ある意味、これで終わらせても良いような気がします。
何はともあれお楽しみ下さい。
世界は変わっていく。
それは、四季が変わっていくように。年月が経つように。
不変の真理があれば、変わっていくものがあるのも然り。
だから、世界を変えてみたかった。
だから、世界を壊してみたかった。
だから、世界を創り変えてみたかった。
単純な好奇心は猫を殺す。単純な興味は人を殺す。
だから、彼は死んだ。人としての彼は死んだ。
ではいまある彼は何者か?
誰にも分からない。彼自身も分からない。
だから、彼は調べてみた。知りたかったから。
研究者として何もかもを知りたかったから。
探した。それの鍵となるものを。
そして、彼は、遂に見つけた。見つけてしまった。
世界を変える力を。世界を滅ぼす力を。
狂い切ったその目で見通すのは、混沌に満ちた世界か。
それとも、その先の地獄か。
神のみぞ知る。
その行く末は、誰にも分からない。
だから、嗤おう。唄おう。
「さあ、はじめようか?」
「私は、私の目の前にある人を救いたい。ただそれだけだ。だからこそ、私はこの世界にいる」
それは、誰に向けたものでもない。自身に向けたもの。
そして、誓い。
救いたい。ただそれだけ。ただそれだけのためにある。
だから、やるべきことは分かっている。
「ヴィヴィオを救う。私のやるべきことはそれだけだ」
それは、男の独白。
一人で戦いは抜いてきた男の独白だった。
彼の過去を知ってしまった。
それは人間の歩んだものとは単純に異なっていた。
夢と合致していく。
彼の悲しみを理解していく。
理解し難いそれすらを理解していく。納得させていく。
己の心に浸透させていく。
そして、目の前にある状況に目を向ける。
スカリエッティの暴走を止める。
ヴィヴィオを救う。
この負の連鎖を止める。
彼のように上手くはできない。それでも、管理局の一人として、夜天の書の主として。
「わたしたちの機動六課を舐めんな」
想いは昇華していく。
願いは、紡がれる。
理想の果てに辿り着いた英雄の最終楽章を。
「さて、この戦いは多分いままでで一番大変だと思うの」
隊長陣がそう話を続けていく。
それの優しい言葉は出撃の恐怖を少しずつ和らげていく。
「最後にエミヤン。なんか言うことはあらへんか?」
そうはやては言うが、既に話すことは何もない。
いや、一人、言うべきことがあった。
「アインハルト」
「エ、エミヤさん!」
聡い彼女のことだ。知っているのだろう。
私が何を成そうとしているか。
その結果何が起こるかも。
「私はエミヤさんの味方で居続けます。どんなことが起こっても!」
それが彼女の精一杯の言葉だった。
それだけで良かった。
自分を肯定し、味方で居続けると言ってくれる存在がいる。
ただそれが嬉しかった。
「ああ、ならば、私は、いや、俺は、君が誇れるような正義の味方で在り続けるよ」
守護者でも、錬鉄の英雄でもない。
ただのエミヤシロウとしての言葉。
ただ理想のために歩み続けた男として。
彼らは戦場へと向かっていく。
自らの理想のため、自らの信念のために。
「忘れません。貴方の理想を。貴方の願いを。絶対に」
それは、かつて青年が師匠と慕った男に向けた言葉と同じだった。
その少女は、王だった。
騎士であった。そして、ある一人の少年に恋した少女だった。
それでも、彼女の願いは届くべきものではなかった。
彼女という存在がどれだけの影響を及ぼすのかは計り知れない。
だが、その願いは叶えられてしまった。
歪な狂った形で。
彼女は願う。
その願いは、歪なものであることを知りながら。
だから、迎え撃つ。
愛したその男を。
機動六課のメンバーは、それぞれの役割を果たすためにそれぞれの場所へと向かう。
なのはは、ヴィヴィオを救うため、フェイトはスカリエッティを捉えるため、そしてエミヤは、彼女を止めるため。
「久しいな、衛宮士郎。」
黒き騎士は、目の前にいる男をフルネームでそう呼ぶ。
「ああ、久しいな、アルトリア」
赤き弓兵は、皮肉げにそう返す。
ただそれだけ。
彼女たちには、交わす言葉に意味はない。
そう、剣を交わすことに意味がある。
英雄にとって、剣を交わすことは、言葉を交わすことと同義。いや、それ以上であった。
「「さあ、はじめようか?」」
その言葉を合図に二人の姿は消える。