主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
「よっす!」
家の扉を開けると目の前にアッシュがいた。
「広場行こうぜ」
勇者の誕生日であるこの日を迎えて、誕生日パーティーが終わった後、一度家に戻り、木刀を取っておいた。
「いってらっしゃいませ、おぼっちゃま、何かあったらいつでもお呼びください」
「メアもたとえ空の中、土の中でも駆けつけますよー」
メアとジェイデンに見送られた。
「お前は俺と戦ってくれるんだろ?」
この日のイベントは勇者とボロボドスが戦うことだ。
その道中。
「皆の衆よ、世界を赤く染めれば、世界に幸福が訪れる!」
「アカっー!」
「アカっー!」
「アカっー!」
演説のようなものをする赤い覆面に全身赤色の服を着た男と、その演説を興奮した様子で聞く赤い覆面に全身赤い服を着る集団がいた。
「さぁ、この街を血の色で染め上げましょう
明日の美しい赤き世界のために」
「おお!」
「素晴らしい」
「赤色ばんざーい」
「相変わらずだな、あれ……」
露骨に顔を歪めるアッシュ。
だが怖いのだろう。
少し肩が震えている。
「ブラッドハピネス教団か」
俺の呟きにアッシュが頷く。
ブラッドハピネス教団とは世界を赤く染めれば幸せになるという思想の集団。
実は魔王を唆されて、戦争を引き起こそうとしてる組織で、カルト集団だ。
ゼルドラファンタジーにおける敵組織だ。
この組織こそが俺の願望をかなえてくれることに導いてくれる。
ふっふっふ、ついにTS化できるぞ。
今は何もできないけどな。
俺たちはブラッドハピネス教団に関わらないように、そろーりそろーりと広場に向かった。
演説の集会を取り仕切っている男が俺とアッシュの方を見ている気がしたが、気味が悪いので立ち去ることにした。
※
俺たちは広場に着いた。
壁のないコロッセオとか、相撲の土俵みたいな場所といえばいいだろうか。
地面は土で周りは遮ることのない広場だ。
戦うにはちょうどいい場所。
「俺はお前を最強と思ってる、一つ白黒はっきりつけようぜ」
実は、本来ボロボドスが勇者に吹っかける場面だが、逆に勇者にふっかけられている。
俺は意図的に勇者と敵対しないルートを選んだ。
だが、この2人は戦わなくてはならない。
きっとゲームのシナリオ通りに調整されたのだろう。
俺はアッシュと仲良くはしたい。
できるなら、結婚したいからTSも目指しているぐらいだ。
それと同時にこうも思う。
それはそれで勇者の本気を見てみたい。
原作ファンだからだ。
アッシュの1番かっこいいところを1番近くで見てみたいのだ。
俺が剣術や魔法を鍛えたのは、自分を魔王をぶっ倒すためではあったが、やっぱり戦いたい。
俺の憧れに俺の本気をぶつけたい。
だって俺はアッシュみたいになりたいんだから。
アッシュが剣を構えた。
「いくぞっ!」
「こいっ!」
1秒もかからず、鍔迫り合いとなった。
「やるな、ボロボドス」
「そっちこそ」
身体能力では絶対に叶わない。
スピード、筋力、格闘センス、全てが負けているのが一瞬で分かった。
特にスピードがやばかった。
まるで足の動きが雷だ。
本気を出さねば、負ける。
「今度はこっちからいくぜ」
アッシュは何も言わずにじっと俺を見る。
静かすぎて逆に不気味だ。
「ミラージュソード」
「出たな」
俺は剣を何度も振りきった。
すると、アッシュは俺以上のスピードで剣を振り出した。
がきんっ。
剣と剣がぶつかった音がする。
「なにっ!」
「全部跳ね除ければ問題ないね!」
アッシュはミラージュソードの剣筋を全て叩き落としていった。
一瞬で攻略された!
