スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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1-23 方針

話しながら移動し、父の書斎で近況を話す。

「それで、ダンブルドアはどうだった」

「あの爺ですか、やはりスリザリンのことは嫌いのようですね」

「ああ、それはそうだが」

「うっかりトロールに死の呪いを使ったら呼び出しを食らって退学になりかけました」

「お前は馬鹿か?」

(あ、言うつもり無かったのにポロッと言っちゃった……。まあいいや)

「許されざる呪文は心と魂を削るから使うな、と」

「そんなことは無いと思うが」

「ええ。"お気持ち"として言いたいことは分からないでもないですが、賛同する理由はありませんね」

「奴は前の戦争の時も散々我々を苦しめてくれた。奴が率いている不死鳥の騎士団、彼らに何人の()()が殺されたことか……。

お前にこの手の話をするのは初めてか。まぁ歳も上がったことだしいいだろう。前に大人扱いすると言ったことだしな。

奴らの恐ろしい点は、こちらが()()()()()であるという方向への情報操作だ。特に帝王がお隠れになった後、社会的にまともに生き延びた家はかなり少ない。我々は純血を守るために立ち上がったはずだった。しかし社会は我々を単なる危険な暴力集団(テロリスト)としてしか見てくれなかった。

いいか、ダンブルドア、奴には気をつけろ。絶対に隙を見せるな。あの帝王ですら情報戦では完敗だったのだ」

「ゆめゆめ気をつけます……ところで、ちょうどその話に絡んで興味深い話があるのですが父上の意見をお聞きしたくて……」

セラフィーナはポーチから純血に関する資料を取り出した。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

膨大な資料を簡潔にまとめつつ適切に引用をまとめたそれを読むうちに父の目は見開かれていった。

 

「これは本当なのだろうな?いやお前はこういう種類の嘘を並び立てるような子ではないか。疑う気は無いが……」

「引用の通りで、ほぼ間違いないと信じています。裏付ける資料もこれほどあるとなれば確度は高いかと」

ギャレットは目の間のシワを揉みながら羊皮紙になにか記し、フクロウを呼び付けて送り出した。

「とりあえず、ルシウスに明日の晩餐会の後時間を作るように言付けた。お前も参加しろ」

「承知しました」

 

ギャレットは思考に没頭しながら呟いた。

「闇の帝王はこのことを知っていたのか?いや、知らぬということは無いはずだ……」

「ええ、私もおそらく同じ疑問を持っていて、まさに()()()相談申し上げたかったのです。話は少し飛びますが、帝王の本当の名はトム・リドルで正しいのでしょうか?」

「ああ、それで間違いない」

「各種の資料から『穢れた血』の定義が変わりだしたのはちょうどリドルが成人した頃。資料が散逸し始めたのもそれ以降。そしてその血統は……」

「半純血。いや、『穢れた血』と言うべきか」

「半純血という単語も昔はなかったようです。古いどの文献にもその言葉は出てきませんでした」

「まさか、帝王が言葉を塗り替えた──?」

「私も同じ結論に達しました」

「であろうな……」

 

セラフィーナは続けた。

「それと、闇の帝王は死んでおりません」

ごめん。父上(パパ)ごめん。情報量多すぎてごめん。でもあたし悪くない。

「何ィ!?」

「今は半分死んでいるような状態ですが、D A D A(闇の魔術に対する防衛術)の教授、クィリナス・クィレルに取り憑いています。直接見て問い詰めて確認しました」

ふーーーーー、と深いため息をついてギャレットは椅子に倒れ込んだ。

「復活は……」

「できるでしょうね、奴はホグワーツに隠されたという賢者の石を探しています──まぁ私の手元にあるので当分は安全ですが」

「待て、賢者の石を盗んだというのか!?」

「ええ、なにやら簡単な試練の部屋があって、その奥に不用心に置かれていました」

「何回驚かされたら気が済むのだ……」

 

父が無言で紅茶をぐいと飲むのを待ってから、セラフィーナは口を開く。

「問題は──」

「ああ、そうだな。今後の対応だ」

内心で何度かためらってから、続ける。

「その……、帝王が『穢れた血』であり、『初代』を迫害するとして、父上は……その、今後も仕えるおつもりですか?」

セラフィーナにとってそれはとても聞きにくいことだったが、聞かずに話は進まない。さすがに珍しく言葉が詰まった。

が、

「いや……情報が多すぎてまだ整理しきれておらんが、これを見た以上仕える気にはとてもならん」

予想のど真ん中の返事。その答えに肩の力が抜ける。

よかった。うん、さすがにないとは思ったけど、人生で一番緊張したかもしれない。

 

