スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
魔法使いカードを思い出せるといいね?
セラフィーナはその部屋に『望みの部屋』という名前をつけた。その部屋に数日通い詰め、純血と穢れた血に関する本を網羅的に調べた結果、次のことがわかった。
まず、おそらく例の本に書かれた内容は真実で間違いなさそうである。複数の古い本で『穢れた血とは魔法使いとマグルの混血のことを指す』と書いてあった。同様に『初代とはマグルを両親に持つ新たな魔法使い』、『純血とは魔法使いを両親に持つ魔法使いのこと』とあった。
また、なぜ穢れた血がそう呼ばれるかについては、
『魔法界をマグルの世界に漏らす危険分子の子であり、そのような交雑は遺伝の確率次第で出来損ないのスクイブを子供に持つ可能性がある上に、仮に魔法使いとして生まれてきても魔力が減少した子孫を生み出す可能性があり、長期的に魔法界の衰退につながる』
とのこと。
そして、いくつかの本によると、
『本来、"初代"はすぐにでもマグル界から切り離して魔法界で育てるべきである』
とあった。
幼少期の魔力コントロールは不安定で、魔法使いを親に持たないことで制御できずに事故が起きたり、虐待や教育放棄によって魔力を失ったり、
しかしながら、
『純血の家としては新たな純血"家"の誕生は自分らの利権が削られることに繋がる可能性があるため、里子を含めた保護制度は遅々として整備されず、貴重な"初代"が失われ続けている』
……だそうだ。
(グレンジャーも、たまたま魔力がコントロールできていて、親も理解があったからなんとかなっていたのかしらね。普通のマグルだったら突然家に教授が来て魔法使いになるからと言って全寮制の学校に連れ去り同然に子どもの将来設計を
……そういえばホグワーツの入学基準ってどうなっているのかしら?)
そして誤用の原因については、わからなかった。
1950年代以降に市井の認識が変わって混血が混血として差別対象から外れて、代わりに初代のことを穢れた血と呼ぶように変質した、というのは間違いなさそうだが、どういう動機でなぜそうなったかはさっぱり不明。
ただ、その潮流に警鐘を鳴らす本はいくつかあったし、口を揃えて訳が分からない、とのこと。そして
ひとまず、ハーマイオニーとの友情は……表向きはともかく、自分としては是、と判断した。あとは親にどう小出しにしていくか。頭ごなしに否定するタイプではないので、時間をかければ十分に見通しは立つ。ま、あたしの製造元だし。よし。
◆ ◇ ◆
翌朝、ハーマイオニーの元にフクロウがやってきて手紙のついた何かの包みを落とした。
手紙から開封すると、中身は2枚の羊皮紙。一枚目には、
「一人になれるところで続きを読んで開封して」
とだけ書かれていた。
指示の通り、トイレの個室にこもってから二枚目を読む。
「包みの中身はデミガイズの毛皮で作った透明マント。これを被れば体が透明になるからそれを使って今日の放課後16時に天文台塔の8階の廊下に来て……くれると嬉しいわ。でも無理はせず。来れなくてもまた次の機会はあるし、不安とか警戒するのも全然気持ちわかるから。よろしくね。
セラフィーナ・ゴーント」
とあった。銀色の布を広げて被ってみると確かに身体が透明になった。
◆ ◇ ◆
そして夕方。
約束通りにハーマイオニーが8階の廊下に向かう。誰もいないように見えるが、セラフィーナは目眩まし状態で空中に浮いてのんびりと本を読んでいた。
ハーマイオニーは足音を立てずに歩いていたが、セラフィーナはそれを敏感に察知し、周りに誰もいないのを確認して無言で扉を開けた。もしそこに誰かいたとしたら、誰もいないのにただ扉が開いたように見えるだけである。
ハーマイオニーも続いて中に入る。セラフィーナは扉を閉め、何もないはずの空間に手を伸ばして彼女のマントを剥ぎ取った。
「来てくれてありがとう。ここなら誰にも気づかれずに二人で話せるわ。そのマントはあげるからあなたが持っていて頂戴」
(入学準備の日にデミガイズの毛皮買っといて良かったわぁ〜)
「いいの!?貴重なものでしょ?」
「いいのよぉ、大したものじゃないし」
それは嘘寄りである。既製品で買えば軽く30ガリオンはする。それに自分で仕立てたから材料費はもう少し安いが。彼女は価格相場までは知らないだろうが、それでもなんとなく高そうだということくらいはわかる。
「……わかった、大事にするわ」
「数年したら透明化の効果が切れてくるから、それまでに目眩し呪文を覚えることね。目眩し呪文はね、こうするの
──
するとセラフィーナの姿が溶けるように消えた。
「すごいわ!」
「まぁ、それはさておき、お茶にしましょう?」
再び姿を現したセラフィーナが提案した。
◆ ◇ ◆
「……それでね、隣にいたアリシアがこう言ったのよ、"いつか貴方をアフリカヤマネに変えてやるぅ!"って」
「あはははは」
おもろい。レイブンクローの人間関係ってそんなことになってるんだ。
会話の切れ目でお茶を口に含んだあと、セラフィーナが言った。
「ところで真面目な話になるけど」
「ええ」
「このあいだの話、穢れた血とか純血とか。本の内容をまとめたのがこれで、参考資料がこれ。あなたのためにもなるから読んでみて」
「分かったわ!ありがとう」
「まずはじわじわとスリザリンの友人から中心にこれを公表していって、いつかはハーミィと外で会話しても問題ないようにするから」
「早くそうなりたいわね……。ありがとう、セラ」
「いいのよ〜。あ、あとね、これも
そう言ってセラフィーナが渡したのは小さな手鏡だった。裏側は真鍮で、美しい模様が刻まれている。
「これは両面鏡っていうもので、二個で対になっていて──はい。こんな風に遠く離れていても会話ができるの。裏側を杖で叩くと模様が変化するようになっているから呼び出しもできるわ。
あとこの部屋の仕組みはさっき言った通り。これでいつでも時間あるときに話したり遊んだりできるでしょ」
「いいの、こんなものまで
「いいのいいの。持ってても渡すような友達はいなかったし」
幼馴染を含めスリザリン生にも友達と呼べる人間はもちろんいるが、これをわざわざ渡す必要はなかった。いつでも寮で話せるからである。
値段は……聞かない方がいい。かつての戦争の時に親子や夫婦、恋人同士で使われていた類の品である。
「この部屋なら効率よく勉強もできるし、暇なとき呼んでね〜」
「ほんとに色々ありがとう、セラ」