主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
もちろんこの世界は人間が生きた世界だ。
だったら、ゲームでは描かれてない部分だって俺は知ることになる。
例えば、飯だ。
城の食堂にやってきていた。
ボロボドスは欠伸をしながらパンをかじる。
「朝ごはんどうしようかな」
正直、考えるのが面倒くさい。
「パンでいっか」
そうつぶやいているとミラ姫がやってきた
「具材を差し上げましょうか」
「おー、助かる、大丈夫なのか?」
「城に腐るほど肉がいっぱいあるのでむしろ食べてください」
「なんでそんなにあんの?」
「私が殴り倒した魔物の処理にみんな困ってるんで」
「相変わらず、お転婆ですね!」
「強いけど、図体がでかい殴りやすいギガントウルフが絶滅危惧種になってますのでその肉だけはレアです」
「生態系に影響を与えてる!」
肉をかじると新鮮でうまかった。
「そういえば、肉は腐らないのか?」
「ロミアが魔物の血抜きをしてくれますので」
「大変なことをやってるんだな」
「いえ、血の匂いに興奮してるのでご褒美みたいです」
「便利なシステム!」
エリーナもやってきた。
「もう野菜も食べなきゃだめでしょ、ボロボドス」
「え?」
「薬草からいやだよ」
「風に運んでもらえばいいじゃない?」
「そんなピンポイントに?」
「風のお便りに耳を傾ければいけるわ」
「木ぐらいなぎ倒せばいいから」
「うん、生態系を破壊するのはやめようか」
「そこから逃げだした魔物はミラが殴り倒してくれるから何の害もないわ」
「お前がミラ姫を手伝っていたのか」
「魔物がいっぱいいる木の果物、あと、魔物がおいしそうに食べる植物を風で運べばまぁいいわね、まぁ、私は植物にも詳しいけどね」
どさっ。
エリーナがたくさん薬草をおいた。
「マジックマッシュルームもあるわね」
「なんか名前が怖いんだけど」
「なんでよ? 平気よ?」
「カエンタケもいいわね」
「これ平気なの?」
「ドクツルダケも最高ね」
「ここはゲームだゲームだゲームだ」
「おいひぃです、エリーナ、このぱちぱちと燃えるような肌がひりつくカエンタケ、しびれるようなおいしさです」
「このゲームの作者は毒キノコをわざと食べれるキノコって設定してるんだ、安心だ安心だ、見た目はやばいけど安心だ」
「ボロボドス様、ジュースはいかがですか?」
アリシアはジョッキをどんっと机に置いた。
水色だ。
「スラロスの絞り汁です」
「スラロスは怒らないのか?」
「大丈夫ですよ?」
「スラロスのしぼり汁を固めたものがこちらになります」
「3分クッキングみたいなノリ!」
「スライムジャムです」
ちなみにアッシュは食えればいいってなんでもいいと思うキャラだ。
するとどうなるか?
「アッシュ様、その肉はげてものです」
「おえええええええええ!」
「なんでも口をする赤ん坊ですか!」
ミラ姫は困惑した顔をしていた。
「アッシュ、そのきのこは見ればわかるでしょ、しいたけっていうんだけど、毒よ」
「うええええええええええ!」
「アッシュはそう簡単には死なないでしょうか、まぁ私は見てて面白いんだけどね、毒物の反応を見れるのは楽しいからね」
エリーナが困っていた。
「アッシュ様、お薬のスラロスの汗を固めたものです」
「まずううううううううううう!」
アリシアがアッシュに無理やり流し込んでいたので、アッシュはじたばたしていた。
横で見ていて、アッシュがかわいかった。
なんて幸せな朝なんだろう。
ということで、俺のパンに、薬草に、ジャムに、アッシュの笑顔というトッピングで朝食を食べる習慣を大切にすることにしよう。
しばらく、この城に来ることにしよう。
今日もパンがうまい。
もっとうまいものが食いたい」
「そうだ! ローズグランを思いついたぞ!」
※
学校の校庭に俺とアッシュがいた。
俺は木の枝で地面に図を書きながら、アッシュの方を見た。
「それで、あのあとローズグランを倒すための成長戦略を実行するんだろ?」
「うーん」
アッシュは真剣な顔で考え込む。
そんな顔を見て、思う。
赤髪の美少女アッシュ、赤目の俺。
別に何もしなくても俺たちに近づいてくるのでは?
