主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
校庭に温泉が湧いていた。
水の色は赤色である。
赤いスライムが噴出していて、校庭にもはや赤い池ができていた。
「赤い! このことか、ローズグランが言っていたことは!」
ローズグランと駆け引きにすらなっていない。奴はやりたいようにやっているだけ。魔覚醒をやって、ようやく足元におよぶ。
そもそもおびき時点で倒すこともできず、相手にすらされていない、かつ、潜入はとっくにすんでいるみたいだ。
「ジュースができます!」
「喜んでる場合か!」
アリシアがぴょんぴょんと跳ねていた。
横で同じようにスラロスも跳ねている。
「飲みますか? ボロボドス様」
アリシアは人差し指を唇の端に当てて、首を傾げる。
「アッシュは?」
「もう飲ませてますよ」
アリシアは平然としていた。
「ごほっごほっ!」
アッシュは激しくせきばらいをしていた。
「肌荒れは防がないといけないんです!」
「もっといい方法あるだろ!」
アリシアが赤い池に向かって、指をさす。
「汚れてましたね、アッシュ様、あそこにダイブです!」
「アッシュをこれ以上どうしたいんだよ! アリシア!」
俺が叫んでも、アリシアは「ふふーん」と自慢げに笑う。
直後、しゅんとした様子で落ち込み、口を手を当てる。
「あれが、犯人みたいです! 私がなんとかしなくちゃいけないんですけど!」
「うぅ!」
アッシュがまだ呻いている。
すっかりアリシアに無視されている。
ローズグランにやりたい放題されているのがはっきりとわかる。
そろそろ、ちゃんとスパイをあぶりださないとな。
アリシアたちにばれてはいけないから厄介なんだけど。
「私が何とかしないといけない」
原作イベントだと、アリシアがスライムに詳しいがゆえに張り切る場面だ。
「私はですね、これでも聖女なんです」
これでもと言っているが、まじめな顔である。
やっぱりふざけている自覚があったのかと思う俺ではあるが、声にはあえて出さない。
「困っている人はほっておくのが苦手なんです」
最近はアリシアは笑っていることが増えたが、実は自分を一人で抱えこみガチの性格である。
原作だと考えすぎて、イメージができなくなることにアリシアが悩むことがある。
言葉にすることも感情を吐き出すことをやっているもののイメージすること自体が苦手だったりするのだ。
魔法の強さ=妄想力×魔覚
妄想力=言語化×感情×五感の情報
アリシアは五感の情報という愛の形を自分で見つけることで魔法をできるようになった。
愛とは温かく、そっと人を照らすような篝火のようなイメージだと。
「結構考えすぎるんですよね」
次のことの段階に覚醒する必要がある。
俺はアッシュの代わりに時間稼ぎをすることにしよう。
「いいことだ」
「え?」
アリシアが目を大きく見開いた。
「考えすぎるってことは不安ってことで、未来をよく考えているでもあるんだぜ?」
「未来を?」
やっと回復したアッシュが笑う。
「大事な時こそ、力を抜くことが大事だぜ」
来たああああああああああああああああああああああああああ!
アッシュの名言!
「やり方は簡単。いつものかわいい笑顔を見せてくれ」
アッシュは白い歯を見せて、母親を喜ばせたい子供みたいな純粋な笑顔を見せつけてくる。
「こうでしょうか?」
アリシアは口角を上げて、一生懸命笑う。
「可愛いな」
「ふぇ?」
アッシュの突然の宣言にアリシアは驚いたようだ。
あー、尊い、アッシュが原作通りにかっこいい。
まじで尊い。
「アリシアは本当はできているのに気づかないだけだ。自分のことを追い詰めすぎるから、肩の力を抜くこと。もっとバカになれ。
深刻になるな。気軽でいいんだよ」
「ほどほどの適当さって大事だけどな」
俺はうんうんとうなづくと、アリシアがこちらに目を向ける。
「それが苦手だから困ってるんです!」
原作ならお喋りモード、夢について生き生きと語るところを解放されるところだが…。
アリシアはアッシュの何も考えていないようで、本質をついた一言を言えるところにはってなったりする。
俺自身はRTAルートのチャート作成で、パターンを全て想定して、不安をつぶしてからひたすらできることに費やしていくからアッシュのような天才的な思考力には憧れたものだ。
ぱっと見るだけで本質を全てつかみ取るなんてアッシュはかっこいいよなぁ。
「そう意味だと、本当アッシュはいいよなぁ、俺なんて不安を想定してそれを全部つぶして、一番嫌な状況を想定してそうなってもいいかって開き直るネガティブな性格をしてるのに」
「え? ボロボドス様、それはすごくいいことでは?」
俺の発言にやたら引っかかるらしいので、ここはアッシュのサポートをするため、思ったことを素直に言うことにする。
「なんで不安かを全部徹底的にあぶりだすともう考えるのが面倒くさくなって開き直れんだよなぁ、まったく、これが結構疲れるんだよ」
RTAでガバが発生したとき、どうリカバリーするか。
最大のコツは、開き直る事である。
こればっかりは場数を踏むしかない。10000回のリセットなんて上等!
