弓兵の英雄譚   作:菊水餡子

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第10話

そこは、地獄だった…

辺り一面火の海…

何かの建物らしいのだが、よく分からない。

 

「みんなどこ?」

 

少女の声が聞こえた。

炎の地獄の中でその小さな声が聞こえた。

 

 

 

 

あたしは、空港にいた。

そこで、火事に巻き込まれてしまった……

 

「みんなどこ?」

周りには誰もいない。燃え尽きて原型を留めていない椅子。崩れ落ちそうな天井。

熱くて息が苦しい………

誰か……助けて………

 

音がする。

振り向くとそこには、黒い何か………それがなんなのか分からない。分からないが故の恐怖。

いや、来ないで………

 

歩みを止めずそれは近づいてくる。

ちょっとずつ距離が近くなる…

 

いや……

 

 

 

…投影開始…

そんな声とともに、私の横を閃光が駆け抜ける。

閃光は、黒い何かに当たり、それを爆散させた……

その爆風により、私は後ろへと吹き飛ばされた。

だけど、後ろにいた人によって抱きとめられる。

「大丈夫かい?良かった。無事で居てくれて」

後ろにいたその人は、あたしに話しかける。

 

そこにいたのは、真っ赤な外套をまとった白髪の男の人…

その外套も少し煤がついているのかところどころ黒くなっていた。

あぁ、良かった。誰か居てくれた。

助けに来てくれる人がいたんだ。その安心感からか私は目を瞑ってしまった。そこであたしは、意識を手放した。

 

 

私は少女を抱え、火の海を駆ける。

ここがどこなのかも分からない。出口がどこなのかも分からない。

それでも、走る。腕の中で眠り続ける少女を救うために……

ところどころであの黒い何かを見つけるが今はかまっている暇はない。

 

光が見えた。

その方向へ走る。

 

 

 

そこには、1人の女性がいた。

白い服を身にまとい、杖のようなものを持った女性が……

 

「この子を頼む」

どこかで見たことのあるようなそんな懐かしい気がする男は抱えていた女の子をわたしに任せると、元来た方向へと走って行った。

 

「待って」

そうわたしは止めることもできた。

だけど、わたしはその人を止めることが出来なかった。

彼の身体つきなどから、一般人ではないのは分かっていたし、彼のまとう外套からはバリアジャケットのような魔力を感じていた。この人は、自力でなんとかなるのではなんてことを考えてしまった。

だけど、わたしはそこで止めるべきだった。

 

 

数十秒後…彼の向かったその方向で、大爆発が起こった…

 

 

あの女性には、見覚えがあった。

 

あの時、闇の書とその仲間たちのことを託したあの少女…

 

そうか、彼女は…救えたのだな。

 

彼女の目は、何かに絶望した目ではない。

あのときの私のような目ではない。

 

あぁ、彼女なら、彼女とその仲間たちならば、大丈夫だろう。

 

私は一言彼女に聞こえないように呟く。

「君たちなら大丈夫だ。諦めるな」

 

さて、ここから先は、私の仕事だ。

よく分からないが、この身は受肉している。

魔力の供給も充分だ。戦闘に支障はないだろう。

 

彼女たちの邪魔にならないよう奴らを消す。

あの魔力の暴走体を消す。

 

私はもときた道を引き返し、魔力の暴走体と対峙する。

 

「さて、ここから先には行かせない」

両手には、使い慣れた二つの剣を投影する。

干将莫耶…中国の伝承にある夫婦剣。

 

 

「ふむ、投影したもののランクは通常か…」

ただの投影物でありながら、その製作者や、使い手の記憶をより鮮明に投影する。

多くの人間の願いや想いを詰め込み続けた幾多の剣。

 

 

火災により、あちこちに圧力がかかっている。この建物が崩壊するのは、時間の問題だろう。ならば、一撃でカタをつける。

 

両手の剣を敵に投げつけ、その一言を紡ぐ。

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

 

その瞬間、剣は爆発し、暴走体はその爆発に巻き込まれ、砕け散った。

できるだけ、強度の強い場所で爆発するようにしたが、それでもこの建物に限界がきていることは、分かりきったことだった。

 

数十秒後の場所は、音を立てて崩れ去った。

 

 

 

女の子を救護班に引き渡し、わたしは爆発のあった方向へ向かおうとする。

だけど、爆発による影響か今いる場所さえも、もうすでに崩れかかっている。

ここはもう危険だ。これ以上この場にいると、わたしも…

そう考え、その場を後にする。

 

数分後、そこは瓦礫の山となった。

 

 

 

なのはは、任務終了後すぐに瓦礫の山となった空港へと向かった。

救助した名簿のなかにも、救助に関わった人の名簿にも、顔が載っていない人がいた、と言うのだ。

 

もしその人がまだあの場所にいるとしたら…

私もそこへ向かった。

 

そこで私は、壊されたロストギアの残骸を見つけた。

 

だけど、そのときは何によって破壊されたのか分からなかった。

 

 

 

 

あれから、数ヶ月が経った。

あたし自身の怪我は治った。

だけど、心は晴れない。

あたしを救ってくれたあの男の人は、行方不明らしい。

そのことを、あたしは、高町なのはさんから聞いた。

あたしは、あの人となのはさんに救われた

あの人となのはさんは、あたしにとって、正義の味方だった……

 

 

あたしもあの人たちのようになりたい。

いつしか、それがあたしの夢になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

…あの火災から四年…

各地で犯罪者を捕縛する紅い外套の男が出没するようになる。

男は、ある場所では、紅き弓兵と呼ばれ、またある場所では、正義の味方と呼ばれた。

 

次元管理局も一目置く存在であったが、誰一人として男の素性を知る者はいない。

 

しかし、世界は彼を歴史の表舞台へといざなう。

それは、運命なのか…はたまた別のものか…

 

 

 

 

 

 

 

 




今日は、なのはさんとスバルさんに来ていただきました。
「あはは、よろしくね」
はい、よろしくお願いします。
ところで、次元管理局のお二人なんですが、特に大変だったことはなんですか?
「い、いきなりその質問ですか…まあ、助けたかった人を救えなかったときですね」
…えーとなんかごめん、空気重くしちゃって…
「気にしなくていいよ。そういうことがある仕事だってことは、わたしもスバルもわかっているから…まあ、わたしが引きずるなって言うのもおかしいんだけどね」
なのはさんもそういう体験が?
「うん、たくさんある…あのときこうすれば良かったって思うことはね」
えーとありがとうございます。そういえば、スバルさんはなんでこの仕事についたんですか?
「えーと、憧れの人みたくなりたくて…」
それ以上は、ここでは話づらいようなので個人的に聞きましょう…

えーでは、後書きでしたありがとうございます。




ところで、憧れの人って?
「なのはさんと、あたしを助けてくれた人です」
はい、ありがとうございます。
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