弓兵の英雄譚   作:菊水餡子

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第21話

襲撃事件から一日経った今日、私はある調べ物をしていた。

ジェイル・スカリエッティについてのものもそうだが、それ以上に昨日見たあの盾について……

エミヤンの使ったあの魔力によって構成された盾について……

エミヤンは、「ローアイアス」と呼んでいたそれ……

昔読んだ神話の中にそれに似た記述があったのを思い出したのだ。

そういえば、昨日は大変やったな……

ふっと、そんなことを頭に浮かべる。

昨日は、本部に戻ってきたところで、エミヤンになのはちゃんが泣きながら抱きついたのだ。周りにいたフォワード陣は皆唖然としていた。

当然私も驚いた。

なのはちゃんが泣くところは、今まで何度も見てきたけど、こんな風に人前で泣くようなことはなかった。

 

だから、こんな風に泣く彼女を見て、何かがあったことは、明白だった。

 

フォワード陣には、部屋に戻ってもらい、私は久しぶりに隊長陣を集めての女子会と称した事情聴取をした。

当然、今回の原因であろうエミヤンも加えて…

 

「さて、エミヤン?なんでなのはちゃんがこんな泣いてるんか?説明してもらおっか……言い逃れはできひんで」

「い…や……、なぜこんなことになっているのか私自身分かっていなくてね。混乱しているところなんだが…

というより、私自身、説明が欲しい位なんだが」

 

「な、なのは。ちょっと、なんでこうなってるのか教えてあげて…」

子供のように泣いていた彼女は、フェイトに促され口を開く。

「エ、エミヤさんは、十年ほど前のことを覚えていますか?」

十年ほど前…それは、私やフェイトちゃん、そしてなのはちゃんにとっての全てが始まった頃。

「わたしは、闇の書との戦いで死にかけました…」

それは、独白…

親友である、わたしや、フェイトも知らない話。

「そこで、わたしは救われました。赤い外套の男の人に…」

赤い外套の男…もう間違えようもない。

目の前の青年は、かつてあの戦いの場にいた。

そして、なのはちゃんを救った。

 

「貴方は、あの日救ったわたしのことを覚えていましたか?」

 

エミヤside

十年ほど前…彼女はそう話した…

彼女たちにとって十年。

しかし、私は時間の概念から外れた存在。

それほど時間の間に私はどれほどの世界をまわっただろうか?記憶は擦り減っていく。

 

それでも、彼女のことは覚えていた。

 

彼女のことが気掛かりだったのだろうか?

……多分そうなのだろう。

彼女の姿があまりにも、過去の私の姿に似ていた。

そして、いつか理想を追い求めるうちに何も見えなくなっていた過去の私自身に…

たった10歳になるかならないかの少女にするような心配事ではない。しかし、彼女には、それほどの心配をさせる要素があった。

 

魔法という未知に近い力。そう、あまりにも強大なその力。

 

だからだろうか、大人の心配というものに近い形で私は彼女のことを何処かで気にかけていたのだろう。

だから、どれほど記憶に矛盾が生じていっても、彼女のことは忘れなかった。

 

「貴方は、あの日救ったわたしのことを覚えていましたか?」

 

その問いに答えることは、容易い。

「ああ、覚えている。仲間を救おうと戦場に向かった少女のことを覚えている」

 

 

 

 

はやてside

エミヤンがああ言ったあと、またなのはちゃんは泣きはじめた。

「なんでもっとはやく教えてくれなかったんですか?」なんて口にしながら、エミヤンに抱きつきながら……

 

それは、戯れるリア充のように……

「あかん。なんで嫉妬しとるんやろ?」

 

昨日のことを思い出しながら、そう毒づく。

なぜか、エミヤンに抱きついていたなのはちゃんに黒い感情を持ってしまった。

自分でもなんでかはわからない。

 

「はあ、全く…やることが多くて大変やわ」

エミヤンの使ったあの盾について調べるうちに色々なことが分かった。

アイアスというのは、ギリシア神話の英雄の名前…

盾により、功績をあげたということ…

 

そして、もうひとつある古代ベルカの叙事詩にその名があったこと……

あったことに驚いたが、それ以上に驚くべきものがあった。

「なんでや、なんでやここで予言に関わるものがあるんや」

見つけたその叙事詩の名前は

「錬鉄の英雄」

 

忘れられし古代ベルカの戦乱を終息させた英雄の物語。

 

 

 

エミヤside

昨日のあれから一転して、なのははご機嫌であった。

いや、あれはご機嫌すぎるのではないか?

 

昨日の少女の入院しているらしい聖王教会に関連した病院に向かう途中なのであるが、鼻歌を歌うほどご機嫌なのだ。

 

思えば昨日の夜は大変だった。そう、色々な意味で……

 

昨日は、なのはが泣き止んだあと、フォワード陣に事情を説明するという苦行に臨んだ。

 

スバルなどは、笑顔で…そう、何か企んでいるときや、ブチギレかけているときの凛のようなあの笑顔を浮かべ……

ティアナは呆れたような顔で私の話を聞いていた。

 

しかし、ここまではそこまで怖くなかった。いや、十分恐怖を感じるものであったのだが……

 

「なんか、運命の出逢いみたいですね」

キャロのその発言により、空気が凍った。

 

そこからなんと言えば良いのか……

スバルの「あたしとの再会も運命の出逢いですよね!」

という発言から始まり、謎の事態に陥った……

 

一人行き場を失ったエリオがあまりにも可哀想であったことは述べておくべきことだろう。

「エ、エミヤさん……この状況なんとかしてもらえませんか………」

「私にも、このような状況を切り抜ける最善策というものが分からないのだよ」

 

男二人は行き場を失っていた。

 

日にちが変わっての今日…

今頃、ともにあの戦場を逃げ延びた少年は深い眠りについているだろう。そんなことを思いながら、なのはとともに病院に向かっているのだった。

 

 

 

 

病院に着き、案内されたそこ…

そこにある一つのベッドに眠っていたのは、一人の少女。

その少女は…

 

私を師匠と呼び、ともに戦場を駆け抜けたあの少年の想い人にあまりにも似ていた。

「オリヴィエ…」

不意にそんな呟きが出てしまった。

 

少女の瞼が微かに開きこちらを見る。

「…誰?」

 

「はじめまして。高町なのはって言います」

「私はエミヤシロウ。君の名前は?」

 

「ヴィヴィオ…」

 

それは、時を…世界を超えた再会であった…

 

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