主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
俺がわかっていることは学校に行くことになることだ。
ただし、原作では学校の行く前の父との会話に話さなければならない。
原作を知っているからこの未来は予想できる。
しかし、この世界では原作破壊が発生している。
ボロボドスの中身が主人公になったことで起きるゲームデザインの変更。
つまり、リアルな世界とゲームの世界のバランスを取る仕組みがある。
それを仮に『世界調整システム』と名付けよう。
例えば、ゲームでは壁抜けをした先にNPCがいても反応しない。
それはシステム上、考慮されていないバグだからだ。
しかし、この世界はゲームといえどもリアル。
だから、ジェイデンは反応して俺を特別な存在だと判断した。
NPCではなく、人格を持った一人の初老な元ロンメルス王国騎士団副団長として。
世界調整システムについて検証する必要はある。
原作とリアルな今がどう乖離するか。
気になるところは3ポイントある。
ローズグランの存在。
彼については俺がそもそも配下にならないことを決めていたので強くなることで対処していくかは引き続き修行が必要だ。
ただロースグランが想定外すぎることをしでかしやがった。
まず、アッシュが女の子になってしまったことだ。
最強扱いのアッシュがあーなるなんて誰が予想しただろうか?
というか、女の子になりたいのは俺だ。
実はアッシュの容姿はアンヌという女勇者を選択したときに選ばれる同じキャラなのだ。
百合ルートにつながる。
もちろんこっちもやったけど、どう組み合わさってくるかがわからん。
シナリオ自体は変わらないから困る。
ローズグランがどうこの後、関わってくるかも分からない。
俺の原作知識がどこまで通用するかが不安となってきた。
謎だって多い。
そもそも何故俺はこのゲームに導かれたんだ?
俺がよりによってなんでボロボドスに転生させられたんだ?
心の声が静まると、魂からの声が聞こえる。
強くならなくちゃならない。
このままではダメだ。
現状の自分を打破しなければならない。
方法自体はシンプルで誰にでも分かりあう。
ただし、やりたくないけどやらなければならない。
苦痛と向き合う必要があるからだ。
インプット。
己の弱さと向き合わないといけない。
つまり、
新しいものとの出会いが必要だ。
未知との出会いが必要だ。
知らない自分との出会いが必要だ。
進化をせねばならない。
現状の自分を維持することは死につながる。
恐怖と向き合うことにしよう。
学校に行こう。
ローズグランの罠が張り巡らされ、魔の手が及んでいるのは知っている。
でも、アッシュを男の姿に取り戻し、ミラ姫、エリーナ、アリシアを守るためには行かなければならない。
そのためには、父を説得しなければならない。
原作では一歳描かれておらず、ボロボドスの恐怖する対象としか。
原作履修している俺はボロボドスの父であるザルカウスがローズグランの配下であることはもちろん知っている。
ザルカウスが悪役貴族となったのはローズグランのせいではある。
ボロボドスを根源的に闇へと導いた悪へと俺は一歩進める。
原作ボロボドスの根源たる恐怖と、絶望と、屈辱の元凶と向き合わなければならない。
ローズグランに勝つために。
あと、奴を利用したら俺がTSできるかもしれないからな。
※
自宅の父の部屋に入った。
ちなみにメアがビクビクしていた。
あのど変態にはくれぐれもご気をつけてくださいと何十回も言われた。
何をしたんだ、ザルカウス!
まず、デカデカとした机と椅子が目に入る。
机には赤色の薔薇が一本入った花瓶がある。
壁にドラゴンの頭、剣、盾などが飾られている。
歴代当主の肖像画もあったりする。
怖いものといえば、地震雷火事親父という。
原作ボロボドスは怖いもの知らずだが、死ぬことよりも父だけは怖かった。
実際、目にした瞬間、この世の終わりを迎えたと思った。
なぜ俺は生きているんだろう?
