弓兵の英雄譚   作:菊水餡子

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筆が進む。しかし、クオリティが上がらない。
そして、テストが近づく。
さあ、これからどうしよう………


第30話

集められたその一室。

緊迫したこの状況下で一人として、言葉を口にしなかった。いや、出来なかった。

 

映像として流れるそれはかなり画像が荒い。それでも、何が起きていたのかを克明に映していた。

映っているのは三人。一人は年端もいかない少女。もう一人は赤い外套の男。そして、もう一人黒い騎士の少女。

 

そこに映されたそれは次元を超えた戦い。

到底人間の介入出来る戦いではなかった。少女が動けば、そこには凹んだ地面のみが残る。

男が剣を振るえば、そこには残像すら残らない。

その戦いを生み出した男は今共にこの場にいる男だと誰が思おうか?

 

映像の中の男は、少しずつだが押されていき、ついに均衡は破れる。

男は吹き飛ばされ騎士はもう一人少女を手にかけようとする。

そして、そこで映像は途切れる。

後に残るのは砂嵐の音のみ。

 

 

「エミヤン………これは本当にあったことなんやね」

最初に口を開いたのは、司令官という立場にある八神はやて。それは、確認の意味合いを含んでいた。

 

「ああ、これは実際にあった。それゆえに今現在の私は万全とは言い難い状況であるがな」

苦笑いしながら、そう言うが周りの人間からすればそれはあまりにも異様だった。

あれは私たちの知る戦闘とは違う。あれはまさしくそうあの夢に現れた殺し合いと同じ。

正真正銘、命と命を掛けたもの。

そんな戦いをして平然としている。それは、そんな戦いに慣れているかのよう。

 

改めて彼のことを知らなかったのだとわかる。

彼はどんな人生を歩んできたのか………

 

 

 

「エミヤは相手のことを知っているのか?」

それは、長年騎士として戦い続けてきたシグナムにふと湧いた疑問。

 

「………嫌というほど知っている。彼女は、昔共に戦ったパートナーだから」

そのつぶやきは彼女たちにとって驚きでしかなかった。

 

「なんで!なんで昔の仲間を殺そうとするの?」

それは仲間というものを誰よりも大切にしてきたなのはの怒りの言葉。普段の彼女ではあり得ないであろうその姿。

 

「………彼女は誰かに操られている。誰かは言わずともわかるだろう。それよりも彼女がいること自体私にとっては驚くべきことなんだ。分かりやすく言えば彼女はすでに死んだ身。普通であればいるはずのない存在なのだから………これではあの戦争と同じじゃないか」

 

 

 

 

 

今彼は何と言った?

彼女はすでに死んだ身?

ではこの映像に映っているものは死者だというのか?

 

彼の言葉を噛み砕き理解しようとするが理解出来ない。

それに彼が最後に言った言葉まるで過去に死者を蘇らしたかのようなそんな言葉。

 

それに操っている人間は間違いなくスカリエッティであろう。これにより、彼が持っている戦力がより強大であろうことは間違いない。

 

「エミヤンは、どうやって死者を蘇させたか検討がついてるんか?」

「複数個考えられる。一つは君に聞いたことのある聖杯戦争。しかし、それはあまり可能性の高いものではない。あり得るものとしては聖王の何かだろう。いや、確実にあった。しかし、詳しいことは私もよく分からない」

 

確実にあった、そう言ったは苦虫を噛み潰したような、嫌なことを思い出したかのような顔をする。

 

 

「そうや、エミヤン。その聖杯戦争についてあまり知らないことが多いんやそれも教えてくれへんか?」

 

「ああ、一応名を出したからには全て教えておこう。万が一巻き込まれる可能性もあるからな。聖杯戦争というものは、何でも叶う願望機を巡った殺し合いだ」

 

殺し合い。その言葉に皆驚く。それは私たちの考えていたものとは大きく違っていた。

 

「人を殺すやて?嘘やろ?」

 

「嘘ではないよ。それに参加する者は、既に普通の人間ではない。魔術師と呼ばれるものだ。魔術師は、自らの悲願のために平気で人を殺し、実験台にする」

 

