主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
「ボロボドス様、魔覚醒ってどうやるんですか?」
私はできるだけ不安を表に出さないようにボロボドス様に聞いた。
ローズグランをぶっ倒す、いえ、アッシュ様の姿を取り戻すためには、私も魔覚醒しなくちゃならない。(ついはしたないことを思ってしまいました)
何とかしなくちゃならない。
アッシュ様に聞いてもあてになりません。
ということで、ボロボドス様の方がわかりやすく説明くださります。
「魔覚醒はな、魔粒子をちゃんと五感レベルでしっかりと体感することが大事なんですよ、魔粒子お見えになりますか?」
ボロボドス様は魔粒子を私に見せてくれた。
「へぇー、こんなふうにぷかぷかしてるんですね。私も出してみたいです!」
「見えるのか、アッシュに聞けばいいと思うけどな」
「いいえ、ボロボドス様から前みたいに分かりやすく教わりたいです」
ボロボドス様は困った様子で見てきた。
手を組み、少し「うーん」とうなった後、顔をあげてくださった。
「視覚的に説明するとだな、ここに指でつまめるサイズの1cmぐらいの粒が空気中にぷかぷかと浮かんでいるんだ。魔粒子がいろんな色がしていて、赤、青、黄、緑の四色があって、それぞれふわふわと漂ってぶつかって色も変わって、紫とかにもなったりすることもあるんだよな、においは焦げたるにおいだったり、雨みたいにおいだったりしてな、音とかも風が吹くみたいにひゅんっと小さな音がしてさ、それから」
「きゅー」
もう頭の中がいっぱいいっぱいですぅ!
「あれ? 分かりにくかったか? だからアッシュから教わるのが一番いいと思ったんだけどなぁ」
「姫様は脳筋なんです、いっぺんにいろいろ考えることなんてできるわけないんですか!」
ロミアの怒った声が横から聞こえた。
むぅー少し、馬鹿にされている気がする。
そう思ったもののまだ思考回路がショートをしていて、口に出す余裕もない。
「え? ミラ姫様は公務とかやってるから、このぐらい分かるかと。公務とかはどうやってるんだ?」
ロミアが無表情のまま、口を開く。
「ミラ姫様への調教はまだ姫様が小さいころに私めがやっておりますので」
「なんて嫌な感じなの! そういえば、ミラ姫様はめっちゃ感覚派だったなぁ、やっべつい設定忘れていた」
ボロボドス様が設定という不思議なお言葉を使いますが、なんだか私のことをよくわかっているのが伝わって、私はちょっと嬉しくなります。
頭を休ませようと少し目をつむると、ピリピリした感じが肌に伝わった。
「魔粒子を五感レベルで感じることといわれてましても、ぴりぴりとしているぐらいは分かるんですけど、それぐらいしか」
「ミラ姫様は魔覚自体は高いので、別に言葉にしなくてもなんとなくでできてしまうんですよね、逆に俺にはできないんですけど」
ボロボドス様は「うーん」と悩む様子を見せてから、私のことの方に向き直った。
「魔法の調子はどうなんですか?」
「それは調子いいですよぉ〜」
手をかざしてみて、念を込めてみる。
「赤き炎を我の前に現れよ」
炎ができあがった。
「ほらぁー、きれいですよぉ」
小さな太陽が目の前にあるようだった。
「赤色がいっぱいありますけど、他の色も少し混ざっています、炎、水、土、風のどれかになります」
私は今できていることに満足している。
「そもそも魔法ができるようになっただけでも今胸いっぱいで」
「赤い球が3個浮かんでいるとか、もっと具体的にお願いしてみたらどうなんだ?」
「それいいですね!」
「3つの赤色の魔粒子さん、お姿を見せてください」
私の周りがぽわーんと3つの赤い魔粒子が光る。
「うわわ、たくさんです」
なんとなく触りたくなってくるので手を伸ばしてみた。
「えいっ!」
するっ。
赤い魔粒子は手を通り抜けてしまった。
「あれ? 手にぶつかった感触がないです」
むー、なんか悔しいです。
「四色の魔粒子さん、姿を見せてください」
四色の魔粒子は出てこなかった。
一つずつしかまだできないようだ。
「これも違うみたいです」
アッシュ様がやってきた。
「ミラは小さいころから殴るだけでなんでも解決したからな、魔法はいらないだろ」
