スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
ハロウィーンの昼の授業は妖精の呪文学だった。
余談だが、この授業は3年生から『呪文学』という名前に変わる。マグルの学校でいう算数が数学に変わるようなものである。
担当のフリットウィック教授はとてもちっちゃな先生で、いつものように本を積み上げた上に立って授業を始めた。
「魔法使いの最も基本的な技術、それは浮遊の術。すなわち物を浮かせて飛ばすこと。さあ、羽は持っとるね?では、練習した手首の動きを忘れないように」
そして杖を振る。
「
「「「「
「よろしい。呪文を正確に。
「「「「うぃんがーでぃあむ、れゔぃおーさ」」」」
クラス中が杖を振り、羽を浮かせようと格闘していた。
セラフィーナはぼーっと杖を手に持って、マグルでいうペン回しの要領でくるくる回していた。
「あれ、セラ、やらないの?」
ダフネが声をかけた。
それを聞き、近くにいたスリザリン生がセラフィーナに注目した。
「え?えー。うん、じゃあ、びゅーん、ひょい」
せめて呪文を唱えろよ。せめて杖を構えろよ。わざわざ杖を机に置くな。人差し指でやるな。
羽はふわふわと浮き上がり、それを見たフリットウィックは拍手した。
「おおー!よくできました!みんな見たかね?ミス・ゴーントがやりました!素晴らしい」
(ふふ、フリットウィック教授、可愛い)
「ありがとうございます」
赤毛とポッターは心底嫌そうな顔でそれを見ていた。
セラフィーナが何度かやってコツを見せるとスリザリン生からちらほらと成功者が現れた。
(はぁ……平和すぎるわ……もっとこう、爪を剥ぐ呪いとか人を狂気に落とす魔法とかやらないかしら……)
……やりません。
◆ ◇ ◆
次の時間のハッフルパフ・レイブンクローの合同授業ではちょっとした諍いが起きた。
ハーマイオニーがいつものお節介で隣に座るハッフルパフ生にキツい口調で上から目線に口出ししたことがきっかけだった。
「ちょっと待って、ストップ、ストップ。そんなに振り回したら危ないでしょ。それに、発音も違ってる。いい?レヴィオーサ。あなたのはレビオサー」
「そんなに言うならやって見せろよ!」
そんなふうに言われたら誰だってキレるだろう。
しかしここで難なく成功するのがハーマイオニーという学年きっての才女である。
「
正しくビューン、ヒョイと杖を回すと、一発で羽はゆっくりと浮かび上がった。
「おー!素晴らしい。よくできました。皆、ミス・グレンジャーがやりましたよ」
本人やそのやりとりを見ていたハッフルパフ生はいつものことながらも今度ばかりは、とハーマイオニーに苛立ちを募らせた。
「いい?レヴィオーーーーーーゥサよ。あなたのはレビオサー。
──はっ、
◆ ◇ ◆
ハロウィーンの大広間は壮観だった。数千匹の蝙蝠が飛び交い、くり抜かれたカボチャは無数に並んで蝋燭の火であたりを優しく照らしている。そして入学式の日と同じように金皿に乗ってご馳走が山のように現れた。
生徒たちが一斉によそい始めたその時、闇の魔術に対する防衛術のクィレル教授が全速力で駆け込んできた。
ターバンはゆがみ、顔は引き攣っている。息も絶え絶えに彼はこう叫んだ。
「トロールが!!地下室に!!……お知らせしなければと……」
言い終わるとその場で気絶して崩れ落ちてしまった。
大混乱になった。
悲鳴が上がる中、ダンブルドアが拡声呪文で叫ぶ。
「しーーーずーーーまーーーれーーーいーーー!!!」
生徒たちは動きを止めた。
静まり返った中、ダンブルドアは朗々と指示する。
「皆静かに。狼狽えるでない。監督生は皆を連れて寮に戻りなさい。先生方は、わしと地下室へ」
(え?普通、扉を閉ざしてこの場で待機じゃないの?)
セラフィーナはダンブルドアの対応に首を傾げた。
(しかし、そんなことより……
……狩りに行かなきゃ!!こないだは穏便に処理しちゃったし。こんな機会滅多にないわね!……あ、そういえばトロールの
混乱の中、セラフィーナは目眩し呪文を使ってそっと姿を消した。
やだこの女怖い。