心の聞こえない被告人 ――ラテラーノ司法記録   作:釜石

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第13話:言葉で帰る

アウレリアへ判断の変更を伝える役目を誰が担うかについて、正式な協議は行われなかった。

ベアトリーチェが自分から説明すると申し出、リヴィオが同席を求め、第一庁の記録官がその申出を記録したことで、必要な手続きはほとんど整ってしまったからである。

殺人の嫌疑を理由とした拘束継続を正義促進官室が求めない以上、残るのは第一庁による形式的な確認だけであり、決定書が届くまでには一時間もかからないと見込まれていた。

 

それでも二人は、釈放決定が出るのを待たずに拘束区画へ向かった。

無罪を告げるためではない。そもそもアウレリアは起訴されておらず、裁判によって有罪とも無罪とも判断されていない。正義促進官室が決めたのは、「マティアス・ロッシーニを殺害した者として彼女を訴追しない」ということだけであり、鐘楼設備の管理責任や事故直前の作業判断については、今後も技術調査や行政審査の対象になり得る。

 

法の言葉は、救いを告げるときでさえ範囲を区切る。

すべてが終わったとは言えない。何も悪くなかったとも言えない。ただ、彼女が人を撃ち殺したという疑いについて、国家はもはや拘束を正当化できない。

その限られた事実を、できるだけ早く本人へ伝える必要があった。

 

拘束区画へ通じる黒い扉は、事件の翌朝と同じ重さで開いた。

銀印が淡く光り内部の錠が外れると、窓のない廊下から冷たい空気が流れ出してくる。壁も照明も変わっていない。面会室の番号も、護送員の制服も、扉の開閉時刻を記録する認証盤も同じだった。

変わったのは、二人がこれから持ち込む言葉だけである。

 

「本人には、まだ何も伝えていません」案内役の執行人が言った。「第一庁の正式決定前なので、釈放の予定についても説明していません」

「第六庁の観察結果は?」リヴィオが尋ねる。

「身体状態は安定しています。共感反応については変化なし。光輪の明度も昨日とほぼ同じです」

 

変化なしという言葉が、良い意味なのか悪い意味なのかは判然としない。悪化していない。回復もしていない。制度はその両方を同じ欄へ記録できる。

 

面会室の前には、第一庁の法定記録官ニコラがすでに待っていた。彼女は二人の入室権限を確認し、ベアトリーチェが正義促進官として説明を行い、リヴィオが権利擁護官として同席することを記録する。

 

「本人の反応も逐語で残しますか」リヴィオが尋ねた。

「事件に関係する発言は記録します。ただし、釈放決定に対する私的な感想まで一言ずつ残す必要はありません」

「何が私的かを、誰が決めるのです」

ニコラは源石筆を持ったまま、僅かに考えた。

「本人が事件について述べたか、それ以外について述べたかで区別します」

「泣いたとしても?」

「泣いたという事実が後の手続きに必要であれば記録しますが、必要でなければ見た者の記憶に残ります」

ニコラは淡々と答え、扉の認証を行った。

 

室内では、アウレリアが机へ向かって座っていた。

第六庁から返された私服を着ている。事件当日の作業服ではなく、拘束初日に家族が差し入れた淡い灰色のワンピースだった。肩口には小さな金糸の刺繍があり、袖は手首までを覆っている。髪は整えられ、額の傷も薄い保護布へ替えられていたが、数日間を窓のない場所で過ごしたためか顔色はまだ白い。

 

机の上には紙が一枚置かれていた。文字はほとんど書かれていない。

中央に家族の名前が並んでいる。父。母。姉。妹。

その下へ、それぞれ何を話すかを考えていたらしい短い書き出しがあり、どれも途中で止まっていた。

 

アウレリアは入ってきたベアトリーチェを見ると、無意識に背筋を伸ばした。

「正義促進官が面会に来る予定は聞いていません」

「予定を入れる時間がありませんでした」ベアトリーチェが答える。「事件について、新しい判断を伝えるために来ました」

 

アウレリアの視線がリヴィオへ移る。彼の表情から答えを読み取ろうとしたのかもしれない。しかしリヴィオは、意識して何も示さなかった。

サンクタであれば、言葉より先に二人の感情から何かを感じ取っていたはずである。緊張の中に安堵があることや、ベアトリーチェが敵意を持っていないことを、説明される前に知ることができたかもしれない。