アッシュ様はけらけらと笑う。
「なつかしいなぁ」
「冒険についてくる俺をあんまりにも殴るもんだから、敵をぶっとばしちまったのは今でもよく覚えているぜ」
私は外に出るのが好きであり、お城の兵士の方々からはよくお転婆と言われた。
アッシュ様が守ってくれるからという理由で公務を放り投げて、姫という立場も忘れて一緒に冒険に行かせてもらうことが多かった。
恥ずかしくなって、アッシュ様をついつい殴ることも多くて、おてんとうさままでぶっ飛ぶんじゃないかと勢いだったりする。
アッシュ様は頑丈なので、森の木々に引っかかってぼろぼろになりながら戻ってくる。
アッシュ様の冒険についていき、私がパンチをしているとそれを敵に向けるようになり、守られるから守るになる。
隕石を殴ってみることに憧れるようになってきました。
「得意を貫けばいいと思うけどなぁ」
アッシュ様のいうことは常に本質をついているとは思う。
「さすが、アッシュ。無理に苦手なものを取り組むんじゃなくて、得意なものを伸ばせ、確かに強みの上に築けってことだもんなぁ、俺も闇魔法は努力が少なくとも自然にできちゃうからなぁ」
「俺そこまで入ってないけど、すげぇな、ボロボドス」
「そもそもローズグランは殴らせてくれないと思う」
アッシュ様がぽつりというと、皆黙った。
「まだ、私は自分の魔法を信じることができないんです」
「言語化を深めるのはどうしていればいいんですかね」
アッシュがボケーッとした顔をしていた。
「王様が地球滅亡の日に隕石を殴り壊すこととかも言ってたわなぁ」
ぽつりとそんなことをアッシュが言った。
裏設定にしかないため、ミラ姫が殴り姫となった要因については明らかになっていない。
ボロボドスが殴り姫と言ったことぐらいだ。
「私はいつの間にかパンチができるようになってました」
「得意すぎて、パンチの言語化なんてできないよな」
「感覚でやれちゃうアッシュの似たような天才性を感じる」
ボロボドス様がうんうんとうなづいていたりしている。
「答えだけ言うと、パンチだけじゃあ何とかしらの何かしらのきっかけがいるんだけどなぁ、そういう設定」
「設定?」
「こっちの話だ」
またボロボドス様が謎言語を言っていた。
「私って駄目なんでしょうか? やっぱりわからないです」
感覚を言葉で説明するのは難しい。
最終的には本人につかみ取ってもらうしかないからだ。
「アリシアに聞こうぜ」
「殴る前に魔覚醒を感じないといけない」
※
アリシアのいる教会へ行くと、すぐに私たちのもとにやってきた。
「アリシアー、魔覚醒ってどうやるの?」
「気持ちが強くなることかなぁ?」
「言葉にしてみると?」
「スラロスが可愛くて、思いがあふれちゃって、なでなでしたくて、気持ちが世界に届けーと思ったら、魔粒子が私の周りに集まってくれました」
「それが一番早いってことだけかな?」
周りはみんなにも何も反応できなかった。
ミラ姫が殴る力が人並み過ぎれていることが一つの要因だ。
「まぁ守られることには慣れてください」
「お姫様という立場を忘れなく」
「すいません」
私はつい落ち込んでしまう。
だめだ、落ち込んではいけない。
守られるだけじゃ嫌だ、自分こそ国民の皆様を守りたい
恵まられるだけじゃ嫌だ
生きてるだけでいい、それが嫌。
「あなたは可愛い顔を穢されると悲しむ方が多いでしょ」
「自分にうそをつくと辛いですよ」
アリシアは私の目をじーっと見ている。
「自分が何を感じるか、それが結局一番自分に力を与えてくれる源となってくれます」
ボロボドス様が私に優しく寄り添ってくれる。
「ミラ姫様はどうですか? 率直なことを教えてください、どんな小さなことでもいいですよ」
「隕石を殴ってみたいなぁ」
「あはは、そうですよね、大丈夫でしょ、設定的に」
ボロボドス様はいつでも応援してくれる。
「あ、いや、えっと………その方がミラ姫様っぽいです、どうぞお進みください。人に守られるより守りたい、俺はすごく良いと思います。アッシュがカバーしますから」
ボロボドス様の温かい言葉で胸のあたりがぽかぽかしてきた。
魔覚醒がなんだかできそうな気がしてきた。