主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか! 作:丸尾裕作
鬱蒼とした森を抜けたら、見渡す限りの端が見えないぐらい広い湖が見えてきた。
湖面の水が風のせいでゆらゆらと揺れ、小さな波が数えきれないほど見える。
湖の中はおかげで見るかはできず、ただ水があるなぁと感じるぐらい。
風の音がヒューヒューとなり、草や森の葉を揺らしていく
肌に風が当たり、ひんやりとした感じがする。
なんでだだっ広い湖って見るだけで落ち着いた感じがするだろうなぁ。
草もクリーム色や薄い黄緑もあり、異世界なのにキャンプに来たような気分になる。
「俺、森の精霊様にあって来るよー」
アッシュとは手を振って、別れた。
さて、ここでクイズ。
湖で起こるイベントといえば何でしょうか?
原作通りならば、もうしばらくしたら、答えが判明する。
アッシュのことはいったん置いておこう。
問題はボロボドスの方である。
今、俺はミラ姫と湖の木陰で二人きりでアッシュを待っている。
なんだか、照れくさそうに人差し指と人差し指をちょんちょんと合わせて、チラチラとこちらを見ている。
頰の色は薄い桜色といった感じでもじもじとして、スカート越しでも足を擦らせているのか落ち着かない様子なのは伝わってくる。
気まずい………。
「やっぱり殴り姫って言ったの許してもらえてないよな」
原作ボロボドスはこの場面で、殴り姫って言っていたのに加えて、負け姫だの地味姫だの発言して、さらに心象を悪くさせる。
まぁもちろん俺はそんなことを言うつもりはない。
とはいえ、殴り姫ということに関してはきっちり改めて謝らないといけない。
あれはミラ姫が相当気にしてるからなぁ。
好感度は下がっているから釈明はしないと。
「ふぇ?」
ミラ姫は目をぱちぱちと瞬く。
ずいぶんと驚いた様子だ。
「俺はこんな見た目だし、ひどいやつだし、本当取り返しがつかないと言うか」
「ボロボドス様、人間大事なのは中身ですよ、顔じゃありませんよ」
「え?」
どういうこと原作だと姫様も魔族のように嫌っていたような気がするけど。
「そうなの? お城の時、俺に怒ってたんじゃないの?」
あれ? 原作と違うぞ、どういうことだ。
人間模様だけはやっぱりゲーム通りっていかないか。
すると、ミラは頬をぷくっーと膨らませて、睨みつけた。
「なんでそうなるんですか! 殴りますよ」
ミラ姫はグーパンチを見せつける。
「やめてぇー」
「冗談です」
ミラ姫は笑っていた。
「いや、怖いって」
冗談でも怖い。
ミラ姫のパンチの威力をなめてはいけない。
「それより、私のことはどう思っていらっしゃるんですか?」
「え? めっちゃ可愛いと思いますよ」
自分の大好きなゲームの原作ヒロインを生で見れて感激しないバカがこの世のどこに存在すると言うんだ。
アッシュが惚れるぐらいには魅力的なんだ、めっちゃ可愛いと思う。
あくまで俺にとってアッシュが一番なだけで、ミラ姫だって魅力的ではあると思う。
「もう!」
「そんだけ可愛いので、国民から愛されて当然ですよ、さすが一国のお姫様です、納得しますよ、そりゃあ好かれるだろってね」
ミラは顔を赤くしている。
ミラ姫ファンからしたらたまらないだろう。
俺もアッシュ推しじゃなかったら陥落していたかもしれない。
「私はそんなボロボドス様のことがす」
「きゃああああああああああああああああ」
女性の甲高い悲鳴が聞こえた。
すると、数秒後。
どかーん。
今度は大きな爆発音と共に、湖から水飛沫が高々と上がった。
「来たか! ってミラ姫様、どうして落ち込んでるんですか?」
「いえ、わたしって間が悪いなぁと思いまして」
ミラ姫がしゅんと落ち込んで、俯いていた。
なんでだろう?