今のアウレリアにはそれができない。彼女は何も分からないまま、二人が話し始めるのを待っている。その沈黙を長引かせるべきではなかった。

 

「弾道鑑定と、テオ・ヴィアンキの供述が一致しました」

ベアトリーチェは机の向かいへ座らず、立ったまま話し始めた。「制御柱へ撃ち込まれた第一発は、テオ本人が装置を停止させる目的で発射したものです。二発目が発射された時点であなたは意識を失っており、あなたの守護銃を所持していたのはマティアス・ロッシーニでした」

 

アウレリアは瞬きをしなかった。ただ、机の上へ置かれていた右手が僅かに動いた。

「ロッシーニ公証官が、私の銃を?」

「装置の上部回路を破壊しようとして使用したと考えられます。一発目の衝撃で金属製譜面台が射線へ倒れ、二発目の弾丸はそこへ衝突した後、方向を変えてロッシーニ公証官の胸部へ入った。弾道、銃把の繊維、袖口に付着した合金粉、そして銃身上の血痕が、テオの供述を支持しています」

「では、あの方は自分で撃ったのですか」

「自分の身体を狙ったわけではありません」ベアトリーチェの声は静かだった。「装置を止めようとして撃った弾丸が、偶発的に本人へ命中したと判断するのが、現時点で最も証拠に合致します」

 

アウレリアの唇が動いたが、すぐには声にならなかった。胸の内側で何かを言葉へ変えようとしている。

以前なら、その途中にある驚きも、安堵も、悲しみも周囲へ伝わっていたのだろう。今は、口にしなければ誰にも届かない。

 

「私が撃ったのではない」

ようやく出てきた声は、ひどく小さかった。

「はい」

ベアトリーチェが短く頷き、その一語の後に長い沈黙が続いた。

 

アウレリアは机の上の家族の名前を見下ろしている。右手の指が紙の端へ触れ、何度か位置を直したが、紙を持ち上げることはなかった。

 

「正義促進官室は、あなたがマティアス・ロッシーニを殺害したという嫌疑に基づく公訴提起を行いません。また、殺人の嫌疑を理由とする拘束継続も求めません」ベアトリーチェは言葉を選びながら続けた。「第一庁の正式決定が出れば、あなたは釈放されます。おそらく今日中です」

「今日」アウレリアは繰り返した。

「はい」

「家へ帰れるのですか」

「刑事手続上は、帰れます」リヴィオが答えた。「ただし、鐘楼設備の事故調査と、第三庁による職務上の審査は続きます。守護銃は証拠品としてしばらく返還されませんし、鐘律技師としての現場復帰についても、医療状態と事故調査の結果を待つことになるでしょう」

「それでも、ここからは出られる」

「出られます」

 

アウレリアは目を閉じた。肩が僅かに震えている。泣いているようには見えなかった。少なくとも、涙は落ちなかった。

数日間、広場では心のない者と呼ばれ、守護銃を持たせるなと叫ばれ、本人の写真が焼かれようとした。法廷へ起訴される前から人殺しと呼ばれ、家族に会うことも制限され、共感を失った状態が病気なのか堕天なのかも分からないまま、窓のない部屋で結果を待っていた。

そのすべてが終わったわけではない。広場の人々が正義促進官室の判断変更と同時に考えを変える保証はないし、新聞が最初の見出しと同じ大きさで訂正を書く保証もない。彼女の共感が戻る保証はさらにない。

 

それでも今夜は、自分の家で眠ることができる。その事実を理解するまでに、しばらく時間が必要なのだろう。

 

「テオは?」アウレリアが目を閉じたまま尋ねた。

「見つかりました」リヴィオが答えた。

瞼が開く。「無事ですか」

「軽い脱水と打撲はありますが、生命に危険はありません。現在は別の権利擁護官がつき、正式な手続きの下で事情聴取を受けています」

「拘束されたのですか」

「現時点では保護面談室にいます。今後、第一庁が立場を判断します」

「何を問われるのです」

「守護銃の発砲、現場から離れたこと、救護要請を行わなかったこと、封印文書を持ち出したことです」

アウレリアの顔が曇る。「装置を止めるために撃ったのに」

「発砲そのものは緊急行為として正当化される可能性があります」ベアトリーチェが答えた。「しかし、発砲に正当な理由があったことと、その後の行動に責任がないことは別です」

