ソードアート・オンライン CHOSE the start Over 作:鉄血
《リトル・ネペント》の胚珠を集めるのにそこまで時間はかからなかった。
ユーリが両手剣を選択していたおかげで沢山のネペントを短時間で狩ることができ、《花付き》もあっという間に倒すことが出来た。
「ほら、イオリ。使えよ」
クエストをクリアしたユーリが先ほど入手した《アニールブレード》を私に手渡してきた。
「ありがとう。大事に使うね」
「おう」
私はユーリから剣を受け取り、メニューウィンドウを開いてから、装備欄に先ほど貰ったアニールブレードを選択する。
先ほどまで軽かった背中にずっしりとした重みが加わった。これで一歩強くなったと実感でき、少し感動を覚える。
そんな中、ワイズマンがポツリと呟いた。
「それにしてもサーユから連絡がきませんね。ちょっとメッセージを飛ばしてみます」
「クラークと合流出来た事に浮かれて、連絡忘れてんじゃねえのか?」
「まあ、彼女ならあり得そうなのがなんとも・・・」
ユーリの言葉に苦笑いで返しつつ、メッセージボードを叩く。
そんな私達によく通る男の声が耳に入った。
「もうクエストを攻略したのか?」
その言葉に私達は声がした方へと視線を向ける。
「随分早いね。どこで情報を手に入れたんだ?」
そこにいたのは青い髪の男だった。
このデスゲームと化したSAOでは染色する為には、基本レアアイテムである塗料をドロップする以外他ない。
目の前にいる男はソレを手に入れて青い髪にしたのだろう。
そしてその男の名をイオリは知っている。
ディアベル。 第一層ボス攻略で前線の指揮官をし、死んだ男。
彼は私達の前に立ち止まると、そんな彼に不信感を得たワイズマンが口を開いた。
「僕たちに何かようですか?」
その言葉に彼は慌てたように話す。
「待ってくれ!警戒しないでほしい!少し話がしたいんだ」
そう言って彼は名乗った。
「俺の名はディアベル。そこの君、よかったらフレンドになってくれないか?」
「え、僕?ど、どうして・・・?」
戸惑うワイズマンにディアベルは言う。
「君たちが腕利きだと見込んで声をかけたんだ。俺は今、このデスゲームを抜け出す為に《とある計画》を練っていて、一緒に戦ってくれる仲間を集めてる」
「それは・・・攻略という意味ですか・・・?」
その言葉にディアベルは頷いた。
「そうだ。その為には君達のような実力者の協力が必要だ。力を貸して欲しい」
「いやぁ、そんな腕って実力じゃないですけど・・・まあ、少しは・・・」
笑うワイズマンさんに対し、私はディアベルさんに質問する。
「その計画って・・・もしかしてこのフロアボスを倒すつもりなんですか?」
そう。ディアベルさんはこの為に私達を誘った筈だ。
私の言葉にディアベルさんは少し困った様子を見せた後、内容を濁すように話始める。
「これは沢山の命に関わることだから、本当に強くて戦う勇気のある者だけに教えようと考えている。最低でもこの一層の奥にある《トールバーナ》まで来れる力は欲しいかな」
「なんだそりゃ・・・」
ユーリは呆れた様子ではあったが、ワイズマンは理解した様子で手を顎に当てる。
そんなワイズマンにディアベルは言った。
「どうかな?とりあえずフレンド登録だけでもしてくれないか?《トールバーナ》に来た時、連絡をくれたら詳しい内容を教えるよ」
そんな彼に対し、ワイズマンは不信感を抱きつつ私達を見る。
「どうしましょう?僕はひとまずフレンドになっていいと思いますけど・・・」
「そうですね・・・私はいいとは思います。生還する為には皆で協力するのは必要不可欠だと思いますし・・・」
「俺は構わねえぜ。二人なら間違った選択はしないだろ?」
「ユーリ・・・」
背中を押してくれる時は押してくれるとはいえ、たまにあるこのスタンスはちょっと困る。
「分かりました。では、その方針で。ディアベルさん。仲間とも意見が固まりましたのでよろしくお願いします」
「ありがとう!恩に着るよ」
「それじゃあ、《トールバーナ》でまた会おう」
そう言って去っていく彼の背中を見送った後、私達はこの先について話し合った。
「《トールバーナ》・・・遠いよなぁ。今の僕たちじゃすぐってわけにはいかないか・・・」
「なら、アニールブレードを強化するのはどうですか?」
「あ、なるほど!確かにそれなら行けますね!」
「つっても、その強化素材は何処にあるんだ?俺、場所知らねえぞ」
そう言うユーリに私は答えた。
「カルと行った《青い雫の洞窟》覚えてる?あそこでドロップしてた素材が、その強化素材なの」
「あそこか!」
ユーリも思い出したようで指を鳴らす。
私の説明を聞いてワイズマンさんも驚いた顔をした。
「ホントですか!?これはもうそういう流れですね!ですが、今日はもう夜なのでこの村で休みましょう。明日、その洞窟に向かいましょうか」
「分かりました」
「了解。じゃあ、また明日だな」
解散の流れになりつつある今、私はユーリに言った。
「あ、ユーリ。少しだけ良い?」
「・・・どうした?」
振り向く彼に私はメニューウィンドウを操作しながらある物を取り出した。
「・・・これ。さっきのクエストでドロップしたから使って」
そう言って私は実体化した《ロングアニールブレード》をユーリに差し出した。
ソレを見てユーリは目を丸くする。
「いいのか?コレを俺に?」
「うん。アニールブレードのお礼。私だけ貰うのもちょっと気不味かったし」
そう言う私にユーリは笑うと、その剣を手に取った。
「ありがとな、イオリ。大事に使わせてもらうぜ」
そう言う彼に────
「どういたしまして、かな」