心の聞こえない被告人 ――ラテラーノ司法記録   作:釜石

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第10話:消えない言葉

リヴィオは手にしていた封筒を見た。差出記録も、受領記録もない。正式な文書ではない。権利擁護官から依頼人でもない少年へ宛てた私信だった。

 

「あなた宛てです」

リヴィオは封筒を差し出した。テオは両手で受け取った。

封はされていない。中から一枚の白い紙を取り出す。礼拝室の細い窓から差し込む光の中で、文字を一行ずつ読んだ。

 

テオは最後まで読み終えた。

紙を持つ指が震えていた。サンクタたちには、その震えとともに何かが伝わったのかもしれない。だがリヴィオには、見えるものしか分からなかった。

テオの肩が下がる。呼吸が一度止まり、次に大きく吸い込まれる。目元へ涙が浮かぶ。それでも声を上げて泣くことはなかった。

 

「父は」テオが言った。ベアトリーチェが止めようとしたが、続く言葉は事件の供述ではなかった。「父は、本当に堕天者だったのでしょうか」

「分かりません」リヴィオは答えた。

「でも、分からないことになったのですね」

「はい」

 

三十二年間、記録の上では決まっていた。

ルカ・ヴィアンキは堕天者だった。事故を起こした。無許可で守護銃を撃ち、法に背いた。

その結論が初めて、分からないものへ戻された。無罪になったわけではない。名誉が回復されたわけでもない。ただ、確定していた言葉の後ろへ疑問が書き加えられたのだ。

 

テオは返書を折った。元の封筒へ入れ、胸元の内ポケットへ収める。

「行きます」

 

彼は言った。礼拝室を出る前に、祭壇の前で一度足を止めた。保全箱の中にある自分の守護銃を見る。そして、その隣に置かれた父の異議付記へ視線を移す。

 

「文書を持って逃げたのは、誰にも渡したくなかったからではありません」

ベアトリーチェが眉を寄せた。「今は話さないでください」

「これだけです」

「その一言も供述になります」

「分かっています」

テオは文書を見たまま言った。

「誰に渡せば、消えないのか分からなかったんです」

 

記録官の筆が動いた。小さな摩擦音が礼拝室へ響く。

テオはそれを聞いた。顔を上げ、記録官を見る。自分の言葉が書かれていく様子を、怖がるように、確かめるように見つめていた。

三十二年前、父親の言葉も同じように記録された。そしてその後、封印された。今度の記録がどこへ行くのか。誰が読むのか。何を残し、何を落とすのか。テオにはまだ分からない。

 

それでも彼は逃げなかった。最初から、遠くへ逃げるつもりなどなかったのかもしれない。ただ、見つかった瞬間にすべてが決まってしまうことを恐れていたのだ。

 

礼拝室の扉が開く。巡礼路の音が入ってきた。

荷車の車輪。水場から溢れる水。食堂で食器を重ねる音。遠くで鳴る昼の鐘。

テオは執行人たちの間を歩き、外へ出た。

 

幸い、休憩所の前に報道記録員はいなかった。巡礼者たちは一行へ僅かに目を向けたが、すぐに自分の荷物や祈祷書へ視線を戻した。テオ・ヴィアンキの名は、まだ街の物語になっていない。

彼は第九休憩所から、第五庁の車両までの短い道を歩いた。その距離は、逃げようと思えば数秒で路地へ入れるほど短かった。

だが、テオは一度も走らなかった。

 

第五庁庁舎へ着くと、テオは一般の拘束区画ではなく、保護面談室へ通された。

窓のある小さな部屋だった。外には第五庁の中庭が見える。中央には低い噴水があり、石造りの天使像が水瓶を傾けている。水は細い弧を描いて落ち、風に吹かれるたび、窓硝子へ小さな光を跳ね返した。

 

テオのために呼ばれた権利擁護官は、ソフィア・マルテッリというサンクタだった。三十代半ば。短い黒髪と、小さな円形眼鏡。

第五庁へ到着すると、彼女は正義促進官にも執行人にも挨拶をせず、最初にテオとの秘密交通を求めた。

 

「どれほど時間が必要ですか」リケーレが尋ねる。

「必要なだけです」

「第一庁へ拘束判断を求める期限があります」

「それは私の依頼人が相談する時間を短くする理由にはなりません」

「まだ正式に受任したわけでは」

ソフィアは扉の前で振り返った。「本人が拒否しない限り、今から受任します」

 

扉が閉じる。

リヴィオは廊下に残った。アウレリアの面会室も、壁を二枚隔てた先にある。

同じ事件。二人の生存者。それぞれに別の権利擁護官がつき、別の部屋で、自分が何を話すべきかを考えている。

真実が一つであっても、そこへ至る言葉は一つではない。

 

廊下の向こうから、保全官たちが欠落文書を運んできた。

透明な箱の中に、革表紙の異議付記が収められている。箱の側面には、新しい管理票が貼られていた。

発見場所、発見時刻、所持者、封緘が切られていた状態、受領した執行人、立会人、今から鑑定を行う者。

空白だった欄が、一つずつ埋められていく。三十二年前の文書に、新しい記録が付け加えられる。

 

「原本の真正確認には、どれほどかかります」リヴィオが尋ねた。

オレンが保全箱と並んで歩きながら答えた。「封印番号と紙、インク、公証符号の確認だけなら、今日中に。内容の開示は第一庁の判断次第です」

「また封じるのですか」

「今度は、存在を記録した上で封じます」オレンは箱の中の文書を見た。「消えた一冊ではなく、回収された一冊として」

 

保全官たちが認証扉の向こうへ消える。重い扉が閉じた。

その音を聞きながら、リヴィオは礼拝室でのテオの言葉を思い返した。

 

——誰に渡せば、消えないのか分からなかった。

 

法は、言葉を残すための仕組みである。同時に、言葉を分類し、封印し、読める者を制限する仕組みでもある。記録されれば救われるとは限らない。記録されなければ、存在しなかったことにされる。

その矛盾の中で、テオは父親の文書を抱え、聖都の外へ逃げることもできず、巡礼者の休憩所で眠っていた。

 

捜索はあっけなく終わった。だが、見つかったのは少年一人ではない。

三十二年前に封じられた異議。発砲より前に事故が始まっていたという順序。そして、マティアスが最後まで公証し直そうとした事実。それらが同時に、第五庁へと戻ってきた。

今度こそ失われないかどうかは、まだ誰にも分からなかった。

 

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TIPS 01 重要参考人と被疑者

事件について重要な事情を知っていると考えられる者が、直ちに被疑者となるわけではない。

重要参考人または事件関係者に対する事情聴取は、原則として本人の同意に基づいて行われる。移動を求める場合も、逮捕や拘束ではなく、任意同行として扱われることがある。

ただし、事情聴取の途中で本人が犯罪行為を認めた場合や、新たな証拠によって嫌疑が具体化した場合、その者の立場は被疑者へ変わり得る。立場が変わる可能性が生じた時点で、捜査官は本人へ不利益な供述を拒否できることと、権利擁護官へ相談できることを告げなければならない。

同じ事件に複数の被疑者や関係者がいる場合、一人の権利擁護官が全員を担当するとは限らない。一方に有利な主張が、もう一方の責任を重くする可能性があるためである。本人同士が互いを庇おうとしていても、法的な利益が一致しているとは限らない。

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