弓兵の英雄譚   作:菊水餡子

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アインハルトの出番はこれで最後になるかな?
ある意味、これで終わらせても良いような気がします。

何はともあれお楽しみ下さい。


第34話

世界は変わっていく。

それは、四季が変わっていくように。年月が経つように。

不変の真理があれば、変わっていくものがあるのも然り。

 

だから、世界を変えてみたかった。

だから、世界を壊してみたかった。

だから、世界を創り変えてみたかった。

 

単純な好奇心は猫を殺す。単純な興味は人を殺す。

だから、彼は死んだ。人としての彼は死んだ。

ではいまある彼は何者か?

 

誰にも分からない。彼自身も分からない。

 

だから、彼は調べてみた。知りたかったから。

研究者として何もかもを知りたかったから。

 

探した。それの鍵となるものを。

 

そして、彼は、遂に見つけた。見つけてしまった。

 

 

世界を変える力を。世界を滅ぼす力を。

 

 

 

狂い切ったその目で見通すのは、混沌に満ちた世界か。

それとも、その先の地獄か。

 

神のみぞ知る。

その行く末は、誰にも分からない。

 

だから、嗤おう。唄おう。

 

「さあ、はじめようか?」

 

 

 

 

 

 

 

「私は、私の目の前にある人を救いたい。ただそれだけだ。だからこそ、私はこの世界にいる」

 

それは、誰に向けたものでもない。自身に向けたもの。

 

そして、誓い。

救いたい。ただそれだけ。ただそれだけのためにある。

 

だから、やるべきことは分かっている。

 

「ヴィヴィオを救う。私のやるべきことはそれだけだ」

それは、男の独白。

一人で戦いは抜いてきた男の独白だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の過去を知ってしまった。

それは人間の歩んだものとは単純に異なっていた。

夢と合致していく。

 

彼の悲しみを理解していく。

理解し難いそれすらを理解していく。納得させていく。

己の心に浸透させていく。

そして、目の前にある状況に目を向ける。

 

スカリエッティの暴走を止める。

ヴィヴィオを救う。

 

この負の連鎖を止める。

彼のように上手くはできない。それでも、管理局の一人として、夜天の書の主として。

 

 

「わたしたちの機動六課を舐めんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想いは昇華していく。

願いは、紡がれる。

理想の果てに辿り着いた英雄の最終楽章を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、この戦いは多分いままでで一番大変だと思うの」

 

隊長陣がそう話を続けていく。

それの優しい言葉は出撃の恐怖を少しずつ和らげていく。

 

 

「最後にエミヤン。なんか言うことはあらへんか?」

そうはやては言うが、既に話すことは何もない。

 

いや、一人、言うべきことがあった。

 

「アインハルト」

 

「エ、エミヤさん!」

 

聡い彼女のことだ。知っているのだろう。

私が何を成そうとしているか。

 

その結果何が起こるかも。

 

「私はエミヤさんの味方で居続けます。どんなことが起こっても!」

 

それが彼女の精一杯の言葉だった。

それだけで良かった。

自分を肯定し、味方で居続けると言ってくれる存在がいる。

ただそれが嬉しかった。

 

「ああ、ならば、私は、いや、俺は、君が誇れるような正義の味方で在り続けるよ」

 

守護者でも、錬鉄の英雄でもない。

ただのエミヤシロウとしての言葉。

ただ理想のために歩み続けた男として。

 

 

 

 

彼らは戦場へと向かっていく。

自らの理想のため、自らの信念のために。

 

 

「忘れません。貴方の理想を。貴方の願いを。絶対に」

 

 

それは、かつて青年が師匠と慕った男に向けた言葉と同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少女は、王だった。

騎士であった。そして、ある一人の少年に恋した少女だった。

それでも、彼女の願いは届くべきものではなかった。

 

彼女という存在がどれだけの影響を及ぼすのかは計り知れない。

 

だが、その願いは叶えられてしまった。

 

歪な狂った形で。

 

彼女は願う。

その願いは、歪なものであることを知りながら。

 

だから、迎え撃つ。

 

愛したその男を。

 

 

 

 

 

 

機動六課のメンバーは、それぞれの役割を果たすためにそれぞれの場所へと向かう。

 

なのはは、ヴィヴィオを救うため、フェイトはスカリエッティを捉えるため、そしてエミヤは、彼女を止めるため。

 

 

「久しいな、衛宮士郎。」

黒き騎士は、目の前にいる男をフルネームでそう呼ぶ。

「ああ、久しいな、アルトリア」

赤き弓兵は、皮肉げにそう返す。

 

ただそれだけ。

彼女たちには、交わす言葉に意味はない。

そう、剣を交わすことに意味がある。

 

英雄にとって、剣を交わすことは、言葉を交わすことと同義。いや、それ以上であった。

 

 

 

 

「「さあ、はじめようか?」」

 

 

 

 

その言葉を合図に二人の姿は消える。

 

 

 

 

 

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