のその様子に気づいてか、ユーリは言った。
「お前のせいじゃねえよ。あの時、お前は皆を助ける為に良くやったじゃねえか」
「・・・うん」
暗い顔をする私を慰めるようにユーリは私の頭を撫でた後、彼はザッシュに言った。
「仲間の事、確認するんだろ?」
「・・・ああ。今から確認する」
そう言ってザッシュはパネルを操作し始める。
そんな彼を一目見てからユーリは私を見る。
「イオリ、サーユの名前を確認してくれるか?俺はクラークを確認して見る」
「・・・えっ?でも・・・」
「いいから。頼む」
「・・・うん」
ユーリからのお願いに私は頷くしかなかった。
そう、だよね。幼馴染が死んだ事を誰だって見たくないよね。
あの時の私は無神経だったのかも知れない。ユーリにサーユさんの名前を確認させるなんて。
そう思いながら私はサーユさんの名前を確認する。
死因は───落下死。
あの時と同じようにサーユさんは崖から飛び降りて死んだ。
そんな無情な現実に私は画面を消去する。
「どうだった?」
そう聞いてくるユーリに私は首を振った。
「・・・駄目だった」
「・・・そうか」
「俺の仲間もだ。知らない内に全員・・・」
全員が沈黙する。
そしてその沈黙をユーリが破った。
「これから二人はどうする?」
「えっ・・・?」
その言葉に私は顔を上げる。
ユーリの言ったその言葉の意味が分からなかったからだ。
「この世界じゃあリアルで本当に死んだのかどうか分からねえ。かと言って確かめる手段もねえ。そうなると俺達の目標はこのアインクラッドの百層クリアになるが、《救世の剣士》クエストの内容が本当に起こることなら、それを攻略しないと俺はもちろん、みんなも死ぬ事になる。どのみち死ぬなら、俺は最後まで足掻いてやるが、二人はどうする?ここで逃げるなら俺は引き止めるつもりはねえ」
最後まで抗うか。それとも知らぬふりをして逃げるか。
ユーリの選択に私は言った。
「私は・・・最後まで続けたい。じっと終わりを待ち続けることなんて出来ない。私はただの高校生だけど・・・私はユーリを守るって決めたから」
そう言う私にザッシュも何か決心したような目で私達を見る。
「俺は・・・ブローチも無いし、クエストも受けてない・・・でも、だからってここで抜けられっかよ!俺だってただの大学生だけど、歳下が頑張るっつってんだ!行けるだけついてくぜ!」
一緒についていくというザッシュに私は頭を下げる。
「・・・ありがとうございます!」
「感謝されるようなことじゃないし、ほっといたら俺もヤバいわけだしさ・・・けど、わけのわかんないクエストにたった三人で挑むのはキツイよな・・・」
そう言うザッシュにユーリは言った。
「なら、アルゴに聞いてみるか。ブローチの事やクエストの事について何か知っているかもしれねえ」
「じゃあ、その方針で行こっか。でも、アルゴさんはたぶんもう二層にいるかもしれない」
そう言う私にユーリは言った。
「なら、アルゴのとこに行くのは明日だな」
そう話し合った後、私達は黒鉄宮を出る。
と、広場の方で沢山の人達が集まっていた。
「ん?なんだ?」
ザッシュは物珍しそうに顔をその人溜まりに向ける。
少し耳を澄ましてみると、歌声が風にのって聞こえてきた。
ソレを聞いたザッシュは驚いたように声を上げる。
「おお・・・結構上手いな」
そう言う彼に私は目を逸らす。
歌に関しては嫌な思い出しかない。だからこうして私はこの世界に逃げてきたというのに。
聞き入ったように立ち止まるザッシュに私は言った。
「聴いていくんですか?」
「えっ?」
戸惑うザッシュに私は逃げるように足を進める。
「だったら、私はお店でも見ていますね」
私はそう言ってその場を後にする。
その後ろでユーリは言った。
「俺も遠慮するわ。今日はそんな気分じゃねえ」
「そっか・・・じゃあ、また後でな」
そう言ってザッシュはその場に残る。
私達はそのまま少し離れた所まで一緒に歩いた後、突然ユーリが私に言った。
「・・・イオリ。ちょっといいか?」
「・・・どうしたの?」
振り返る私にユーリは言う。
「ワイズマンの事について・・・話しておきたいことがある」