ソードアート・オンライン CHOSE the start Over 作:鉄血
私達は次の目的地へと向かう為、一度《ウルバス》へと戻っていた。
「一旦ここで解散だな。イオリ、次は何分後に出発する?」
「じゃあ、三十分後にまたここに集合しよう。私も武器の手入れとアイテムを補充したいから」
「じゃあそれで。二人共、また後でな!」
そう言ってザッシュはその場を後にする。
広場に残ったユーリと私は互いに顔を見合わせた後、ユーリが口を開いた。
「んじゃ、俺達も準備するか」
「そうだね」
私達はウルバスの中心部へと向かう。
二人で一緒に街を歩いていると、広場の一角に灰色の絨毯を広げた一人のプレイヤーがいた。地味な茶色の革エプロンを装備した小柄な男性プレイヤーで灰色の絨毯の上に椅子や鉄床、陳列棚を所狭しと並べている。
NPCではないプレイヤーの鍛冶師だ。
「なあ、イオリ。ありゃなんだ?」
物珍しそうにそのプレイヤーを見るユーリに私は説明する。
「あれはプレイヤーの商人だよ。ベータテストの時は沢山いたんだけど、SAOがデスゲームになってから見るのは始めてだね」
デスゲームとなったこのSAOでは強くならなければ生き残れない。だからこそ、商人として切盛りするプレイヤーはこの一ヶ月で始めて見た。
「へぇ、プレイヤーの鍛冶師か。武器の強化とかはやっぱりNPCより成功しやすいのか?」
「うん。NPCよりは成功しやすいとは思う。けど・・・」
「けど、なんだ?」
そう聞き返してくるユーリに私は言った。
「ぼったくりしてくるお店とかあるから・・・信用のあるプレイヤー以外とは私はあまりしないかな」
「・・・ぼったくられたんだな?」
「ベータテストの時、一回だけ、ね?」
嫌な思い出に逃避しつつ、私達は広場を抜けてNPCショップを見て回っていると、突然後ろから声をかけられた。
「ン?あ!オマエら!」
「え?」
「あん?」
突然の声に私達は振り返ると、そこにはアルゴがいた。
私の知っている記憶では今、アルゴはキリトさんと一緒にいる筈だ。なのにどうしてここに?
「お前・・・まさかアルゴか!」
「ニャハハ!そう言うユーリはベータテストの時と全然違うナー!でもイオリよりはまだ予想はついていたけどナー」
そう言ってアルゴは私を見る。
「ベータの時はゴツいおっさんだったのに、その中身がこんな美少女だったのはオネーサンも予想外だったヨ。まあ、始めてあった時からイオリは女の子じゃないかっていう予想は当たってたみたいだけどナ」
そう言って笑うアルゴに私は言った。
「それにしても・・・アルゴはどうしてここに?」
「ンー・・・一言で言うなら情報収集ってところだナ。ほら、第一層のボス戦の時に攻略情報が違ったせいで被害が出ただロ?それを反省しての収集ってところだナ」
そう答えるアルゴにユーリは首を横に振る。
「あれはアルゴのせいじゃねえだろ。今回の件は、ベータテストの情報に過信し過ぎた俺達のせいだ。お前が謝ることじゃねえだろ」
「確かあの時、ユーリがオイラやキー坊を庇ってくれたんだロ?ならユーリにもお礼しなくちゃいけないナー」
「本当なら礼はいいって言いたいところなんだが・・・こっちもあるクエストでちょっと参っててな。アルゴ、《救世の剣士》クエストについて何か知っているか?」
ユーリと私はアルゴに私達が置かれた今の状況を説明する。
話を聞いていたアルゴは真面目な顔で私達に言った。
「情報があればイイ値がつきそうなクエストなんだけどナー。にしても、随分無茶な内容ダ」
SAO アインクラッドの崩壊に私が見たユーリの死。
あきらかにゲームバランスを崩すクエストであり、ましてや一人のプレイヤーを狙い撃ちにするような真似をするクエストはどんなMMOでも聞いたことが無い。
「ウーン・・・《救世の剣士》クエストについてオイラも気になるし、調べてみるカ」
「悪いな、アルゴ。こんな面倒なクエストに付き合わせちまって」
「気にするナ。それにイオリが見たクエスト内容でなんでユーリが出てきたのかも個人的に気になル」
腕組みするアルゴは私を見て言った。
「イオリ。多分だけどオイラの予想ではこのクエストは普通のクエストじゃなイ。もし、このクエストを攻略するなら気をつけた方がいいゾ」
「・・・うん」
そんなアルゴの忠告に私は頷くしかなかった。