そして再整理に向かう。

「私たちの目指すものは──」

「そうだ。純血の維持、そしてマグルから魔法界を守ることだ。それに尽きる。

それはもちろん、ルシウスや他の純血一族も同じだ。今までは帝王(笑)の旗の下でマグルに融和的な勢力と戦ってきたつもりだったが、その帝王(笑)がそういうことであれば──訣別しかあるまい。幸い、お前もいることだしな」

「と、いうと」

「お前の強さだ。おそらく全盛期の闇の帝王とも互角に戦えるだろう。見てきた私が言うのだ、間違いない」

「光栄です。──それにしても、

……ということは、やはり帝王の目的は自分のコンプレックスを元にした……この魔法界への逆恨み?」

「同感だな。もっと崇高な目的だと信じて(騙されて)いたが。同じゴーントの血族としてもう少しマトモだと思っていたのだがな……」

「「はぁ…………」」

二人揃ってため息をついた。

 

しばらく紅茶をおかわりして息をついたあと、セラフィーナはざっくりとしたまとめに入る。さすがに肩が凝った。

「とりあえず、帝王の復活は阻止、あるいは復活させて完全滅却……といった方向性でよろしいですか?」

「ああ、さすがに気持ちの整理に数日かかりそうだが、これがわかった以上、葬ってやるのが世界のためだろう……。だが死んでいないのだな?どうにかその不死の秘密を暴く必要がある。

明日から忙しくなるぞ。志を同じくする仲間と団結せねば。幸い、私やルシウスは手を汚しておらん(殺人などは犯していない)。そういう穏健派と呼べるような"元"仲間も多いことだ。引き抜きにかかる。

お前も引き続きホグワーツでは好きに動け。賢者の石がお前の手元にあれば当面は問題ないだろうが、復活する手順はそれだけではあるまい」

「ええ、もちろん私も探ってみます」

「一部の死喰い人(デス・イーター)──この名前もセンスがないなと前々から思っていたのだが──とにかく仲間の中にはこの事実を知っても帝王に仕えることを選ぶ者もいるだろう」

「心当たりはありますか?」

「例えば──確証は無いがレストレンジあたりがな、あれは熱狂的な信者だった。後でまとめてリストを渡す。少し待て。

……それよりも、いいか、お前もこれからは身の回りに気をつけろ。戦闘で負ける心配はしておらんが、人を殺すにはいくらでも方法はある。毒殺とか呪われた品を贈るとかな」

 

「はい──それからダンブルドアですが」

「そうか……そちらも問題だな……。帝王が生きているとなれば奴は嗅ぎつけてくるだろう。あの連中──というか奴はこの手の嗅覚には異常なほど鋭い。そちらの動きにも警戒し、何かあったら知らせろ。繰り返しになるが、くれぐれも隙を見せるな」

「はい。勿論ですわ」

「賢者の石はお前の手元にあるのだったな、後で見せておくれ。いやそれよりも、奴は盗んだことに気づいていないのか?」

「試練(笑)の報酬だと思って盗んだつもりは全く無かったのですがね……。試練(笑)は全て回避・現状復帰し、ノリで双子呪文で複製したものを置いてきたので、それで命の水を作ったり錬金しようとしたりしない限りはバレないと思います」

たまにワンコ(ケルベロス)をモフりに行ってることまで今言う必要はないか。話が混線するし。

「上出来だ」

「そもそも、なんで不用心にホグワーツに転がっていたのでしょうね……?」

「まさにそれだ。確実になにか企んでいるな。囮か?」

「でも本物でしたよ?見た目も言い伝え通りで、錬金もできましたし、たった一滴で傷が消える程度には力もありました」

「……む。帝王を誘き寄せるためにしてはなにか引っかかる。注意深く探ってくれ。そちらは任せる。」

「承知しました」

あー疲れた。いや、疲れたのは父上(パパ)か。ごめん。

いや、悪いのは()()()()()()だわ。あたしは悪くない。たぶん。

 

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