主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
「私はボロボドス坊ちゃまをえこひいきいたしません」
剣術教師ジェイデンは堂々と宣言した。
ざわざわという喧騒が聞こえる。
おそるおそる生徒の一人が手をあげた。
「本当ですか?」
いくら王国騎士団副団長とはいえ、驚くべきことを言っている。
ちなみに原作なら、この僕たんが教えてやろう。
才能だけがすごいボロボドスが闇魔法を悪用して、たくさんの幻覚を見せつける中、相手の急所を即座につくという非常にこすい手を使う。
強いことには強いんだ。
「もちろんです」
ジェイデンが真顔でうなずく。
「私情は1ミリたりとも挟んでおりません」
クラスメイトが「いやいやいやいやいやいやいや」と激しく首を振っていた。
嘘つき野郎という目つきでクラスの全員の視線が痛い。
ミラ姫、アッシュ、エリーナ、アリシアからの目線は温かいけど。
「あの悪名高きボロボドス様ですよ!」
「事実を述べただけです、今にわかることです!」
ジェイデンが殺意のこもった目つきを発言者に向けた。
やはりクラスメイト達も納得いかないようだった。
ちなみにミラ姫、エリーナ、アリシア、アッシュはうんうんと強くうなづいていた。
そこでミラ姫が手を上げる。
「ジェイデン先生」
「何でしょう、ミラ姫様」
「そもそも殴れば解決しませんか?」
「刃物を持った一人の人間が突進してくるのがシンプルに強いものです」
「殴れば終わりです」
ミラ姫はそう言って、腕を曲げて自分の力こぶを笑顔を向けて、優しく撫でた。
あっ、出た、これは原作内のミラ姫の決め台詞と決めポーズ!
「私の存在意義を消さないでください」
即答だった。
「実際、それで何とかなってきましたよ?」
「引き続き、国防もその調子でお願いします」
ジェイデンは丁寧に頭を下げた。
その様子を見て、生徒たちはコソコソし出す。
「さすがミラ姫様、去年だけで魔獣災害を何十件も解決しているだなんて」
「隕石も破壊できるんじゃ?」
「生態系をコントロールもしてるという噂も聞くけど」
「あながち嘘じゃないだけどな」
アッシュがボソッとつぶやいた。
ミラ姫は不思議そうに「単なる人助けですけど」と唇の端に手を当てていた。
エリーナがため息を吐く。
「ミラ、そうじゃないわ」
「風で剣を吹き飛ばせばいいのよ」
「あなたもですか、エリーナ様」
ジェイデンがジト目をしている。
「違いますよ、ジェイデン先生のお考えを理解してください」
アリシアも頷く。
「自分がスライム化して剣で切れないようにすればいいんです!」
アリシア、渾身のどや顔、炸裂。
クラスの生徒たちが時が止まったかのように動かなかった。
「さてと、本日の実技に入りましょう」
ジェイデンは木剣を取り出した。
どうやらスルーすることに決めたようである。
アリシアは「ん?」と首をかしげていた。
メインヒロインたちの強さに誰もついていける生徒はいない。
「まずは模範演技です」
ジェイデンがチラリと俺の方を見てきた。
すごく嫌な予感がする。
「ボロボドス坊ちゃま、前へ」
「えこひいきは良くないと思う」
俺も抗議する。
「優れすぎているので仕方ありません」
「仕方なくない!」
もう一回抗議をする。
あと、クラスメイト達からの視線もものすごおおおおおおおおく痛い!
「学園長からも許可を頂いております」
「どういう許可だよ!」
原作と全然流れが違う!
原作だとここでアッシュが活躍する場面のはずだ、それを俺が抗議してボコボコにされるという展開なはずだ。
俺はアッシュのかっこいい展開を見たいんだ。
「ここはアッシュが!」
アッシュを見る笑顔で俺に向かってと手をひらひらと振っていた。
「ボロボドス坊ちゃまなら大丈夫だろう、と」
「雑!」
闘技場へ移動する。
生徒たちも見学に集まってきた。
「では始めましょう」
ジェイデンが剣を構える。
「本気で行きます」
「ちょっと待って」
「遠慮はご無用です」
「待って」
開始とともに、ジェイデンの剣が振り下ろされる。
俺は反射的にバグ技を使った。
まだとっておいたのに。
「不形剣《アンフォーマルソード》」
剣が13倍ほど伸びた。
俺はそれをムチのようにしならせる。
「え?」
生徒たちが固まる。
ジェイデンの帽子だけが綺麗に真っ二つになる。
「す、すごい……」
「今何したの?」
「見えなかったぞ」
生徒たちからのざわめきが広がる。
「さすがです坊ちゃま!」
ジェイデンだけが大興奮だった。
ミラ姫はぱちぱちと拍手をしていた。
エリーナは当然ねって感じで鼻高々だった。
アリシアは微笑んでいた。
アッシュは腕をくんで、にたにたしていた。
アッシュが手を上げた。
「俺もやる」
「アッシュ様!」
女子生徒たちが騒ぎ始める。
「きゃあああ!」
「アッシュ様!」
「頑張ってください!」
「アッシュファンクラブ、人気すごいな」
アッシュは木剣を受け取った。
「今は女だからってなめてもらっちゃ困るぜ!」
一秒後。
「こうだろ?」
「やるな、アッシュ!」
一瞬で剣が弾き飛ばされた。
「見たろ、ジェイデン! やっぱりアッシュなんだよ、アッシュ!」
無事、俺はアッシュにやられている。
剣で迫ってるアッシュは女になってもカッコよかった。
というか、美少女なアッシュにやられているのでドキドキしていた。
「喜んでる場合ですか? 坊ちゃま」
ジェイデンが少し呆れていた。
アッシュはファンたちに取り囲まれて、もみくちゃにされていた。
ミラ姫がいつもにか横にいて、笑顔だった。
「ボロボドス様、手を抜きましたね?」
ミラ姫は肩をぐるぐると回していた。
え?
殴られるの?
「殴りませんよ」
「心読まないでくれる?」
「ボロボドス、風魔法ぐらい使いなさいよ」
「これは剣術の授業だからな、エリーナ」
「勝てばなんでもいいじゃない、なんであんたが負けるのよ、変よ!」
エリーナは口を尖らせいた。
まぁ、アンフォーマルソードはまだ使いこなせていないのとアッシュがチートなんだよということを言いたかったが、口をつぐんだ。
「ボロボドス様、スライム汁飲んで強くなりましょ!」
「気遣いには感謝する」
アリシアは不思議そうに首を傾げる。
最近、アリシアがどんどん変な方向にいっている気がする。
それにしても、メインヒロインたちがあんなにかっこいいアッシュに目を向かないでいる。
これはアッシュが女の子になってしまったことにやる弊害か?
俺はローズグラン対策のプランを原作再現をしつつやるようにしないとなぁと思うのであった、
結局、アッシュが強いと盛り上がることで原作通りのイベントとなったが、ミラ姫、エリーナ、アリシア、あとジェイデンも不服そうだった。
アッシュがすごいで終わるはずなのに、なんでわかってもらえないか俺にとっては不思議でしかなかった。