魔術師。それはフォワード陣にとっては、聞きなれない言葉であったが、隊長陣にとってはその限りではなかった。

なぜなら………

「エミヤさんも魔術師でしたよね。貴方もそんなことをしたんですか?人を実験台にするようなことを」

 

そう、エミヤシロウという男自体が魔術師の端くれ………

だから、この質問自体当たり前に出るもの。そして、驚きを隠せなかったのは、何も知らなかったものたち。

 

「エミヤさんが………そんな……そんな…」

誰が呟いたか、そんな呟きは静まり返った部屋では誰の耳にも入る。

 

「ああ、私は魔術師の端くれだ。しかし、私にとっては魔術というものは、人を守るための手段のひとつでしかなかったのでな。ゆえに私は魔術使いと呼ばれ、真っ当な魔術師からは異端とされた。まあ、それもあって魔術の実験のために人を殺すなどということは一度もしなかった」

エミヤは、その質問にそう答える。そう、実験のためには殺さなかった。だが、殺したことがないとは言っていない。

 

「魔法と、魔術ってどう違うの?」

黙っていたフォワード陣からそんな質問が飛ぶ。

その言葉の違いに違和感を感じたのだろう。

 

 

「魔術師にとって魔法というものは、人の身では辿り着けない。そんなものだった。そして、それに辿り着くことが、魔術師の目標。そして魔法というものは、ある意味あり得ないもの。私もかつて見たことがあるが、それは平行世界と呼ばれるそこに移動するというものだった。それを行ったものは600年以上も生存が確認されている化け物だった。まあ、あり得ない超常現象を起こす。それが魔法だった」

 

その説明は、ある意味理解でき、そしてある意味では理解できないものだった。

 

「エミヤン。聖杯戦争を聞いたときサーヴァントって言っとったが、それってなんや?それになんでそこまで聖杯戦争について知ってるんや?」

そうあまりにも驚くべきことが多過ぎて、気づかずにいたこと。彼が魔術師であるということから、それについて知っていてもおかしくはないと思っていた。だけど、あまりにも詳し過ぎる。

 

 

「そうだな………少し時間を置かせてくれないか?これは、私という人間の始まりでもあることだから」

拒絶とまではいかないが、そんな反応を示す。

 

「すまない」

短くそう言って、彼は部屋を出る。

彼からあの騎士についてわかったことは、スカリエッティ側のもので、既に死んだ存在ということ。

情報がないよりはいいが、何とも言えない情報が増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?」

エミヤにそう声をかける少女がいた。

彼の過去を唯一知る少女。

誰にも理解されなかったその男を理解しようと努めた少女。

 

「ああ、問題ない。大丈夫だよ。アインハルト」

優しく言い聞かせるように、そう目の前で心配してくれる少女と私自身に言い聞かせるようにそう言う。

 

自分でも理解している。これから彼女らに話そうとしていることは、あまりにも現実離れしていると。

そしてそれを聞いて彼女らはどう思うだろうか?

 

 

私はそれを知っている。

助けたはずの男に裏切られる。救った老人に罵倒される。

生命の危機を救った少女に化け物と呼ばれる。

彼女たちも彼らと同じように………

 

「大丈夫ですよ」

幼い少女はそう口にする。そこに根拠があるかは分からない。それでもなぜか説得力があった。その言葉に安心感を抱いた。

ああ、彼女が言うように大丈夫だと思える。

 

「ああ、ならば、そうであるならば、大丈夫だ」

自分に言い聞かせるようにそうつぶやく。

 




「なんや?エミヤン?私たちの昔のことはよく分からんうちに知っとるのに自分のことは話さへんのか?」

「シロウ!お姉ちゃんの命令で、全部話しちゃいなさい。全部話せば楽になるから!」

「そうだ。シロウ!話さなかったら強制タイガー道場だ!
この冬木の虎に許しを得るまでタイガー道場でスタッフ一号だ!」

なぜかは知りませんが、ポンコツ三人衆が同盟を組んだ模様。さて、この後エミヤの運命はどうなる?
次回!エミヤ死す!タイガー道場送りの巻!

「たわけ!そんなわけがあるか!まだ私はあんなところに行くつもりはないぞ!」
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