――大正五年、初冬。
無限列車の戦いからおよそ一年となるこの日。とある建屋内に、鬼殺隊の関係者が集められていた。
蟲柱・胡蝶しのぶ。元百合柱・胡蝶カナエ。そして鬼舞辻無惨の呪いから逃れた鬼、珠世。
この三人に加え、彼女らの従者、あるいは彼女らの研究に協力する者たち。
この建屋の存在を知るのはここにいる者たちだけであり、その所在地も、愈史郎の血鬼術で徹底的に隠し通されていた。
そして、その建屋の一室では今。
一人の少女――竈門禰豆子が、唇を噛み締め、手をぎゅっと握り締め。
とても辛そうな表情で、己の想いを訴えていた。
「しのぶさん、カナエさん、珠世さん。ごめんなさい。私は、その薬はまだ……使えない、です」
「禰豆子さん!? でも、これは……!」
禰豆子の正面に立つ胡蝶しのぶの手には、一つのアンプルが握られている。
それは、何百年も鬼の血を研究し、その生態を知り尽くした珠世の協力を経てようやく完成した、数多の人々の願いの込められた薬だった。
禰豆子の兄、炭治郎が何よりも欲していた薬だった。
それこそが。長き研究の末に完成した"鬼を人間に戻す薬"である。
◇ ◇ ◇
すでに日も暮れ、窓にかけられた分厚いカーテンの隙間からは、冷たい月の光が差し込んでいる。
電球の明かりにチカチカと照らされたその室内は、様々な薬品棚や、医療器具が散乱した部屋だった。
この部屋には、会議用の卓などというものはない。
だから、この日集まった者たちは思い思いの椅子に腰を下ろし、あるいは空いていた机に座り、壁に寄りかかり。けれど今はその全員が、竈門禰豆子に視線を向けていた。
しのぶの横にいたカナエが、優しく、禰豆子に声をかける。
「禰豆子ちゃん、それはどうしてか聞いてもいいかしら? あなたを人間に戻すことは、炭治郎君の夢なのよ? そのために炭治郎君は、今までずっと、頑張っていたのよ?」
「……わかってる、わかってるんです。お兄ちゃんは、自分の人生を投げ捨てて、自分の全部を私に、くれました。でも……だから、だから……!」
いやいやをするように、禰豆子はぶんぶんと首を振る。
兄が自分のためにどれほどのものを捨ててきたのか、どれほどの苦痛を乗り越えてきたのか、一番近くで見てきた禰豆子は言われなくとも知っている。誰よりも、きっとこの世界の誰よりも、自分が一番、兄を見てきたのだから。
だからこそ、だからこそ。
「私は、私は! お兄ちゃんの横で、戦いたい! 私が、人間に戻っちゃったら、お兄ちゃんを、守れない……! そんなのは、そんなのは……嫌なの!」
「それは……」
アンプルを手にしていたしのぶは、言葉を失う。その横ではカナエもまた、言葉もなくその目を伏せている。
二人とも薄々、こういう応えが返ってくるという予感はしていた。
それでもしのぶは、カナエは。この純粋で優しい少女には、人間に戻って幸せな日々を送って欲しかったのだ。血と涙にまみれた鬼殺の世界からは距離を置いて欲しかったのだ。
離れて立っていた珠世もまた、無言で。けれどどこか寂しそうに、禰豆子の姿を見つめている。
しんとした空気の中で、次に口を開いたのは、珠世の従者としてこの場にいる愈史郎と朱紗丸の二人だ。
「……せっかくの珠世様が作ってくださった薬を拒否するのは気に食わないが、俺も禰豆子の気持ちはわかります。俺だって、珠世様を護れなくなるならば、そんな薬はごめんだ」
「私も同感じゃ。この『あやかし』の力を失ってしまえば、私を助けてくれた珠世様に恩を返すことも、あの憎き鬼舞辻めに仕返しすることもできん」