 

リヴィオがベアトリーチェを見る。テオの供述をどこまでアウレリアへ伝えてよいか明確に決めてはいなかったからだ。ベアトリーチェは僅かに間を置いてから頷いた。

「ロッシーニ公証官が、文書を持っていくよう言ったとテオは供述しています」

「では、命令されたのです」

「公証官が死の直前に求めたことでも、公的な証拠を現場から持ち去ってよいことにはなりません」

「人が死にかけている時に、十八歳の子へ『正しい保全手続きを考えろ』と言うのですか」

 

アウレリアの声には、はっきりと怒りがあった。

ベアトリーチェはその感情を共感がなかろうと理解しえたはずだが、表情を変えなかった。

「それを求めるつもりはありません」

「なら、なぜ責任を問うのです」

「責任を問うことと、重く罰することは同じではないからです」

 

ベアトリーチェは初めて椅子へ腰を下ろした。

「テオが装置を止めた行為は、広場と鐘楼内の人間を救った可能性があります。文書を持ち出したことによって、三十二年前の異議付記が再び読まれることになった。それも事実です。一方で彼は負傷者を残して立ち去り、救護を求めなかった。結果として、あなたが発砲者として疑われる状況も残した」

「本人は、そこまで考えられなかった」

「そうでしょう」

「怖かったから」

「それも考慮されます」

「共感で分かるから?」

 

ベアトリーチェは一瞬、言葉を止めた。

アウレリア自身も自分の問いが鋭すぎたと気づいたのか、机の上へ視線を落とす。だが謝罪はしなかった。以前なら相手の不快感を感じた時点で、内容に関係なく先に謝っていたはずだ。今は、ベアトリーチェが怒ったのか、傷ついたのか、何も感じていないのか分からない。分からないまま、言葉の内容を取り下げずに待っている。

 

「いいえ」ベアトリーチェは答えた。「怖かったという本人の供述と、父親の記録、年齢、事件後の行動、文書を隠そうとせず私たちへ接触したことを合わせて判断します。私が共感によって何を感じたかは、刑事責任の証拠には用いません」

「あなたは、共感を信じているのでしょう」

「信じています」

「それでも?」

「信じているからこそ、できることとできないことを区別する必要があります」ベアトリーチェはアウレリアの目を見た。「共感は、誰かが恐れていることを見落とさないために役立ちます。苦しんでいる者を早く見つけ、助けを求めていることに気づくためにも使える。しかし、何をしたか、なぜしたか、責任を負わせるべきかを、それだけで決めることはできません」

「以前から、そう思っていたのですか」

 

ベアトリーチェは答えを急がなかった。廊下の向こうで扉が閉まる音がする。別の面会室で、誰かが入室し、誰かが退出したのだろう。

「以前は、十分に区別できていると思っていました」やがて彼女は言った。

「今は?」

「制度として区別されていても、人間が心の中で混ぜてしまうことがあると分かりました」

 

広場の恐怖。共感を失ったアウレリア。発射された守護銃。死んだ公証官。

それらは事実が揃う前から、一つの物語へ結びついていた。ベアトリーチェもその物語から完全に自由ではなかったのだろう。彼女は証拠を確認し、所有銃が発射され右手に残渣があり、現場にアウレリアだけが残っていたことを根拠に拘束を求めた。判断には確かな理由があった。だがその理由の隙間へ、共感不能への恐怖が入り込まなかったと証明することはできない。

 

「あなたを拘束するよう求めたのは、私です」ベアトリーチェは続けた。「その時点で得られていた証拠から必要な措置だったと今でも考えています。しかし、共感を失った状態を事件の異常性と強く結びつけすぎたことについては、訂正しなければならない」

アウレリアは彼女を見つめた。

「謝っているのですか」

「判断の誤りを認めています」

「それは謝罪とは違う?」

「違います」ベアトリーチェは僅かに息を吐いた。「ですが、謝罪もします」

 

正義促進官が机の向こうで頭を下げた。

大きな動きではなかった。法廷で行う礼でも公的な儀式の姿勢でもない。一人の人間が、別の一人へ向けて行う程度の短い動作だった。

「あなたが人を殺したと結論づけたことではありません。私はまだ、その結論を法廷へ提出していなかった。ただ、あなたが共感を失ったことを、危険性の徴候として必要以上に見たことについて謝罪します」