さすが、主人公。
戦闘センスが抜群すぎる。
だったら、これはどうだ。
まだ不完全だけど。
「バニッシングソード」
剣の姿が見えなくはと言うバグを利用した。
俺の剣の刃は見ることができない。
「くっ!」
アッシュに必死に剣を振っていく。
「見えない剣ってのは厄介だなぁー」
アッシュは嬉しそうに笑う。
こっちはバグを使ってるのに余裕でついてきやがる。
さすが勇者だ。
凄すぎる。
「なんとなくでやるしかねぇな、持ち手は見えるからな」
ちっ、もう弱点がバレたか。
だからまだ使いたくなかったのに。
鍔迫り合いが何度か続いたあと、俺たちは誰かが近づいてくるのを感じた。
「血の匂いがしますなぁ、素晴らしい素晴らしい」
うるさいぐらいに大きな拍手をするダンディーなおっさんがやってきた。
おっさんの格好は珍妙だ。
赤いマントに、赤い髪をしているが、赤い帽子。
赤い服に、赤いズボン。
口紅もしている。
全てのファッションが赤色に統一されている。
ローズグラン。
ブラッドハピネス教団の教祖だ。
改めて復習するが、俺の破滅ルートは3つある。
勇者と敵対して殺される
周りからの好感度が低すぎてそれをきっかけに勇者と敵対して殺される
その二つは俺はつぶした。
魔王の手下と手を組み、操られて、勇者と敵対して殺される
こいつはボロボドスを配下にと勧誘してくる。
ローズグランが微笑を浮かべてきた。
「赤はいいですよ、あっかっかっか」
それにしても変な笑い方をしている。
赤への強いこだわりを感じる。
「あっ、あが、あがが、顎が外れた」
そんな笑い方をするからだろと突っ込まないことにする。
ごきっ。
ローズグランは顎の位置を元に戻した。
「笑いすぎて顎が外れるのはよくあることです」
「お前だけだと思うよ」
あっかっかなんて笑うせいだと思う。
「ところで赤は好きですか?」
ローズグランは話を強引に変える。
「開きなるなよ」
「リンゴはいいよななぁ」
「そうですね、リンゴは赤いですもんね、よいものです」
「青りんご」
「青ですって?」
ローズグランのこめかみがぴくぴくとなった。
「ふざけるなかあああああああああああああ!」
ローズグランが突然叫びした。
さらに頭を振り回し、顔を真っ赤にする。
「赤以外はあってはならぬのだぁ!」
「何言ってんだ?」
アッシュは怪訝そうな顔をする。
「こほん、再び取り乱してすいません、話が進みませんね、あなたは世界で美しい赤ってなんだと思いますか?」
赤い薔薇の花束を見せてきた。
100本だが、1000本だがとにかくたくさんある。
「薔薇の赤でしょうか?」
ローズグランが首を振ると、急に薔薇が燃え上がった。
赤色の炎が目の前に浮かぶ。
「炎の赤でしょうか?」
笑顔を保ったまま、ローズグランは静かに首を振る。
何にもしてないんだから襲えばいいじゃないかと思うが、油断も隙もあったもんじゃない。
「いいえ」
ローズグランを大きく口を歪めた。
ピエロが笑うみたいに不気味な笑顔だ。
「あなたの血です」
そう告げるや否や、刃物を俺に突きつけてきた。
ぴっ。
アッシュの頬が刃物で切れた。
血だ。
「いてっ!」
俺はそれを見るや息を吸った。
「なにしやがるうううううううう!」
「充血した目、真っ赤な顔、素敵ですね! もっと赤く染め上げたいです!」
ローズグランは興奮している。
「誰か助けてぇー」
大声で叫んでおいた。
助けは多いほうがいい。
冷静な判断をできている。
「アッシュ、大人たちが来るまで時間を稼ごう」
アッシュは頷いた。
「ほっほっほっ、そううまくいきますかな?」
俺は急いで真剣を抜いた。
「バニッシングソード」
最初からフルスロットで行く。
アッシュを傷つけたなあああああああああああああああ!
「それは見てましたよ」
ローズグランも剣を取り出して、俺の剣筋を弾き飛ばしていく。
「でも、結構鬱陶しいですね」
目の前が急に真っ赤になった。
赤ペンキをかけられたのだ。
「やっぱり赤色の剣はいいですね!」
俺の剣が赤ペンキで染まってしまった。
「させるかっ!」
いい足の動きで、アッシュがローズグランの脇を狙う。
やったか!
「いいですね、いいですね、子生意気で」
ローズグランはアッシュの剣もあっさり剣で弾いた。
「あなたの血はどんな赤ですか?」
俺は剣を構えた瞬間だった。
ぴっ。
何が起こった!