「愈史郎、朱紗丸……」
珠世の従者たちは、己が人間に戻れるとしても、その選択肢を選ぶつもりなど持ち合わせていなかった。
愈史郎はもとより、朱紗丸もだ。彼女は鬼として、決して少なくない人間たちを食らってきた。嗤いながら殺してきた。
故に、『トキジクの実』によって人としての理性を取り戻したとき、朱紗丸の地獄が始まった。人を食った記憶。人々を殺めてきた記憶。悲鳴と懇願を嗤いながら踏みにじってきた記憶。それらに苦しむ朱紗丸の側にずっと付いていてくれたのが、珠世だった。
無論、そこには"実験体の観察"という冷酷な都合もあっただろう。けれど――涙を流し、己が食らった両親の名を呼び続ける朱紗丸の手を一晩中握りしめてくれたのもまた、珠世だったのだ。
だからこそ。朱紗丸は、珠世のためにその命を使うつもりでいた。
しのぶは、その場にいる他の『あやかし』の意見を聞くために、窓際を振り返る。
「あなたも同じ意見ということでよろしいですか?」
「……ああ。俺は人間になんざ戻るつもりはねえよ。少なくとも、角姫に貰ったこの力で、鬼舞辻無惨を地獄に叩き込むまではな」
日輪刀を携えたその人物――
彼は上弦の弐との戦いにおいて、
あの日。鎹鴉の報を受け
そんな彼を受け入れ、日の当たらぬ隠れ家にてその変質への検査を進めていったのは珠世である。
獪岳という隊士は元から決して人当たりの良さげな顔つきではなかったが、今の獪岳はそれが更に悪化し、まるで悪鬼か修羅のような顔つきになっている。
血色の悪い肌には虎のような紋様が浮かび上がり、白目だった部分は黒く染まっている。唇から顔を覗かせる鋭い牙は、彼の攻撃性を実によく強調していた。
そんな彼が鬼舞辻無惨への憎しみの炎を隠そうともしないのだから、それは実に恐ろしげな風貌となっていた。ここに彼の弟弟子である善逸がいたならば、泣いて逃げ出していたことだろう。
そして、もう一人。
この部屋には、鬼への憎しみを燃やし続ける者がいた。
「だったらその薬ァ、ひとまずこいつに使ってくれ。こいつは望んでこんな身体になったわけじゃあねェんだ」
風柱・不死川実弥。彼は、その脇に一人の若き隊士を連れている。
いや、連れているというよりも、それは力尽くで締め上げているようにも見える。
連れられているのは、不死川玄弥。鬼食いという特異能力を利用し上弦の肆との死闘を戦い抜いた彼はいま、禰豆子の成分を多量摂取した影響で、その体質が限りなく『あやかし』へと寄ってしまっていた。
鬼殺隊の柱たちに『あやかし』が認められている現状、玄弥もまた自身が彼らと同等の体質になったことを兄である実弥に正直に告白したのだが、その結果がこれである。
「こいつはそこの連中みてえにトキジクの実を食ったわけでもねェし、ましてや角姫の血を飲んだわけでもねェんだ。実験台にするにもちょうどいいだろ」
「兄ちゃん……俺は、俺は……」
「うるせェぞ。俺に弟はいねェ。だからテメェは無関係な俺のことなんざ気にせず、人間に戻る薬の実験台になりやがれ」
兄弟の言い争いが始まった。
実弥がなんと言おうが、事実として彼らは血を分けた兄弟であり、それはここにいる全員の知るところである。
だが、そんなこと百も承知で、実弥は弟の言葉を否定する。ただ、弟に"鬼を人間に戻す薬"を使用しろと、そう静かに訴えている。
「嫌だよ! 俺だって、俺だって兄ちゃんを守るための力を失いたくないんだよ! 上弦の肆にだって通じたんだ、この力は!」