原作のボロボドスを心を破壊したのも当然だと
目が合うだけでも殺されたような錯覚を覚える。
頰に深い傷があり、誰かを殺したんじゃないかという凶悪顔となっている。
体格も筋骨隆々としている。
喧嘩をしたら負けることだけは本能で分かる。
「魔法が魔覚醒までできるようになってメアに褒められたら、剣技でジェイデンに褒められるようになったからって、完璧なわけじゃないんだからなっ! まだまだやれるようになるべきことはあるぞ!」
俺もその言葉が発せられた瞬間、体が硬直した。
蛇に睨みつけられた蛙。
そんなものであったらいいが、人間に踏み潰されるのをなんとか免れているアリといったところだろう。
不思議なことに自分を責め立てられているような言葉がなかった気がする。
そんな自分の直感を信じて、唇を動かしてみる。
「もしかして、褒められてますか?」
「褒めてない!」
父親からガンつけられてた。
それだけで俺の心臓は潰れそうになった。
殺されていないことだけでも感謝をしなければならない。
「失礼いたします」
上からスカートまで真っ赤なメイド服を着たメイドがやってきた。
見た瞬間、メアの忠告が正しかったことに納得した。
「私の口移しで赤ワインはいかがですか?」
手錠と首輪をつけて、恍惚とした表情を浮かべていた。
「今日はいらん」
「今日は!」
思わず声を上げてしまう。
「それにしても学校に行きたいだなんて、何て危険なんだ、ボロボドス!」
「よっぽどあんたの方が危ないよ!」
思わず俺は声を上げた。
「メイドのキスの味で赤ワインの味が変わるのを知った時、赤に染め上げればどこまで美しくなるか、限界を知りたくてな」
「調教しすぎだろっ!」
「口を改めろ! 我が息子よ」
ザルカウスはそういって、剣を腰から抜き、剣先を喉元に突きつけてきた。
しかし、ふふっと鼻で俺を笑うと剣をすぐに鞘に収めた。
どうやら、威嚇しただけのようだ。
妙に風格がある。
ふと疑問が一つ浮かんだ。
「貴様もやればいいではないか? メアなら付き合ってくれるんじゃないか?」
「そんなこと致しません! そういえば、なぜ学校が危険なんですか?」
話題を変えたいので、俺は強引に話を戻した。
「それは、ローズグラン様が告げていたのだ。貴様は我が領土をつく運命にあるのだと!」
ザルカウスは目を爛々にして、そう告げていた。
なんか目力が強くて怖い。
ここで一つ疑問が浮かぶ。
「え、俺って評判悪いじゃないんですか?」
父親が俺自身をやたら評価してくれているように思えた。
「私の息子なら評判なんぞ簡単にひっくり返せる。その赤い目は何のためにあるんたわ?」
ずいぶんと俺の株高いな。
「子供に仕事を押し付けんな!」
「できそうなやつに任せて何が悪い!」
「やっぱり俺、さっきからちょいちょい褒められていないですか?」
「してるわけないだろ! そう簡単に民衆から支持を得られるとおもったか! ブラッドハピネス教じゃあるまい!」
ザルカウスの顔は真っ赤っかであり、まるで噴火しているかのようだった。
威圧感だけで部屋が押し潰れそうだ。
ブラットハピネス教に対しては好意的であることを確認できたのは収穫だが。
「だったら俺が領土を継がなければならないんだよ! 頑張れよ、お父様」
「ローズグラン様に言われた通り私なりに頑張っとるわ、息子よ」
ザルカウスは真顔でそういった。
「だったら、お父様、俺が学校に行くのも仕方のないことなんですよ」
「なに? そこまであんな危険な場所に行きたいのか? 訳を聞こうか」
「悪を倒したいんです」
そういうと、ザルカウスは眉をぴくりと動かした。
ここで、ローズグランとはあえて口に出さない。
魔王みたいな悪を倒せる人間になりたいと言うアピールだ。
原作だと学校に行くことで、強くなっていき、魔王を倒すための力をつけるからな。
「なるほどな、でも、我々が民衆からしたら悪みたいなだから最初に倒すのは我々じゃないか」
「嫌われてる自覚はあるんですね!」
「私をからかっているのか!」
「ごめんなさい、調子に乗ってしまった」
ザルカウスは俺が謝るとふわっと鼻を鳴らした。
「どうしたんだ? 本当に学校に行ってもいいことないぞ」
ザルカウスは俺をじっと見ている。
「俺は行かなければならなんです!」
ローズグランを倒すために!
「そこまで言うにゃらしきゃたがない、おっほんうっほん」
あっ、噛んだ。
それに…。
「わぁ、咳だがくしゃみだが分からないくしゃみみたいな咳をしている」
「いいや、これはくしゃみだ」
「わざとらしすぎるだろ」
ザルカウスはギロリと俺を睨みつける。
ひっ、殺される!
「いちいち突っ込むな、話が進まないだろ!」
「ごめんなさい」
怒ってる顔が怖すぎる!
ボロボドスが怖がるのも無理もない。
「私の後を継げば万事金も名誉も手に入るんだぞ、赤い目のお前ならば素敵な薔薇色の未来があるぞ」
「いりません。俺は友情が欲しいですし、多くの人から愛されるようになりたいです」
ブラッドハピネス教信者すぎて怖いよー!
「愛されたいというのか、息子よ、私と違って誰からも愛されるようになり、ローズグラン様のような民衆のアイドルになりたいと」
「そこまでは言ってないです」
熱心な信者怖すぎる!
ザルカウスは「はぁー」と大きなため息をついた。
「そう言うなら仕方がない、別に私は応援なんかしないし、期待してないからなっ!」
「もしかして期待されてます?」
「してないと言ってるだろ! 勘違いするなっ!」
「調子に乗ってすいません!」
俺はさっきから褒められてる気がしたけど、やっぱり気のせいだった。
「そういえば、世界最強は誰だ?」
「アッシュじゃないんですか?」
「そんな気概でどうする! 貴様は世界最強になろうと思わないのかっ!」
「え? なんで?」
俺がそういうと、先ほどより大きなため息をザルカウスはついた。
「志ぐらいは高くしておけ、息子よ、もういい、下がって良し」
ザルカウスは呆れた様子をしながら、俺を追い払うように手を動かした。
世界最強は勇者アッシュだろ?
何をおかしなことを言ってるんだ?
とにもかくにも俺は学校に行けるようになった。
俺は原作ボロボドスくんは愛に飢えて、勇者アッシュのような家庭を憧れるのも仕方がないと改めて思うのだった。