 

アウレリアはすぐには返事をしなかった。相手の後悔が伝わらないからだ。誠実なのか、職務上必要だから口にしているのか、声や姿勢から推測するしかない。かつての彼女なら、相手の申し訳なさを感じ取った瞬間に「大丈夫です」と答えていたかもしれない。今は、自分が本当に大丈夫なのかを考える時間がある。

 

「許せるかは、まだ分かりません」アウレリアは言った。

ベアトリーチェが顔を上げる。「当然です」

「でも、謝ったことは分かりました」

「はい」

「言葉しかないので」

 

その一言に、ベアトリーチェの光輪が僅かに揺れたように見えた。照明の反射だったのかもしれない。リヴィオには判断できなかった。

 

第一庁の釈放決定が届いたのは、それから三十分後だった。

決定書は三頁あった。一頁目にアウレリアの氏名、事件番号、拘束開始時刻、現在の法的区分が記されている。二頁目には、正義促進官室が殺人の嫌疑に基づく拘束継続を求めないこと、証拠隠滅および逃走のおそれが具体的に認められないこと、第六庁から隔離を必要とする所見が提出されていないことが列挙されていた。

最後の頁に、釈放の条件が並んでいる。居所変更時の届出。各庁からの適法な呼出しに応じること。鐘楼の封鎖区画へ許可なく立ち入らないこと。証拠保全中の守護銃について返還を求めないこと。

 

「守護銃を返せないのは分かります」アウレリアは決定書を読みながら言った。「ですが、返還を求めないことまで条件なのですか」

「正式には、保全決定に対する即時の異議申立てを行わないという意味です」リヴィオが説明する。「後に証拠として不要となった場合や保全期間が不当に長い場合は、返還を求められます」

「書き方が変です」

「法的文書は、できないことを書く方が得意ですからね」

 

アウレリアは、ほんの僅かに笑った。事件後、リヴィオが初めて見る笑みだった。

共感がなくても、それが喜びだけではないことは分かる。疲労と緊張と、どう反応すればよいか分からない困惑が混じっている。感情は一つではない。それを読み取る力がなくても、顔を見ていれば多少は想像できる。ただし、想像を事実と呼ばないことが必要なのだろう。

 

釈放手続きにはさらに多くの署名が必要だった。

預かり品の返還、医療記録の受領確認、拘束中に交付された衣服と日用品の返却、秘密交通記録の確認、今後の呼出先、家族へ連絡することへの同意。国家は人を拘束するときだけでなく、解放するときにも書類を求める。

 

拘束区画の職員が一つずつ品物を机へ並べた。事件当日に身につけていた耳飾り、財布、鐘律技師の資格証、家の鍵、小さな祈祷書、守護銃の携行許可証。銃そのものは返されない。許可証だけが持ち主の手元へ戻る。

アウレリアはそれを見つめ、財布の中へは入れず祈祷書の上へ置いた。

 

「資格は失効していないのですね」

「現時点では」釈放手続きの立会いに来た第三庁の若い官吏が答えた。「ただし、医療状態と事故調査のため現場作業への従事は一時停止されています。資格そのものを停止または取消しする場合は別の審査が必要です」

「共感を失った技師が、鐘楼で働けるのですか」

官吏は答えに詰まった。制度上の答えがまだ用意されていないのだろう。鐘律技師に共感能力が必須だと明記した規則はない。しかし大聖堂の鐘は、多数のサンクタの感情へ影響を与える設備でもある。共感できない者へ任せることを不安に思う者はいる。その不安が資格上の危険性になるかは、まだ誰も決めていない。

 

「それも、これから審査するのですね」アウレリアが言った。

「はい」

「分かりました」

彼女は資格証を祈祷書の間へ挟んだ。失効していない。戻ることも認められていない。存在するが、使えない資格。今の彼女自身の状態に似ていた。

光輪はある。サンクタとしての公民資格もある。守護銃の登録も消えていない。それでも共感はない。制度のどの分類にも完全には入らない。

 