そんな仮説が思いつくが、別の提案をしよう。
「美味しいリンゴでも作ればいいと思う」
「なるほど、赤だもんな。今さら俺たちも農園作れるのか?」
アッシュはやはり頭はいい、ローズグランが赤に食いつくことぐらいすぐに分かった。
増殖バグを使えば、いくらでもと口にしようとしたが、やめた。
「いや、ボロボドスならできるか!」
「え!」
キラキラした目でアッシュが見つめてくる。
「なんかないのか?」
「あるけど!」
アッシュが喜んでる!
「トマトも、いちごも、赤パプリカもいけるか?」
「もちろんだ!」
「天才すぎるよ、ボロボドス!」
どうしよう。
もう俺は死んでもいいかもしれない。
※
学園長に許可を取り、翌日。
学校の農園は完成していた。
増殖バグって偉大。
でも、我ながらやっちゃいけないと思う。
リンゴ。
トマト。
いちご。
赤パプリカ。
ついでに赤カブ。
見渡す限り赤だった。
血の海に見えなくもないぐらい真っ赤だった。
アッシュは感動した顔で畑を見ている。
「すげぇ……」
うんうん。
もっと褒めていいぞ。
「ボロボドス、これで国が作れるんじゃないか?」
「そこまでじゃないだろ」
「いや、赤い国ができる」
アッシュが真顔だった。
そんなに評価されると照れる。
もっともそんな国が出来ても困るけどさ。
すると。
ぞわり。
嫌な気配がした。
畑の向こうから赤い影が近づいてくる。
アッシュがにやりと笑う。
といっても、可愛い美少女が不敵な笑みを浮かべているだけだから、単にかわいいだけで男っぽさは全くないんだけど。
「来たな、ローズグラン」
来てしまった。
もっとアッシュとの平和な時間を堪能したかったのに。
赤い帽子。
赤いつなぎ。
赤い靴。
歩く赤信号ことローズグランである。
今日は全身が赤いことを除けば、立派な農夫の姿をしていた。
「私の魔覚は赤いものを全て捉えるのです」
「そういや、そんな設定だったな」
「一晩にしては見事な赤です。それにしても君は不思議な技を使いますね。どんな魔法ですかね?」
関わりたくない。
俺はアッシュと平和に農業したい。
一緒にリンゴを食べて、これおいしいってリンゴ色に染まるかわいいアッシュを見ていたい。
「ほほっ、ラブコメの気配を感じます。赤い糸を感じます」
「むちゃくちゃ気持ち悪りぃな、こいつ!」
「そこは、あかんわ、ではないでしょうか?」
「単なる関西弁じゃん!」
「ですが顔は赤いですよ」
「関係ねぇ!」
「君の爪垢だって煎じて飲みたいですね」
「お前は赤ければなんでもいいのかよ!」
「爪の垢でも血は含まれておりますからね」
「もういいわ!」
アッシュはサムアップを向けてくる。
「ローズグランに立ち向かえてる! すごいぞ」
アッシュの笑顔かわいい。
「ほっほっほ、私の果実や野菜より赤さで勝てるとでも?」
ローズグランはリンゴを手に取った。
真剣な顔になる。
嫌な予感しかしない。
「合格です、赤丸をさしあげましょう」
「審査員かお前!」
「しかし赤への情熱が足りなくて、赤点になりかねません」
「知るかよ、そんなもん! 赤赤、うっせぇな」
「味を犠牲にすればもっと赤くなります」
「本来の目的どこ行った! それこそ赤点まっしぐらじゃねぇか」
さすがローズグランとでもいえばいいだろうか?