「自分一人で解決しなくちゃいけない問題って確かにたくさんあるよなぁ」
アッシュもうなづく。
「でもだからこそ、人に話すことで楽になることあるぜ?」
白い歯を見せるアッシュ。
「もう十分甘えてるつもりですけど?」
「だったら、まだまだ甘えるのが苦手なんじゃないか?」
アッシュはアリシアをからかうようににたにたとみる。
俺もアッシュの意見に同意する。
「アッシュにならいくらでも甘えることができるからな、本当器が広いからな」
「むぅ!」
アリシアが口を尖らせた。
「まだ甘えたりないってことがすごくよくわかりました!」
「えっ? 何で怒ってるんの?」
俺はびっくりした。
原作と流れが違うからだ。
ここでアッシュの言う通り、うんとうなづくはずだからだ。
「アリシアはアリシア以外にはなれねぇんだからいいと思うぜ」
「はい! どんなに人に喜ばれなかろうとも、スライムを好きすぎる自分を譲れなりません」
ここでアリシアはうなづいた。
少し流れが違うなぁ?
「アリシアの夢って細かく聞いてなかったな」
「スライムがもう一匹欲しいです、もうスライムの大家族みたいな輪ちゃわたちゃした感じがいいです、スライムの楽園を作ればいいんです」
アリシアは生き生きとした様子で楽しそうに話している。
「もっとばかになっていいんじゃねぇか?」
「笑ってるアリシアが一番最高で、その笑顔を振りまけばみんな分かってくれるよ」
アリシアはアッシュではなく、俺をぼーっと見ていた。
「足りなかったのはおふざけですね」
「お笑いでもやるのか?」
「そうとも言えますかね?」
アリシアが唇に人差し指を当てて、楽しそうに笑う。
「というわけで、一度やってみたかったことがあるんです」
「なんだよ、それお」
アッシュがアリシアに尋ねる。
「私には見えない人から声が聞こえます。私の好きが広がってしまい、世界を巻き込んでしまい、幸せになる
それが愛です」
アリシアが両手を口に回りにつけて、メガホンにして、空に笑顔をぶつける。
「世界さん、スライムになってみませんか?」
アリシアが手をかざす。
「魔覚醒 スライムフェスティバル」
突如、空がにやりと笑ってきた。
大きなスライムが空にいたのだ。
その大きなスライムの口から、カラフルなスライムがはじけ飛んできた。
魔族との平和の楽園を作りたいってこうやって再現されるのか。
スライムたちが赤い湖の上に乗っかり、膨らんでいく。
「えいっ!」
アリシアの声とともに空に赤いスライムが吸い込まれていき、地面からさらにスライムの雨が降っていった。
スライムによる逆さ雨が起こっていた。
「魔覚醒 スライムフェスティバル」
アリシアがスライムの心に呼びかけ、さまざまな形でスライムを呼び、自由に具現化させる技だ。
スライムだけが空に吸い込まれていった。
「ふふっ、ローズグランをスライムまみれにしてやります、私の未来を邪魔したことを後悔するのですね、ふふふ」
なんだかアリシアが怖かった。
とはいえ、アリシアの魔覚醒を成功した。
ローズグランのたくらみも一つは解決したし、一石二鳥だ。
どうやら無事、魔覚醒に成功したようだった。
少し流れが違うけど、何はともわれよかった。
一方、横でミラ姫は楽しそうにスライムをパンチしていて、エリーナは風でスライムを巻き上げたりなどしていた。
ちなみにアッシュには逆さ雨のスライムがびちゃびちゃとぶつかりきゃあきゃあと言っていた。
いつも通りの光景だなぁとこんなカオスに慣れつつある俺だった。