「うるせェぞ。いいか、お前は"鬼を人間に戻す薬"を作ってくださった皆さんに頭を下げて頼む立場なんだよ、人間にしてください、ってなぁ。お前は、鬼なんかと戦うべきじゃねえんだ」
実弥が、玄弥に向けて威圧的に言葉を述べる。
彼なりに、ここでは大声を出すべきではないと知っているのだろう。いつもの荒々しい風柱の様子とは打って変わって、その言動は物静かなものだった。
「仮にてめぇに兄貴がいたとしてだ。年下のモンはよォ、安全なところに住んで、所帯持って、家族でメシ食って暮らしてりゃいいんだよ。そのためにてめぇの兄貴が……必死こいて鬼と戦ってんだろうが」
ぽつり、ぽつりと実弥が語る言葉に、玄弥は言葉を失う。
彼の言葉を聞いていた禰豆子もまた、まるで自分がその言葉を言われているかのように、唇を噛み締めている。実弥の言葉は、兄である炭治郎の置かれた状況にも重なるのだ。
「だから頼む。カナエ、しのぶ、それに……珠世さん。こいつを人間に戻してやってくれ」
さすがに玄弥たちにもわかる。これは「自分が鬼を倒すから、お前は自分のことは忘れて平和に生きろ」という、あまりに不器用な、兄としての愛情だ。
実弥はこの日。意地もプライドも捨てて、この研究者たちの会合に、弟を人間に戻すように頼み込みに来たのである。
「嫌だよ! 兄ちゃん、俺の話も聞いてくれよ! 俺だって、俺だって、禰豆子と同じ気持ちだ! 兄ちゃんだけを鬼と戦わせるなんて――!!」
「お静かに」
だが、実弥はまだしも、さすがに玄弥は場を忘れて激昂しすぎたようだ。
すぐ近くで珠世が血鬼術・惑血を微かに発動させ、玄弥だけをその場であっさりと眠らせた。共にいた実弥も一瞬だけ眠気に意識がゆらぐが、しかし気合いで乗り切っている。
そこでようやく周囲の者たちの時間も動き出し、この場の進行を取り仕切っていたしのぶが、ふつふつと時間差で怒りを暴発させる。
「ああもう、なんなんですか! そもそも呼んだのは玄弥君だけだったのに、どうして不死川さんがここに来てるんですか! ……それに、年下は大人しくしているべきだ? 私や禰豆子さんの前で、よくそんな言葉を吐けますね」
「いや、そりゃ――」
「まあまあ、しのぶ。不死川君は、それ程までに玄弥君を戦いから遠ざけたかったのよ。兄や姉は、下の子を守るためなら何だってするの。炭治郎君も、私も。兄や姉って、きっとそういうものよ」
実弥がものを言おうとしたところで、カナエが声を被せてくる。
実弥は言葉を述べる機会を逸し、ただ膝の上に玄弥の頭を乗せて、視線を俯かせている。
「……それを言うなら、私は禰豆子さんや玄弥君の気持ちが痛いほどわかるわ。妹や弟は、きっとそういうものよ」
カナエが妹を見つめ、しのぶはキッとした瞳で姉を見つめる。
そんな、一触即発というわけではないものの、少しだけピリピリした空気の中で、とことこと。
禰豆子が実弥の前にやってきて、言った。
「私は、お兄ちゃんに、一人で傷ついて欲しくない。自分だけなにもできない事のほうが、何百倍も、つらいよ。きっと、玄弥も……実弥さんが大好きだから、そうなんだと思う。だから……」
「お前……」
「玄弥と、お話してあげて?」
悲しげな瞳で、禰豆子が実弥を覗き見る。未だ辿々しい口調で、想いを伝える。
実弥はしかし、その瞳を見つめられず、視線を逸らせる。
「……どの道。肝心のコイツが寝ちまったんじゃ話は終わりだ。こいつは俺が寝かせるから、話を続けてくれ。話の腰を折っちまって悪かった」