姫様の言いかけたことを聞き逃してしまったせいだろうか。
乙女心は俺の原作知識では補完できない。
「ともかくボロボドス様、アッシュ様のところに行きましょう!」
俺とミラ姫は小走りで声のした方へ向かう。
気のせいか、ミラ姫の背中が小さく見えて、落ち込んでいるように見えた。
※
自分たちのいた場所の近くにいたので、アッシュはすぐに見つかった。
「なんで俺だけこうなるの?」
アッシュの頬は赤い手形がついていた。
まだヒリヒリするらしく、両手で押さえていた。
どうやら貧乏くじをまた引いたらしい。
来ましたわ、これ!
その横でエルフが胸を押さえて、アッシュを睨みつけている。
「エリーナ、何があったんですか?」
ミラはエリーナと呼ばれたエルフの元に駆け寄った。
「水浴びしてたらアッシュがのぞいてきたのよ」
エリーナは怒っていた。
アッシュは頬を抑えて涙目だった。
やっぱり貧乏くじをひくアッシュ。
俺の心がキュンキュンしている。
湖で起こるイベントといえば?
さっきのクイズの答えは、水浴びしている美女と英雄が出会うである。
どうやら、湖で水浴びをしているエルフとアッシュが出会ったようだ。
ラッキースケベを起こすなんてさすが勇者だなぁと俺は思う。
ギリシャ神話でも湖で体を洗っている美女が出会うという話があるからわかったと人はいるのではないだろうか。
エルフの名前はエリーナ・ミスティ。
メインヒロインの一角である。
ミラ姫ととっても仲がいい。
金髪で、長い耳を持つ。
緑の服を着ていて、腕や足などが見える扇状的な服装をしている。
あと、巨乳。
12歳なのにEカップはある。
「とにかくあっち行こう、まずは服着ましょう」
数分して服を着て、戻ってきた。
「なんであんたがここにいるのよ、うざい」
エリーナの視線は敵対心に満ち溢れていた。
ゴキブリを見るような視線という例えがあるけどそれどころではない。
確かにボロボドスは白ゴキブリとは原作プレイヤーからは言われていたけれども。
「病みエルフって言ったの絶対に許さないんだからっ!」
いきなり涙目で睨みつけてきた。
こんなにも嫌われてたのは原作ボロボドスが病みエルフというひどいあだ名をつけたからだ。
「変態もいて本当最悪」
こんな感じで、エリーナはツンツンしていて、いわゆるツンデレである。
そんな怒ったり、泣いたりとかする情緒不安定なところを病みエルフってさ。
原作ボロボドスあだ名集は本当に酷い。
本人も情緒不安定なことはすごく気にしているから余計に嫌われている
「アッシュ様はいつも通りですが、ボロボドス様は変わりましたよ」
一応、中身が違うからな。
アッシュに冷たいやつから、アッシュにやさしいやつに変わったつもりです
「は? 何がいいっていうのよ、こいつ魔法が下手とかも言ってきたのよ」
エリーナは魔法コンプレックス。
風魔法がうまく使えないことに悩んでいる。
「私もボロボドス様に教わってから魔法良くなりましたから」
エリ―ナは目をぱちぱちと瞬きをした。
「ミラにここまで言わせるなんてあんたは何したのよ」
「俺のできる範囲で俺の魔法のやり方を教えただけだけど? ミラ姫の努力がすごいだけで俺は何もしてないよ」
横ではミラ姫はえへへと顔の形が崩れるほど笑っている。
その努力は誇っていいと思う。
「ふーん、じゃあ私に教えてみなさいよ」
そっぽを向きながら、こちらをチラチラと見ている。
この強がりなところがエリーナ。
原作ファンからしたら安心感しかない。
ここで、一つ疑問が浮かぶ。
「あれ? ここはアッシュじゃないの? 俺、風魔法できないよ?」
ミラ姫はキラキラとした目で俺をみている。
「ボロボドスは教え方上手いからな。風なんてひゅーって思えばすぐできるだろ」
風が出てきた。
アッシュはあっさり魔法使ってみせた。