「家族へ連絡しますか」職員が尋ねた。

アウレリアは机の上に置いていた紙を見た。父、母、姉、妹。名前の下に途中まで書かれた言葉。

「もう来ていますか」

「庁舎の家族待合室で待機しています」

アウレリアの指が止まった。「いつから?」

「朝からです。釈放されると知っていたわけではなく、面会または決定待ちとして来庁していました」

 

家族は、今日帰れるかどうかも分からないまま待っている。共感があれば、同じ庁舎の中にいるだけで互いの不安を感じられたのかもしれない。今のアウレリアには、廊下の先に家族がいることさえ職員から聞かなければ分からない。

 

「会います」彼女は言った。

「ここで?」

「家族面会室を用意できます」

アウレリアは少し考えた。「出口で会いたいです」

「正面玄関ですか」

「家族用の出口は?」

「庁舎東側に、拘束区画から一般待合室を通らず出られる通路があります」

 

報道記録員や抗議者を避けるための出口だった。正面玄関の外では、今もアウレリアへの処罰を求める者が残っている。釈放の情報が伝われば人数が増える可能性もあった。

「そこから出ます」彼女は答えた。

「逃げるように見えるかもしれませんよ」ベアトリーチェが言った。

「正面から出れば、何をしても別の意味に見られます」アウレリアは資格証の挟まれた祈祷書を持ち上げた。「私は今、家族に会いたいです。広場の人に説明するために釈放されるわけではありません」

「その通りです」リヴィオは頷いた。

 

庁舎東側の出口は、狭い中庭へ面していた。

一般の公民が使うことはほとんどなく、護送車両、医療搬送、身元を公表できない証人の出入りに用いられる。高い石壁に囲まれ、外の通りから直接見通すことはできない。正面広場からの怒号もここまでは届かなかった。聞こえるのは屋根の上を渡る風と、排水管から落ちる水滴の音だけである。

 

扉の前には、アウレリアの家族が待っていた。

父は作業着の上に外套を羽織り、両手を落ち着かない様子で組み替えている。守護銃工房の研磨工らしく指の節には細かな傷があり、爪の周囲には黒い研磨粉が残っていた。母は濃紺の衣服を着て、胸元へ小さな聖歌集を抱えている。姉と妹も並んでいた。

四人の頭上には、それぞれ異なる形の光輪が浮かんでいる。

 

アウレリアが扉の内側へ姿を見せた瞬間、家族全員の表情が変わった。だが彼女には感情が届かない。

愛情も、安堵も、恐れも、悲しみも。以前なら一度に押し寄せていたはずのものが何一つない。見えるのは、母が口元を押さえたこと。父が一歩前へ出て立ち止まったこと。姉が泣き、妹が笑いながら同時に涙を拭ったことだけだった。

 

家族も、以前とは違う。アウレリアへ抱きつけば愛していることは自然に伝わるはずだったが、今は触れるだけでは届かないかもしれない。四人ともそのことを分かっている。誰が最初に何をすればよいか迷い、僅かな距離を残したまま立っていた。

 

「ただいま」

アウレリアが言った。拘束され、殺人を疑われ、共感を失い、数日ぶりに戻ってきた者が口にするにはあまりに日常的な言葉だった。

だからこそ、母親は堪えられなくなったのかもしれない。彼女はアウレリアへ歩み寄り、両腕で強く抱きしめた。

「おかえりなさい」母は言った。それだけでは足りないと思ったのか、アウレリアの肩へ顔を埋めたまま続けた。「愛してる」

 

アウレリアの身体が硬くなる。母親が自分を愛していることは、事件前なら確認する必要のない事実だった。不安になっても近くへ行けば感情が伝わった。今はその言葉を聞き、信じるしかない。

 

母はさらに言った。「怖がっていないわ。あなたが何も感じていないとも思っていませんよ」

母親自身が本当は恐れていないのか、アウレリアには確かめられない。共感を失った娘とどう接すればよいか戸惑っているかもしれない。

それでも母は、何を伝えるかを選び、言葉にした。人間は一つの感情だけを持つわけではない。恐れながら愛することも、戸惑いながら抱きしめることもできる。共感によって伝わる強い感情がその人のすべてとは限らないのだ。

 

「私も」

アウレリアは母親の背中へ腕を回した。一度言葉が途切れる。以前なら伝わるはずだったものを、今は最後まで口にしなければならない。

「私も、お母さんを愛しています」

 

