スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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我輩って一人称は猫であるすぎるので、"私"です。



1-12 罰則

翌日の朝、セラフィーナは珍しく脱狼薬を1ガロンくらい飲み干したような顔をしてスネイプ教授の研究室に向かっていた。もちろん脱狼薬なんて飲んだことはないが。

ちなみに朝は抜いた。とてもじゃないが食べる気分になどなれず──というかギリギリまで布団を被って現実逃避していた。脳内では最悪のイメージがぐるぐる。

 

(げっろ……本当に最悪。叱られるのって本当に嫌いだしお腹の底がキュッてして心が縮むようだわ。行きたくない……行きたくないけれど行かないともっと悪いことになるって私は知っている。あー嫌だ嫌だ嫌だ。おうち帰りたい……いやおうちには帰りたくない……どっか東洋の魔法学校かなんかに転校したい……)

顔では強がって平静を装っているが、中身はこんなもんである。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

(ゆっくり歩いていたのに辿り着いてしまった……)

コンコンコンコン、叱られるシチュエーションなのでノックは4回。

「失礼します……」

スネイプ教授はティーポットを片手にセラフィーナを迎えた。

「ゴーントか、入って……掛けたまえ」

どんな罰が待ち受けているのかとセラフィーナは吐きそうな思いだった。

「まずは飲むが良い」

言いながら教授は華美ではないが優雅なティーカップに紅茶を注いでセラフィーナの前に差し出した。

(毒か!?毒なのか!?)

「安心したまえ、ただのダージリンだ」

(閉心術は完璧なはずなのに!?)

「顔を見ればわかる。まずは落ち着きたまえ」

「はぁ……」

セラフィーナはカップに口をつけ、黄金色の液体を啜った。

「美味しい……」

「うむ、マーガレッツホープ農園の特別栽培茶だ、よく味わって飲むように」

それは、本当に、本当に美味しかった。

 

 

カップの茶が半分くらいになった頃、教授は口を開いた。

「さて……」

(ひっ……)

セラフィーナは再び腹の奥がきゅっとなる感覚を覚えた。

「正直に言うと、個人的にはあまり咎める気はない。あの時言った言葉に嘘はないのであろう?」

「はい……」

「私はまだ君の実力を測り切れてはおらんが、少なくともトロールと遊べる程度の実力は実際にあると踏んでいる。何をして遊ぶつもりだったかはあえて聞かぬが……」

ここで言葉を切った。紅茶で口を湿らせてから続ける。

「問題はアレだ」

「アレ、ですか」

(なに、何の話?)

「左様、()()だ。

……この歳にしてアレを使えることの詳細は百歩譲って今は聞かないでおくが、学校という場で使ったのは極めてまずいといえる」

「あー……

あー……」

文脈からようやく『アレ』の意味を把握し、ここで初めてセラフィーナは状況を理解した。一度理解すればすぐに繋がる。マクゴナガル教授が何に怒っていたのか、も。

 

そう、セラフィーナはそれらの呪文を人に向けて行使するとアズカバンの終身刑に値する……ということまでは認識していたが、その呪文を行使すると社会的にどのように見られるかということをほとんど忘れていた上に、そもそもあまり真剣に考えたことすらなかった。それを()()()()()()()()()()からである。

もちろん知識として知ってはいたが、家で害虫が出れば特に気にせず死の呪い(アバダ)を撃つくらいには、本人の嗜好(闇魔法大好き)も重なって、そう、本当に、悪気なく忘れていたのだった。

いや、悪気はある。対人行使もバレなきゃいいと思っているのは揺るぎない事実である。

 

「もちろん人に向かって使ったわけでなし、個人的な意見としては、緊急時の対処としては社会的倫理(プロトコル)の問題を除けば100点と言ってもいい。あのような獣(トロール)なぞ殺処分でいいだろうとも思うし、人ならざるモノにその呪文を行使することにも私としては何ら気にするところはない。ないが……」

「まぁ、"グリフィンドール的には"まずかったですよね」

スネイプ教授は然り、と頷いた。

「左様。今更気づいたのか?」

「はい、恥ずかしながら」

教授は極めて同情するような表情でセラフィーナのカップに紅茶を継ぎ足した。

 

「腹を割って話そう。一番の問題は、()()と、その現場を他の教授に見られたことである。なんというか、私のその……過去は親から聞いておるか?」

「ええ、ざっくりとですが」

何とは言えない。言えないのである。()()()()()()とかいうやつだ。しらんけど。

「私の価値観だけで言えばよくやった、程度の感想であるが、普通の教授であれば……まぁ簡単に言えば、君は今退学の危機にあると言ってもいいだろうな」

「そんなことになったら親に合わす顔がございませんわ……」

「……察するものはある。ともあれ、今日のところは私の与えた『罰則』もあるが、何とかして変身術の教授(マクゴナガル)……というより校長(ダンブルドア)を丸め込むことを考えねばなるまい」

 

「アルバス・ダンブルドア……」

「敬称略か。まぁ、わかるが。校長は闇の魔術、ひいてはスリザリンという存在を過剰に敵視し潰そうとする傾向がある」

「それは父上も言っておりました……というか、スネイプ教授はダンブルドアの側についたと聞いておりましたが」

「……。」

スネイプ教授は何か悩んでいる様子を見せた後、再び口を開いた。

「まぁ、あの親の娘だから多少は話してもよかろう。校長の側についた(に助けを求めた)時期もあったが、10年前のその、アレで色々思うところが……。いや、……とにかく、校長に対して少なくとも命を捧げるほどの忠誠心は持ち合わせておらん」

「……聞かなかったことにしておきます」

「……ああ」

 

しばらく沈黙が流れた。

ややあって、

「ともかく目下の問題は君の退学を避けることだ。校長の権限は、その一存でいつでも生徒を追い出すことができる」

(げっろ……)

セラフィーナは再び心が縮むのを感じた。

 

 





校長、それは傲慢と言うんですわよ
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