主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
森へ行く道中、魔物が出る。
魔物は魔粒子を蓄えている。
ここで活躍するのは魔覚だ。
襲ってくるモンスターはスライム、ウルフといったところだ。
「えいやっ!」
姫様がスライムを殴った。
しゅばーん。
「なんかピリピリしますね」
どうやらミラ姫は魔粒子を肌感覚で捉えることができるらしい。
ちなみに俺、ボロボドスなんとなくあるなぁーって魔物がいてからモヤだーと気づくぐらいで魔覚で魔粒子を感じ取ることができる。
魔物が消えて、石とスライムの欠片が出てくる。
この石は魔石であり、スライムの欠片は素材だ。
ロミアが魔石と素材を拾って袋に入れていた。
魔石っていうのは魔物の核となる魔粒子の結晶体のことだ。
素材は魔物から取れるもので公易品になったりする。
この魔石や素材を換金すると、金になったりとかする。
この国の単位はゼルという。
せいぜい50ゼルぐらいだろうか。
俺もアイテム袋に入れた。
「なんでそんなに入るんですか?」
それは無論バグってるからだ。
「しようです」
『しよう?』
「魔法だよ、魔法」
ミラ姫とアッシュ、ロミアに問い詰めてもまだと思ったか、引き下がってくれた。
魔石や素材の解説のせいで、言い忘れたことがある。
実はこのミラ姫様のパンチは相当に強い。
「今日も殴り姫は元気ですなぁ」
「もうやめてっば!」
「ごふっ!」
ミラ姫はアッシュをお腹を殴る。
アッシュが「ちょっとからかいたかっただけなのに」とお腹を抱えていた。
顔から少し涙もこぼれていた。
やばい、アッシュが可愛すぎる。
このあだ名をつけたのは原作ボロボドスだったりする。
ミラ姫は相当このあだ名を嫌がる。
おかげでミラ姫はボロボドスに対して、嫌な気持ちがあったりする。
俺は二人の絡みが原作通りであることに安心した。
いいぞ、ミラ姫、そのままアッシュ君を殴るんだ。
アッシュからミラ姫への好感度があがることはない。
何よりアッシュの可愛いところを見れて嬉しい。
「ミラ姫様、新しい手袋でございます」
「ありがとう、ロミア」
ミラ姫はスライムで汚れてしまった白い手袋を入れ替える。
ロミアがミラ姫の手袋を用意する。
これも原作通りだ。
「はぁー、姫様の血の匂いがします! 赤いですぅー」
ロミアがミラ姫の手袋が赤くなってるのに興奮しているのはご愛嬌だ。
ちょっとした変な性癖がある。
それにしても、ミラ姫、少しお転婆だなぁと思うけど。
スライムが3匹ほど現れた。
「しゃしゃりでるなよ、全く」
アッシュ君の不憫の姿を見るという俺の楽しみを奪う奴は許さん!
もわーん。
幻惑魔法を発動させて、白い霧を発生させる。
スライム3匹とも硬直をする。
それを確認して、ミラージュソード三連撃で切り伏せた。
この間、5秒。
RTAでお世話になったテクニックだ。
「ちっ、乱数悪いじゃねぇか」
本来、こんなところでは1匹しか出ないのが普通だが、3匹同時に出る。
これは嫌なパターンだ。
想定済みであるけど。
ミラ姫がこちらを見て、口を開けて呆けていた。
「どうかされましたか? 魔物が出るので油断はしない方がいいですよ」
どうしたんだろう?
俺何か変なことをしたんだろうか。
「いえ、何も」
ミラ姫が手を素早く左右に振った。
顔を赤く染めていて、少し恥ずかしそうだった。
ところで、ロミアが何もしていない。
設定上では、暗殺術も使える、闇魔法のメイド。
王国最強だが。
「きゃあああああああ!」
スライムが一匹出ただけでこれである。
全く役に立っていない。
これにはちゃんと理由がある。
「スライム攻めはいやああああああああああああああ!」
スライムが苦手という謎の弱点があるからだ。
大量のスライム攻められたことがトラウマらしい。
あと、触手も苦手。
うん、もはや、ふざけてるよね、スタッフ。
おかげで、アッシュの活躍を見れるからいいけどね。
スライムに霧魔法をかけ、硬直をさせる。
「アッシュ、頼んだ」
「おうっ! リトルサンダー」
「やっぱり水属性のスライムには雷属性が有効だな」
俺と違って、一発で決まるもん。
さすが主人公。
「ボロボドスの声掛けがよかったんだよ」
アッシュが照れくさそうにそう告げた。
やったあああああああああああああああああああ
アッシュに褒められたああああああああ!