母親の肩が大きく震えた。父親が二人の横へ立つ。彼は何かを言おうとしたが声が出ず、代わりにアウレリアの頭を不器用に撫でた。その動作だけでは足りないと気づいたのか、しばらくして低い声で言った。「帰ってきてくれてよかった」

 

姉と妹も近づき、四人の腕と光輪が狭い出口の前で重なった。アウレリアだけは、そこに満ちているはずの感情を受け取れない。

それでも家族の声は聞こえる。腕の温度は分かる。母の聖歌集の角が肩へ当たっていることも、父の指が研磨粉の匂いを残していることも、妹が泣きながら鼻を啜っていることも分かる。

愛情は共感だけで伝わるものではなかった。ただ、共感がある間は言葉にしなくても済んでいたのだ。言葉にしないことと、言葉にできないことは違う。

 

アウレリアは家族に囲まれたまま顔を上げた。少し離れた場所で、リヴィオとベアトリーチェが立っている。

「ベルナルディさん」呼ばれ、リヴィオは近づいた。「ありがとうございました」

「まだ終わっていません」

「それは分かっています」アウレリアは涙を拭った。「でも、今日帰れることについては、お礼を言ってもいいでしょう」

「私が釈放を決めたわけではありません」

「そういう返事をすると思いました。では、言わない方がよかったですか」

「いいえ。言いたかったので言いました」

リヴィオは返答に困った。感謝を受け取ることにも技術が必要らしい。

 

アウレリアは次に、ベアトリーチェを見た。

「正義促進官。テオのことを、お願いします」

「彼には別の権利擁護官がついています」

「法的な意味ではなくて」ベアトリーチェは彼女の言葉を待った。「父親への偏見を判断に持ち込まないでください」

「しません」今度の答えには迷いがなかった。

「それから、ロッシーニ公証官のことも」アウレリアの声が弱くなる。「事故だったからといって、全部あの方のせいにしないでください」

 

ベアトリーチェの表情が僅かに変わった。

「彼は危険を説明しなかった。旧設備を開き、作動させ、三十二年前の記録を封印した」

「それも分かっています」

「それでも?」

「死んだ人を悪者にすれば私たちは楽になるからです」アウレリアは家族の腕の中で、まっすぐにベアトリーチェを見た。「私は数日前まで、その役をさせられていました」

 

誰もすぐには答えなかった。マティアスは被害者だった。同時に三十二年前の隠蔽へ署名した者であり、今回の事故を招く危険な判断をした者でもある。そして最後には装置を止め、文書を外へ出そうとした。一つの言葉で呼ぶには、事実が多すぎる。

 

「約束はできません」ベアトリーチェは言った。「彼の責任を調べ、必要な記録を残します」

「それでいいです」

「悪者にしないという約束ではありませんよ」

「分かっています」アウレリアは答えた。「最初から悪者だったことにしないでください、という意味です」

ベアトリーチェはしばらく彼女を見つめ、やがて頷いた。

「それなら約束します」

 

家族を乗せた車両が中庭を出た後も、リヴィオとベアトリーチェはしばらくその場に残っていた。

石壁に囲まれた空は細く、午後の光が高い位置から差し込んでいる。車輪の音が通りの向こうへ遠ざかり、やがて聞こえなくなった。

 

「正面玄関では、釈放への抗議が始まっているでしょうね」ベアトリーチェが言った。

「情報が早い」

「正義促進官室が殺人の嫌疑を維持しないという通知は、第一庁の決定と同時に公表されます」

「新聞は何と書くでしょう。『心なき技師を釈放』か、『鐘楼事件、第二の発砲者』あたりでは」

「テオの名は?」

「公表しません。未成年に近い年齢の事件関係者であり、捜査上の必要がないため氏名を出さないだけです」

「言葉を分けるのが得意ですね」

「あなたほどではありません」

 

ベアトリーチェは外套を整えた。中庭の隅には小さな排水溝がある。水が細く流れ、石の継ぎ目へ吸い込まれていく。

「彼女は、戻れると思いますか」ベアトリーチェが尋ねた。「以前の生活へ」

リヴィオは車両が消えた扉を見た。アウレリアの共感は戻っていない。守護銃も返されず、広場では今も心のない者と呼ばれている。家へ帰れたことは、元に戻ったことではない。

