主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか!   作:丸尾裕作

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第12話  主人公ガチ恋勢、聖女様と会う

 街を歩いていると、教会が見える。

 すぐ近くに森があり、迫り来る魔物から守るため、教会の周りは石垣に囲まれている。

 しかし、古くなったせいか一部崩れている。

 そんな石垣のすぐそばで丸くうずくまくっている修道服姿の女性がいた。

 

「どうかされました?」

 

「きゃっ!」

 

 女性は悲鳴をあげてから、急いで腕を背中に回す。

 何かを隠したようだ。

 

「あっ! 聖女様」

 

 見た瞬間分かった。

 聖女、アリシア・ハイトだ。

 

 慈愛に溢れた優しそうでありながら、とても柔和な顔。

 ショートヘアの黒髪。

 綺麗な碧眼で、雪のように白い肌。

 修道服を着ているが胸は隠し切れていないぐらい大きい。

 このゲームの作者がエロいので、もちろん巨乳。12歳でこの子もEカップ。

 でかんすぎんだよ。

 言い忘れていたが、ヒロインたちは全員17歳になる頃には胸のサイズが大変なことになる。

 

 近くを見ると、アッシュとミラ姫がいた。

 アッシュが難しい顔をしていた。

 ミラ姫もうーんと顎に手を当てていた。

 

 先に一つ気になったので、疑問を解消しておくことにしよう。

 

「ところでミラ姫様なぜいるんですか? 公務は?」

 

「お散歩です」

 

 ミラ姫は満面の笑みを浮かべた。

 うん、おてんばだもんね。

 これ以上聞くのをやめることにした。

 

「ボロボドス、困ったことになっててさ」

 

 俺はアリシアの方をちらっともう一度見る。

 

「ひっ!」

 

 アリシアが怯えた表情を見せる。

 彼女はボロボドスのことが苦手だ。

 例によって酷いことしたからな。

 

 アリシアが聖女なのに魔女という酷いあだ名をつけるという悪業を。

 

「な、な、な、何も見てませんよね」

 

 残念ながら、何を隠したかを俺は知っている。

 

「それってスライムじゃ?」

 

 魔物と仲良くすることはこの世界ではあまりいいこととされていない。

 テイムされていない限り。

 

「いえ、プルプルと震えてるだけです、このスライムは悪い子じゃありません」

 

 アッシュとミラ姫が唸っていた。

 

「魔物だから基本的には退治しなくちゃだし」

 

「私は反射的に殴り倒しちゃいますし」

 

 そう言った瞬間、スライムがピクッと震えた。

 

「あなたにはしませんよぉ〜」

 

 しかし、ミラ姫が優しく笑っても、スライムの震えはかえって強くなるばかりだった。

 

「魔物って人間を襲うのが当たり前だからなぁ、難しいなぁ、ボロボドスはどう思う?」

 

「失礼ですが、ボロボドスさんにお聞きしても何にもならないんじゃ」

 

 アッシュが俺に尋ねても、アリシアは怪訝そうな目で見ていた。

 自分を魔女扱いした奴が何を言ってるんだという目つきをしていた。

 

「アリシアさん、それなら大丈夫ですよ」

 

 ミラ姫がアリシアの頭を優しく撫でる。

 

「ズバッと解決してくれますから」

 

 無駄にハードルを上げないでほしい。

 アッシュとミラ姫の目は心なしかキラキラしている。

 アッシュに期待されてるんじゃそれに応えられるように頑張らなきゃな。

 前世とは真逆な状況だ。

 余計に気合が入った。

 

 魔物。

 人間を見たら無条件に襲う存在である。

 

 目の前のスライムはどうやら襲わないらしい。

 原作ではそんなストーリーだが。

 

「いいんじゃないの?」

 

 仲良くしたい気持ちがお互いあればどんな相手でも友達になれる。

 

「どうしたんですか? 魔女ってまだ言われるかと思いました」

 

 引きずってるなぁー。

 ボロボドスの悪業シリーズ。

 殴り姫、病みエルフと続いて、聖女様に魔女と嫌なあだ名をつけた前世ボロボドスくん。

 

「前は魔が差したんだよ、魔女だけにね」

 

「ボロボドスさんは本当に何があったのですか? 面白くはないですよ?」

 

 そんな純粋な目でひどいことを言うな。

 傷ついちゃうだろ、と思って横を見ると、アッシュが腹を抱えて笑っていた。

 アッシュにウケるならいい、急に自信が出てきた。

 

「アリシアさんを魔女といったのは悪かったと思ってる、今更遅いけど」

 

 友達になりたいと思いたい自分になろう。

 今はそう思っている。

 

「アリシアさん、何か抱え込んでませんか? 俺で良ければお話を聞きますよ」

 

「ここは甘えちゃいましょうよ、アリシアさん」

 

 ミラ姫はアリシアに微笑む。

 弱々しい笑顔をアリシアは見せた。

 

「魔法のイメージが湧かないんです」

 

 原作は怒ることによって覚醒するんだけどな。

 でも、そんな気持ちを抱いては欲しくない。

 

「魔覚はあるので、魔物のいる位置はわかるんですけど、魔法を使えないんです」

 

「自分の気持ちを言葉にするのも苦手ですし、イメージも湧きません」

 

「ミラさん、どうやって魔法を使ってるんですか?」

 

「私は呪文ですよ」

 

「きっと自分にぴったりなイメージがあるのよ、私はどうやって言葉にするかが大事だったみたいです」

 

「いいなぁ、私はこのスライムを撫でるだけです、単にお食事を作ったりしかできなくて、魔法が全くできません」

 

