テオ・ヴィアンキの権利擁護官が保護面談室から出てきたのは、扉が閉じてから四十七分後だった。
ソフィア・マルテッリは、入室したときと同じ黒い書類鞄を片手に提げていた。表情にも服装にも目立った変化はなかったが、鞄の口からは第五庁が交付した権利説明書と、色の異なる付箋を挟んだ事件概要が覗いている。そして右手には、新たに作成された受任記録が握られていた。
「依頼人は事情聴取に応じます」
廊下で待っていたベアトリーチェへ、ソフィアは挨拶より先に告げた。
「ただし、条件があります。本日の聴取は、鐘楼へ入ってから現場を離れるまでの事実確認に限ること。父親の教理上の身分や国外での家族関係、神学校の推薦保留などを、本人の性格や動機を推測する材料として扱わないこと。また、欠落文書の持出しについて質問する際も、十八歳の補助員がその内容と法的効果を正確に理解していたとは前提にしないでください」
「異議はありません」
「セラフィーニ技師の権利擁護官の同席は認めますが、依頼人へ直接質問したり、助言したりすることは認めません。確認事項がある場合は、私を通してください」
ソフィアの視線を受け、リヴィオは頷いた。
「私はアウレリア・セラフィーニの代理人です。テオとの間に代理関係はありません」
「ええ、承知しています。将来も利益が一致するとは限らないからこそ、今ここで明確に線を引くのです」
廊下の壁際では、リケーレが腕を組んでいた。
「第五庁に対しても、そのくらい慎重でいていただけると助かりますね」
「あなた方は人を捜し、武器を押収し、必要であれば拘束できる権限を持っています。権利擁護官より多めに警戒するのが妥当でしょう」
「公平な扱いですね」
「公平と信頼は別です」
ソフィアは淡々と答え、最後に逐語記録と音声記録の併用、本人が混乱した場合の中断、そして立場が変わる可能性が生じた時点での再度の権利説明を求めた。
条件が一つ提示されるたび、ニコラの源石筆が動く。テオが何を語るかだけでなく、その前に誰がどのような条件を置き、何を約束したのかも記録されていく。
三十二年前、ルカ・ヴィアンキの言葉は異議付記としてまとめられた後、他の事故記録とともに封印された。しかし今度は、息子が口を開く前から、その言葉をどう扱うかについての厳密な記録が作られている。
それを進歩と呼ぶには、失われた時間があまりに長すぎる。だが、ただの書類の増加と呼ぶには、今この場で守られようとしているものが確かに存在していた。
事情聴取には、拘束区画ではなく第五庁の保護面談室が使われた。
壁に固定された机も床の認証環もなく、窓の外には中庭の噴水と石造りの像が見えている。ただし出入口の外には二人の執行人が立ち、机上の音声記録器には第一庁の封印が施されていた。家具の雰囲気が柔らかくなったからといって、ここで口にする言葉が軽くなるわけではない。
テオは窓を背にして座っていた。事件当日の作業服は鑑定へ回され、代わりに第五庁が用意した灰色の衣服を着ている。机の上には水の入った紙杯と焼き菓子が置かれていたが、菓子は表面を少し崩されただけでほとんど手つかずだった。
第六庁の簡易診察では、光輪や共感反応に明らかな異常は認められなかった。確認されたのは、睡眠不足と軽度の脱水、左肩と背中の打撲、両手の擦過傷であった。
氏名、年齢、鐘楼での職務内容といった基本事項の確認を終えた後、ベアトリーチェは本題に入った。
「本日の聴取では、あなた自身に不利益となる質問への回答を拒むことができます。また、いつでも権利擁護官へ相談し、聴取の中断を求めることができます。理解しましたか」
テオが隣のソフィアを見ると、彼女が小さく頷いた。「理解しました」
「では、事件当日の朝、鐘楼へ入ったところから話してください」
テオは紙杯を取り、一口だけ水を飲んだ。机へ戻したとき、薄い紙の底が僅かに鳴った。
「いつもより少し早く、六時半頃に入りました。中にはセラフィーニ技師がいて、第七鐘を調べていました。前日から音が僅かに濁っていたそうです。測定値に異常はないのに余計な響きが混じるから、床下の古い配管も確認したいと言っていました」
「ロッシーニ公証官が来たのはその後ですか」
「はい。何冊かの記録と古い金属の印を持ってきました。管理所の職員が僕の名前を呼んだとき、あの人は振り返って『ヴィアンキ』という姓を確認しましたが、それだけでした」
マティアスはテオの父親を知っていたはずだ。それにもかかわらず、ルカが三十二年前の事故に関わっていたことを息子本人には告げなかった。
「旧監査印で床下の封鎖区画を開いたのはロッシーニ公証官ですね」
「はい。セラフィーニ技師は、何の設備か分からないうちは第三庁へ確認するまで開けない方がいいと止めました。鐘も止めるべきだと言ったんですが、ロッシーニ公証官は『次の鐘で異常が大きくなるかもしれないから時間がない』と言って、作業を急がせたんです」
「どのような記録を見せて説明したのですか」
「図面のようなものは見せられましたが、全部ではありませんでした。革表紙の文書はずっと鞄に入ったままでしたから」