実弥は、禰豆子の言葉に是とも非とも言わず。ただ、数秒だけ禰豆子の頭を撫でてから、そっとその肩を押してもとの居場所へ戻らせる。その間にものすごく不満顔の愈史郎が隣室から毛布を持ってきてくれたため、玄弥についての話はここで終了した。
禰豆子は、玄弥にそっと毛布をかける実弥の姿をちらりと覗き見て、嬉しげに目を細めていた。
「では、皆さん。続けさせていただきますが――」
その後、気を取り直したしのぶが脱線した話を元に戻し、話し合いは進められていく。
そして結局、"鬼を人間に戻す薬"はひとまずは浅草にて無惨に鬼にされた男性に使われることとなった。
玄弥の場合は『鬼食い』という特殊すぎる体質があるため、薬を飲ませるにしても効果がどうなるかが未知数すぎたのだ。故に、「兄弟で話し合い、玄弥が承諾した場合」に限り、後日ゆっくりと日数をかけ、身体の反応を確認しながら薬を使うという条件でまとまった。
実弥は毛布にくるまる玄弥を懐に抱いたまま、その条件に従って。深々と、しのぶや珠世に頭を下げていた。
◇ ◇ ◇
「それで、しのぶさん。もう一つの薬の量産は出来そうですか?」
珠世がしのぶに問う。
彼女らが研究し、知識を交換しつつ作り出したのは、なにも"鬼を人間に戻す薬"だけではない。
以前よりカナエが研究していた"呪いを浄化する薬"もまた、珠世の知識が合わさったことで大きな進化を遂げている。
「ええ。『あやかし』の血のサンプルはいくらでもありますし、なりかけ状態の煉獄さんの血をたんまりと貰いましたから」
「なあ。その薬さえありゃ、俺等も鬼の毒やら呪いやらを気にせず戦えるようになると考えて間違いねェんだな?」
「もちろんです。不死川さんだけじゃなく、これは全ての柱――いえ、少なくとも全隊士に行き渡る量を準備させてもらいます」
実弥もまた、その薬を使用した音柱・宇髄天元が上弦の陸の毒を無効化したという話は聞いている。
現場では最前線に出て鬼の攻撃を食らいながら戦う風柱としては、その薬があるとないでは今後の戦い方に大きく影響してくる代物なため、興味深げに確認している。
「では、しのぶ。ならば今はそちらの量産を優先的に進めましょう。隊士だけでなく、鬼にも使えるでしょう?」
「……まあ、そうだけど。この薬は、鬼に打ち込めば鬼たちにも致命的な作用を及ぼすことができるわ」
彼女らのいう"呪いを浄化する薬"とは、御霊矢花枝の力である浄化の力を抽出し、模倣したものである。
その効力は、人間に使用すれば鬼たちの呪いから身を護り、鬼に使えば場合によっては彼らが人間としての理性を取り戻すという、鬼殺隊の歴史を変える薬となっていた。
勿論、鬼に理性が戻ったところで彼らが人間に戻れるわけではないし、場合によっては己の罪を自覚して自壊に至ることもあるだろう。
けれど、確実に。それは鬼にとって、致命的な隙となるはずだ。
その薬に求めるものはカナエとしのぶの両者の間でも違ってはいるけれど、どちらにせよ、鬼殺隊にとっての最終兵器となり得る代物だ。
そして。
カナエたちは未だ口にはしていないものの、その薬には間違いなく、更なる使用方法が眠っている。
しのぶと珠世、そしてカナエは互いに視線を絡ませて、頷き合う。
鬼舞辻無惨と戦う上で、絶対的な効果を発揮するであろう"呪いを浄化する薬"――通称『トキジク』の開発を最優先とすることを、三者は了承するのだった。
◇ ◇ ◇
夜は更け、会議は進む。
禰豆子は思うところがあるのか、眠る玄弥を守っている実弥の隣に再びやってきては、雑談を交わしていた。会話の内容はほとんど『おはぎ』についてで、大した中身のある会話ではなかったけれど。禰豆子は、全く性格の違うはずの炭治郎と実弥に、どことなく重なるものを感じていたようだった。