「はぁー、本当嫌になるわ、こいつ見てると」
「あんたはそもそも魔法が本当はできないんでしょう?」
ニヤリとバカにしたように顎を突き出し、見下してくる。
「まぁ俺は闇魔法しかできないからな、アッシュみたいに雷魔法やエリーナみたいに風魔法はできないからな」
エリーナは呆けた顔を見せる。
「そうですよ、ボロボドス様の魔法のやり方はエリーナの参考になりますから」
ミラ姫にそこまで言われちゃあしょうがない。断って好感度下がって嫌われたくもないし。
俺はエリーナの方を見る。
「やってみてくれる?」
原作とどう違うかを知りたいし。
エリーナが手をかざした瞬間だった。
「あひゃあー、ごふっ!」
アッシュの元に旋風が現れて、宙を舞い、地面に叩きつけられる。
この間、10秒ほど。
「また暴発したわ、はぁー、どうしてこうなるのかしら、アッシュざまぁみろとだけは思ったけど」
「どうして俺がこんな酷い目に?」
アッシュは涙目だった。
うん、原作通り、エリーナの魔法の制御が苦手だ。
アッシュが貧乏くじを引くのを含めて。
俺君に感謝するよ、エリーナ、アッシュのサービスシーンをありがとう。
「じゃあ、イメージをわかる範囲で言葉にしてもらっていい?」
「私を遠くまで連れってくれるドラゴンみたいだと思ってるわ」
「さすがだな」
「へ?」
「改めて魔法を復習すると、言葉にする力、イメージする力、感情の強さがポイントで、言葉にするなとイメージは完璧だと思う」
「やっぱり私って感情のコントロールができないかしらだめなのね」
俺がそう言うや否や、エリーナは落ち込んだ。
「さっきこいつに裸も見られて暴発しちゃったし」
「ごめんよ、まさかいると思わなくて。本当ごめんって」
「もうどうして私はこうなのかしら? どうせ私は病みエルフよ」
エリーナは泣きそうな顔をする。
「落ち込むことは誰だってあるぜ」
「そうですよ、いつでも笑顔になんてならないですよ」
アッシュとミラ姫がエリーナを慰める。
「あんたたちはいいわよね、ついでに言っとくけどアッシュはあんたのことぜんぜん許してないんだからねっ!」
「えー、許してくれよー」
「そうかなぁ? (ゼルファンプレイヤーは)泣いてるエリーナも怒ってるエリーナもいつでもめっちゃ可愛いってみんな思ってると思うよ?」
ゼルファンやったやつでエリーナのツンデレっぷりを愛さない奴なんていない。
原作をやるものはエリーナのツンデレであればこそエリーナだと。
ツンデレオタクにはぶっ刺さりまくり、人気ランキング上位にいたものだ。
俺はエリーナのツンデレに全く気付かないアッシュを永遠と楽しんでいたのでエリーナはアッシュの新たな一面を引き出してくれるのでもちろん嫌いではない。
「え?」
「俺なんか変なこと言ったか?」
「急にどうしたのよ、あんたが言ったことなんて絶対私信じないわよっ!」
「そもそもどんなエリーナも可愛いって(ゼルファンプレイヤーの)常識じゃね?」
「なっ!」
エリーナが顔を真っ赤にする。
ん?
「まさか本当にボロボドスは変わったの! 一体どういうことなの?」
「エリーナ、さっきそれ私が言いましたよね」
ミラ姫が呆れたような目でエリーナを見る。
エリーナは俺を睨みつけてくる。
「俺間違ったこと言ったか?」
「ばかっ!」
えぇ、また好感度下がったの。
乙女心全く分かんねぇ!
深呼吸を繰り返すエリーナ。
「ありえないありえないありえない、あのボロボドスがあんな澄んだ目で、綺麗な言葉をどういうことなの?」
こちらを見るエリーナの目は懐疑的だ。
まぁ仕方がない。
「覚えてなさい、私はあんたのこと大嫌いなんだからねっ!」
いやあああああああ。
横でアッシュとミラ姫がニコニコとした表情で見つめていた理由はついぞ分からなかった。
おかげで助けぇって言えなかった。