ちゃんと褒めないとだめだ、謙遜は美徳じゃないとメアが言ってたしな。
「アッシュは魔法も、剣術もすごいんだから、これぐらい当然だよな、悪かったな」
「よせよ、恥ずかしいわ」
アッシュは右肩をぶつけてきた。
よくある男同士のじゃれあいみたいなのができて俺はすっごく嬉しかった。
まだTSしてなくてよかった。
もししていたら、昇天していたに違いない。
「姫様のパンチも威力ありますからそれでよかったかもですけどね」
ミラ姫はぽけぇーと俺をまた見つめた。
今日はこれが多いな。
ミラ姫はぶんぶんっと顔を振って、俺の目を見つめた。
胸に手を当てて、深呼吸を繰り返した。
ミラ姫が笑顔を俺に向けてくる。
「ボロボドス様、アッシュ様、魔法ってどうやってできるんですか?」
設定では姫様は物理攻撃が得意すぎて、魔法が苦手という設定がある。
「ミラだってできんじゃん、やって見ろよ、もっと良くなるように教えてやるよ」
「そ、そうですか? えいっ!」
炎、水、土、風が縞々に混ざった四種類の球体が浮かんだ。
四種混合魔法だ。
これは姫様が得意とする魔法だ。
ひゅん。
すぐに消えてしまった。
持続魔法は3秒くらいだ。
「上手くできないんです」
「へぇー、4種類も同時に出せるだけすごいけどなぁ」
アッシュが首を傾げた。
「ひゅーどろどろ、メラメラ、さらさらっー、ぽちゃんって感じか? ほいっ」
ぽんっ。
火、水、土、風の四分割された球体がポンと浮かんだ。
「ふぇ?」
「おっ、できた」
ミラ姫は両手を頬に手を当てる。
「ありえないですっ!」
俺も驚いた。
「やっぱりアッシュ天才すぎる! さすが、勇者だあああああああああー」
「ボロボドス、ほめすぎだよ、そこまで言われると嬉しいなぁ」
アッシュは再び照れくさそうに頬をポリポリとかく。
ミラ姫は手を伸ばして、虚空を見つめる。
「私も。イメージして、あっー。間に合わないですぅー」
浮かんだ小さな四色のイメージがシャボン玉のように割れて消えた。
ミラ姫はしゅんと落ち込んでいる。
原作では本当一生懸命なキャラだったはずだ。
「ボロボドス様はどんなふうに魔法をお使いになってるんですか?」
「俺?」
なぜか俺にきた。
でも、好感度を下がるわけにもいかないし、できる範囲でやってみることにする。
「俺は霧魔法しか使えないけどな。霧ってもやっーとしてるだろ、だから霧に包み込まれて見えなくなる日を思い出すんだよ。それから、迷いの森に入って、周りが見えなくなって、細かすぎる白い水滴が包み込まれてるって感じかなぁ。このイメージを手のひらサイズで思い浮かべて、いきなりデカくする感じかな?」
魔法についてなるべく詳しく言語化をしてみた。
「わかりやすいですぅー。私もやって見ます」
「姫様、記憶力いいんだから呪文にすれば?
長くてもいいじゃん」
「ふぇ? やってみます」
ふぅーんと顎に手を当てて、考えた後、ミラ姫は目を瞑った。
イメージがついたのか、手をかざす。
「赤き炎よ、小さな太陽となれ」
四種混合魔法のうち、炎が強く出てきた。
「できましたぁー!」
「ボロボドスは教え方上手いな、すごいな」
アッシュが褒めてくれた。
よーし、もっと頑張っちゃうぞおおおお!
