スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
11月に入った。
土曜日、大広間で朝食を摂る生徒たちは浮ついていた。クィディッチのシーズンの到来である。今日は初戦、対戦カードはスリザリン対グリフィンドールである。
セラフィーナも親の付き合いでクィディッチ・ワールドカップを観戦したことは数知れずあるが、今回は身近な生徒同士の戦いということもあり、なかなか楽しみにしていた。
「フリント先輩、ピュシー先輩、頑張ってください♡」
よそいきの皮を被って近くにいた上級生に話しかけると、二人は相好を崩して応えた。
「ありがとう、ミス・ゴーント。必ず勝つ」
その様子に周囲からも声が上がった。
◆ ◇ ◆
11時を回り、いよいよ試合開始の時間になった。
一方、セラフィーナはのんびり優雅に朝食を摂っていたら同級生とはぐれてしまっていた。
(いったんスタンドに出てから探してみましょうか)
スタンド裏の通路から一番近くのドアを開くと、そこは教授たちの観戦スペースだった。
「ミス・ゴーント、こんなところで何をしておるのだ」
スネイプ教授が目ざとく声を掛けた。
「同級生とはぐれてしまって……」
セラフィーナがピッチを見ると間もなく試合が始まるところだった。
「もう始まるぞ、ここで見ていけ」
スネイプ教授がベンチの隣を軽く叩いた。
「失礼しまぁす」
セラフィーナは遠慮せずに横に腰掛けた。
他の教授たちは特に咎めない。彼女がスネイプのお気に入りなのは教授会で周知の事実である。というか、スネイプが彼女の
◆ ◇ ◆
試合運びはどちらかと言えばグリフィンドールが優勢だった。
黙って観戦していたが、10-20とスリザリンが追撃した時、スネイプ教授が顔色を変えて杖を抜いた。
目線を追うと、ポッターが箒のコントロールを失っている。教授はぶつぶつと呪文を唱えている。おそらく反対呪文である。ま、いっか。
しばらくして、切羽詰まった様子で教授はセラフィーナに言った。
「私だけでは抑えきれぬ、手伝え、ゴーント」
「えぇ……」
全くやる気が出なかった。
(このままポッターが潰れればうちの寮が絶対有利でしょう、なんでわざわざ……
……まあ、あの高さから落ちたら打ちどころが悪ければ死ぬかもしれないかしら?それに、試合性はクソか。さすがスネイプ教授、教師の鑑。教授には借りもあるしお手伝いしましょうか)
セラフィーナも杖を抜いて反対呪文を掛け始めた。すると箒は二人がかりの反対呪文で完全に安定を取り戻す。
軽く息を吐き、それから考える。
「ねえ教授、原因を潰した方が簡単ではなくて?」
スネイプ教授は汗を浮かべながら答えた。
「それもそうだが」
「教授が反対呪文で押さえ込んでいる間に私が犯人を探しましょうか、お一人でも彼が叩き落とされない程度にはなんとかなりますわよね?」
「善処する」
「では」
◆ ◇ ◆
セラフィーナはいったん通路に戻り、階段を駆け上がった。
スタンドのてっぺんから生徒を見下ろし、様子のおかしい生徒がいないか素早く見回す。
しかし、1分くらいかけて眺め回したが特に怪しい人物はいなかった。
次にフィールドの周りを見回す。誰か侵入者などがいるのではないかと警戒するが、これも怪しい影はない。
(えー。まさかとは思うけど教師?一応確認しますか)
念の為、教師の観戦スペースを見る。するとスネイプ教授とクィレル教授がポッターから目を逸らさずにぶつぶつと熱心に何か呟いている様子が目に飛び込んできた。
ん、クィレル教授?
もう一度ピッチ全体を確認する。いない。
(うーん。スネイプ教授はない。となると本当に怪しいのってクィレル教授しかいないわね……。
「
セラフィーナは小声で呟いた。魔力は絞って、閃光が出ないように呪いを放つ。
呪文は狙い違わず命中し、クィレル教授は寝落ちしたように首をがくりと前に項垂れた。
セラフィーナは素早くポッターに杖を向けたが、手を出す必要もなく箒は急速にコントロールを取り戻した。ビンゴ。
セラフィーナは観戦スペースに戻り、スネイプ教授だけに聞こえる声で呟いた。
「
◆ ◇ ◆
(ゴーントとスネイプがハリーを!!よくも!!)
赤毛は双眼鏡を覗きながら怒りを抑えきれずに。ぎりり、と歯を噛み締めた。
ハーマイオニーが不在だとこうなる。