マティアスは装置の目的も、過去の事故も、ルカの異議付記も知っていた。それでもアウレリアとテオに与えたのは、作業を続けさせるために必要な断片的な情報だけだった。三十二年前の記録を訂正しようとしながら、結局は三十二年前と同じように、自分だけが全体を知るという方法を選んでいたのだ。
「第七鐘が鳴ったとき、何が起きましたか」
テオはすぐには答えず、机の木目へ視線を落とした。
「鐘が少し遅れて、濁った音が鳴りました。その直後、二人がそこにいるという感覚が消えました。姿は見えて声も聞こえるのに、中に誰もいないように感じたんです」
「セラフィーニ技師はどうなりましたか」
「制御卓に触れたまま身体が跳ねて、後ろへ倒れました。床に頭を打って、意識を失いました。守護銃もそのとき腰から外れて床へ落ちたんです。僕は触っていません」
「ロッシーニ公証官は?」
テオは一度だけ息を止めた。「……彼が拾いました」
室内の空気が僅かに動いた。
「詳しく話してください」ベアトリーチェが促す。
「ロッシーニ公証官は、床下のレバーを何度も動かして装置を止めようとしましたが、レバーが戻ってしまって止められなかった。それから鞄から古い文書を開き、僕に銃を出せと言いました。制御柱の下の方を撃てと。父も同じ場所を撃って事故を止めようとしたんだ、と言われました」
「それを聞いて、すぐに撃ちましたか」
「いいえ。無許可で撃てばどうなるか知っていましたし、父と同じになると思って怖くなりました。でも、あの人が『今度は順番を残す』と言ったんです」
記録官の筆が止まらずに進んだ。
「ロッシーニ公証官は、なぜセラフィーニ技師の銃を拾ったのですか」
「僕が撃つ場所とは別に、柱の横の回路も同時に壊さなければ出力が戻ってしまうと言っていました。彼は自分の銃を持っていなかったので、床に落ちていた彼女の銃を拾ったんです」
「そのまま撃てたのですか」
「いいえ。彼は自分の手と、銃の持つところを布で何度か拭いていました」
テオが知っていたのはそれだけだった。
「発砲の手順は?」
「僕が先に下を撃ち、そのすぐ後にロッシーニ公証官が上を撃つことになりました。彼が『三、二、一』と数えて、僕が先に撃ちました。当たると、床が大きく揺れて近くにあった譜面台が倒れました」テオの呼吸が少し速くなる。「その直後にロッシーニ公証官の銃が鳴り、金属へ当たったような音がして……彼が胸を押さえて倒れたんです」
「二発目を発射したのは、アウレリア・セラフィーニではなくマティアス・ロッシーニですね」
「はい。彼女はずっと倒れたままでした」
アウレリアの銃から発射された第二発。マティアスの体内から回収された弾丸。
テオの供述が正しければ、マティアスは自分で銃を構え、装置を停止させるために撃ち、その弾丸が倒れ込んだ譜面台に当たって方向を変え、自分の胸へ入ったことになる。
それは完全な事故だった。
「装置が止まった後、ロッシーニ公証官は何か話しましたか」
「少しだけ。文書を指して『持っていけ』と言いました。それから……『また封じさせるな』と」
「それで、あなたは救護要請を行わずに文書を持って立ち去った」
最も重い質問だった。テオは顔を伏せた。
「呼ぼうとしました。でも、入口の警報が鳴っていて、怖くなったんです。父と同じ場所を撃ち、その直後に人が倒れた。誰かが来てこの状況を見たら、僕が撃ったから事故が起きたことにされると……」
「アウレリアを残せば、彼女が疑われるとは思いませんでしたか」
「そこまで考えられませんでした。本当に、怖くて」
「なぜ、手紙をリヴィオ・ベルナルディへ送ったのですか。正義促進官や第五庁ではなく」
テオはリヴィオを見た。
「彼がセラフィーニ技師の権利擁護官だったからです。それに……サンクタではなかったから」
「それが信頼の理由に?」
「信じたわけではありません。でも、父が当時何をどう感じていたか以外の部分もくみ取ってくれるかもしれないと思ったんです」
リヴィオは答えなかった。
テオが選んだのは、他者の感情を分かち合える者ではなかった。父の後悔や恐怖を感じ取ることはできなくても、記録された事実の順番を正確に読むことのできる異種族だった。
それは信頼というより、必要に迫られた選択だった。それでもリヴィオには、その理由が十分に重く響いた。
「最後に確認します。セラフィーニ技師は発砲前に意識を失っており、彼女の銃を撃ったのはロッシーニ公証官だった。間違いありませんね」
「はい」
ベアトリーチェが終了時刻を告げ、ニコラが最後の行を記そうとしたとき、テオが顔を上げた。
「待ってください。セラフィーニ技師は、鐘を止めようとしていました。それもちゃんと残してください。撃っていないことだけじゃなく、止めようとしていたことも」
「記録しています」ニコラは筆を動かしたまま答えた。「あなたが話した通りに残します。間違っていると思えば後から訂正もできますが、最初に何と述べたかも消さずに残します」
テオの顔へ不安が浮かんだが、ニコラは筆を止めて彼を真っ直ぐに見た。「訂正されたという事実も、同じ記録へ残るからです」
それで十分なのか、テオにはまだ分からないようだった。それでも、しばらくして彼は小さく頷いた。