「ミラ姫様はスイッチが入るとまっすぐそこに集中すればいいと思って、ちょっとした儀式があると思ってな」
「周りをよく見てますね」
「へ?」
「それになんでも知ってるんですね」
別にアッシュもミラ姫がすごいのを知ってるだけで、当然だろ。
ゲームの内容はさすがに全部覚えてるけど、俺は対して詳しくない。
「俺だって知らないことはあるぞ、神様じゃねぇぞ」
「すごいですよ」
ミラ姫がやたらきらきらとした目を向けてくる。
「謙虚だなぁ、ボロボドス」
なんかアッシュに褒められると照れくさい。
もっと嬉しくなっちゃう!
「ありがとう、お前に褒められると本当嬉しいし、自信つくよ」
「ふふっ、ボロボドス様って勇者様のこと本当好きですね」
「あいつの欠点は幼馴染なのに結婚できないことだ」
「ふふっ、本当相思相愛ですね」
ミラ姫が俺の真剣な目の奥まで上目遣いで見てきた。
「ボロボドス様、おひとつだけよろしいですか?」
「うん、一つだけじゃなくてもいいけど?」
ニコッとお姫様は笑う。
「私とボロボドス様も幼馴染ですよね?」
「ほぇ? そうだね、でもだから何?」
確かにボロボドスもアッシュとよく城に遊びに来て、ミラ姫と遊んでいたから幼馴染といえば幼馴染と言える設定だけどな。
「ふふっ、まだまだ私の魅力は勇者様には遠く及ばないみたいですね」
アッシュの魅力を超えるのは基本的に不可能だと思う。
そんなに落ち込むことはない。
「アッシュがすごすぎるだけで、ミラ姫様だって充分魅力的だよ、ミラ姫様を嫌う人間なんてこの世に存在しませんよ」
メインヒロインなだけあって原作でも人気だったし。
俺もアッシュが好きすぎるだけで、嫌いなわけじゃない。
「そのお言葉は嬉しいですが、そうじゃありません、もぅー」
姫様は頬を膨らませて、アッシュをじっと見つめる。
しまった!
アッシュのことを好きになる運命に入っちゃう!
ライバルは減らしたいけど、好感度は下げないようにしないと、えっと。
「アッシュがかっこよすぎてるのはわかるけど、ほかに目を向けようね!」
「もう知りません」
「なんで怒ってんの? 何を間違えたか謝りたいので、教えませんか?」
「言いたくありません」
ミラ姫はぷくーっとハムスターのようにぱんぱんに頬を膨らませている。
あーだめだ、また好感度が下がった。
あんまり下がると、困るだよなぁ。
「ボロボドス様、あなた重大な勘違いをしていませんか」
ロミアがジト目でこちらを見つめてきた。
「そうだぞ、ボロボドス、落ち込むなよっ。ちゃんとお前はかっこいいんだぞ」
アッシュがそばに来て、俺を慰めてくれた。
「お前は本当いいやつだよ、愛しているぜ、アッシュ」
俺はちゃんと褒めてくれたことに感謝は忘れない。
「アッシュ様、あなたがややこしくしてるのもお忘れにならないように」
ロミアがぼそりとつぶやいた。
アッシュが俺にばっちぐーと親指を立てた。
「俺もボロボドスを親友として愛してる」
「はぁー、姫様も気の毒に、あの赤目で何を見てるんですかね、全く」
ロミアの盛大なため息が聞こえた。
うんうん、わかる。
本当アッシュはあきれるぐらいいいやつだなぁと改めて思う。
俺はその通りだとアピールするため、強く首を上下に動かす。
なぜ俺の赤目のことをロミアが今更文句を言ってるかはさっぱり分からんけど。
「ボロボドス様は何もわかってません!」
ミラ姫様の言葉が聞こえた。
あっ、勇者とミラ姫のいちゃいちゃしたのを俺が邪魔しているのか。
悪いな、そこは譲れない。
とはいえ、ミラ姫から嫌われすぎないようにちゃんと努力しないとなぁと改めて思うのではあった。