頬が切られたのだか分かった。
しまった、さすがにレベル差がありすぎたか。
こいつは中盤の強敵だ。
「おっほっほ、なぜ血は美しいんでしょう!」
俺の血がローズグランの頬にかかった。
「こ、こ、これは!」
ローズグランは何を思ったか、その血を指でふき取り、10秒ほど見つめた。
突然、ローズグランはそれを舐めた。
ぞわっと悪寒が走った。
「ボロボドスくん、あなたの血、私は大好きです」
ローズグランが世界で1番嫌な告白をしてきた。
名前も知っているのも原作通りだ。
「君の血はおいしい! 何よりも美しい! これは奇跡を生む」
「赤目の君はこんなところにいるべき人間じゃない。私は君の赤目も血もごと丸ごと愛してみせよう」
このセリフ。
愛に飢えたボロボドスが勇者を裏切ると似ている。
こうやって原作再現きやがったか。
「さぁ、私と美しき明日の世界のため、赤色に染め上げませんか?」
俺の血が魅力的と言っている。
「断る!」
原作のボロボドスはこの時点で勇者を裏切ることを決めているが、俺は違う。
これがこの二人のライバル関係の始まりなんだが、原作だとここで負けてしまうことで捻くれて変な宗教団体ブラッドハピネスと組んでしまうことにつながる。
俺は原作を壊してやる。
アッシュのために!
あと、俺のTS願望のためにお前を利用もさせてもらう。
「大丈夫ですか? ぼっちゃま」
「ジェイデン!」
神速の動きでローズグランが切り付けられていた。
ジェイデンが助けに来てくれたのだ。
メアもそばにいる。
「おっほっほっ、私が血まみれです、たまりませんなぁー」
ローズグランはジェイデンには圧されていた。
ジェイデンの動きは見えない。
ローズグランから血が吹き出すのだけどは見える。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ちょっと怪我しただけで」
俺がそう言うや、否や、メアの目が暗黒色に染まった。
「アイツ、コロス」
メアが大変なことになってる!
なんかこっちの方が魔物だよ。
「魔覚醒 恋乱花魁」
「ピンクも少しはいいかも、うぐっ、何を!」
ローズグランが苦みだした。
30秒後。
「私のアイデンティティを壊すなぁー!」
急にブチ切れて、ローズグランが空に雄叫びをあげた。
「魔覚醒 血飛沫薔薇散開《ブラッディローズ》」
次の瞬間、ジェイデンが切られた。
「うっ!」
ローズグランの魔覚醒 血飛沫薔薇散開《ブラッディローズ》
薔薇が一瞬のうち、剣のように襲ってくるという技だ。
やつの必殺技だ。
「もう一度行きましょう、魔覚醒 血飛沫薔薇三昧」
まずい。
このまま
ローズグランが呟いた否や、俺は両手の指を同時に鳴らした。
「フリーズタイム」
世界が止まった。
フリーズタイム。
ゲームのバグらせることの硬直を利用して世界を止める。
まだ5秒だけだけど。
俺の切り札だ。
ローズグランの腹を殴る。
「うっ!」
ちっ、ミラ姫ほど強くないな。
「一体何が起こった!」
ローズグランが腹を抱えて、こちらを驚愕の様子で見てきた。
よしっ、ここで挑発をしよう。
「お前は俺に興味があるんだろ?」
「あっかっか、赤い目のボロボドス君、悪いことをたくらんでますね」
ローズグランは笑顔のまま、手をかざしてきた。
「赤く染まりなさい! レッドミスト」
「かかってきな」
俺はこっそりと魔覚醒 幻覚空間を作成して、自分をかけた。
そうそう、これで成功する。
俺の魔法とローズグランの魔王が組み合わせることでTSバグが起こる。
準備を整った。
さぁ、あとは霧を浴びるだけだ。
「危ないっ!」
アッシュをは俺を突き飛ばしてきた。
『え?』
ローズグランも俺も声がハモった。
「お前が苦しまなくてよかったぜ!」
笑顔のまんま、アッシュを白い霧が包み込む。
「アッシュうううううううううう!」
もっと惚れちゃうよ、アッシュに!
10秒もすると、白い霧は消えた。
視界が晴れる頃、もうローズグランはいなくなっていた。
遠くから「あっかっかっか、これはこれでいいでしょう」という声だけ聞こえた。
アッシュの方を見ると驚くべき光景が目に映った。
誰? このめちゃくちゃかわいい赤いドレスの巨乳の美女。
頬を真っ赤に染めて、太ももをこすらせ、両手をすりすりして、落ち着かない様子でいる。
ちなみに、巨乳と分かるのは、胸の辺りが見えるセクシーなドレスだからだ。
目測、Fカップ。
さてと。
俺もメアもジェイデンさんもすぐには何が起こっているが分からなかった。
「あぁ、俺、女の子になっちゃった!」
それを聞いて改めて気づく。
あー、男勇者アッシュがTSしたのね。なるほどねぇ。
俺の魔法がローズグランの魔法と組み合わさったバグが成功したみたいだなぁ。
まったく、ローズグランめ、とんでもない置き土産を残しやがって………。
というかなぁ。
TSすんのはそっちじゃねええええええええええええええええええええええええ!