「農園には赤字経営はつきものです!」
「開き直んな!」
「お前は農薬とか使うのか?」
「いえ」
アッシュが訪ねたことに対して、ローズグランは首を振った。
「野菜や果物たちに屈辱と怒りを与えるのです」
「ある意味、農薬より悪質だ!」
原作と全く変わってねぇ。
「ほらトマト君、裸で恥ずかしくないのですか?」
「トマトに裸もくそもあるか!」
ローズグランの赤好きな裏設定をこうもまざまざと見せつけられると気色悪いな。
「私の赤い舌でぺろぺろ」
「変態だ!」
もうだめだこいつ。
「赤への愛ですよ」
「逆にすがすがしいよ」
※
その日の夜。
「くそっ、逃げられる!」
ローズグランは既に畑の外だった。
「よなよな君たちの農園にお邪魔して、緑色のお邪魔虫は焼却していますので」
「わざわざありがとうございますって言わなきゃいけないのが悔しいわ!」
実際、害虫は減っていた。
有能なのが余計に腹立つ。
※
「バラ畑へ」
ローズグランは遠くを見た。
目がきらりんと光った。
「青いバラは焼却焼却。ほっほっほっほ。バラは赤に限ります」
「おい待て! せっかくミラ姫様が植えたのに」
「やめろ」
俺とアッシュは同時に叫ぶ。
「赤以外は不要なのです」
ちゅどーん。
青薔薇のいるあたりだけ、炎で燃えした。
しかしローズグランは振り返りもせず。
「大丈夫です」
「何がだよ」
「燃える時は赤いですから」
「そういう問題じゃねぇぇぇぇ!」
やっぱりあいつは悪役だ。
少しでも情けを見せた俺が馬鹿だった。
翌日。
ミラ姫が笑顔でアッシュに詰め寄っていた。
「これはどういうことですか?」
「ローズグランが、うぐっ」
アッシュに小さな腹パンが一瞬で入る。
あくまで痛みはなさそうだけど、圧がすごかった。
「アッシュ様、まずは報告しましょうね」
「うぐっ、ごぺんなさい」
アッシュは涙目だった。
うん、可愛いな、アッシュ。
「もう、赤いドレスを着せて、畑に飾りますね」
「俺はかかしじゃねぇよ、ボロボドス、止めてくれ」
「アッシュの赤い服みたいな」
「俺の味方はどこだぁああああああああああ!」
アッシュが悲鳴をあげた。
カカシになったアッシュの元に男が近づく。
「あっかっかっ、赤いですな」
「乙女同盟行きます!」
ミラ姫が殴りにかかった。
ローズグランはひらりとよける。
そのまま、地面にミラ姫のパンチが練り込み、半径1メートルほどのクレーターができる。
「風よ、お願い!」
ローズグランにエリーナが風を浴びせる。
すると、ローズグランは
「不形剣」
「魔覚醒 幻覚空間 赤い剣たち」
「あなたは厄介ですね、今回はこのくらいしてあげます」
今回は別にローズグランは悪いことはしてないけど、メインヒロインたちの殺気がすごかった。
「覚えましたよ、殴るためにはやっぱり魔覚醒をしないといけないんですね」
「私の風があいつの吐息未満だなんて許せないわ」
「スラロスの平和な家庭を作るものを許しませんよ、ふっふっふっ」
学園編はローズグランを倒すために魔覚醒を目覚めさせるためにある。
ローズグランの仕掛けた罠を潜り抜けるためにアッシュに活躍してもらわないと。
「いつまで俺をかかしにしておくんだぁー!」
ローズグランに夢中でアッシュを忘れたことにようやく気づく俺たちであった。