一方、しのぶとカナエ、珠世は薬についての意見交換をし、愈史郎は珠世から一時たりとも離れようとしない。
「しかし珠世様。残された上弦は"参"と"壱"ですが、実際には転移を使う琵琶の鬼が一番厄介でしょう。最悪、俺の術で叩くことになりそうですが……」
「ふふ、意外と"薬"次第では、あっさり対処できるかもしれません。そのためにも研究は続けなくてはなりませんね」
「俺も可能な限り手伝います」
「ええ。それに私も、鬼舞辻無惨のための"とっておきの薬"の組み合わせを更に突き詰めなければいけませんし。ふふ、ふふふ……」
珠世と愈史郎はさっそく、この先の研究の話を進めている。
「ところで獪岳。先程からどうして、そんな何もない場所を見つめておる」
そして一方、窓際でずっと夜空を眺めていた獪岳のもとには、その様子に興味を持った朱紗丸が話しかけていた。
元々は縁のないこの二人だったが、獪岳が珠世のもとに保護されてからは同じ場所で生活しており、今では慣れたものだ。
「ああ、何でもねえから気にするな。何かそこに居たような気がしただけだ」
「ふうん。綺麗な夜空じゃな!」
「……そうだな」
朱紗丸が獪岳に釣られて窓の外に視線を向けるが、しかしそこには何もなく。
ただ、星の瞬く夜空だけが、そこには広がっているのだった。
◆ ◆ ◆
窓の外。夜空の下。
獪岳の視線の先はもちろん何もない空中だが、身体を持たぬ存在には地面も空中も関係がない。
「わあ、獪岳ったら。夢枕に立ったわけでもないのに、まるでわたしたちのことが見えてるみたいですね。いつもは全然覚えていてくれないのに」
「仕方あるまい。夢というものは、本来は覚えていないものらしいからな」
だが、実は。
窓の外には、花枝と
花枝は獪岳の姿を見つめながら、安心の微笑み半分、不満げなあきれ顔半分である。というのも、実は花枝と獪岳はすでに何度か、夢の中で再会しているのだ。
だというのに、獪岳は起きる度に夢の内容を忘れてしまうので、夢の中で花枝と抱擁を交わしていることも、花枝の新しい保護者のような顔をしている縁壱に喧嘩を売り、毎回あっさり敗北していることも覚えていないのである。
花枝としては大切な仲間に会いに行く度に忘れられている状態なので、不満もたまると言うものだ。
「だが、彼も剣士ならば、鍛錬さえすれば夢の中でも確固たる自我を持てるようになるかもしれん」
「それ、もう剣士とかあんまり関係のない、ただの愉快な特技じゃありませんか?」
「……それは、そうかもしれないな」
縁壱とそのような雑談を交わしつつ、花枝たちは室内のやり取りを見守り続けている。
とは言っても、残念ながら花枝も縁壱も薬学は門外漢だ。しのぶや珠世の語る難しい話はさっぱり理解していない。
しかし、それでも。
禰豆子をはじめ、自分に少なからず縁のある者たちが集まり、こうして同じ目標のために手を取り合っている姿は、花枝にとって非常に感慨深いものであった。
特に、あの性格に難のある獪岳が文句も言わずに会議に参加し、今では朱紗丸という見知らぬ少女と普通に会話を交わしているのだ。
保護者気分の花枝としては、心が温かくなる景色である。
「獪岳。がんばってくださいね」
花枝がそう小さく声をかけた瞬間。
獪岳が、もう一度花枝の方向に視線を向けた気がしたけれど。
彼がいったい、夜空に何を見ていたのかまでは。残念ながら、花枝にもわからぬことであった。