 スライムはムシャムシャとアリシアがあげたクッキーを食べている。

 

 こいつは懐っこいやつだ。

なのに原作ボロボドスは雑魚だからといじめて殺すという最悪なことをする。

 俺はしないけどな。

 

「私の夢は魔物と人間が仲良くする世界です」

 

 原作ボロボドスはめっちゃバカにする夢。

 

「いい夢だね」

 

「愛とは何かを考えてたことありますか?」

 

「アッシュを考えることかな?」

 

 俺が言った瞬間、「ボロボドス」とアッシュが熱っぽい目線を向ける。

 

「なんなんですか、あなたたち」

 

 アリシアはジト目をしていた。

 

「そんなことはさておき、教義に従うと一度は考えるんです、そのイメージができないんです」

 

「うーん」

 

「確かにそんな抽象的なものをイメージって難しいよなぁ」

 

「どうして私は誰に対しても優しくしてはならないんできないんしょうか」

 

「毒を吐いたらどう? 俺悪いやつでしょ」

 

『えっ?』

 

 アッシュとミラ姫がギョッとした様子で俺を見つめてくる。

 そんなことはないだろ、と言われているように感じる。

 でも、違う。

 原作ボロボドスは悪いやつだ。

 罪は清算しなくてはならない。

 

「では少しだけ本音を言わせていわせてもらっていいですか?」

 

「どうぞ」

 

「すごくひどい人と思いました、人の嫌がることを平気で言って、自分のことは棚上げ。気遣いがなくているだけで不愉快な気分になりました。私の気にしてることを1番嫌がるようにわざと言って、私が苦しむのを楽しむ最低な人です、ミラ姫様やエリーナとか私以外な人にも嫌なことをするから本当心根腐ってると思いました、己の発せざるところを人に施すことなかれって教わらなかったんですかと一から教育をやり直してほしいと思いました」

 

 アリシアははぁはぁと肩で息をしていた。

 

 ミラ姫とアッシュはあたふたとしていて、必死にアリシアを止めようとしていたが、俺が目でやるなと止めていた。

 

「すっきりしました」

 

 アリシアはとても晴れやかな表情をしていた。

 

「うん、その通り過ぎて、何も言い返せないわ」

 

 前世の俺の欠点を的確に言い当てたな、それにしても何気にすごい毒舌。

 

「でも、今のボロボドス様は違うと思いますよ?」

 

「え、い、いや、ありがとう」

 

 俺の何がおかしいのか、アリシアはくすくすと笑う。

 

「ふふっ、これからは自分の言いたいことをはっきりいうようにしますね」

 

「抱え込みすぎるよりはいいんじゃないか?」

 

 俺は前世だとゲームに愛をぶつけた。

 本当は自分の想いを何かしらの形で自分の想いを表現しなくてはならないのかもなぁと思った。

 

「でも、なぜでしょうか?今のボロボドスさんはそこまで悪い人ではないです」

 

「ボロボドスはいい奴なんだって!」

 

「そうですよ、ボロボドス様はお優しい人なんです!」

 

 アッシュとミラ姫がフォローしてくれる。

 俺は嬉しくなって泣きそうになるが、我慢をする。

 

「私はお馬鹿さんかもです、博愛とか考えてると悪い人に対してもしなくちゃいけなくて嫌になります」

 

「人間らしくていいと思うけど」

 

 聖女だからと言って、人間いつでも完璧でいられないし。

 むしろ、原作はそのアリシアの人間っぽいところが好かれていたからな。

 聖女なのに毒舌なところとか。

 

「悪い人と思ったらいい人で、いい人で思ったら悪い人ってきっとよくあることなんですね」

 

「うんうん」

 

 ミラ姫が強く頷いている。

 俺のことを言ってるんだろうなぁと少し苦笑いする。

 すると、アリシアはにこっと俺に微笑みかける。

 

「私は魔女でもいいかもしれません、いい魔女さんもいますし、悪い聖女さんもいます。私は優しくできる人にまず優しくします、それで優しくしたいと思える人が多い方がいいですね」

 

「アリシアはいい子だよ」

 

 原作だと誰に対しても分け隔てなく優しくて、めちゃくちゃ性格いいからな。

 アリシアは首を振る。

 

「いえ、いい子でいるのやめますね」

 

「そうなの!」

 

 なんか原作でも見たことない!

 でも、楽しそうにしてるからいっか。

 

 アリシアは両手を広げて、何かを包み込むような仕草を見せた。

 

「私の愛のイメージは太陽じゃなくて、暗闇の中の松明です。届く範囲の人に優しくします。それでもっと多くの人に優しくしたいなら火をより大きくすればいいんです」

 

「魔法の仕組みとして、言葉の具体性、気持ちの強さ、イメージの細かさがあるからいいんじゃないか、具体的ですごくいいと思う」

 

 俺がそう言うと、アリシアは強くうなづいた。

 

 ミラは魔法の言語化、エリーナは気持ちについてを課題としていた。アリシアはイメージの具体化が魔法の課題としているのだろう。

 

「私は私の考える聖女を目指します」

 

「いいと思うよ」

 

「ありがとうございました、ボロボドス様、まずはこの子を森にお返しします」

 

 ミラ姫はグーパンチを作って、しゅっしゅっとシャドーボクシングを始めた。

 

「付き合いますよ、悪い奴は殴り飛ばします」

 

「聖女様の頼みとあらば」

 

 アッシュはぺこりと頭を下げる。

 

「相談には乗ったしな」

 

 俺も原作キャラの役に立てるのは嬉しいし、当然着いてくことにする。

 

「みなさまありがとうございます」

 

 こうして俺たちは森へもう一度行くことになった。

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