「戻れません」リヴィオは答えた。

「ずいぶん断定的ですね」

「事件前の生活は共感があることを前提に作られていました。そこへ同じ形で戻ることはできないでしょう」

「では、どうするのです」

「別の生活を作るしかない」

「簡単に言いますね」

「簡単だとは言っていません」

 

中庭の高い壁の向こうで、鐘が鳴った。午後の時刻を告げる小鐘だった。アウレリアは車両の中でこの鐘を聞いているだろうか。家族と一緒に。彼らの感情は届かなくても、声の届く距離で。

 

「法も同じかもしれません」ベアトリーチェが言った。

「何がです」

「元には戻れない」

 

三十二年前、ルカの事故を堕天と分類し、異議を封じ、発砲を原因として読める記録を残した。その記録を完全に消せば過去に何が行われたかも消える。かといってそのまま残せばテオの現在まで縛り続ける。

過去へ戻り、最初から正しい制度を作ることはできない。できるのは、誤った記録の後へ新しい記録を加えることだけである。

 

「別の制度を作るしかない、と?」リヴィオが尋ねた。

「少なくとも、同じやり方を続けることはできません」ベアトリーチェは答えた。「教理審査院への再審査申立てを準備します」

「ルカ本人は所在不明です」

「本人不在でも、今回の刑事事件に関係する範囲で過去の認定の信用性を審査するよう求める」

「誰のために?」

「記録のためです」

 

その答えは、リヴィオが期待していたものと少し違った。テオのため。ルカのため。アウレリアのため。そう答えることもできたはずだ。しかしベアトリーチェは、記録のためだと言った。

 

「誤りがあったなら、当事者が生きているかどうかに関係なく残さなければならない」彼女は続けた。「誰かを慰めるためではなく、次の判断が同じ誤りの上に立たないために」

 

リヴィオは、中庭の出口へ歩き始めた。

「共同申立てにしますか」ベアトリーチェが後ろから尋ねる。

「誰の代理として?」

「あなたはアウレリアの権利擁護官です。沈黙装置の影響と過去の教理判断は、彼女の今後の身分にも関係する」

「テオの代理人にも確認が必要です。第六庁の鑑定意見も、第三庁の技術報告も」

 

リヴィオは足を止め、振り返った。

「また官署が増えますね。廃止された官署一つを訂正するために、現存する官署をいくつも動かす」

ベアトリーチェの口元に、微かな笑みが浮かんだ。

「以前、誰かが同じことを言っていました」

「記録には残っていますか」

「ニコラ記録官に聞いてください」

 

二人は中庭を出た。

正面広場へ近づくにつれて、人々の声が少しずつ大きくなる。アウレリアが釈放されたことへの怒り。殺人者ではなかったことへの戸惑い。別の発砲者がいるという噂。

それらが共感を通じて互いへ伝わり、広場全体を一つの熱へ変えている。リヴィオにはその熱の内側は分からない。聞こえる言葉と、掲げられた紙を読むしかない。

それでよいのかもしれない、と初めて思った。

 

分からないから、尋ねる。

届かないから、話す。

信じられないから、記録する。

 

それは共感より遅く、不便で、間違いも多い。それでも、沈黙の側へ置かれた者を最初から会話の外へ追い出さずに済む。

広場の鐘が、もう一度鳴った。正しい時刻を告げる音だった。

 

---

 

TIPS 01 公訴不提起

正義促進官室が公訴を提起しないと決めることは、裁判所が無罪判決を下すこととは異なる。

公訴不提起は、集められた証拠から犯罪を立証できない場合、嫌疑そのものが解消された場合、または行為が犯罪に該当しないと判断された場合などに行われる。

捜査段階の拘束は刑罰ではない。逃走、証拠隠滅、本人や周囲への具体的な危険を防ぎ、必要な手続きを行うための一時的な措置である。そのため拘束を正当化していた事情が失われれば、起訴や事件全体の終了を待たずに解除しなければならない。

拘束が解除された後も、捜査への協力、居所変更の届出、証拠品の保全、職務上の審査などが続く場合はある。

釈放は、すべてが元に戻ることを意味しない。国家が、その時点で一人の自由を制限し続ける理由を失ったことを意味するのである。

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